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100.展望温泉
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7月、高天神城へ徳川軍の救援に向かっていた信長が帰ってきた。
なんとか間に合って、高天神城は武田軍の手に落ちずに済んだようだ。
また史実とは違った結果になってしまった。
史実では高天神城は落ち、徳川からは侍が離反して逆に武田勝頼は武田家当主として家臣たちの支持を厚くする。
松姫様のお兄さんである仁科盛信さんに頼んだささやかな工作が大きな効果を発揮している。
戦国時代の戦いにはあとちょっとあれがこうなっていたら結果は変わっていたかもしれないという戦いが多いから、ほんの少し武田方の戦力が少ないだけで結果がガラッと変わってしまうんだね。
武田勝頼は新米当主だから、家臣たちを従えるためには実績というものが必要になってくる。
史実では明智城や高天神城を落とすことで家臣たちに自分は戦が強いということをアピールして従えていたようだけれど、パラレルなこの世では負け星ばかりが付いてしまっていた。
特に高天神城を落とせなかったのは痛い。
高天神城は勝頼のお父さんである武田信玄をも退けたことのあるお城だ。
それを落とすことで、史実の勝頼は自分はお父さんよりも強いんだぞと家臣たちにアピールすることができた。
逆に考えれば、高天神城を落とせなかった勝頼に家臣たちを纏めることは難しい。
もう長篠の戦いは起こらないかもしれないな。
かの有名な武田騎馬軍団が勝頼に従わない可能性すらある。
このまま武田は分裂して内戦に突入かもな。
そうなれば周りの武将に寄って集られて領地を食い荒らされるだろう。
信濃はやっぱり信長が取るのかな。
甲斐はちょっと遠いから関東勢が取るかもな。
あのあたりは結構いい温泉地なだけに、あまり荒らしてほしくは無いな。
やっぱり温泉、家に欲しいな。
『できますぞ』
「できるの!?」
『ダンジョンの力と拙者の魔導工学を合わせれば、できないことなどほとんどありませぬ』
すごいな魔導工学。
では早速やってもらおう。
自宅といってもあの長屋に温泉を引くわけにはいかないから、沖ノ鳥島の屋敷と蟹江ダンジョンの屋上あたりに引いてもらおうかな。
蟹江ダンジョンの屋上には何か造りたいと思っていたところだ。
なんてったって240メートルの建物の屋上だよ。
それも周りに高層ビル建築なんて無い戦国時代の。
蟹江ダンジョンの屋上に立つと、まるで空を自分だけのものにしてしまったかのような優越感がある。
ここに温泉が引けたら最高だろうな。
まずは浴槽を作ろう。
浴槽はダンジョンのオプションを使えばいいので簡単だ。
居住区、タイプバスルームの浴槽総ヒノキトリプルラージサイズをタップ。
転落防止用の柵しかなかった蟹江ダンジョンの屋上に、3メートル×9メートルのヒノキの浴槽ができあがった。
雨の日でも入れるように屋根を追加。
でも星を見ながら入りたいときもあるだろうから屋根はガラス張りにしておこう。
洗い場は無駄にたくさんつけておく。
塩分の強い泉質の温泉なんかだと乾くとお肌がベタベタするものもあるから、洗い場のシャワーから出るのは真水だ。
全てヒノキで出来た浴槽の匂いを嗅げば、まるで新築の家みたいな清涼感溢れる匂いに包まれる。
「完璧だね。あとはお湯だけだ。どこの温泉なら引けるの?」
『どこでもでござる。北海道登別温泉のお湯であろうが、イタリアのサトゥルニア温泉のお湯であろうが、現地まで行って源泉をダンジョン領域に取り込んできていただければここまで引くことは可能でござる』
距離は関係ないみたいだ。
それよりも海外の温泉というものにも興味が湧いてきた。
イタリアといえばヴェスビオやエトナ火山などの多くの火山を抱える火山地帯だ。
当然温泉が湧いているだろう。
他にも火山地帯は環太平洋地域を中心に数多く存在している。
ロシアやニュージーランドも温泉が湧いていると聞いたことがあるな。
海外の温泉への興味は尽きないけれど、今すぐ行ってダンジョン化というわけにもいかない。
とりあえずまずは日本の温泉からだな。
「今日はこの温泉、明日はこの温泉、みたいに変えることってできる?」
『可能でござります』
「じゃあ今日は下呂温泉のお湯にする。あそこなら御嶽山に埋め込んだサブコアの範囲内だ」
『分かり申した。では参ります。ダンジョン管理システムにアクセス』
雪斎はなにやらスマホの中ですったもんだしている。
スパナのようなものを取り出したり、ドリルのようなもので何かを削ったりと演出が細かい。
少し時間がかかるようなのでテーブルと椅子を取り出してお茶にする。
まだこの時代には無いであろう煎茶だ。
お茶うけはついこの間ガチャから出た胡椒せんべいだ。
熱い煎茶と胡椒辛いせんべいが良く合う。
10分ほどお茶を飲みながらぼーっとしていると、スマホがブーブーと震えて雪斎から作業が完了したということが伝えられる。
「ダンジョンのオプションに下呂温泉のお湯が追加されてる。雪斎やるね」
『ありがたきお言葉』
いつもちょっとやりすぎちゃう雪斎だけれど、これは純粋にすごいと褒めてあげられる。
このくらいでいいんだよ、いつも魔導なんちゃらとか反重力なんちゃらとか超技術を自慢げに搭載するからなかなか褒めてあげられないんだ。
超技術は遠く離れた温泉地からお湯を引くとかそういうことに使っておけばいい。
『あとついでといってはなんですが、魔導ナノマシンによる細胞修復機能もつけておきました。どのような怪我や病気であっても、お湯に溶け込んだ魔導ナノマシンがたちどころに癒してくれる優れものでござる』
ああうん、嬉しいよ……。
でも温泉の美肌成分が全くの無意味になった。
なんとか間に合って、高天神城は武田軍の手に落ちずに済んだようだ。
また史実とは違った結果になってしまった。
史実では高天神城は落ち、徳川からは侍が離反して逆に武田勝頼は武田家当主として家臣たちの支持を厚くする。
松姫様のお兄さんである仁科盛信さんに頼んだささやかな工作が大きな効果を発揮している。
戦国時代の戦いにはあとちょっとあれがこうなっていたら結果は変わっていたかもしれないという戦いが多いから、ほんの少し武田方の戦力が少ないだけで結果がガラッと変わってしまうんだね。
武田勝頼は新米当主だから、家臣たちを従えるためには実績というものが必要になってくる。
史実では明智城や高天神城を落とすことで家臣たちに自分は戦が強いということをアピールして従えていたようだけれど、パラレルなこの世では負け星ばかりが付いてしまっていた。
特に高天神城を落とせなかったのは痛い。
高天神城は勝頼のお父さんである武田信玄をも退けたことのあるお城だ。
それを落とすことで、史実の勝頼は自分はお父さんよりも強いんだぞと家臣たちにアピールすることができた。
逆に考えれば、高天神城を落とせなかった勝頼に家臣たちを纏めることは難しい。
もう長篠の戦いは起こらないかもしれないな。
かの有名な武田騎馬軍団が勝頼に従わない可能性すらある。
このまま武田は分裂して内戦に突入かもな。
そうなれば周りの武将に寄って集られて領地を食い荒らされるだろう。
信濃はやっぱり信長が取るのかな。
甲斐はちょっと遠いから関東勢が取るかもな。
あのあたりは結構いい温泉地なだけに、あまり荒らしてほしくは無いな。
やっぱり温泉、家に欲しいな。
『できますぞ』
「できるの!?」
『ダンジョンの力と拙者の魔導工学を合わせれば、できないことなどほとんどありませぬ』
すごいな魔導工学。
では早速やってもらおう。
自宅といってもあの長屋に温泉を引くわけにはいかないから、沖ノ鳥島の屋敷と蟹江ダンジョンの屋上あたりに引いてもらおうかな。
蟹江ダンジョンの屋上には何か造りたいと思っていたところだ。
なんてったって240メートルの建物の屋上だよ。
それも周りに高層ビル建築なんて無い戦国時代の。
蟹江ダンジョンの屋上に立つと、まるで空を自分だけのものにしてしまったかのような優越感がある。
ここに温泉が引けたら最高だろうな。
まずは浴槽を作ろう。
浴槽はダンジョンのオプションを使えばいいので簡単だ。
居住区、タイプバスルームの浴槽総ヒノキトリプルラージサイズをタップ。
転落防止用の柵しかなかった蟹江ダンジョンの屋上に、3メートル×9メートルのヒノキの浴槽ができあがった。
雨の日でも入れるように屋根を追加。
でも星を見ながら入りたいときもあるだろうから屋根はガラス張りにしておこう。
洗い場は無駄にたくさんつけておく。
塩分の強い泉質の温泉なんかだと乾くとお肌がベタベタするものもあるから、洗い場のシャワーから出るのは真水だ。
全てヒノキで出来た浴槽の匂いを嗅げば、まるで新築の家みたいな清涼感溢れる匂いに包まれる。
「完璧だね。あとはお湯だけだ。どこの温泉なら引けるの?」
『どこでもでござる。北海道登別温泉のお湯であろうが、イタリアのサトゥルニア温泉のお湯であろうが、現地まで行って源泉をダンジョン領域に取り込んできていただければここまで引くことは可能でござる』
距離は関係ないみたいだ。
それよりも海外の温泉というものにも興味が湧いてきた。
イタリアといえばヴェスビオやエトナ火山などの多くの火山を抱える火山地帯だ。
当然温泉が湧いているだろう。
他にも火山地帯は環太平洋地域を中心に数多く存在している。
ロシアやニュージーランドも温泉が湧いていると聞いたことがあるな。
海外の温泉への興味は尽きないけれど、今すぐ行ってダンジョン化というわけにもいかない。
とりあえずまずは日本の温泉からだな。
「今日はこの温泉、明日はこの温泉、みたいに変えることってできる?」
『可能でござります』
「じゃあ今日は下呂温泉のお湯にする。あそこなら御嶽山に埋め込んだサブコアの範囲内だ」
『分かり申した。では参ります。ダンジョン管理システムにアクセス』
雪斎はなにやらスマホの中ですったもんだしている。
スパナのようなものを取り出したり、ドリルのようなもので何かを削ったりと演出が細かい。
少し時間がかかるようなのでテーブルと椅子を取り出してお茶にする。
まだこの時代には無いであろう煎茶だ。
お茶うけはついこの間ガチャから出た胡椒せんべいだ。
熱い煎茶と胡椒辛いせんべいが良く合う。
10分ほどお茶を飲みながらぼーっとしていると、スマホがブーブーと震えて雪斎から作業が完了したということが伝えられる。
「ダンジョンのオプションに下呂温泉のお湯が追加されてる。雪斎やるね」
『ありがたきお言葉』
いつもちょっとやりすぎちゃう雪斎だけれど、これは純粋にすごいと褒めてあげられる。
このくらいでいいんだよ、いつも魔導なんちゃらとか反重力なんちゃらとか超技術を自慢げに搭載するからなかなか褒めてあげられないんだ。
超技術は遠く離れた温泉地からお湯を引くとかそういうことに使っておけばいい。
『あとついでといってはなんですが、魔導ナノマシンによる細胞修復機能もつけておきました。どのような怪我や病気であっても、お湯に溶け込んだ魔導ナノマシンがたちどころに癒してくれる優れものでござる』
ああうん、嬉しいよ……。
でも温泉の美肌成分が全くの無意味になった。
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