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92.船の改造
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京都で麻呂麻呂おじゃるおじゃるの相手をしてきた信長が帰ってきた。
なんか官位が上がってよく分からない役職をもらってきたらしい。
この時代、武士に朝廷から与えられる官位にいったい何の意味があるのか俺にはよく分からないんだ。
そもそもの話、朝廷ってどこの国の朝廷なんだよ。
これだけ各地で大名が小国を築いて分裂している時代に、朝廷だけ纏まっていた時代の朝廷のままっていう状況が異常だと思うんだけど。
しかし今の世を生きる侍たちの多くが成り上がりで、権威とか歴史だとかそういったものに乏しい。
だからこそみんな、格式ばった官位をありがたがるのかもしれないな。
信長はまあそこまで喜んでないみたいだけど。
断わりきれなかったから貰ってきたみたいな感じなのかもしれない。
信長は従三位、参議ってやつになったらしい。
征夷大将軍倒したんだから征夷大将軍くれよって思うかもしれないけれど、多分信長では征夷大将軍の位をもらうことはできないと思う。
雪さんに聞いたのだけど、あれは伝統的に源氏の血筋に与えられる官位らしいんだ。
誰でも天下を取った人に与えられる官位みたいに思っていたからびっくりしたよ。
征夷大将軍ってそういえば頼朝以前は別に天下の代名詞ってわけではなかったんだよね。
初代の大伴弟麻呂や、二代の坂上田村麻呂の時代は北部方面軍大将みたいな意味で使われていた官位だったはずだ。
つまり天下=征夷大将軍ってわけでもないのだろう。
信長は最近何を思ったか平家を名乗っているときがあるらしいので、征夷大将軍を貰うことになんらかの反感感情があるのかもしれない。
たぶん信長、平家でもないけどね。
自分の先祖には誰それの血が入っていると主張して公家の苗字を名乗るのはこの時代の常套手段だ。
朝廷も嘘だって分かってはいると思うが、明らかな矛盾でもないかぎりは詳しく調べたりはしない。
後の世では徳川家康もやっていることだ。
自分の祖先は戦乱の世に逃げてきた源氏の傍流だとか言って征夷大将軍の位をもらったらしい。
一番まともなのは秀吉なのかな。
秀吉は征夷大将軍よりも上の位である関白になるために、近衛家の養子になった。
関白っていうのは官職の中でも最高峰といってもいい官職で、本来は天皇の補佐をするみたいな仕事だ。
就任できるのは五摂家と呼ばれる、公家の中でも際立ってやんごとない家の者だけ。
具体的には一条家、二条家、九条家、近衛家、鷹司家の五家の人間だけだ。
やんごとないと言ってもこの時代の公家はみんな貧乏だ。
近衛家は秀吉のようなどこの馬の骨とも知れない戦国一の成り上がり者を養子にしたくはなかったかもしれないが、秀吉を受け入れれば間違いなく近衛家には何かしらの見返りがある。
そんなこんなで秀吉は近衛家に養子に入り、関白に就任したのだ。
信長は武田を倒せば日本一広大な領地を持つ大名となる。
そうなればまた朝廷からなにかしらの官位を与えるって話が来るだろう。
信長は何を目指すのかな。
謎だ。
「この船さ、改造できないかな」
『改造でござるか?』
「そ、改造。この間グアム方面に交易に出た船と連絡が取れなくてね。たぶん沈んじゃったんだと思う。絶対に沈まない船っていうのは無理だけどさ、ちょっと沈む確率が高すぎる」
つい数ヶ月前この船に殿や勘九郎君を乗せて海に出ていたと思うとぞっとするよ。
護衛のシーサーペントがずっとついてきていたから海に放り出されても助かったとは思うけれど、もう少し安全に海に出られる船が欲しい。
『新しい船を造ったほうが早うござらんか?』
「造るって金属でしょ?」
『左様にござる。拙者、無機物の加工は得意中の得意でござる。しかし有機物となると魔導ナノマシンの浸透率が……』
「ああ、技術的な話はちょっと分からないから。それもファンタジーなやつは特に」
魔導ナノマシンってなんだ。
工場で機械や人間が働いて物を作る21世紀の物づくりまでしか知らない俺には、このAIの物づくりの話は全く理解することができない。
そもそもの基幹となる技術体系も違う気がする。
俺は現代日本で生きてきて魔導なんちゃらとかっていう技術を目にしたことも聞いたこともない。
雪斎は、科学と魔法が融合したような世界のAIなのかもしれないな。
それもシンギュラリティとか呼ばれるくらいの奴だろう。
俺なんかでは同じレベルで話ができるはずもない。
『申し訳ございませぬ。拙者、技術の話になるとつい……』
「やっぱり木造の船をいじるのも無理なの?その魔導ナノマシンってのが使えないから」
『そんなことはございませぬ。工業用ドローンを製造する時間をいただければ、立派に魔改造して見せまする』
「いや魔改造しなくていいから。普通に航行能力を少し上げてくれるだけでいいんだよ」
『残念でござるな。魔導ジェネレータや慣性制御装置、摩擦軽減装置を取り付ければ海の上を稲妻のような速度で航行可能だというのに……』
「そんな速度いらないんだよ。船である意味も無いし」
『いつか戦闘機でも造りたいでござるな……』
戦闘機って……。
人間がやっとこさ海に進出しだした時代だぞ。
ちょっといい船作っただけでもこの時代の国々にイニシアチブを取れそうなものだけどな。
「飛行機だって無い時代に戦闘機なんて武装過多なんだよ。それで、どのくらいでそのドローンはできるの?」
『一両日中にはできると思いまする』
「早いね。わかった、10隻くらいずつ頼むよ。明日までに島の港に最初の10隻を並べておくから」
『了解でござる。』
船の改造が終われば、本格的に貿易を始めるか。
日本に大量の食料を流すためのコネクションも作らなければならないし。
なんか官位が上がってよく分からない役職をもらってきたらしい。
この時代、武士に朝廷から与えられる官位にいったい何の意味があるのか俺にはよく分からないんだ。
そもそもの話、朝廷ってどこの国の朝廷なんだよ。
これだけ各地で大名が小国を築いて分裂している時代に、朝廷だけ纏まっていた時代の朝廷のままっていう状況が異常だと思うんだけど。
しかし今の世を生きる侍たちの多くが成り上がりで、権威とか歴史だとかそういったものに乏しい。
だからこそみんな、格式ばった官位をありがたがるのかもしれないな。
信長はまあそこまで喜んでないみたいだけど。
断わりきれなかったから貰ってきたみたいな感じなのかもしれない。
信長は従三位、参議ってやつになったらしい。
征夷大将軍倒したんだから征夷大将軍くれよって思うかもしれないけれど、多分信長では征夷大将軍の位をもらうことはできないと思う。
雪さんに聞いたのだけど、あれは伝統的に源氏の血筋に与えられる官位らしいんだ。
誰でも天下を取った人に与えられる官位みたいに思っていたからびっくりしたよ。
征夷大将軍ってそういえば頼朝以前は別に天下の代名詞ってわけではなかったんだよね。
初代の大伴弟麻呂や、二代の坂上田村麻呂の時代は北部方面軍大将みたいな意味で使われていた官位だったはずだ。
つまり天下=征夷大将軍ってわけでもないのだろう。
信長は最近何を思ったか平家を名乗っているときがあるらしいので、征夷大将軍を貰うことになんらかの反感感情があるのかもしれない。
たぶん信長、平家でもないけどね。
自分の先祖には誰それの血が入っていると主張して公家の苗字を名乗るのはこの時代の常套手段だ。
朝廷も嘘だって分かってはいると思うが、明らかな矛盾でもないかぎりは詳しく調べたりはしない。
後の世では徳川家康もやっていることだ。
自分の祖先は戦乱の世に逃げてきた源氏の傍流だとか言って征夷大将軍の位をもらったらしい。
一番まともなのは秀吉なのかな。
秀吉は征夷大将軍よりも上の位である関白になるために、近衛家の養子になった。
関白っていうのは官職の中でも最高峰といってもいい官職で、本来は天皇の補佐をするみたいな仕事だ。
就任できるのは五摂家と呼ばれる、公家の中でも際立ってやんごとない家の者だけ。
具体的には一条家、二条家、九条家、近衛家、鷹司家の五家の人間だけだ。
やんごとないと言ってもこの時代の公家はみんな貧乏だ。
近衛家は秀吉のようなどこの馬の骨とも知れない戦国一の成り上がり者を養子にしたくはなかったかもしれないが、秀吉を受け入れれば間違いなく近衛家には何かしらの見返りがある。
そんなこんなで秀吉は近衛家に養子に入り、関白に就任したのだ。
信長は武田を倒せば日本一広大な領地を持つ大名となる。
そうなればまた朝廷からなにかしらの官位を与えるって話が来るだろう。
信長は何を目指すのかな。
謎だ。
「この船さ、改造できないかな」
『改造でござるか?』
「そ、改造。この間グアム方面に交易に出た船と連絡が取れなくてね。たぶん沈んじゃったんだと思う。絶対に沈まない船っていうのは無理だけどさ、ちょっと沈む確率が高すぎる」
つい数ヶ月前この船に殿や勘九郎君を乗せて海に出ていたと思うとぞっとするよ。
護衛のシーサーペントがずっとついてきていたから海に放り出されても助かったとは思うけれど、もう少し安全に海に出られる船が欲しい。
『新しい船を造ったほうが早うござらんか?』
「造るって金属でしょ?」
『左様にござる。拙者、無機物の加工は得意中の得意でござる。しかし有機物となると魔導ナノマシンの浸透率が……』
「ああ、技術的な話はちょっと分からないから。それもファンタジーなやつは特に」
魔導ナノマシンってなんだ。
工場で機械や人間が働いて物を作る21世紀の物づくりまでしか知らない俺には、このAIの物づくりの話は全く理解することができない。
そもそもの基幹となる技術体系も違う気がする。
俺は現代日本で生きてきて魔導なんちゃらとかっていう技術を目にしたことも聞いたこともない。
雪斎は、科学と魔法が融合したような世界のAIなのかもしれないな。
それもシンギュラリティとか呼ばれるくらいの奴だろう。
俺なんかでは同じレベルで話ができるはずもない。
『申し訳ございませぬ。拙者、技術の話になるとつい……』
「やっぱり木造の船をいじるのも無理なの?その魔導ナノマシンってのが使えないから」
『そんなことはございませぬ。工業用ドローンを製造する時間をいただければ、立派に魔改造して見せまする』
「いや魔改造しなくていいから。普通に航行能力を少し上げてくれるだけでいいんだよ」
『残念でござるな。魔導ジェネレータや慣性制御装置、摩擦軽減装置を取り付ければ海の上を稲妻のような速度で航行可能だというのに……』
「そんな速度いらないんだよ。船である意味も無いし」
『いつか戦闘機でも造りたいでござるな……』
戦闘機って……。
人間がやっとこさ海に進出しだした時代だぞ。
ちょっといい船作っただけでもこの時代の国々にイニシアチブを取れそうなものだけどな。
「飛行機だって無い時代に戦闘機なんて武装過多なんだよ。それで、どのくらいでそのドローンはできるの?」
『一両日中にはできると思いまする』
「早いね。わかった、10隻くらいずつ頼むよ。明日までに島の港に最初の10隻を並べておくから」
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