チートをもらえるけど戦国時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

兎屋亀吉

文字の大きさ
上 下
92 / 131

92.船の改造

しおりを挟む
 京都で麻呂麻呂おじゃるおじゃるの相手をしてきた信長が帰ってきた。
 なんか官位が上がってよく分からない役職をもらってきたらしい。
 この時代、武士に朝廷から与えられる官位にいったい何の意味があるのか俺にはよく分からないんだ。
 そもそもの話、朝廷ってどこの国の朝廷なんだよ。
 これだけ各地で大名が小国を築いて分裂している時代に、朝廷だけ纏まっていた時代の朝廷のままっていう状況が異常だと思うんだけど。
 しかし今の世を生きる侍たちの多くが成り上がりで、権威とか歴史だとかそういったものに乏しい。
 だからこそみんな、格式ばった官位をありがたがるのかもしれないな。
 信長はまあそこまで喜んでないみたいだけど。
 断わりきれなかったから貰ってきたみたいな感じなのかもしれない。
 信長は従三位、参議ってやつになったらしい。
 征夷大将軍倒したんだから征夷大将軍くれよって思うかもしれないけれど、多分信長では征夷大将軍の位をもらうことはできないと思う。
 雪さんに聞いたのだけど、あれは伝統的に源氏の血筋に与えられる官位らしいんだ。
 誰でも天下を取った人に与えられる官位みたいに思っていたからびっくりしたよ。
 征夷大将軍ってそういえば頼朝以前は別に天下の代名詞ってわけではなかったんだよね。
 初代の大伴弟麻呂や、二代の坂上田村麻呂の時代は北部方面軍大将みたいな意味で使われていた官位だったはずだ。
 つまり天下=征夷大将軍ってわけでもないのだろう。
 信長は最近何を思ったか平家を名乗っているときがあるらしいので、征夷大将軍を貰うことになんらかの反感感情があるのかもしれない。
 たぶん信長、平家でもないけどね。
 自分の先祖には誰それの血が入っていると主張して公家の苗字を名乗るのはこの時代の常套手段だ。
 朝廷も嘘だって分かってはいると思うが、明らかな矛盾でもないかぎりは詳しく調べたりはしない。
 後の世では徳川家康もやっていることだ。
 自分の祖先は戦乱の世に逃げてきた源氏の傍流だとか言って征夷大将軍の位をもらったらしい。
 一番まともなのは秀吉なのかな。
 秀吉は征夷大将軍よりも上の位である関白になるために、近衛家の養子になった。
 関白っていうのは官職の中でも最高峰といってもいい官職で、本来は天皇の補佐をするみたいな仕事だ。
 就任できるのは五摂家と呼ばれる、公家の中でも際立ってやんごとない家の者だけ。
 具体的には一条家、二条家、九条家、近衛家、鷹司家の五家の人間だけだ。
 やんごとないと言ってもこの時代の公家はみんな貧乏だ。
 近衛家は秀吉のようなどこの馬の骨とも知れない戦国一の成り上がり者を養子にしたくはなかったかもしれないが、秀吉を受け入れれば間違いなく近衛家には何かしらの見返りがある。
 そんなこんなで秀吉は近衛家に養子に入り、関白に就任したのだ。
 信長は武田を倒せば日本一広大な領地を持つ大名となる。
 そうなればまた朝廷からなにかしらの官位を与えるって話が来るだろう。
 信長は何を目指すのかな。
 謎だ。





「この船さ、改造できないかな」

『改造でござるか?』

「そ、改造。この間グアム方面に交易に出た船と連絡が取れなくてね。たぶん沈んじゃったんだと思う。絶対に沈まない船っていうのは無理だけどさ、ちょっと沈む確率が高すぎる」

 つい数ヶ月前この船に殿や勘九郎君を乗せて海に出ていたと思うとぞっとするよ。
 護衛のシーサーペントがずっとついてきていたから海に放り出されても助かったとは思うけれど、もう少し安全に海に出られる船が欲しい。
 
『新しい船を造ったほうが早うござらんか?』

「造るって金属でしょ?」

『左様にござる。拙者、無機物の加工は得意中の得意でござる。しかし有機物となると魔導ナノマシンの浸透率が……』

「ああ、技術的な話はちょっと分からないから。それもファンタジーなやつは特に」

 魔導ナノマシンってなんだ。
 工場で機械や人間が働いて物を作る21世紀の物づくりまでしか知らない俺には、このAIの物づくりの話は全く理解することができない。
 そもそもの基幹となる技術体系も違う気がする。
 俺は現代日本で生きてきて魔導なんちゃらとかっていう技術を目にしたことも聞いたこともない。
 雪斎は、科学と魔法が融合したような世界のAIなのかもしれないな。
 それもシンギュラリティとか呼ばれるくらいの奴だろう。
 俺なんかでは同じレベルで話ができるはずもない。

『申し訳ございませぬ。拙者、技術の話になるとつい……』

「やっぱり木造の船をいじるのも無理なの?その魔導ナノマシンってのが使えないから」

『そんなことはございませぬ。工業用ドローンを製造する時間をいただければ、立派に魔改造して見せまする』

「いや魔改造しなくていいから。普通に航行能力を少し上げてくれるだけでいいんだよ」

『残念でござるな。魔導ジェネレータや慣性制御装置、摩擦軽減装置を取り付ければ海の上を稲妻のような速度で航行可能だというのに……』

「そんな速度いらないんだよ。船である意味も無いし」

『いつか戦闘機でも造りたいでござるな……』

 戦闘機って……。
 人間がやっとこさ海に進出しだした時代だぞ。
 ちょっといい船作っただけでもこの時代の国々にイニシアチブを取れそうなものだけどな。

「飛行機だって無い時代に戦闘機なんて武装過多なんだよ。それで、どのくらいでそのドローンはできるの?」

『一両日中にはできると思いまする』

「早いね。わかった、10隻くらいずつ頼むよ。明日までに島の港に最初の10隻を並べておくから」

『了解でござる。』

 船の改造が終われば、本格的に貿易を始めるか。
 日本に大量の食料を流すためのコネクションも作らなければならないし。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...