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89.うなるガチャ運
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3月になった。
結局明智城の戦いは俺達出番全然なかったな。
なんだかすごい急行軍で東美濃まで温泉に入りに行ってきたみたいな感じだった。
武田との戦いもほとんど鉄砲を使っての戦闘だったし、俺達も2、3発は火縄銃撃ったけどほとんど戦ったという実感が無い。
これからの戦というのはこういう戦いになるんだろうという見本のような戦闘だった。
かの長篠の戦いは武田軍の騎馬軍団VS織田軍の鉄砲隊という構図が有名な戦だ。
敵を知り、己を知る。
戦の極意はそれに尽きる。
信長にとっては今回の戦は予定外で、あまり備えをしていなかった戦かもしれない。
だけどそれは向こうも同じだった。
信長を倒すために準備をしてきた戦いではなかった。
おそらく武田勝頼は家臣たちの信頼を得るためにしょうがなく出兵したのだろう。
織田や徳川のあちこちの城を突っつき、落とせれば家臣たちに領地を与えることができる。
自分の求心力を高めることができるのだ。
しかしそんな考えでは普段から有り余る金を使って訓練された信長の鉄砲隊を相手にはできなかった。
この戦いは、明智城を落としきる前に信長が駆けつけた時点で武田の負けが決まっていたのだ。
勝頼もそれが分かっていたからすぐに兵を引いた。
しかし俺達現場に駆けつけた兵たちにとっては何もかもが速すぎたな。
いい機会だから一緒に高速行軍してきていた勇者ミツヒデこと明智光秀とも話してみたかったのだけれど、何のとっかかりも無いまま信長と一緒に帰ってしまった。
岐阜に帰ってきた今となっては、勘九郎君のいち陪臣に過ぎない俺が直参のミツヒデを尋ねるのはおかしいしな。
たぶん門前払いだろう。
勘九郎君はミツヒデと話したことくらいはあるだろうけど、殿はたぶん話したこともない。
本能寺の変を止めると決めた以上は、何が原因なのかちょっとだけ探りを入れてみたかったんだけどな。
まあそのうち話す機会もあるだろう。
とりあえず今日の分のガチャを回すか。
最近は俺が歴史に干渉しすぎたのか、秀吉の運気が下がってきた気がする。
ここのところガチャの内容がカスみたいな結果になっているんだ。
秀吉に祈りを捧げるのは悪手なのかもしれない。
ここは少し癪だが、信長に祈りを捧げてみるか。
俺は京都でやんごとなき人たちとの麻呂麻呂おじゃるおじゃるという中身の無い会話にイライラしているであろう信長に向かって祈りを捧げ、10連ガチャをタップした。
Sランク
・戦国時代対応型自己進化式人工知能
Aランク
・良く切れるハルバート
Bランク
なし
Cランク
・米×10
・うどん粉×10
・ホットケーキミックス×10
・桜餅×10
Dランク
・竹とんぼ
・印鑑(山田)
・板チョコ
・ピンポン球
「おぉぉ!?」
久しぶりのSランクに自分でも気持ち悪いと思うくらい変な声が出てしまった。
やはり時代は信長だというのか。
信長の強運が俺のガチャに宿ったというのか。
いや、俺はそんなの認めない。
俺の停滞していた運気が爆発したに決まっている。
今まで力を溜めていたんだよ。
いや、今はなんで出たのかとかそんなどうでもいいガチャ論は置いておこう。
Aランクの良く切れるハルバートはまあいいだろう。
名前の通り刃の部分が物理法則を越えて切れる斧槍だ。
Aランクではお馴染みの良く切れるシリーズの一品。
問題はSランクのアイテムだ。
戦国時代対応型自己進化式人工知能。
長い名前だけど、ようはAIって奴なのだろう。
その見た目はそれほど未来的ではなく、一昔前のブラウン管テレビみたいな感じだ。
俺はハイテク関係は詳しくないのだけれど、AIというからにはパソコンの中で動く代物なのだろう。
このブラウン管テレビみたいなものがパソコンの本体とディスプレイを兼ねたものなのだろうか。
しかしこの時代にそんなものを放り込まれても、AC100V電源なんて無い。
そもそもこのブラウン管テレビ、電源コードがどこからも出ていないようだ。
いったいどういう技術体系の物品なのか全く分からない。
Sランクアイテムというのは電気だとかそういう常識が通用しない可能性もあるんだよな。
俺はとりあえず電源ボタンっぽいのを押してみる。
「え、付いた!?」
画面右下の電源ボタンっぽいものを押すと、今までブラックアウトしていた画面にバックライトが付き空色のシンプルなホーム画面が出てきた。
なんなのかなこのアイテム。
どうやって動いているのかとか、考えないほうがいいのだろうな。
きっとダンジョンと同じようなファンタジーなエネルギーで動いているに違いない。
ホーム画面にはアイコンが一つ。
脳みそにコードがたくさん繋がった一昔前のサイバーパンクじみた人工知能のアイコンだ。
名前は特に付いていないのか、アスタリスクが三つ表示されているだけ。
これを押せってことなんだろうが、マウスも何もないのにどうやって押すのかな。
まさかタッチパネルということは無いだろう。
レトロ感漂うブラウン管テレビのような外見にデザインしておいて、タッチパネルは無い。
だが他に方法も無いので、俺は一応AIのアイコンの部分に人差し指で触れてみた。
「えぇ、タッチパネルなんだ……」
アイコンが開いて気味が悪い脳みその画像がアップになる。
何から何までセンスどうなってんだ。
サイバーパンクな脳みそむき出し人工知能は、工場のような場所で外装を取り付けられていく。
安いロボットバトルアニメに出てくるパワードスーツみたいな外見になっていく人工知能。
最後に脳みそに繋がったケーブルが外され、パワードスーツの中に納まる脳みそ。
うん、この演出意外と好きかもしれない。
『やぁやぁ我こそは、戦国時代対応型自己進化式人工知能!名前はまだござらん!手前様は拙者の主君とお見受けいたす。まずは拙者の名前を決めてくだされ』
戦国時代対応型って、まさかその言葉遣いだけじゃないよね。
結局明智城の戦いは俺達出番全然なかったな。
なんだかすごい急行軍で東美濃まで温泉に入りに行ってきたみたいな感じだった。
武田との戦いもほとんど鉄砲を使っての戦闘だったし、俺達も2、3発は火縄銃撃ったけどほとんど戦ったという実感が無い。
これからの戦というのはこういう戦いになるんだろうという見本のような戦闘だった。
かの長篠の戦いは武田軍の騎馬軍団VS織田軍の鉄砲隊という構図が有名な戦だ。
敵を知り、己を知る。
戦の極意はそれに尽きる。
信長にとっては今回の戦は予定外で、あまり備えをしていなかった戦かもしれない。
だけどそれは向こうも同じだった。
信長を倒すために準備をしてきた戦いではなかった。
おそらく武田勝頼は家臣たちの信頼を得るためにしょうがなく出兵したのだろう。
織田や徳川のあちこちの城を突っつき、落とせれば家臣たちに領地を与えることができる。
自分の求心力を高めることができるのだ。
しかしそんな考えでは普段から有り余る金を使って訓練された信長の鉄砲隊を相手にはできなかった。
この戦いは、明智城を落としきる前に信長が駆けつけた時点で武田の負けが決まっていたのだ。
勝頼もそれが分かっていたからすぐに兵を引いた。
しかし俺達現場に駆けつけた兵たちにとっては何もかもが速すぎたな。
いい機会だから一緒に高速行軍してきていた勇者ミツヒデこと明智光秀とも話してみたかったのだけれど、何のとっかかりも無いまま信長と一緒に帰ってしまった。
岐阜に帰ってきた今となっては、勘九郎君のいち陪臣に過ぎない俺が直参のミツヒデを尋ねるのはおかしいしな。
たぶん門前払いだろう。
勘九郎君はミツヒデと話したことくらいはあるだろうけど、殿はたぶん話したこともない。
本能寺の変を止めると決めた以上は、何が原因なのかちょっとだけ探りを入れてみたかったんだけどな。
まあそのうち話す機会もあるだろう。
とりあえず今日の分のガチャを回すか。
最近は俺が歴史に干渉しすぎたのか、秀吉の運気が下がってきた気がする。
ここのところガチャの内容がカスみたいな結果になっているんだ。
秀吉に祈りを捧げるのは悪手なのかもしれない。
ここは少し癪だが、信長に祈りを捧げてみるか。
俺は京都でやんごとなき人たちとの麻呂麻呂おじゃるおじゃるという中身の無い会話にイライラしているであろう信長に向かって祈りを捧げ、10連ガチャをタップした。
Sランク
・戦国時代対応型自己進化式人工知能
Aランク
・良く切れるハルバート
Bランク
なし
Cランク
・米×10
・うどん粉×10
・ホットケーキミックス×10
・桜餅×10
Dランク
・竹とんぼ
・印鑑(山田)
・板チョコ
・ピンポン球
「おぉぉ!?」
久しぶりのSランクに自分でも気持ち悪いと思うくらい変な声が出てしまった。
やはり時代は信長だというのか。
信長の強運が俺のガチャに宿ったというのか。
いや、俺はそんなの認めない。
俺の停滞していた運気が爆発したに決まっている。
今まで力を溜めていたんだよ。
いや、今はなんで出たのかとかそんなどうでもいいガチャ論は置いておこう。
Aランクの良く切れるハルバートはまあいいだろう。
名前の通り刃の部分が物理法則を越えて切れる斧槍だ。
Aランクではお馴染みの良く切れるシリーズの一品。
問題はSランクのアイテムだ。
戦国時代対応型自己進化式人工知能。
長い名前だけど、ようはAIって奴なのだろう。
その見た目はそれほど未来的ではなく、一昔前のブラウン管テレビみたいな感じだ。
俺はハイテク関係は詳しくないのだけれど、AIというからにはパソコンの中で動く代物なのだろう。
このブラウン管テレビみたいなものがパソコンの本体とディスプレイを兼ねたものなのだろうか。
しかしこの時代にそんなものを放り込まれても、AC100V電源なんて無い。
そもそもこのブラウン管テレビ、電源コードがどこからも出ていないようだ。
いったいどういう技術体系の物品なのか全く分からない。
Sランクアイテムというのは電気だとかそういう常識が通用しない可能性もあるんだよな。
俺はとりあえず電源ボタンっぽいのを押してみる。
「え、付いた!?」
画面右下の電源ボタンっぽいものを押すと、今までブラックアウトしていた画面にバックライトが付き空色のシンプルなホーム画面が出てきた。
なんなのかなこのアイテム。
どうやって動いているのかとか、考えないほうがいいのだろうな。
きっとダンジョンと同じようなファンタジーなエネルギーで動いているに違いない。
ホーム画面にはアイコンが一つ。
脳みそにコードがたくさん繋がった一昔前のサイバーパンクじみた人工知能のアイコンだ。
名前は特に付いていないのか、アスタリスクが三つ表示されているだけ。
これを押せってことなんだろうが、マウスも何もないのにどうやって押すのかな。
まさかタッチパネルということは無いだろう。
レトロ感漂うブラウン管テレビのような外見にデザインしておいて、タッチパネルは無い。
だが他に方法も無いので、俺は一応AIのアイコンの部分に人差し指で触れてみた。
「えぇ、タッチパネルなんだ……」
アイコンが開いて気味が悪い脳みその画像がアップになる。
何から何までセンスどうなってんだ。
サイバーパンクな脳みそむき出し人工知能は、工場のような場所で外装を取り付けられていく。
安いロボットバトルアニメに出てくるパワードスーツみたいな外見になっていく人工知能。
最後に脳みそに繋がったケーブルが外され、パワードスーツの中に納まる脳みそ。
うん、この演出意外と好きかもしれない。
『やぁやぁ我こそは、戦国時代対応型自己進化式人工知能!名前はまだござらん!手前様は拙者の主君とお見受けいたす。まずは拙者の名前を決めてくだされ』
戦国時代対応型って、まさかその言葉遣いだけじゃないよね。
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