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83.メタルスライム
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一面に草が生い茂る草原フィールドを柔らかい泥の水田にするためには、土を起こしてアゼを切る必要がある。
アゼというのは田んぼの縁にある土が盛り上げられた土手のことで、あれは別に人が歩くための道というだけではないんだ。
水田には水を張る必要があるから、水が流れ出さないように区切る土手が必要だ。
一定の面積ごとに田んぼを区切ることにより、病気などが出たときに他の稲への感染拡大を防ぐ役割もある。
だからこれだけの広大な草原だけれど、一定の面積ごとにアゼを切って泥を塗り水が漏れないようにする作業が必要になる。
しかしそれには大量の鍬が必要だ。
土を起こして柔らかく耕す作業は、何に使うためなのか鋭い爪を備えたゴーレムさんたちがいるので問題ない。
ゴーレムさんたちは機械のようにすごい馬力で深く土を掘り返してくれる。
いい作物を作るためにはやはり地中を深く耕すことが重要だ。
植物が根を伸ばしやすい柔らかい土にする必要がある。
あとは酸素とか窒素化合物とかなにやら難しい理由もあった気がするが、忘れてしまった。
とにかく深く耕せばいいんでしょ。
ゴーレムさんたちは頑張って働いてくれているが、鍬が足りないせいで全員に仕事が割り振られないスケルトンさんたちは手持ち無沙汰で心なしか居心地が悪そうに見える。
何とかしてあげたいな。
ダンジョンマスターの力で鍬をなんとかすることはできないだろうか。
ダンジョンマスターといってもなんでもできるわけではない。
できるのはダンジョンの操作とモンスターの生成くらいのものだ。
WEB小説で見るような、ダンジョンポイントがあればなんでもできる存在ではないのだ。
ダンジョンポイントでなんでも買うことができるネットショップみたいな機能があれば鍬の1万本や2万本はあっという間になんとかなるのだが、俺がアイテムを手に入れられる手段は宝箱しかない。
そして残念なことに宝箱から出るアイテムはランダムで、俺には狙って鍬だけを出すことなんてできはしない。
かといって買いに行こうにも、この時代には鉄の農具なんて売ってないからな。
そもそも鉄が貴重品ですごく高いんだ。
おまけに戦ばかりで武器や防具の需要が高い。
農具に鉄なんて使っている余裕がないのだろう。
鉄製の農具を1万本作ってくれなんて鍛冶屋にお願いしたら卒倒しちゃいそうだ。
自分でなんとかするしか無いだろう。
ゴーレムさんだってあの鋭い爪は多分土を耕すために付いているのではないだろうが、あんなに上手く土を掘り返しているんだ。
鍬の代わりになってくれるモンスターだっているかもしれない。
俺はスマホを取り出してモンスターの一覧と睨めっこする。
個人的にはリビングアーマーとかどうかなと思うんだよ。
リビングアーマーは動く鎧だ。
しかしその実体はゴーストのように肉体を持たないアストラル体のモンスターで、武具や鎧を操って動かす。
オプションに鍬とかあれば動く鍬が手に入ると思って探してみたのだが、どこにも鍬の文字は無い。
あたりまえか。
どこのどいつが鍬を持ってダンジョンに挑むんだ。
やはりそう都合よく鍬の代わりになってくれるモンスターなんていないのだろうか。
そう思って関係なさそうな流体系モンスターのあたりをスクロールしたときだった。
「うん?メタルスライム?経験値がめっちゃもらえるモンスターか?」
昔やったゲームの印象が強かったのでそう思ってしまったが、どうやら違うらしい。
そもそもこの世界にはレベルなんてものは存在していないから経験値もまた無い。
メタルスライムは普通に金属でできたスライムのことらしい。
固体なのか液体なのか気になる。
流動するが体表は硬いというよくわからない状態のモンスターらしい。
「なるほど。このモンスターにメタモルフォーゼをオプションでつければ、いけるか?」
スライム種にはメタモルフォーゼという魔法をオプションで付けることができる。
その名の通りの変身魔法だ。
メタルなスライムにメタモルフォーゼ。
鍬になってもらうことができるのではないのだろうか。
俺はさっそく1匹生み出し、鍬を見せて変身してもらう。
『ポヨポヨ』
「いける?」
『ポヨポヨ』
どうやらいけるようだ。
メタルスライムは柄から刃先まですべて金属でできた1本の鍬となった。
「この状態ってどのくらい維持できるの?」
『ポヨポヨ』
必要とあらば一生このままでも大丈夫だそうだ。
元々スライムとはそういうモンスターなのだと。
スケルトンさんたちと同じように、空気中の魔素があれば死にはしない。
擬態して獲物を待ち構えるけれど、獲物が来ないまま一生を終えることもある。
そんな貝のようなモンスター。
メタモルフォーゼは変身するときと元に戻るときに魔力を消費するが、そのままの姿を維持するのには魔力を消費しない。
鍬として働いてもらうにはなんて都合のいいモンスターなんだろうか。
しかしずっと鍬でいてもらうというのも人道的にどうかと思ったので、労働時間外ではスライムの姿に戻ってもらって普通に過ごしてもらうことにした。
『ポヨポヨ』
メタルスライムさんは金属が好きで、主にダンジョンに浸入してきた人の武器などを食べるモンスターなのだそうだ。
だから嗜好品として金属を与えることにした。
やはり物を食べることのできるモンスターにはちゃんと食事を与えないと気分が悪い。
そんなわけでオーガ並みに食費がかかりそうなメタルスライムを1万匹ほど生み出した。
これでスケルトンさんたちに鍬を行き渡らせることができる。
なんとなくスケルトンさんたちはこれで仕事ができると喜んでいるような気がした。
はた目には頭蓋骨をカタカタ鳴らしているようにしか見えないんだけどね。
アゼというのは田んぼの縁にある土が盛り上げられた土手のことで、あれは別に人が歩くための道というだけではないんだ。
水田には水を張る必要があるから、水が流れ出さないように区切る土手が必要だ。
一定の面積ごとに田んぼを区切ることにより、病気などが出たときに他の稲への感染拡大を防ぐ役割もある。
だからこれだけの広大な草原だけれど、一定の面積ごとにアゼを切って泥を塗り水が漏れないようにする作業が必要になる。
しかしそれには大量の鍬が必要だ。
土を起こして柔らかく耕す作業は、何に使うためなのか鋭い爪を備えたゴーレムさんたちがいるので問題ない。
ゴーレムさんたちは機械のようにすごい馬力で深く土を掘り返してくれる。
いい作物を作るためにはやはり地中を深く耕すことが重要だ。
植物が根を伸ばしやすい柔らかい土にする必要がある。
あとは酸素とか窒素化合物とかなにやら難しい理由もあった気がするが、忘れてしまった。
とにかく深く耕せばいいんでしょ。
ゴーレムさんたちは頑張って働いてくれているが、鍬が足りないせいで全員に仕事が割り振られないスケルトンさんたちは手持ち無沙汰で心なしか居心地が悪そうに見える。
何とかしてあげたいな。
ダンジョンマスターの力で鍬をなんとかすることはできないだろうか。
ダンジョンマスターといってもなんでもできるわけではない。
できるのはダンジョンの操作とモンスターの生成くらいのものだ。
WEB小説で見るような、ダンジョンポイントがあればなんでもできる存在ではないのだ。
ダンジョンポイントでなんでも買うことができるネットショップみたいな機能があれば鍬の1万本や2万本はあっという間になんとかなるのだが、俺がアイテムを手に入れられる手段は宝箱しかない。
そして残念なことに宝箱から出るアイテムはランダムで、俺には狙って鍬だけを出すことなんてできはしない。
かといって買いに行こうにも、この時代には鉄の農具なんて売ってないからな。
そもそも鉄が貴重品ですごく高いんだ。
おまけに戦ばかりで武器や防具の需要が高い。
農具に鉄なんて使っている余裕がないのだろう。
鉄製の農具を1万本作ってくれなんて鍛冶屋にお願いしたら卒倒しちゃいそうだ。
自分でなんとかするしか無いだろう。
ゴーレムさんだってあの鋭い爪は多分土を耕すために付いているのではないだろうが、あんなに上手く土を掘り返しているんだ。
鍬の代わりになってくれるモンスターだっているかもしれない。
俺はスマホを取り出してモンスターの一覧と睨めっこする。
個人的にはリビングアーマーとかどうかなと思うんだよ。
リビングアーマーは動く鎧だ。
しかしその実体はゴーストのように肉体を持たないアストラル体のモンスターで、武具や鎧を操って動かす。
オプションに鍬とかあれば動く鍬が手に入ると思って探してみたのだが、どこにも鍬の文字は無い。
あたりまえか。
どこのどいつが鍬を持ってダンジョンに挑むんだ。
やはりそう都合よく鍬の代わりになってくれるモンスターなんていないのだろうか。
そう思って関係なさそうな流体系モンスターのあたりをスクロールしたときだった。
「うん?メタルスライム?経験値がめっちゃもらえるモンスターか?」
昔やったゲームの印象が強かったのでそう思ってしまったが、どうやら違うらしい。
そもそもこの世界にはレベルなんてものは存在していないから経験値もまた無い。
メタルスライムは普通に金属でできたスライムのことらしい。
固体なのか液体なのか気になる。
流動するが体表は硬いというよくわからない状態のモンスターらしい。
「なるほど。このモンスターにメタモルフォーゼをオプションでつければ、いけるか?」
スライム種にはメタモルフォーゼという魔法をオプションで付けることができる。
その名の通りの変身魔法だ。
メタルなスライムにメタモルフォーゼ。
鍬になってもらうことができるのではないのだろうか。
俺はさっそく1匹生み出し、鍬を見せて変身してもらう。
『ポヨポヨ』
「いける?」
『ポヨポヨ』
どうやらいけるようだ。
メタルスライムは柄から刃先まですべて金属でできた1本の鍬となった。
「この状態ってどのくらい維持できるの?」
『ポヨポヨ』
必要とあらば一生このままでも大丈夫だそうだ。
元々スライムとはそういうモンスターなのだと。
スケルトンさんたちと同じように、空気中の魔素があれば死にはしない。
擬態して獲物を待ち構えるけれど、獲物が来ないまま一生を終えることもある。
そんな貝のようなモンスター。
メタモルフォーゼは変身するときと元に戻るときに魔力を消費するが、そのままの姿を維持するのには魔力を消費しない。
鍬として働いてもらうにはなんて都合のいいモンスターなんだろうか。
しかしずっと鍬でいてもらうというのも人道的にどうかと思ったので、労働時間外ではスライムの姿に戻ってもらって普通に過ごしてもらうことにした。
『ポヨポヨ』
メタルスライムさんは金属が好きで、主にダンジョンに浸入してきた人の武器などを食べるモンスターなのだそうだ。
だから嗜好品として金属を与えることにした。
やはり物を食べることのできるモンスターにはちゃんと食事を与えないと気分が悪い。
そんなわけでオーガ並みに食費がかかりそうなメタルスライムを1万匹ほど生み出した。
これでスケルトンさんたちに鍬を行き渡らせることができる。
なんとなくスケルトンさんたちはこれで仕事ができると喜んでいるような気がした。
はた目には頭蓋骨をカタカタ鳴らしているようにしか見えないんだけどね。
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