67 / 131
67.イビルアイ
しおりを挟む
眼下で逃げ惑う人々と燃え盛る町。
朝倉家の本城、一乗谷城の城下町だ。
追撃戦で無事三段崎勘右衛門の首を取ることに成功した俺達。
戦は織田軍の大勝利なのだが、信長はそれだけでは止まらなかった。
朝倉軍を本領である越前まで押し込め、さらに攻め込んだ。
どうやら本格的に滅ぼしてしまうつもりらしい。
「酷いことをする……」
「織田信長は、あの頃と何も変わらんな。ワシの生家を滅ぼしたあの頃から……」
殿は燃え盛る一乗谷城下の様子に、滅ぼされた自分の実家が重なって見えるようだ。
はぁ、乱世はこれだから嫌なんだ。
逃げる人々を追い掛け回して荷物を奪う織田の足軽たち。
この時代では普通のことだ。
乱妨取りといって、敵の治めていた町では正々堂々と略奪が行われる。
足軽たちは命を賭けても雇い主からはそれほど高い報酬を貰うことができない。
最初から略奪で利益を得ることを考えて足軽として戦働きをしているのだ。
それを悪いことだと断じることなどこの時代の誰にもできやしない。
だがやはり、こんなことは人間のやることではないと思ってしまうんだよな。
「善次郎。ワシらはなぜこんなことをせねば生きていけぬのだろうか。田畑を耕すだけでは全員の人間が生きることはできんのだろうか」
「そりゃあ互いに戦っているからでしょう。侍も農民も商人も、皆が皆田畑に専念したらすぐに全員食えるようになりますよ」
「そうか、やはり乱世は嫌じゃの。まったく、ワシらはいったいどこに向かっておるのだろうな……」
「わかりません。でも、この戦の先にきっとありますよ。そんな誰も奪い合わずに生きられる世が」
「そうか。そのような世が来たらいいな」
俺はぎゅっと拳を握り締める。
きっと、そんな世が来るはずなんだ。
織田、豊臣、徳川、そしてその先に。
たとえ戦は終わらずとも、奪わなくても飢えない世は近い。
結局、殿は俺達に乱取りに参加しろとは命令しなかった。
武士は食わねど高楊枝というやつだ。
こういう時のこの言葉は、少しだけ好きだな。
織田軍vs浅井・朝倉の戦は無事に織田の勝利で終わった。
ただ、なぜか殿は配置換えになった。
史実ではこのまま秀吉の与力として領地をもらって活躍していくはずだったのだが、何を思ったのか信長は殿を奇妙丸君の直臣とした。
これは大出世といってもいいのではないだろうか。
領地はもらえなかったがその代わり禄が大幅に上がり、いきなり4000石となった。
やはりコツコツ飴玉を送ってご機嫌をとっておいたのが効いたのだろうか。
あちこちで一向宗の一揆が往生際悪く蜂起したりして織田家の重臣が対処したりしているが、わけがわからないうちにいきなり大出世した殿は岐阜でしばらく待機だそうだ。
俺もしばらくは島に専念できそうでほっとした。
「さて、こいつらを移動させるか」
先日オーガたちの警備を突破した子供が牢屋エリアに入り込むという事件があった。
怖い鬼に見張らせておけば子供たちも入り込まないだろうと高をくくっていた俺は見事にしてやられてしまったわけだ。
正直子供を舐めていた。
オーガが真面目で案外良い奴だと子供たちは見抜いていたのだ。
そして絶対に近づいてはならんと言われれば何がなんでも近づいてやろうと思うわけで。
そんなこんなで今回の事故が起きてしまったわけだ。
幸いにも子供は異国の言葉で罵倒されて大泣きしたくらいで無事だったのだが、これはちょっと危ないんじゃないかと平蔵さんたちを話し合い牢屋エリアを移動させることにした。
新しい牢屋エリアは南極大陸だ。
昨日クソ寒いあの大地に行ってサブコアを埋め込み、ダンジョンの入り口を作ってきたところだ。
あそこならあと数世紀は誰も入り込まないだろうし、万が一捕虜が逃げ出したとしてもどこにも逃げられずに凍えて死ぬだけだ。
島から転移罠を使ったゲートで移動できるようにしてある。
あとは捕虜たちを移動させるだけなのだが……。
俺は思念伝達の魔法を発動し、捕虜たちに話しかける。
『侵略者の諸君、今から君たちを極寒の大地にある流刑地に移送する。君たちが素直に従ってくれるのであれば待遇を改善する用意がある』
『ふざけるなぁ!』
『こんなことをして本国が黙っていないぞ!』
『死ね!極東の蛮族が!!』
たしかに今の時代の日本人は奪って生きる蛮族そのものだけど、自分たちだって変わらないだろうに。
海の向こう側まで奪いに来たような征服者たちが何を言っているのか。
もう少し殊勝な態度であれば、こんな酷いことはしないで済んだのにな。
俺はスマホを操作し、悪魔型のモンスターの中から1種類のモンスターを選択する。
それをとりあえず2000匹ほど生み出す。
『キヒヒッ』
生理的嫌悪感を感じるような笑い声が響き渡り、小さな芋虫のような生き物が大量に生み出された。
ヌメヌメと光る粘液に覆われた真っ赤な芋虫。
その顔の部分には、人間のような大きさの目玉が一つぎょろりと光っていた。
うっすらと金色に光るその瞳は、見ていると気が狂ってしまいそうになる。
このモンスターの名前はイビルアイ。
人に寄生する悪魔型のモンスターだ。
本当はこんなことはしたくないのだけれど、素直に従ってくれないのだから仕方が無い。
俺はすべてのイビルアイに命令する。
寄生しろ、と。
グロテスクな目玉芋虫たちは怖気がするような素早い動きで捕虜たちに襲い掛かった。
『な、なんだよこれ!やめろっ、やめろっ』
『ぎゃぁぁぁっ、離れろっ離れろよぉぉっ』
『なんだこれ、取れない、取れないぃぃっ』
『やめてくれぇっ、入ってくるなっ、入ってくるなぁぁぁっ』
『んぐぅぅっ、がぐぐぐぐっ』
『あばばばばばっ』
『ぐぺぺぺぺぺぺっ』
イビルアイたちに寄生されて狂ったように痙攣する捕虜たち。
大人しく言うことを聞いてくれれば船乗りとして高待遇で働かせることも考えたのに。
捕虜たちは初めの頃オーガにビビッてみんな震えながら眠っていたのだけど、オーガが理性的で俺の命令を聞くと分かるとこの態度だ。
征服者なんてろくなものじゃないな。
『よし、全員人間に寄生できたみたいだね』
『『『寄生完了』』』
『じゃあ寄生されてない捕虜を一人ずつ引き連れてついてきて』
『『『了解しました』』』
イビルアイに寄生された人たちは皆一様に生気の無い無表情だが、言葉は明瞭だ。
イビルアイは人間の脳に寄生し、意識を乗っ取るモンスターだ。
倫理を考えなければ寄生された人間の持っていた技能や知識などを利用するには最適なわけだ。
これで2000人の船乗りができた。
船もあることだし、交易でも始めようかな。
朝倉家の本城、一乗谷城の城下町だ。
追撃戦で無事三段崎勘右衛門の首を取ることに成功した俺達。
戦は織田軍の大勝利なのだが、信長はそれだけでは止まらなかった。
朝倉軍を本領である越前まで押し込め、さらに攻め込んだ。
どうやら本格的に滅ぼしてしまうつもりらしい。
「酷いことをする……」
「織田信長は、あの頃と何も変わらんな。ワシの生家を滅ぼしたあの頃から……」
殿は燃え盛る一乗谷城下の様子に、滅ぼされた自分の実家が重なって見えるようだ。
はぁ、乱世はこれだから嫌なんだ。
逃げる人々を追い掛け回して荷物を奪う織田の足軽たち。
この時代では普通のことだ。
乱妨取りといって、敵の治めていた町では正々堂々と略奪が行われる。
足軽たちは命を賭けても雇い主からはそれほど高い報酬を貰うことができない。
最初から略奪で利益を得ることを考えて足軽として戦働きをしているのだ。
それを悪いことだと断じることなどこの時代の誰にもできやしない。
だがやはり、こんなことは人間のやることではないと思ってしまうんだよな。
「善次郎。ワシらはなぜこんなことをせねば生きていけぬのだろうか。田畑を耕すだけでは全員の人間が生きることはできんのだろうか」
「そりゃあ互いに戦っているからでしょう。侍も農民も商人も、皆が皆田畑に専念したらすぐに全員食えるようになりますよ」
「そうか、やはり乱世は嫌じゃの。まったく、ワシらはいったいどこに向かっておるのだろうな……」
「わかりません。でも、この戦の先にきっとありますよ。そんな誰も奪い合わずに生きられる世が」
「そうか。そのような世が来たらいいな」
俺はぎゅっと拳を握り締める。
きっと、そんな世が来るはずなんだ。
織田、豊臣、徳川、そしてその先に。
たとえ戦は終わらずとも、奪わなくても飢えない世は近い。
結局、殿は俺達に乱取りに参加しろとは命令しなかった。
武士は食わねど高楊枝というやつだ。
こういう時のこの言葉は、少しだけ好きだな。
織田軍vs浅井・朝倉の戦は無事に織田の勝利で終わった。
ただ、なぜか殿は配置換えになった。
史実ではこのまま秀吉の与力として領地をもらって活躍していくはずだったのだが、何を思ったのか信長は殿を奇妙丸君の直臣とした。
これは大出世といってもいいのではないだろうか。
領地はもらえなかったがその代わり禄が大幅に上がり、いきなり4000石となった。
やはりコツコツ飴玉を送ってご機嫌をとっておいたのが効いたのだろうか。
あちこちで一向宗の一揆が往生際悪く蜂起したりして織田家の重臣が対処したりしているが、わけがわからないうちにいきなり大出世した殿は岐阜でしばらく待機だそうだ。
俺もしばらくは島に専念できそうでほっとした。
「さて、こいつらを移動させるか」
先日オーガたちの警備を突破した子供が牢屋エリアに入り込むという事件があった。
怖い鬼に見張らせておけば子供たちも入り込まないだろうと高をくくっていた俺は見事にしてやられてしまったわけだ。
正直子供を舐めていた。
オーガが真面目で案外良い奴だと子供たちは見抜いていたのだ。
そして絶対に近づいてはならんと言われれば何がなんでも近づいてやろうと思うわけで。
そんなこんなで今回の事故が起きてしまったわけだ。
幸いにも子供は異国の言葉で罵倒されて大泣きしたくらいで無事だったのだが、これはちょっと危ないんじゃないかと平蔵さんたちを話し合い牢屋エリアを移動させることにした。
新しい牢屋エリアは南極大陸だ。
昨日クソ寒いあの大地に行ってサブコアを埋め込み、ダンジョンの入り口を作ってきたところだ。
あそこならあと数世紀は誰も入り込まないだろうし、万が一捕虜が逃げ出したとしてもどこにも逃げられずに凍えて死ぬだけだ。
島から転移罠を使ったゲートで移動できるようにしてある。
あとは捕虜たちを移動させるだけなのだが……。
俺は思念伝達の魔法を発動し、捕虜たちに話しかける。
『侵略者の諸君、今から君たちを極寒の大地にある流刑地に移送する。君たちが素直に従ってくれるのであれば待遇を改善する用意がある』
『ふざけるなぁ!』
『こんなことをして本国が黙っていないぞ!』
『死ね!極東の蛮族が!!』
たしかに今の時代の日本人は奪って生きる蛮族そのものだけど、自分たちだって変わらないだろうに。
海の向こう側まで奪いに来たような征服者たちが何を言っているのか。
もう少し殊勝な態度であれば、こんな酷いことはしないで済んだのにな。
俺はスマホを操作し、悪魔型のモンスターの中から1種類のモンスターを選択する。
それをとりあえず2000匹ほど生み出す。
『キヒヒッ』
生理的嫌悪感を感じるような笑い声が響き渡り、小さな芋虫のような生き物が大量に生み出された。
ヌメヌメと光る粘液に覆われた真っ赤な芋虫。
その顔の部分には、人間のような大きさの目玉が一つぎょろりと光っていた。
うっすらと金色に光るその瞳は、見ていると気が狂ってしまいそうになる。
このモンスターの名前はイビルアイ。
人に寄生する悪魔型のモンスターだ。
本当はこんなことはしたくないのだけれど、素直に従ってくれないのだから仕方が無い。
俺はすべてのイビルアイに命令する。
寄生しろ、と。
グロテスクな目玉芋虫たちは怖気がするような素早い動きで捕虜たちに襲い掛かった。
『な、なんだよこれ!やめろっ、やめろっ』
『ぎゃぁぁぁっ、離れろっ離れろよぉぉっ』
『なんだこれ、取れない、取れないぃぃっ』
『やめてくれぇっ、入ってくるなっ、入ってくるなぁぁぁっ』
『んぐぅぅっ、がぐぐぐぐっ』
『あばばばばばっ』
『ぐぺぺぺぺぺぺっ』
イビルアイたちに寄生されて狂ったように痙攣する捕虜たち。
大人しく言うことを聞いてくれれば船乗りとして高待遇で働かせることも考えたのに。
捕虜たちは初めの頃オーガにビビッてみんな震えながら眠っていたのだけど、オーガが理性的で俺の命令を聞くと分かるとこの態度だ。
征服者なんてろくなものじゃないな。
『よし、全員人間に寄生できたみたいだね』
『『『寄生完了』』』
『じゃあ寄生されてない捕虜を一人ずつ引き連れてついてきて』
『『『了解しました』』』
イビルアイに寄生された人たちは皆一様に生気の無い無表情だが、言葉は明瞭だ。
イビルアイは人間の脳に寄生し、意識を乗っ取るモンスターだ。
倫理を考えなければ寄生された人間の持っていた技能や知識などを利用するには最適なわけだ。
これで2000人の船乗りができた。
船もあることだし、交易でも始めようかな。
2
お気に入りに追加
3,781
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる