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51.宇宙の果てから槍が降る
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ゆきまるにしがみついて耐えること数分、太平洋を航行中の船を見つける。
「ゆきまる、空で待ってて」
「ワフワフッ」
俺は以前手に入れた魔法、リアリティクラウドを発動する。
モクモクと白い雲のようなものが俺の身体から出てきた。
足場になるような形を想像すると、その通りに雲は集まって固まった。
恐る恐る足を乗せると、フワフワとした感触が足の裏から伝わってきた。
これは使える。
俺はゆきまるの背中から雲に乗り移り、そのまま雲を操作して船の上に向かった。
雲がどのくらいのスピードで飛べるのか分からなかったからゆきまるに乗ってきたけれど、雲に乗ってきてもそれほど違いはなかったかもしれない。
島民を攫ったとみられる南蛮船は、3隻の船からなる船団だった。
俺は一番後ろを航行する船に乗り移ると、気配を消して船を捜索した。
船には島民はいなかった。
だが、どこからか攫われたか売られたかした子供たちが乗っていた。
どうしたものか。
俺は隠密行動を一端やめ、子供たちの前に姿を現す。
俺が船室に入っても子供たちは全く無反応だった。
絶望しているのか、それとも騒いで殴られたことがあるのか。
どちらにしても胸が痛くなるような話だ。
「君たち、家に帰りたいか?」
「お兄さん、私たちの言葉が分かるの?」
「俺は日ノ本の民だよ。さっきの質問なんだが、君たち家に帰りたいか?」
「私は帰りたい」
「私も!」
「僕も!」
「私は……家には帰れない。私を売ったのは家族だから……」
中には家が貧しくて親に売られてここにいる子もいるようだが、おおむね攫われた子のようで帰りたいと主張する。
家に帰りたい子は帰してあげたいが、中には知らずに売られた子や自分の家が日ノ本のどこなのか知らない子もいるだろうし色々大変そうだ。
助けた後のことはそのとき考えればいいか。
とにかくここから助け出すとしよう。
「いいかいみんな。俺はこれからこの船の人をみんな斬る。怖かったら目を瞑っているんだぞ」
「「「わかった」」」
さすが戦国の子だ。
みんなこれから起こることが大体想像できているようで、早くも目を瞑って耳を塞いでいる子もいる。
さっさと斬ってくるとするか。
俺は今度は気配を絶つことなく堂々と船内を歩き回った。
『#$%&!?』
すぐに南蛮人に出会う。
金髪に碧眼の男だった。
前に出会った南蛮人とは別の国から来た人なのかもしれない。
南蛮人といってもヨーロッパあたりから来る渡来人全般のことを指すので国は様々だ。
俺は腰に差してきた小太刀を抜く。
室内での戦闘には長い刀よりも小太刀や短い十手が有効だ。
小太刀といっても長さは様々だが、ガチャから出て持っていた小太刀の中から一番短いのを選んできた。
脇差としてちょうどいいくらいの長さの小太刀だ。
屋内での戦闘には非常に使いやすい。
南蛮人もシャムシールのような曲刀を抜こうとするが、抜ききる前に俺の小太刀がその喉笛に深く突き刺さっていた。
素早く小太刀を引き抜き身をずらす。
返り血は浴びたくないから。
ビチャリと自分の血の海に沈む南蛮人。
返り血は浴びなかったが、足元は血まみれでどこを踏んでもビーチサンダルと足が血まみれになりそうだった。
勘弁してくれ。
小太刀で殺すのはあまり賢くないな。
俺は南蛮人の背中で小太刀の血を拭い、鞘に戻した。
次はもっとうまくやる。
3隻の船は阿鼻叫喚の地獄と化した。
そこら中に体中の関節を外された南蛮人が転がっている。
ほとんどの人は首の骨を折って殺してしまったが、俺は1隻分の船員だけは残すことにした。
それというのも、ちょっと南蛮人は俺たち日本人を舐めていると思ったのだ。
だから俺は船2隻をド派手に沈め、1隻はあえて逃がしてその様子を本国に伝えてもらうことにした。
それでまた来るようならまた同じことをするだけだ。
何度でも。
今この船を3隻とも沈めたところで、島を光学迷彩で覆ったりでもしない限りはいつかどこかの船に見つかってしまう。
だったらせいぜいうちの島にビビッてもらうことにしよう。
「ゆきまる、島に戻ってて」
「ワフワフ」
船に囚われていた人は全員リアリティクラウドの雲に乗せて島に送った。
その間にゆきまるには逃がす南蛮船を引っ張って、沈める2隻から引き離してもらっていたのだ。
神獣のパワーは凄まじく、船に括りつけられたロープを咥えたゆきまるはグングン進みあっという間に船を1キロ以上引き離した。
そのくらい離れてくれれば十分だ。
俺はゆきまるの去った海上でひとり雲の上に立ち、1本の槍を構えた。
ガチャで出てから今まで一度も使うことなく収納の指輪の肥やしとなっていたSランクのアイテム、神槍グングニルだ。
狙った的の周囲半径1キロを消滅させるというその威力ゆえに今まで一度たりとも使おうとは思わなかったけれど、今回はこれ以上ないほどの警告となるだろう。
俺はその白銀の槍を振りかぶり、狙いを船の1隻に定めて槍を投げ放った。
しかし思ったような手ごたえは無く、右手を見ると槍が俺の手から消えていた。
標的にも変化はなくこれはどういうことなのかと思ったそのとき、空から光の柱が降り注いだ。
まるで星が落ちてきたかと思うような神秘的で、そして恐ろしい光景だった。
一瞬遅れて衝撃波と轟音が俺を襲う。
耳を塞いで雲にしがみつくが、海は荒れ狂い俺の身体に海水が降り注ぐ。
息ができなくて雲を上昇させる。
「はぁはぁ、いったいどうなったんだ……」
顔の海水を拭って目を開けば、未だ空からは光の柱が降り注ぎ続けていた。
とんでもないスピードで何かが空から垂直に落ちてきていることだけは分かった。
何かなんて、槍に決まっている。
槍が、降っていた。
宇宙から。
これ、いつまで降るのかな。
すでに海の上には南蛮船らしきものは木片一つとして見当たらなかった。
「ゆきまる、空で待ってて」
「ワフワフッ」
俺は以前手に入れた魔法、リアリティクラウドを発動する。
モクモクと白い雲のようなものが俺の身体から出てきた。
足場になるような形を想像すると、その通りに雲は集まって固まった。
恐る恐る足を乗せると、フワフワとした感触が足の裏から伝わってきた。
これは使える。
俺はゆきまるの背中から雲に乗り移り、そのまま雲を操作して船の上に向かった。
雲がどのくらいのスピードで飛べるのか分からなかったからゆきまるに乗ってきたけれど、雲に乗ってきてもそれほど違いはなかったかもしれない。
島民を攫ったとみられる南蛮船は、3隻の船からなる船団だった。
俺は一番後ろを航行する船に乗り移ると、気配を消して船を捜索した。
船には島民はいなかった。
だが、どこからか攫われたか売られたかした子供たちが乗っていた。
どうしたものか。
俺は隠密行動を一端やめ、子供たちの前に姿を現す。
俺が船室に入っても子供たちは全く無反応だった。
絶望しているのか、それとも騒いで殴られたことがあるのか。
どちらにしても胸が痛くなるような話だ。
「君たち、家に帰りたいか?」
「お兄さん、私たちの言葉が分かるの?」
「俺は日ノ本の民だよ。さっきの質問なんだが、君たち家に帰りたいか?」
「私は帰りたい」
「私も!」
「僕も!」
「私は……家には帰れない。私を売ったのは家族だから……」
中には家が貧しくて親に売られてここにいる子もいるようだが、おおむね攫われた子のようで帰りたいと主張する。
家に帰りたい子は帰してあげたいが、中には知らずに売られた子や自分の家が日ノ本のどこなのか知らない子もいるだろうし色々大変そうだ。
助けた後のことはそのとき考えればいいか。
とにかくここから助け出すとしよう。
「いいかいみんな。俺はこれからこの船の人をみんな斬る。怖かったら目を瞑っているんだぞ」
「「「わかった」」」
さすが戦国の子だ。
みんなこれから起こることが大体想像できているようで、早くも目を瞑って耳を塞いでいる子もいる。
さっさと斬ってくるとするか。
俺は今度は気配を絶つことなく堂々と船内を歩き回った。
『#$%&!?』
すぐに南蛮人に出会う。
金髪に碧眼の男だった。
前に出会った南蛮人とは別の国から来た人なのかもしれない。
南蛮人といってもヨーロッパあたりから来る渡来人全般のことを指すので国は様々だ。
俺は腰に差してきた小太刀を抜く。
室内での戦闘には長い刀よりも小太刀や短い十手が有効だ。
小太刀といっても長さは様々だが、ガチャから出て持っていた小太刀の中から一番短いのを選んできた。
脇差としてちょうどいいくらいの長さの小太刀だ。
屋内での戦闘には非常に使いやすい。
南蛮人もシャムシールのような曲刀を抜こうとするが、抜ききる前に俺の小太刀がその喉笛に深く突き刺さっていた。
素早く小太刀を引き抜き身をずらす。
返り血は浴びたくないから。
ビチャリと自分の血の海に沈む南蛮人。
返り血は浴びなかったが、足元は血まみれでどこを踏んでもビーチサンダルと足が血まみれになりそうだった。
勘弁してくれ。
小太刀で殺すのはあまり賢くないな。
俺は南蛮人の背中で小太刀の血を拭い、鞘に戻した。
次はもっとうまくやる。
3隻の船は阿鼻叫喚の地獄と化した。
そこら中に体中の関節を外された南蛮人が転がっている。
ほとんどの人は首の骨を折って殺してしまったが、俺は1隻分の船員だけは残すことにした。
それというのも、ちょっと南蛮人は俺たち日本人を舐めていると思ったのだ。
だから俺は船2隻をド派手に沈め、1隻はあえて逃がしてその様子を本国に伝えてもらうことにした。
それでまた来るようならまた同じことをするだけだ。
何度でも。
今この船を3隻とも沈めたところで、島を光学迷彩で覆ったりでもしない限りはいつかどこかの船に見つかってしまう。
だったらせいぜいうちの島にビビッてもらうことにしよう。
「ゆきまる、島に戻ってて」
「ワフワフ」
船に囚われていた人は全員リアリティクラウドの雲に乗せて島に送った。
その間にゆきまるには逃がす南蛮船を引っ張って、沈める2隻から引き離してもらっていたのだ。
神獣のパワーは凄まじく、船に括りつけられたロープを咥えたゆきまるはグングン進みあっという間に船を1キロ以上引き離した。
そのくらい離れてくれれば十分だ。
俺はゆきまるの去った海上でひとり雲の上に立ち、1本の槍を構えた。
ガチャで出てから今まで一度も使うことなく収納の指輪の肥やしとなっていたSランクのアイテム、神槍グングニルだ。
狙った的の周囲半径1キロを消滅させるというその威力ゆえに今まで一度たりとも使おうとは思わなかったけれど、今回はこれ以上ないほどの警告となるだろう。
俺はその白銀の槍を振りかぶり、狙いを船の1隻に定めて槍を投げ放った。
しかし思ったような手ごたえは無く、右手を見ると槍が俺の手から消えていた。
標的にも変化はなくこれはどういうことなのかと思ったそのとき、空から光の柱が降り注いだ。
まるで星が落ちてきたかと思うような神秘的で、そして恐ろしい光景だった。
一瞬遅れて衝撃波と轟音が俺を襲う。
耳を塞いで雲にしがみつくが、海は荒れ狂い俺の身体に海水が降り注ぐ。
息ができなくて雲を上昇させる。
「はぁはぁ、いったいどうなったんだ……」
顔の海水を拭って目を開けば、未だ空からは光の柱が降り注ぎ続けていた。
とんでもないスピードで何かが空から垂直に落ちてきていることだけは分かった。
何かなんて、槍に決まっている。
槍が、降っていた。
宇宙から。
これ、いつまで降るのかな。
すでに海の上には南蛮船らしきものは木片一つとして見当たらなかった。
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