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50.虎御前山城
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さて、敵の駆逐が終われば築城だ。
戦闘から土木工事まですべて同じ兵がやらなきゃいけないのだから、戦国時代は大変だ。
兵科を分けようよ。
まあ戦場で首を追いかけ回しているよりは気が楽ではあるけどね。
俺達が砦を築こうとしているのは虎御前山、もしくは長尾山と呼ばれている山の頂上付近だ。
虎姫という姫の伝説が残る山だ。
この虎御前山だが、浅井長政の居城である小谷城からはわずか500メートルくらいしか距離が離れていない。
こんな近くに堂々と砦を築かれるなんて、今頃浅井家では大騒ぎになっているだろうな。
この砦が無事完成してしまえば、信長が小谷城に王手をかけた状態だ。
朝倉もたぶんそこまでいってしまった浅井は助けないだろう。
下手をすれば自分たちも討たれる可能性があるのだから。
史実では浅井は朝倉に嘘の報告をして助けを求めるはずだ。
一揆が暴れているんでちょっと助けて下さいくらいの軽い感じで。
だけど朝倉が助けに来てみれば、そこにいたのは一揆なんかじゃなくて織田軍5万。
朝倉は1万5千を率いて来たのだけれど、さすがに敵わないと織田軍と戦わずに帰ってしまうのだ。
このまま行けば同じような感じになりそうだ。
織田と朝倉が戦うか戦わないかは分からないけど。
今は8月だが、これから稲の収穫などの時期になってくれば戦は一時中断することとなるだろう。
浅井・朝倉との決着は来年まで持ち越しって感じだろうね。
多分織田軍5万のうちの半分以上が農業従事者だ。
彼らは戦ばかりにかまけているわけにもいかないだろう。
俺も台風シーズンだから島が心配だし、そろそろ帰らせてもらいたい。
殿は砦の守りを任されている秀吉の与力だから多分来年まで砦に滞在すると思うけど、信長は一度岐阜に帰るみたいだし俺も砦が出来上がったら帰らせてもらおうかな。
はぁ、基礎工事なんてアースウォールを使ったらすぐなのに。
軽く溜息を吐き出し、俺はせっせと地面を均し続けた。
ついに虎御前山城が完成した。
城といっても野戦陣地の類なのでそれほど快適な居住性能は無いが、守りは固い。
天然の要害になっていた場所は生かし、それ以外にも手を加えて戦をしやすいように作られた砦だ。
5キロ以上ある険しい道を整備して、その道に長い塀と堀を作れと命令された時は危うく信長を暗殺しかけたけれどなんとか完成してくれてよかった。
俺が勇者になるところだったよ。
勇者は山賊面に討たれるって決まってるからね。
まだ討たれたくはない。
「そんじゃ俺は一度岐阜に帰ります。また来年。正月には酒と餅くらいは持って来ますよ」
「おお、ありがたい。家の皆のことを頼むぞ」
「分かりました」
殿やみんなと軽く挨拶を交わして岐阜へ帰る足軽の集団に紛れる。
真っ直ぐ小谷城の前を横切って帰るわけにもいかないから、足軽たちは自分たちで作った道を通って一度横山城まで行ってから岐阜に向かうというルートをとるようだ。
俺も途中までは同じルートで歩き、人目が無くなったあたりでテレポートするとしよう。
1時間ほど歩いたあたりで足軽の集団からはぐれて山の中に入る。
誰も付いてきていないことを確認し、テレポートしようとしたところでスマホがヴィーヴィーと震えた。
スマホを見るとダンジョンからの緊急通信だった。
島にあるダンジョンコアと俺のスマホは通話が可能だ。
しかしこんな時代に電話なんてしていてはかなり不審に思われてしまうので、緊急時以外はかけてこないように島民たちには言い聞かせてある。
今まで何度かかかってきたことはあったが、すべて島の子供のいたずらだった。
今回もいたずらであることを願いながら俺は通話ボタンをタップした。
「どうしたの?」
『大将、大変です!!南蛮船が島に!!すぐに来てください!!』
「すぐに行く」
俺はすぐにダンジョンコアの前までテレポートした。
「被害は!?」
「怪我人数名、そちらはもう大将の薬で治療済みです。ですが3人攫われました。奴ら攫った島民を盾にして逃げたのでこちらも迂闊に発砲できませんでした」
平蔵さんと辰五郎さん、喜三郎さんの3人には後装式シングルアクション拳銃を渡してある。
しかし今回のように人質を取られた場合はどうしようもないだろう。
「奴ら最初は友好的な雰囲気だったんです。ニコニコしてたどたどしい言葉で商品を売りたいなどと言って。大将から南蛮船の危険性を教えられていながら、俺は……」
「平蔵さん、反省会は後にしておこう。とりあえず助けに行ってくるよ。南蛮船が去っていった方向を教えて」
「へい……」
平蔵さんの話では攫われたのは3人で、そのうち2人は子供なのだという。
今頃怖い思いをしているだろう。
早く助けに行ってあげなければ。
俺はテレポートで一度岐阜に戻る。
雪さんが心配そうにしていたが、一言二言の説明だけで今は時間が無いことを伝える。
足にじゃれ付いてくるゆきまるを抱え、また島にテレポートした。
魔力が増えた最近ではもうこのくらいの距離のテレポートなら1度2度はものの数ではない。
すぐにゆきまるに酒を与え、巨大化してもらう。
ゆきまるは散歩だと思って喜んでいるが散歩じゃないんだ、ごめんな。
ゆきまるに船を追って欲しいことを伝える。
神獣であるゆきまるは人の言葉を理解できる。
ゆきまるは必ず島民を助けるとばかりに大空に駆け出した。
背中に俺が乗っているのを思い出して欲しい。
俺は全力で走ったゆきまるの背中に、ガタガタ震えながら必死でしがみついた。
腕がもげそうだ。
戦闘から土木工事まですべて同じ兵がやらなきゃいけないのだから、戦国時代は大変だ。
兵科を分けようよ。
まあ戦場で首を追いかけ回しているよりは気が楽ではあるけどね。
俺達が砦を築こうとしているのは虎御前山、もしくは長尾山と呼ばれている山の頂上付近だ。
虎姫という姫の伝説が残る山だ。
この虎御前山だが、浅井長政の居城である小谷城からはわずか500メートルくらいしか距離が離れていない。
こんな近くに堂々と砦を築かれるなんて、今頃浅井家では大騒ぎになっているだろうな。
この砦が無事完成してしまえば、信長が小谷城に王手をかけた状態だ。
朝倉もたぶんそこまでいってしまった浅井は助けないだろう。
下手をすれば自分たちも討たれる可能性があるのだから。
史実では浅井は朝倉に嘘の報告をして助けを求めるはずだ。
一揆が暴れているんでちょっと助けて下さいくらいの軽い感じで。
だけど朝倉が助けに来てみれば、そこにいたのは一揆なんかじゃなくて織田軍5万。
朝倉は1万5千を率いて来たのだけれど、さすがに敵わないと織田軍と戦わずに帰ってしまうのだ。
このまま行けば同じような感じになりそうだ。
織田と朝倉が戦うか戦わないかは分からないけど。
今は8月だが、これから稲の収穫などの時期になってくれば戦は一時中断することとなるだろう。
浅井・朝倉との決着は来年まで持ち越しって感じだろうね。
多分織田軍5万のうちの半分以上が農業従事者だ。
彼らは戦ばかりにかまけているわけにもいかないだろう。
俺も台風シーズンだから島が心配だし、そろそろ帰らせてもらいたい。
殿は砦の守りを任されている秀吉の与力だから多分来年まで砦に滞在すると思うけど、信長は一度岐阜に帰るみたいだし俺も砦が出来上がったら帰らせてもらおうかな。
はぁ、基礎工事なんてアースウォールを使ったらすぐなのに。
軽く溜息を吐き出し、俺はせっせと地面を均し続けた。
ついに虎御前山城が完成した。
城といっても野戦陣地の類なのでそれほど快適な居住性能は無いが、守りは固い。
天然の要害になっていた場所は生かし、それ以外にも手を加えて戦をしやすいように作られた砦だ。
5キロ以上ある険しい道を整備して、その道に長い塀と堀を作れと命令された時は危うく信長を暗殺しかけたけれどなんとか完成してくれてよかった。
俺が勇者になるところだったよ。
勇者は山賊面に討たれるって決まってるからね。
まだ討たれたくはない。
「そんじゃ俺は一度岐阜に帰ります。また来年。正月には酒と餅くらいは持って来ますよ」
「おお、ありがたい。家の皆のことを頼むぞ」
「分かりました」
殿やみんなと軽く挨拶を交わして岐阜へ帰る足軽の集団に紛れる。
真っ直ぐ小谷城の前を横切って帰るわけにもいかないから、足軽たちは自分たちで作った道を通って一度横山城まで行ってから岐阜に向かうというルートをとるようだ。
俺も途中までは同じルートで歩き、人目が無くなったあたりでテレポートするとしよう。
1時間ほど歩いたあたりで足軽の集団からはぐれて山の中に入る。
誰も付いてきていないことを確認し、テレポートしようとしたところでスマホがヴィーヴィーと震えた。
スマホを見るとダンジョンからの緊急通信だった。
島にあるダンジョンコアと俺のスマホは通話が可能だ。
しかしこんな時代に電話なんてしていてはかなり不審に思われてしまうので、緊急時以外はかけてこないように島民たちには言い聞かせてある。
今まで何度かかかってきたことはあったが、すべて島の子供のいたずらだった。
今回もいたずらであることを願いながら俺は通話ボタンをタップした。
「どうしたの?」
『大将、大変です!!南蛮船が島に!!すぐに来てください!!』
「すぐに行く」
俺はすぐにダンジョンコアの前までテレポートした。
「被害は!?」
「怪我人数名、そちらはもう大将の薬で治療済みです。ですが3人攫われました。奴ら攫った島民を盾にして逃げたのでこちらも迂闊に発砲できませんでした」
平蔵さんと辰五郎さん、喜三郎さんの3人には後装式シングルアクション拳銃を渡してある。
しかし今回のように人質を取られた場合はどうしようもないだろう。
「奴ら最初は友好的な雰囲気だったんです。ニコニコしてたどたどしい言葉で商品を売りたいなどと言って。大将から南蛮船の危険性を教えられていながら、俺は……」
「平蔵さん、反省会は後にしておこう。とりあえず助けに行ってくるよ。南蛮船が去っていった方向を教えて」
「へい……」
平蔵さんの話では攫われたのは3人で、そのうち2人は子供なのだという。
今頃怖い思いをしているだろう。
早く助けに行ってあげなければ。
俺はテレポートで一度岐阜に戻る。
雪さんが心配そうにしていたが、一言二言の説明だけで今は時間が無いことを伝える。
足にじゃれ付いてくるゆきまるを抱え、また島にテレポートした。
魔力が増えた最近ではもうこのくらいの距離のテレポートなら1度2度はものの数ではない。
すぐにゆきまるに酒を与え、巨大化してもらう。
ゆきまるは散歩だと思って喜んでいるが散歩じゃないんだ、ごめんな。
ゆきまるに船を追って欲しいことを伝える。
神獣であるゆきまるは人の言葉を理解できる。
ゆきまるは必ず島民を助けるとばかりに大空に駆け出した。
背中に俺が乗っているのを思い出して欲しい。
俺は全力で走ったゆきまるの背中に、ガタガタ震えながら必死でしがみついた。
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