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45.土佐大地震
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1572年1月下旬。
俺は『漫画で分かる日本の歴史』を読んで、この頃に何が起こるのか知っていた。
地震だ。
それも土佐、将来の殿の領地周辺で大きな地震が起きる。
だが土佐が大変なことになるのは避けようが無い。
これから地震が来るので逃げてくださいと言っても信じてもらえないだろうし、起きた後にあいつが妖術で起こしたとか言われても困る。
だから土佐は申し訳ないが後で薬師として怪我人の治療や炊き出しに行くくらいに留める。
問題は沖ノ鳥島だ。
震源地が土佐沖だった場合、地震の大きさによっては沖ノ鳥島に津波が来る可能性がある。
一応この日のために準備はしてきたつもりだ。
ダンジョンポイントを使わずに貯めておき、島の北側にはアースウォールを使って大きな壁を築いた。
一度の津波で壊れてしまうかもしれないけれど、無いよりはマシなはずだ。
まだ津波が起きるとは決まっていないが、できる限りの対策はしておこう。
もし海岸線の壁が壊され、津波が島を襲ったときのために避難所を造る。
これは貯めたダンジョンポイントでできるはずだ。
今日まで貯めたダンジョンポイントは1000ポイントを越えている。
小部屋一つ作るのに100ポイントくらいだから、島の全員が入れる部屋と生活設備を造るくらいはできると思う。
俺はスマホを操作し、ダンジョンの増設をタップ。
部屋タイプや設備によってもポイントが変わってくるが、流水無効は必要だ。
流水無効とはダンジョンに水を流し込んで中のモンスターを皆殺しにする行為を禁止する部屋だ。
そんな項目があるとは、ダンジョン経営というのも鬼畜攻略者との戦いなんだなとしみじみ思ってしまった。
しかしそんな効率厨の鬼畜野郎が過去にいたおかげで、こんな津波対策に役立つオプションが部屋に付けられるのだから少しは感謝しておこうかな。
ありがとう鬼畜野郎。
『部屋の増設を実行します YES/NO』
もちろんYES。
光の粒子が広がっていき、大きな石造りの建物が完成する。
ダンジョンは破壊不能という特性がある。
これで地震でも壊れず津波も寄せ付けない無敵の避難所が完成した。
キッチンとかトイレとかは最低限のものにした。
最新式のシステムキッチンとか温水洗浄便座付き洋式便所とか大浴場とかはDPが高くて付けられなかったから、生活設備は井戸と竈、ぼっとん便所、ドラム缶風呂だ。
この時代よりもマシだからみんなは喜んでくれると思う。
俺は微妙だけど。
温水洗浄便座付き洋式便所だけでも付けたかったな。
しかしこの人工島に井戸って、凄いね。
ダンジョンっていうのは一体どうなっているのか。
もっとポイントが貯まったら建物の中で農業ができるようになったりするんだろうか。
一応増設項目に畑とか田んぼとかは無いんだけど、草原フィールドとかはあるから耕せば畑とか田んぼになるんじゃないかな。
夢が広がるな。
地震が来た。
土佐から直線距離にして1400キロ以上も離れた沖ノ鳥島まで軽く揺れるくらいの大きな地震だ。
案の定数時間後に島に津波が到来。
「すげぇ、本当に海嘯だ」
「お、善次郎様のお造りになられた壁に阻まれて消えたな」
「ほんに大天狗様のお弟子様のお力は凄きものじゃ」
ダンジョンの屋上に上がって津波が壁にぶち当たる様を恐々として眺める。
津波は幸いにも4、5メートルほどだったが、その高さでも凄い迫力だった。
津波には第一波の次に第二波が有るらしいし、みんなにはまだ油断しないように言っておかないとな。
「それにしても、この建物はなんと立派なことか。まるで小さな城ですぜ」
「天狗の妙技だよ」
「天狗ねぇ。大将、俺たちゃ大将が物の怪だろうが鬼だろうが、最後までついていきやすぜ」
平蔵さんはそれだけ言って家族の元へ戻った。
まったく、天狗の弟子なんて嘘だってとっくにばれていたわけだ。
それでも彼らはわかっていてついてきてくれていた。
少しだけ胸が熱くなった。
戦国武将っていうのはこんな気分なのかな。
俺はまだまだ武士というには半端者だけれど、少しだけ頑張ってみようと思った。
もちろん頑張るといっても島の開拓でだ。
武士として頑張るって言ったって殿はまだ来年まで戦に出る予定も無いし。
まずはダンジョンの領域を広げるところから始めよう。
ダンジョンは何もしていなくても微々たる量のDPを蓄え続ける。
それは地脈のエネルギーを吸い取っているかららしい。
この吸い取れるエネルギーの量はダンジョンの領域の広さに比例する。
広いダンジョンになればそれだけ何もしなくても稼げるDPが増えるということだ。
だが領域を広げるにもDPがかかってしまう。
ここは先行投資として割り切るしかあるまい。
ダンジョン領域内は建物が破壊不能になったり、どこでもダンジョンオブジェクトが増設できたりと領域が広がれば島にとっては良いことだらけなのだ。
やってマイナスになることは無い。
目指すは夏までに真水を確保できる井戸を島内にあと一つ二つは増設すること。
島の気候は熱帯だ。
皆暑いので海で涼を取るが、塩水に浸かった後くらいは真水を浴びてさっぱりしたいだろう。
井戸水は夏でも冷たいのでスイカなんかも冷やしたりできるはずだ。
そろそろ本格的な農業も始めたいから農業用水も欲しい。
しかしDPは限られているのだから、計画的に使用していかないとすぐに破綻してしまう。
ここは雪さんの知恵も借りて、島内ダンジョン化計画を練っていかなければ。
俺は『漫画で分かる日本の歴史』を読んで、この頃に何が起こるのか知っていた。
地震だ。
それも土佐、将来の殿の領地周辺で大きな地震が起きる。
だが土佐が大変なことになるのは避けようが無い。
これから地震が来るので逃げてくださいと言っても信じてもらえないだろうし、起きた後にあいつが妖術で起こしたとか言われても困る。
だから土佐は申し訳ないが後で薬師として怪我人の治療や炊き出しに行くくらいに留める。
問題は沖ノ鳥島だ。
震源地が土佐沖だった場合、地震の大きさによっては沖ノ鳥島に津波が来る可能性がある。
一応この日のために準備はしてきたつもりだ。
ダンジョンポイントを使わずに貯めておき、島の北側にはアースウォールを使って大きな壁を築いた。
一度の津波で壊れてしまうかもしれないけれど、無いよりはマシなはずだ。
まだ津波が起きるとは決まっていないが、できる限りの対策はしておこう。
もし海岸線の壁が壊され、津波が島を襲ったときのために避難所を造る。
これは貯めたダンジョンポイントでできるはずだ。
今日まで貯めたダンジョンポイントは1000ポイントを越えている。
小部屋一つ作るのに100ポイントくらいだから、島の全員が入れる部屋と生活設備を造るくらいはできると思う。
俺はスマホを操作し、ダンジョンの増設をタップ。
部屋タイプや設備によってもポイントが変わってくるが、流水無効は必要だ。
流水無効とはダンジョンに水を流し込んで中のモンスターを皆殺しにする行為を禁止する部屋だ。
そんな項目があるとは、ダンジョン経営というのも鬼畜攻略者との戦いなんだなとしみじみ思ってしまった。
しかしそんな効率厨の鬼畜野郎が過去にいたおかげで、こんな津波対策に役立つオプションが部屋に付けられるのだから少しは感謝しておこうかな。
ありがとう鬼畜野郎。
『部屋の増設を実行します YES/NO』
もちろんYES。
光の粒子が広がっていき、大きな石造りの建物が完成する。
ダンジョンは破壊不能という特性がある。
これで地震でも壊れず津波も寄せ付けない無敵の避難所が完成した。
キッチンとかトイレとかは最低限のものにした。
最新式のシステムキッチンとか温水洗浄便座付き洋式便所とか大浴場とかはDPが高くて付けられなかったから、生活設備は井戸と竈、ぼっとん便所、ドラム缶風呂だ。
この時代よりもマシだからみんなは喜んでくれると思う。
俺は微妙だけど。
温水洗浄便座付き洋式便所だけでも付けたかったな。
しかしこの人工島に井戸って、凄いね。
ダンジョンっていうのは一体どうなっているのか。
もっとポイントが貯まったら建物の中で農業ができるようになったりするんだろうか。
一応増設項目に畑とか田んぼとかは無いんだけど、草原フィールドとかはあるから耕せば畑とか田んぼになるんじゃないかな。
夢が広がるな。
地震が来た。
土佐から直線距離にして1400キロ以上も離れた沖ノ鳥島まで軽く揺れるくらいの大きな地震だ。
案の定数時間後に島に津波が到来。
「すげぇ、本当に海嘯だ」
「お、善次郎様のお造りになられた壁に阻まれて消えたな」
「ほんに大天狗様のお弟子様のお力は凄きものじゃ」
ダンジョンの屋上に上がって津波が壁にぶち当たる様を恐々として眺める。
津波は幸いにも4、5メートルほどだったが、その高さでも凄い迫力だった。
津波には第一波の次に第二波が有るらしいし、みんなにはまだ油断しないように言っておかないとな。
「それにしても、この建物はなんと立派なことか。まるで小さな城ですぜ」
「天狗の妙技だよ」
「天狗ねぇ。大将、俺たちゃ大将が物の怪だろうが鬼だろうが、最後までついていきやすぜ」
平蔵さんはそれだけ言って家族の元へ戻った。
まったく、天狗の弟子なんて嘘だってとっくにばれていたわけだ。
それでも彼らはわかっていてついてきてくれていた。
少しだけ胸が熱くなった。
戦国武将っていうのはこんな気分なのかな。
俺はまだまだ武士というには半端者だけれど、少しだけ頑張ってみようと思った。
もちろん頑張るといっても島の開拓でだ。
武士として頑張るって言ったって殿はまだ来年まで戦に出る予定も無いし。
まずはダンジョンの領域を広げるところから始めよう。
ダンジョンは何もしていなくても微々たる量のDPを蓄え続ける。
それは地脈のエネルギーを吸い取っているかららしい。
この吸い取れるエネルギーの量はダンジョンの領域の広さに比例する。
広いダンジョンになればそれだけ何もしなくても稼げるDPが増えるということだ。
だが領域を広げるにもDPがかかってしまう。
ここは先行投資として割り切るしかあるまい。
ダンジョン領域内は建物が破壊不能になったり、どこでもダンジョンオブジェクトが増設できたりと領域が広がれば島にとっては良いことだらけなのだ。
やってマイナスになることは無い。
目指すは夏までに真水を確保できる井戸を島内にあと一つ二つは増設すること。
島の気候は熱帯だ。
皆暑いので海で涼を取るが、塩水に浸かった後くらいは真水を浴びてさっぱりしたいだろう。
井戸水は夏でも冷たいのでスイカなんかも冷やしたりできるはずだ。
そろそろ本格的な農業も始めたいから農業用水も欲しい。
しかしDPは限られているのだから、計画的に使用していかないとすぐに破綻してしまう。
ここは雪さんの知恵も借りて、島内ダンジョン化計画を練っていかなければ。
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