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おっさんずイフ
30.宝箱の中身
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「これを、こうして、うわっ」
不器用な指先をプルプルさせながら必死に罠を解除する俺だったが、少しワイヤーに指先が触れた拍子に宝箱から矢が飛んでくる。
間一髪で避けることに成功したが、これが矢ではなくて毒ガスとかだったら避けようがなかったな。
「シゲちゃん、大丈夫?この矢、毒が塗られていたみたいだけどどこかにかすってない?」
「どこも痛くないし大丈夫。次こそ成功してみせるよ」
「無理そうなら言ってね。焼いちゃうから。神器だけ残れば黒字よ」
それはさすがにもったいない。
今矢が飛んできた宝箱は開けるとキラキラと光る金銀財宝がざっくざっくと出てきたのだ。
これがすべて溶けて一塊になってしまうのは忍びない。
「こんな金銀財宝なんてあたしレベルの冒険者になればそこまで価値がないのよね。シゲちゃんも冒険者登録すればこんなお宝はくだらないと思うくらい稼げるようになるわ」
冒険者っていうのはずいぶんと儲かるものなんだね。
まあ普通の冒険者はそこまで儲からないんだろうけど。
明らかにグウェンは特別な冒険者だろう。
冒険者にはランクというものがあるらしいけど、何ランクなんだろうか。
今度聞いてみよう。
「よし、この宝箱はうまくいった」
「上手ね」
先ほどは間違えて罠を作動させてしまったが、今度はうまい具合に罠を作動させないようにからくりをいじることに成功した。
俺は少しコツをつかみ、残る1つの宝箱はより素早く罠を解除することに成功した。
宝箱を開けるとキラキラ光る金銀財宝が目を焼く。
「まあまあの稼ぎになりそうね。神器もいくつかあるわね。ひぃふぅみぃ、3つ。シゲちゃんは一つ手に入れているからあたしが2個のシゲちゃん1個でいいかしら。財宝も折半でいいわよね」
「俺はほとんど何もしていないけど、いいの?」
「ボスは一人で倒したじゃないの。罠も解除してくれたし。なんなら財宝は全部あげちゃってもいいくらいよ。こういうのはきっちりやっておかないと揉める原因になるからきちっと折半するけどね」
お金のことはきっちりしておかないといけないというのは同意見だ。
だけど俺はグウェンに教えを請う立場だから、なんだか気が引けてしまう。
「あたしはガルーダの討伐を成功させればギルドから莫大な成功報酬をもらえるわ。でもシゲちゃんはギルドに所属していないから正式な報酬はもらえないでしょ?シゲちゃんにはあたしの討伐報酬を折半してあげる予定だったんだけど、気が引けるならそっちのほうを辞退してくれればいいのよ。だから今はもらっておいて」
そういうことなら、ガルーダのほうは辞退して今はもらっておこうかな。
お金はいくらあっても邪魔にはならないしね。
もともとガルーダの討伐はグウェンから色々なことを教わることと引き換えに受けたことだ。
そっちの報酬までもらうのはちょっと違うと思うしね。
「わかった。ではそのように。それで、神器ってどんなの?」
「どれもあまり戦闘向きじゃないけど、結構いいものよ」
グウェンは虫眼鏡のようなもので3つの神器を眺めている。
鑑定アイテムのようなものだろうか。
神器を見ては紙に何か書き綴っている。
「できたわ。こんな感じよ」
名称:おかんのやかん
効果:100度のお湯が無限に出る。ちょっとだけ懐かしい匂いがして涙が出そうになる。
名称:薬王の育毛剤
効果:どれほど絶望的な毛根も再生する。
名称:影泳ぎの腕輪
効果:影の世界に入り込み、自在に泳ぐことができる。
グウェンが書き出したのはやはり神器の名前と効果だった。
どれも面白そうな神器だな。
最近涙腺がゆるくなってきている気がするから、おかんのやかんのお湯でお茶とか淹れたら泣いちゃいそうだな。
薬王の育毛剤は少し神酒と被っているかな。
少し細くなっていた俺の生え際の毛も最近ではしっかりとしたものに生まれ変わっているし、俺には必要ないな。
やっぱり一番気になるのは影泳ぎの腕輪かな。
影の世界を泳ぐということがどういうことなのかはよくわからないけど、影に潜るとかかっこよすぎる。
中学二年生の気持ちを忘れず大切にとってあるおっさんにはドストライクだ。
「迷っちゃうわよね。とりあえずあたしが気になったのはおかんのやかんかしらね。副次効果はともかく、お湯が出るって冒険者にとってはすごく便利よね」
確かに100度のお湯が無限に出るというのは考えてみたらすごいことなのかもしれない。
やかんから温泉が湧いているようなものだ。
お風呂のお湯としても使えるし、この世界にはないかもしれないけれどインスタント食品を温めるにも便利だ。
「俺はボスの神器をもらったから、グウェンが先に選んでいいよ」
「そう?じゃあやかんもらうわね。次はシゲちゃん選んでいいわよ。あたしはどっちでもいいから」
やはりグウェンはやかんか。
なら俺は影泳ぎの腕輪をもらってしまおうかな。
というか俺が選ぶならほぼ一択だな。
「影泳ぎの腕輪にするよ」
「わかったわ。じゃああたし育毛剤ね。あたしはまだふっさふさだし、実家のパパにでもあげようかしら。貴族の世界ってハゲ多いのよね。駆け引きに使えそうな神器だし、あたしも将来ハゲるかもしれないからそのときはお世話になりたいしね」
確かにハゲが確実に治る薬があったらあちらの世界ではものすごい金額に設定しても売れそうだ。
どこの世界でも毛根は平等に死滅する。
貸し借りに重きを置く貴族の世界で、その蘇生薬は取引材料たりえるものかもしれない。
「さて、ここにもう用はないわ。行きましょう」
「次はガルーダか」
ガルーダを引きずりおろす作戦を考えなければ。
不器用な指先をプルプルさせながら必死に罠を解除する俺だったが、少しワイヤーに指先が触れた拍子に宝箱から矢が飛んでくる。
間一髪で避けることに成功したが、これが矢ではなくて毒ガスとかだったら避けようがなかったな。
「シゲちゃん、大丈夫?この矢、毒が塗られていたみたいだけどどこかにかすってない?」
「どこも痛くないし大丈夫。次こそ成功してみせるよ」
「無理そうなら言ってね。焼いちゃうから。神器だけ残れば黒字よ」
それはさすがにもったいない。
今矢が飛んできた宝箱は開けるとキラキラと光る金銀財宝がざっくざっくと出てきたのだ。
これがすべて溶けて一塊になってしまうのは忍びない。
「こんな金銀財宝なんてあたしレベルの冒険者になればそこまで価値がないのよね。シゲちゃんも冒険者登録すればこんなお宝はくだらないと思うくらい稼げるようになるわ」
冒険者っていうのはずいぶんと儲かるものなんだね。
まあ普通の冒険者はそこまで儲からないんだろうけど。
明らかにグウェンは特別な冒険者だろう。
冒険者にはランクというものがあるらしいけど、何ランクなんだろうか。
今度聞いてみよう。
「よし、この宝箱はうまくいった」
「上手ね」
先ほどは間違えて罠を作動させてしまったが、今度はうまい具合に罠を作動させないようにからくりをいじることに成功した。
俺は少しコツをつかみ、残る1つの宝箱はより素早く罠を解除することに成功した。
宝箱を開けるとキラキラ光る金銀財宝が目を焼く。
「まあまあの稼ぎになりそうね。神器もいくつかあるわね。ひぃふぅみぃ、3つ。シゲちゃんは一つ手に入れているからあたしが2個のシゲちゃん1個でいいかしら。財宝も折半でいいわよね」
「俺はほとんど何もしていないけど、いいの?」
「ボスは一人で倒したじゃないの。罠も解除してくれたし。なんなら財宝は全部あげちゃってもいいくらいよ。こういうのはきっちりやっておかないと揉める原因になるからきちっと折半するけどね」
お金のことはきっちりしておかないといけないというのは同意見だ。
だけど俺はグウェンに教えを請う立場だから、なんだか気が引けてしまう。
「あたしはガルーダの討伐を成功させればギルドから莫大な成功報酬をもらえるわ。でもシゲちゃんはギルドに所属していないから正式な報酬はもらえないでしょ?シゲちゃんにはあたしの討伐報酬を折半してあげる予定だったんだけど、気が引けるならそっちのほうを辞退してくれればいいのよ。だから今はもらっておいて」
そういうことなら、ガルーダのほうは辞退して今はもらっておこうかな。
お金はいくらあっても邪魔にはならないしね。
もともとガルーダの討伐はグウェンから色々なことを教わることと引き換えに受けたことだ。
そっちの報酬までもらうのはちょっと違うと思うしね。
「わかった。ではそのように。それで、神器ってどんなの?」
「どれもあまり戦闘向きじゃないけど、結構いいものよ」
グウェンは虫眼鏡のようなもので3つの神器を眺めている。
鑑定アイテムのようなものだろうか。
神器を見ては紙に何か書き綴っている。
「できたわ。こんな感じよ」
名称:おかんのやかん
効果:100度のお湯が無限に出る。ちょっとだけ懐かしい匂いがして涙が出そうになる。
名称:薬王の育毛剤
効果:どれほど絶望的な毛根も再生する。
名称:影泳ぎの腕輪
効果:影の世界に入り込み、自在に泳ぐことができる。
グウェンが書き出したのはやはり神器の名前と効果だった。
どれも面白そうな神器だな。
最近涙腺がゆるくなってきている気がするから、おかんのやかんのお湯でお茶とか淹れたら泣いちゃいそうだな。
薬王の育毛剤は少し神酒と被っているかな。
少し細くなっていた俺の生え際の毛も最近ではしっかりとしたものに生まれ変わっているし、俺には必要ないな。
やっぱり一番気になるのは影泳ぎの腕輪かな。
影の世界を泳ぐということがどういうことなのかはよくわからないけど、影に潜るとかかっこよすぎる。
中学二年生の気持ちを忘れず大切にとってあるおっさんにはドストライクだ。
「迷っちゃうわよね。とりあえずあたしが気になったのはおかんのやかんかしらね。副次効果はともかく、お湯が出るって冒険者にとってはすごく便利よね」
確かに100度のお湯が無限に出るというのは考えてみたらすごいことなのかもしれない。
やかんから温泉が湧いているようなものだ。
お風呂のお湯としても使えるし、この世界にはないかもしれないけれどインスタント食品を温めるにも便利だ。
「俺はボスの神器をもらったから、グウェンが先に選んでいいよ」
「そう?じゃあやかんもらうわね。次はシゲちゃん選んでいいわよ。あたしはどっちでもいいから」
やはりグウェンはやかんか。
なら俺は影泳ぎの腕輪をもらってしまおうかな。
というか俺が選ぶならほぼ一択だな。
「影泳ぎの腕輪にするよ」
「わかったわ。じゃああたし育毛剤ね。あたしはまだふっさふさだし、実家のパパにでもあげようかしら。貴族の世界ってハゲ多いのよね。駆け引きに使えそうな神器だし、あたしも将来ハゲるかもしれないからそのときはお世話になりたいしね」
確かにハゲが確実に治る薬があったらあちらの世界ではものすごい金額に設定しても売れそうだ。
どこの世界でも毛根は平等に死滅する。
貸し借りに重きを置く貴族の世界で、その蘇生薬は取引材料たりえるものかもしれない。
「さて、ここにもう用はないわ。行きましょう」
「次はガルーダか」
ガルーダを引きずりおろす作戦を考えなければ。
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