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おっさんずイフ
11.神樹のチート性
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神樹の実を食べて火球という初級魔法が使えるようになった。
火球の魔法はタバコの火をつけるときなどに重宝している。
魔法が使えるようになるといってもイメージするだけで使えたり、呪文を唱えたりするわけではない。
この世界の魔法は魔力という生き物の体内に宿るエネルギーを使って空中に魔法陣を描くことによって発動する。
神樹の実を食べるとその魔法に対する知識と魔法陣が頭の中に浮かぶようになる。
つまり魔法が使えるようになるといっても発動は自分で頑張ってくださいということなのだ。
まあ頑張ったよ。
おっさんなりにラノベの知識などを総動員して魔力というものを身体からひねり出すことには成功した。
神巻きタバコはどうやら魔法関係の能力もかなり増幅してくれているようで、俺には身体からフワフワ漂う魔力をしっかりと見ることができたし操るのは簡単だった。
頭に浮かんだ通りの魔法陣を空中に描いてみれば火の球が出た。
火の球の大きさや火の温度は調整できるし、真っすぐ飛ばすだけではなくある程度自由に軌道を操ったりもできる。
人間という生き物の文明の根幹を成す火という力を手に入れておっさんはアウステラロピテクスから北京原人に進化した気分だ。
そんなわけでおっさんが進化してから今日で2週間ちょっと。
トマトやジャガイモが順調に育ち最初の収穫を迎えた頃、また一つ神樹の樹に実が成った。
今度は大きめのブルーベリーのような黒い木の実だ。
まさか前回と違う木の実が成るとは思わなかった。
まあ神器だから驚いても仕方がないだろう。
もしかしたらこれからずっと毎回違う木の実が成るのかもしれない。
そしてその実を食べるとなにがしかの魔法が使えるようになる。
神樹という神器はおそらくそんな神器なのだろう。
木の実が成る周期は成長を促進する神酒を使って2週間に1回ほど。
どんぐりをそのまま食べたほうがよかったのか、それとも育てたほうがお得だったのかは微妙なところだな。
俺の場合は神酒があったから育てたほうが絶対にお得なのだが、もしこれが最初に実をつけるまで2年ほどかかり実が成る周期は1年に1回とかだったらと考えるとなんとも微妙だ。
若者ならば10年後20年後を見据えて育てたほうがいいかもしれないが、俺のような中年は有用な魔法をたくさん使えるようになる頃には還暦を迎えているかもしれない。
神酒を選んでおいて本当によかったと思う。
「さて、食べてみるか」
手のひらにコロンと乗る黒い木の実を、俺は口の中に放り込んだ。
まあ味は想像通りの味だ。
アントシアニンが豊富に含まれていそうな甘酸っぱい太陽の味がした。
完全にブルーベリーの上位互換だ。
もっと食べたい。
『ぴろりろりん♪シゲノブは中級魔法【収納(中)】が使えるようになった』
なんと今度は中級魔法を覚えることができた。
収納(中)という魔法は非常に有用なものだ。
自分だけの空間を作り出しなんでも仕舞っておくことができるという梶原さんの神器に似た魔法だ。
(中)なので空間の広さはそれほど広くはないが、それでも1000リットルほどの物を収納しておくことが可能だ。
何より中の時間が止まっているので食べ物を入れておいても腐らないし冷めないし温まない。
異世界行ったら絶対欲しいチート能力ベスト10には入りそうな魔法に俺のテンションはマックスとなる。
おっさんはさらに進化し、ネアンデルタール人となった。
王都の治安は悪くなる一方だ。
町中で堂々と犯罪行為が行われ、なかなかにヒャッハーな雰囲気になってきた。
かくいう俺も犯罪行為に巻き込まれそうになったことは数知れず。
神巻きタバコのおかげでチート級のフィジカルを手に入れた俺だが、別に身体を鍛えているわけではないから見た目はただのくたびれた中年だ。
非常にオヤジ狩りや恐喝の対象となりやすい。
あまり腕力で物事を解決するというのは得意ではないのだけれど、官憲が機能していない現状ではいかに平和主義者のおっさんといえどチートフィジカルに頼らざるを得ない事態がここのところ増えてきている。
「ルーガル王国の臣民たちよ!!今こそ立ち上がる時だ!!魔族どもを皆殺しにしてやるぞ!!」
「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
さらにはこのような民兵を募るような呼びかけがしょっちゅう聞こえてくる。
今は義勇兵を募っているだけのようだが、情勢が変われば強制的に徴兵されることもありえるだろう。
そろそろ王都での生活も限界が近いのかもしれないと思う今日この頃。
早めにこの国を出ていったほうがいいのかもしれない。
本当はもっと早くに王都を出ていきたかったのだが、もう少し金を貯めてからと思っていたのだ。
こんなことなら俺も梶原さんのようにお給料をもらいながらこの国を出ることができる方法を考えるべきだったか。
俺は宿に戻り、急いで荷物を纏める。
3か月以上も同じ宿で過ごしているともはやここが自分の部屋であるかのように感じる。
物も結構増えた。
少しばかりの感慨に浸りながら部屋の中にある物をすべて魔法で異空間へと収納していく。
この魔法のおかげで旅支度が楽ちんだ。
すでに向こう1か月分くらいの食料は買いこんであるし、部屋がきれいになればすぐに旅立てる。
俺は部屋の物をすべて収納し、軽く掃除をして宿をチェックアウトした。
立つ鳥跡を濁さず。
来た時よりも綺麗にね。
火球の魔法はタバコの火をつけるときなどに重宝している。
魔法が使えるようになるといってもイメージするだけで使えたり、呪文を唱えたりするわけではない。
この世界の魔法は魔力という生き物の体内に宿るエネルギーを使って空中に魔法陣を描くことによって発動する。
神樹の実を食べるとその魔法に対する知識と魔法陣が頭の中に浮かぶようになる。
つまり魔法が使えるようになるといっても発動は自分で頑張ってくださいということなのだ。
まあ頑張ったよ。
おっさんなりにラノベの知識などを総動員して魔力というものを身体からひねり出すことには成功した。
神巻きタバコはどうやら魔法関係の能力もかなり増幅してくれているようで、俺には身体からフワフワ漂う魔力をしっかりと見ることができたし操るのは簡単だった。
頭に浮かんだ通りの魔法陣を空中に描いてみれば火の球が出た。
火の球の大きさや火の温度は調整できるし、真っすぐ飛ばすだけではなくある程度自由に軌道を操ったりもできる。
人間という生き物の文明の根幹を成す火という力を手に入れておっさんはアウステラロピテクスから北京原人に進化した気分だ。
そんなわけでおっさんが進化してから今日で2週間ちょっと。
トマトやジャガイモが順調に育ち最初の収穫を迎えた頃、また一つ神樹の樹に実が成った。
今度は大きめのブルーベリーのような黒い木の実だ。
まさか前回と違う木の実が成るとは思わなかった。
まあ神器だから驚いても仕方がないだろう。
もしかしたらこれからずっと毎回違う木の実が成るのかもしれない。
そしてその実を食べるとなにがしかの魔法が使えるようになる。
神樹という神器はおそらくそんな神器なのだろう。
木の実が成る周期は成長を促進する神酒を使って2週間に1回ほど。
どんぐりをそのまま食べたほうがよかったのか、それとも育てたほうがお得だったのかは微妙なところだな。
俺の場合は神酒があったから育てたほうが絶対にお得なのだが、もしこれが最初に実をつけるまで2年ほどかかり実が成る周期は1年に1回とかだったらと考えるとなんとも微妙だ。
若者ならば10年後20年後を見据えて育てたほうがいいかもしれないが、俺のような中年は有用な魔法をたくさん使えるようになる頃には還暦を迎えているかもしれない。
神酒を選んでおいて本当によかったと思う。
「さて、食べてみるか」
手のひらにコロンと乗る黒い木の実を、俺は口の中に放り込んだ。
まあ味は想像通りの味だ。
アントシアニンが豊富に含まれていそうな甘酸っぱい太陽の味がした。
完全にブルーベリーの上位互換だ。
もっと食べたい。
『ぴろりろりん♪シゲノブは中級魔法【収納(中)】が使えるようになった』
なんと今度は中級魔法を覚えることができた。
収納(中)という魔法は非常に有用なものだ。
自分だけの空間を作り出しなんでも仕舞っておくことができるという梶原さんの神器に似た魔法だ。
(中)なので空間の広さはそれほど広くはないが、それでも1000リットルほどの物を収納しておくことが可能だ。
何より中の時間が止まっているので食べ物を入れておいても腐らないし冷めないし温まない。
異世界行ったら絶対欲しいチート能力ベスト10には入りそうな魔法に俺のテンションはマックスとなる。
おっさんはさらに進化し、ネアンデルタール人となった。
王都の治安は悪くなる一方だ。
町中で堂々と犯罪行為が行われ、なかなかにヒャッハーな雰囲気になってきた。
かくいう俺も犯罪行為に巻き込まれそうになったことは数知れず。
神巻きタバコのおかげでチート級のフィジカルを手に入れた俺だが、別に身体を鍛えているわけではないから見た目はただのくたびれた中年だ。
非常にオヤジ狩りや恐喝の対象となりやすい。
あまり腕力で物事を解決するというのは得意ではないのだけれど、官憲が機能していない現状ではいかに平和主義者のおっさんといえどチートフィジカルに頼らざるを得ない事態がここのところ増えてきている。
「ルーガル王国の臣民たちよ!!今こそ立ち上がる時だ!!魔族どもを皆殺しにしてやるぞ!!」
「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
さらにはこのような民兵を募るような呼びかけがしょっちゅう聞こえてくる。
今は義勇兵を募っているだけのようだが、情勢が変われば強制的に徴兵されることもありえるだろう。
そろそろ王都での生活も限界が近いのかもしれないと思う今日この頃。
早めにこの国を出ていったほうがいいのかもしれない。
本当はもっと早くに王都を出ていきたかったのだが、もう少し金を貯めてからと思っていたのだ。
こんなことなら俺も梶原さんのようにお給料をもらいながらこの国を出ることができる方法を考えるべきだったか。
俺は宿に戻り、急いで荷物を纏める。
3か月以上も同じ宿で過ごしているともはやここが自分の部屋であるかのように感じる。
物も結構増えた。
少しばかりの感慨に浸りながら部屋の中にある物をすべて魔法で異空間へと収納していく。
この魔法のおかげで旅支度が楽ちんだ。
すでに向こう1か月分くらいの食料は買いこんであるし、部屋がきれいになればすぐに旅立てる。
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