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138.トラブル
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「止まれ!貴様ら何者だ!!」
「わ、我々はリーベル通商とその傘下の行商人のキャラバンです!」
「リーベル通商?そうか。では積み荷だけ置いてさっさと帰れ」
「ちょ、ちょっと待ってください!ここはブライトン協商都市のはず……」
「協商連合はすでにこの街から撤退した。この町は今クルーセル王国軍が占領している」
「そ、そんな……」
どうやらトラブル発生のようだ。
本来ならばこの場所には協商連合という商人たちの互助組織が統治するブライトン協商都市という街があるはずだった。
どこもかしこも戦国時代のような価値観の人ばかりで殺伐としているこの半島内にあって、この街だけは安心して眠ることができると商人たちが豪語する都市だった。
それがいざ街に到着してみれば、門の前で大勢の兵士に取り囲まれ武器を突き付けられてしまった。
街を統治していた協商連合はすでにこの街から撤退し、この街は別の勢力に占領されているのだという。
「ベラールさん、どうしますか」
俺はこのキャラバンを率いるリーベル通商の商人に話しかける。
ここで積み荷を諦めればリーベル通商やその傘下の商人たちは少なくない損失を被ることになる。
せっかくBランクの冒険者である俺を雇っているのだから積み荷は諦めるべきではないと思うのだが、最終的な判断を下すのはベラール氏だ。
「ど、どうしたら、どうしたらいいのでしょう」
ベラール氏は急な事態に完全にテンパってしまっている。
この人は落ち着いてさえいればそれなりに優秀な人だと思うのだけれど、なにぶん20代前半くらいのために圧倒的に経験が足りていない。
しょうがない、少し俺の意見も入れてしまうとしよう。
何をするべきか分かれば迅速な指示が出せるだろう。
「落ち着いてください。とりあえず逃げましょう。これからのことは落ち着いてゆっくり考えればいいと思います」
「わ、わかりました。全員戦闘準備!この場を切り抜け、撤退する!!」
「「「了解!!」」」
そして撤退戦が始まった。
まずは囲まれている状況を打開しなければならない。
俺の仕事はやはりDランク冒険者たちのカバーだ。
Cランク冒険者たちの実力は国軍の正規兵に劣るものではないことはこれまでの旅程でこの目で見て知っている。
俺はDランク冒険者たちを纏め、指示を出す。
「絶対に1対1にはならないように。3人で1人を相手するんだ。人数が足りないところには俺が入るから気にしなくてもいい」
「「「はい!」」」
俺の指示どおり冒険者たちはあらかじめ決めていたスリーマンセルに分かれ、兵士たちと武器を合わせ始める。
俺は腰の刺突剣を抜き、人数が足りなくて開いてしまった守りの穴を埋める。
「大人しく積み荷だけを置いていけばいいものを!!武器を抜いた以上は命まで置いていってもらうぞ!!」
こちらが先に手を出したというのがこいつらの言い分なのだろう。
このキャラバンを率いているベラール氏が所属しているリーベル通商という商会はそれなりに大きな商会だ。
この世界の商人は自分の金を守るために自前の戦力を持っているのが普通。
リーベル通商ともなればその戦力は小国の軍隊に匹敵するだろう。
その力はこの街を占領している聞いたこともない国の軍隊よりもおそらく大きい。
こいつらは結局荷物は欲しいけれどリーベル通商に自分から手を出すのは怖いから命までは奪わないという建前を使って荷物を奪おうとしたのだ。
命を奪わなければリーベル通商は許してくれるとでも思ったのだろうが、少し認識が甘いな。
商人にとって積み荷は時に命よりも重いのだ。
「もうお前らおしまいだよ。たぶんリーベル通商を怒らせた。ベラール氏はあれでもリーベル通商の創業一家の一員だぞ」
「うるさい!!」
クルーセル王国だかなんだか知らないが、時勢の読めない国だ。
もっとも軍部の暴走の可能性もあるがな。
この外交感覚の無さはどうにも軍人っぽい匂いがするな。
どちらにしても軍部を掌握できていない国にも責任はある。
こんな地域で国としての体裁を保つのはさぞ難しかろうが、軍部の手綱だけは放してはいけなかったな。
俺は刺突剣で兵士たちの手足をチクチクと攻撃し、戦闘不能にしていく。
相手は盗賊ではなく国軍。
彼らは仕事でこんなことをしているのだ。
他の冒険者たちには自分の身を優先して殺すことにためらって欲しくはないが、俺は余裕があるので殺さずに済ませることとしよう。
殺すよりも怪我を負わせたほうが相手にとってダメージとなるという利点もある。
軍隊にとって負傷兵はお荷物だ。
殺せばその分の食糧や水は必要なくなるが怪我を負った兵には食事も水も必要だ。
怪我の手当てのために更なる物資も必要となる。
そして彼らが手を出したのは商人だ。
横のつながりが深い商人に手を出せば普段物資の調達を担当している商人との関係にもなんらかの影響があるだろう。
もしかしたらもう物資を商人から調達することは不可能かもしれない。
馬鹿なことをしたものだ。
「同情するよ」
「うるさいうるさい!!」
兵士たちも商人と戦うのは微妙な気分なようだ。
「わ、我々はリーベル通商とその傘下の行商人のキャラバンです!」
「リーベル通商?そうか。では積み荷だけ置いてさっさと帰れ」
「ちょ、ちょっと待ってください!ここはブライトン協商都市のはず……」
「協商連合はすでにこの街から撤退した。この町は今クルーセル王国軍が占領している」
「そ、そんな……」
どうやらトラブル発生のようだ。
本来ならばこの場所には協商連合という商人たちの互助組織が統治するブライトン協商都市という街があるはずだった。
どこもかしこも戦国時代のような価値観の人ばかりで殺伐としているこの半島内にあって、この街だけは安心して眠ることができると商人たちが豪語する都市だった。
それがいざ街に到着してみれば、門の前で大勢の兵士に取り囲まれ武器を突き付けられてしまった。
街を統治していた協商連合はすでにこの街から撤退し、この街は別の勢力に占領されているのだという。
「ベラールさん、どうしますか」
俺はこのキャラバンを率いるリーベル通商の商人に話しかける。
ここで積み荷を諦めればリーベル通商やその傘下の商人たちは少なくない損失を被ることになる。
せっかくBランクの冒険者である俺を雇っているのだから積み荷は諦めるべきではないと思うのだが、最終的な判断を下すのはベラール氏だ。
「ど、どうしたら、どうしたらいいのでしょう」
ベラール氏は急な事態に完全にテンパってしまっている。
この人は落ち着いてさえいればそれなりに優秀な人だと思うのだけれど、なにぶん20代前半くらいのために圧倒的に経験が足りていない。
しょうがない、少し俺の意見も入れてしまうとしよう。
何をするべきか分かれば迅速な指示が出せるだろう。
「落ち着いてください。とりあえず逃げましょう。これからのことは落ち着いてゆっくり考えればいいと思います」
「わ、わかりました。全員戦闘準備!この場を切り抜け、撤退する!!」
「「「了解!!」」」
そして撤退戦が始まった。
まずは囲まれている状況を打開しなければならない。
俺の仕事はやはりDランク冒険者たちのカバーだ。
Cランク冒険者たちの実力は国軍の正規兵に劣るものではないことはこれまでの旅程でこの目で見て知っている。
俺はDランク冒険者たちを纏め、指示を出す。
「絶対に1対1にはならないように。3人で1人を相手するんだ。人数が足りないところには俺が入るから気にしなくてもいい」
「「「はい!」」」
俺の指示どおり冒険者たちはあらかじめ決めていたスリーマンセルに分かれ、兵士たちと武器を合わせ始める。
俺は腰の刺突剣を抜き、人数が足りなくて開いてしまった守りの穴を埋める。
「大人しく積み荷だけを置いていけばいいものを!!武器を抜いた以上は命まで置いていってもらうぞ!!」
こちらが先に手を出したというのがこいつらの言い分なのだろう。
このキャラバンを率いているベラール氏が所属しているリーベル通商という商会はそれなりに大きな商会だ。
この世界の商人は自分の金を守るために自前の戦力を持っているのが普通。
リーベル通商ともなればその戦力は小国の軍隊に匹敵するだろう。
その力はこの街を占領している聞いたこともない国の軍隊よりもおそらく大きい。
こいつらは結局荷物は欲しいけれどリーベル通商に自分から手を出すのは怖いから命までは奪わないという建前を使って荷物を奪おうとしたのだ。
命を奪わなければリーベル通商は許してくれるとでも思ったのだろうが、少し認識が甘いな。
商人にとって積み荷は時に命よりも重いのだ。
「もうお前らおしまいだよ。たぶんリーベル通商を怒らせた。ベラール氏はあれでもリーベル通商の創業一家の一員だぞ」
「うるさい!!」
クルーセル王国だかなんだか知らないが、時勢の読めない国だ。
もっとも軍部の暴走の可能性もあるがな。
この外交感覚の無さはどうにも軍人っぽい匂いがするな。
どちらにしても軍部を掌握できていない国にも責任はある。
こんな地域で国としての体裁を保つのはさぞ難しかろうが、軍部の手綱だけは放してはいけなかったな。
俺は刺突剣で兵士たちの手足をチクチクと攻撃し、戦闘不能にしていく。
相手は盗賊ではなく国軍。
彼らは仕事でこんなことをしているのだ。
他の冒険者たちには自分の身を優先して殺すことにためらって欲しくはないが、俺は余裕があるので殺さずに済ませることとしよう。
殺すよりも怪我を負わせたほうが相手にとってダメージとなるという利点もある。
軍隊にとって負傷兵はお荷物だ。
殺せばその分の食糧や水は必要なくなるが怪我を負った兵には食事も水も必要だ。
怪我の手当てのために更なる物資も必要となる。
そして彼らが手を出したのは商人だ。
横のつながりが深い商人に手を出せば普段物資の調達を担当している商人との関係にもなんらかの影響があるだろう。
もしかしたらもう物資を商人から調達することは不可能かもしれない。
馬鹿なことをしたものだ。
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「うるさいうるさい!!」
兵士たちも商人と戦うのは微妙な気分なようだ。
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