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130.ドラゴニアの夜再び

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「なんと、1000人規模の勇者召喚ですか……」

「ええ、しかも勇者を隷属できる首輪によって隷属されています」

「なんてことを……」

「100人ほど解放しましたがまだまだたくさんの勇者がルーガル王国に隷属されています」

「まさかそんなことになっているとは」

 深刻そうな顔でグラスを傾ける梶原さん。
 今日は約束どおりドラゴニアに情報提供に来ているのだ。
 ダンジョンの街として有名なドラゴニアに行くと言ったらカールが連れて行って欲しいと頼んできたが、俺にはカールを連れて行くことができない事情があった。

「アイサちゃん、そんなにおじさんを褒めたって何も出ないよ」

「出るでしょ、色々♡」

「ねへへへへっ、おじさんに何を出してほしいのかなぁアイサちゃんは~」

「お金!!」

「この店で一番高い酒持ってこーい!!」

 このカオスな空間に子供を連れてくるわけにもいかないだろう。
 さっきから全力でお店遊びを楽しんでいるのはもちろんドノバンさんだ。
 さっきまでは真面目な顔してルーガル王国の現状を聞いていた気がするのだが、いつの間にかお酒を片手にお姉ちゃんたちと王様ゲームに興じていた。

「はぁ、こちらが真面目な話をしているというのに……」

「まあまあ、ドノバンさんも長い宿屋暮らしにストレスが溜まっているんですよ。梶原さんも今日はストレスやその他色々を発散してしまいましょう」

「そうしますか」

 ドノバンさんと梶原さんは訳あって少し前から宿屋暮らしをしているらしい。
 奥さんがいるのにこんなところで色々発散するからそんなことになるんだ。
 独身の俺は高みの見物だ。
 独身が高みかどうかは別の問題としてね。






「う、頭痛ぇ……」

 やっぱり堕落した遊びはこの次の日の二日酔いまでも楽しむようでなくてはいけない。
 しかしやはり気分は最悪なのですぐに神酒を煽る。
 不快な吐き気と頭痛、倦怠感が一気に解消された。
 この爽快感を味わうために一度二日酔いになるのが最近の俺のマイブームなのだ。
 前回と同じように高級連れ込み宿の大きなベッドにはぐでんぐでんのおっさんが俺の他に2人横たわっている。
 朝目覚めたときに横にいるのは女性であって欲しいものだけれど、この街の夜の蝶たちはかなりドライな性質を持っているようだ。
 カーテンを開けて外を見ればすでに太陽は中天に差し掛かる頃。
 こんな時間までおっさん3人に添い寝してくれるサービスは無い。
 夜の蝶たちももしかしたら朝方くらいまでは添い寝してくれていたのかもしれないが、こんな昼まで起きないおっさんたちに業を煮やして帰ったのだろう。
 そう考えるとそこまでドライというわけでもないか。

「梶原さんたちを起こさないと、またギルドが大変なことになっていそうだ」

 俺は前回のように梶原さんとドノバンさんを起こして神酒を飲ませた。
 ギルドの職員の皆さんには申し訳ないな、俺の酒池肉林にこの2人を巻き込んでしまって。
 でも来たいって言ったのはこの2人だから。





 久しぶりのドラゴニアのダンジョン。
 ドラゴニアの街に来たのは何も酒池肉林のためだけではない。
 これから動乱の時代を迎え討つ男爵領の防衛に役立つ素材をこのダンジョンで収集するために来たのだ。
 まずは砂漠フィールドで大型の竜種を狩りまくる。
 竜種の素材は武具の材料としてとても優秀だ。
 鱗で作った防具を装備して牙や爪で作った武器を使えば一流の冒険者といえる。
 これを男爵領警備隊に装備させることで武具の力で警備隊の戦力を底上げすることができる。

「よし、まずはあいつだよな」

 以前戦った19階層のフィールドボス、デザートヒュドラ。
 あいつは太陽の光を魔力に変換する特殊な能力を持っている。
 つまり昼間ならば無限に再生するわけだ。
 無限に再生するということは、無限に素材を取ることができる。
 フィールドボスのリポップには3日くらいかかるらしいので絶対に昼間行って無限素材回収を行なったほうがお得だ。
 俺は19階層に向かった。




 デザートヒュドラが可哀想になるほどに何度も何度も首や手足を狩り、山のような竜種の素材を手に入れることができた。
 男爵領警備隊の人数分の防具や武器を作るには十分な量だろう。
 次の素材を集めるとする。
 次は腐竜だ。
 腐竜は身体を硬い金属で覆われたサイボーグのような姿をしている。
 あの硬い金属は加工できるか分からないがそれでも絶対に何かに使えるし、肩の機銃や身体中に装備されたミサイルも流用することができれば男爵領の防衛に役に立つことは間違いない。
 正面から戦えば五分の戦いになる腐竜だが、神の苦無威を使えば安全に倒すことができる。
 腐竜もまたリポップに3日ほどかかるので一度に何体も狩ることはできない。
 地道に少しずつ狩っていくとしよう。

「この階層は何回来ても嫌な階層だ」

 腐竜がいるのは22階層。
 湿地フィールドと冒険者ギルドでは呼ばれているが、酸の雨でぬかるんだ煙立つ湿地を湿地と呼ぶかどうかだ。
 俺なら荒廃した高度文明フィールドとでも名付ける。
 このフィールドは何の防護もなしには居るだけでダメージを受けてしまう。
 酸の雨が溜まった水溜りになんて転んでダイブしようものなら全身が焼け爛れてしまうだろう。

「さっさと腐竜を狩って帰ろう」

 腐竜を一度倒してしまえば次に腐竜がリポップするのは3日後だ。
 それまではこのクソったれフィールドに来なくてすむ。
 帰ったら自分へのご褒美に高いワインを飲もう。


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