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120.勇者の混乱とシェンロン
しおりを挟む 一瞬にして景色が移り変わり、王都の町並みが目に飛び込んでくる。
ずっと手を繋いだままというわけにもいかないので、俺は静香さんの手を放した。
こんなときに不謹慎だけど、やっぱり女性の肌っていうのはいいものだ。
ドラゴニアでの夜を思い出してしまうね。
金があったらまたやりたい。
「なんか今最低なこと考えてませんか?」
「顔に出てましたかね」
「ちょっとだけ……」
「すみません」
「いえ、何を考えようと頭の中は自由ですから。それよりも、助けていただきありがとうございました。この近くに2人がいるのですよね」
静香さんはキョロキョロとあたりを見回す。
俺は神のスマホEXを使い、2人の位置を確認した。
「どうやら、結構な速度で移動しているようですね」
おそらく若い方の彼の神器の能力だろう。
小枝のようなものの位置に転移することのできる神器だ。
彼は英雄の指輪も持っているから、その能力も使って小枝を思い切り投げてそこまで転移すればかなりの距離を一瞬で移動することができる。
「一方向に向かってひたすら移動しているようですから、回り込めば待ち伏せできそうですね」
「お願いします」
静香さんともう一度手を繋ぎ、転移する。
場所は王都2番街の外壁付近だ。
結構速いね。
「お、来ましたね」
「よかった、合流できそうですね」
静香さんは2人に手を振る。
2人も静香さんに気付いたようで、軽く驚いた顔をしている。
「あれ?なんで僕たちより先にいるの?」
「そうだぜ、感動の別れのすぐ後によ」
「知り合いに助けられまして。すみませんミタケンさん。神器、ありがとうございました」
静香さんは3つの神器をミタケンさんと呼ばれた中年男性に返す。
「なんかあんまし力にはなれなかったみたいだな」
「いえ、そんなことはありません。すごく心の支えになりました」
「そいつはよかったぜ。それよりあんた、なんか顔に見覚えがあるような……ん?なんだろうな、寒イボが出てきやがったぜ。まるで俺の脳みそが何かを思い出すことを拒否しているようだ」
「それは思い出さないほうがいいことなのでは……」
「そうだな。やめとくぜ」
ミタケンさんはそう言って飄々とした顔で頭をかいた。
コミカルな仕草の似合う人だ。
とりあえずここは敵地なのですぐに転移するとしよう。
「あんたの厄介になってる貴族の領地ね。あの悪人面の貴族みてえな貴族じゃねえんだよな」
「ええ、尊敬できる人物であることはお約束しますよ」
「異世界貴族ふぅぅっ。悪役じゃない貴族!!」
「すまねえな。こいつ頭が二次元に侵食されてやがるんだ」
まあそういう人もいるさ。
悪い人物ではなさそうだし、気にしないことにしよう。
俺達は全員で手を合わせ、男爵領へと転移した。
「「静香さんっ」」
「かえでちゃん!隼人君!よかった」
かえでちゃんと隼人君、静香さんは久しぶりの再会を喜んだ。
元々静香さんが逃げずに王都に留まっていたのは、この2人を助けるためだった。
俺がもう少しタイミングよく連絡できていれば、3人が危険を犯して悪人面貴族と対峙することもなかったんだ。
少し反省だな。
「繁信さん。2人と私たちを助けていただき、本当にありがとうございました」
「「ありがとうシゲさん」」
「助かったぜ」
「どうもです」
結果だけ見ればまあまあうまくいっているのかな。
あとはシェンロンとマリステラ卿だけだ。
「そういえば静香さん、マリステラ卿がどうなったか御存知ですか?どこかに幽閉されているとか、軟禁されているとか」
「すみません。私もかえでちゃんと隼人君以上の情報は持っていないんです。マリステラ卿が騎士団を罷免された後のことはわかりません」
そうなると振り出しに戻ってしまったな。
新しい情報チートである神のスマホEXでもやっぱりこの世界の人のことは全く分からないし。
とりあえず、シェンロンをなんとかしてからにするか。
3人にはひとまず身体を休めてもらい、俺は一人王都に戻った。
先ほどの悪人面貴族の屋敷に戻ると、俺の土壁はすでに破壊されて無残な姿になってしまっていた。
兵士や勇者はすでに捜索を諦め、破壊された建物の修復や死体の片付け、血で汚れた床の拭き取りなどをしていた。
酷いねこれは。
勇者の中には生産系の神器を持つ人もいて、その人たちが中心となって建物の修復を行なっているようだ。
ちょうどいい、ここにいる勇者の首輪を全て外して回ろう。
人に触ると俺の隠密能力が解除されてしまうから、首輪にしか触らないように慎重に行動する。
首輪の鍵が外れていることに、まだ勇者の面々は気が付いていない様子だ。
俺はそのまま作業を続け、この場にいた74人の勇者の首輪を解除した。
最後のひとりを解除するころには、立ち上がったり振り返ったりした拍子に首輪が落ちる人が続出。
場は騒然となった。
「外れてる!」
「え!?なんで!?」
「マジだ!!」
「逃げろ!!」
勇者たちはバラバラに逃げ始めた。
これで少しは王都が混乱するだろう。
この調子で勇者の首輪を外して王都を混乱させつつ、情報を集めるか。
屋敷の中には相当数の勇者がいた。
勇者隷属アイテムを作れるシェンロンを手中に収めているおかげで、あの悪人面貴族は今の王国内でかなりの地位にいるらしい。
1000人以上の勇者とは言っても、考え方を変えれば1000人程度しかいないのだ。
勇者なんていう超戦力はみんなが欲しがるに決まっている。
そんなみんなが取り合う戦力を、悪人面貴族は10分の1以上も保有している。
もしかしたらもっと持っているかもしれない。
キーアイテムはやっぱりシェンロンだ。
シェンロンを奴の手から取り上げてしまえば、この国は意外と自滅する可能性もある。
ダメ押しで勇者の首輪を外しまくれば、この国はまた混乱の坩堝となるだろう。
「お、シェンロンみっけ」
悪人面貴族の屋敷の一室、そこにはメイドさんに頭を踏まれているシェンロンの姿があった。
あ、プレイ中でしたか。
失礼しました。
ずっと手を繋いだままというわけにもいかないので、俺は静香さんの手を放した。
こんなときに不謹慎だけど、やっぱり女性の肌っていうのはいいものだ。
ドラゴニアでの夜を思い出してしまうね。
金があったらまたやりたい。
「なんか今最低なこと考えてませんか?」
「顔に出てましたかね」
「ちょっとだけ……」
「すみません」
「いえ、何を考えようと頭の中は自由ですから。それよりも、助けていただきありがとうございました。この近くに2人がいるのですよね」
静香さんはキョロキョロとあたりを見回す。
俺は神のスマホEXを使い、2人の位置を確認した。
「どうやら、結構な速度で移動しているようですね」
おそらく若い方の彼の神器の能力だろう。
小枝のようなものの位置に転移することのできる神器だ。
彼は英雄の指輪も持っているから、その能力も使って小枝を思い切り投げてそこまで転移すればかなりの距離を一瞬で移動することができる。
「一方向に向かってひたすら移動しているようですから、回り込めば待ち伏せできそうですね」
「お願いします」
静香さんともう一度手を繋ぎ、転移する。
場所は王都2番街の外壁付近だ。
結構速いね。
「お、来ましたね」
「よかった、合流できそうですね」
静香さんは2人に手を振る。
2人も静香さんに気付いたようで、軽く驚いた顔をしている。
「あれ?なんで僕たちより先にいるの?」
「そうだぜ、感動の別れのすぐ後によ」
「知り合いに助けられまして。すみませんミタケンさん。神器、ありがとうございました」
静香さんは3つの神器をミタケンさんと呼ばれた中年男性に返す。
「なんかあんまし力にはなれなかったみたいだな」
「いえ、そんなことはありません。すごく心の支えになりました」
「そいつはよかったぜ。それよりあんた、なんか顔に見覚えがあるような……ん?なんだろうな、寒イボが出てきやがったぜ。まるで俺の脳みそが何かを思い出すことを拒否しているようだ」
「それは思い出さないほうがいいことなのでは……」
「そうだな。やめとくぜ」
ミタケンさんはそう言って飄々とした顔で頭をかいた。
コミカルな仕草の似合う人だ。
とりあえずここは敵地なのですぐに転移するとしよう。
「あんたの厄介になってる貴族の領地ね。あの悪人面の貴族みてえな貴族じゃねえんだよな」
「ええ、尊敬できる人物であることはお約束しますよ」
「異世界貴族ふぅぅっ。悪役じゃない貴族!!」
「すまねえな。こいつ頭が二次元に侵食されてやがるんだ」
まあそういう人もいるさ。
悪い人物ではなさそうだし、気にしないことにしよう。
俺達は全員で手を合わせ、男爵領へと転移した。
「「静香さんっ」」
「かえでちゃん!隼人君!よかった」
かえでちゃんと隼人君、静香さんは久しぶりの再会を喜んだ。
元々静香さんが逃げずに王都に留まっていたのは、この2人を助けるためだった。
俺がもう少しタイミングよく連絡できていれば、3人が危険を犯して悪人面貴族と対峙することもなかったんだ。
少し反省だな。
「繁信さん。2人と私たちを助けていただき、本当にありがとうございました」
「「ありがとうシゲさん」」
「助かったぜ」
「どうもです」
結果だけ見ればまあまあうまくいっているのかな。
あとはシェンロンとマリステラ卿だけだ。
「そういえば静香さん、マリステラ卿がどうなったか御存知ですか?どこかに幽閉されているとか、軟禁されているとか」
「すみません。私もかえでちゃんと隼人君以上の情報は持っていないんです。マリステラ卿が騎士団を罷免された後のことはわかりません」
そうなると振り出しに戻ってしまったな。
新しい情報チートである神のスマホEXでもやっぱりこの世界の人のことは全く分からないし。
とりあえず、シェンロンをなんとかしてからにするか。
3人にはひとまず身体を休めてもらい、俺は一人王都に戻った。
先ほどの悪人面貴族の屋敷に戻ると、俺の土壁はすでに破壊されて無残な姿になってしまっていた。
兵士や勇者はすでに捜索を諦め、破壊された建物の修復や死体の片付け、血で汚れた床の拭き取りなどをしていた。
酷いねこれは。
勇者の中には生産系の神器を持つ人もいて、その人たちが中心となって建物の修復を行なっているようだ。
ちょうどいい、ここにいる勇者の首輪を全て外して回ろう。
人に触ると俺の隠密能力が解除されてしまうから、首輪にしか触らないように慎重に行動する。
首輪の鍵が外れていることに、まだ勇者の面々は気が付いていない様子だ。
俺はそのまま作業を続け、この場にいた74人の勇者の首輪を解除した。
最後のひとりを解除するころには、立ち上がったり振り返ったりした拍子に首輪が落ちる人が続出。
場は騒然となった。
「外れてる!」
「え!?なんで!?」
「マジだ!!」
「逃げろ!!」
勇者たちはバラバラに逃げ始めた。
これで少しは王都が混乱するだろう。
この調子で勇者の首輪を外して王都を混乱させつつ、情報を集めるか。
屋敷の中には相当数の勇者がいた。
勇者隷属アイテムを作れるシェンロンを手中に収めているおかげで、あの悪人面貴族は今の王国内でかなりの地位にいるらしい。
1000人以上の勇者とは言っても、考え方を変えれば1000人程度しかいないのだ。
勇者なんていう超戦力はみんなが欲しがるに決まっている。
そんなみんなが取り合う戦力を、悪人面貴族は10分の1以上も保有している。
もしかしたらもっと持っているかもしれない。
キーアイテムはやっぱりシェンロンだ。
シェンロンを奴の手から取り上げてしまえば、この国は意外と自滅する可能性もある。
ダメ押しで勇者の首輪を外しまくれば、この国はまた混乱の坩堝となるだろう。
「お、シェンロンみっけ」
悪人面貴族の屋敷の一室、そこにはメイドさんに頭を踏まれているシェンロンの姿があった。
あ、プレイ中でしたか。
失礼しました。
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