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閑話8(ミタケン視点)
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「魔法?」
「そうです。魔導書なんかの魔法系の神器なら開いただけで使えるようになるんですけど、自力でも習得できなくは無いんですよ」
「そりゃあ使えるようになって損はねえな」
「僕がノートに書き溜めた最強の魔法を実現するときが来たようだね。ノートは無いけど全部頭の中に入っている。問題ない」
問題あるだろ、頭に。
薄々思ってはいたが、こいつ中二病ってやつなんじゃないか?
小説の知識を信じるってよく考えたらおかしいよな。
まあそういう奴もいるかな。
人に害をなすわけじゃねえし、まともなときは気の良い青年だぜ。
「この世界の魔法は私たちの体内にある魔力というエネルギーを操って、一定の図形を描くことで発動します。魔法陣ってやつですね。魔力の量と図形の組み合わせ次第ではものすごい現象を引き起こすことも可能な力です。ライターくらいの火を出したり、コップ1杯分の水を出したりする程度の魔法でも使えると便利ですので覚えてみるといいですよ」
何もないところから火が出せたり、水が出せたりしたらそりゃあ便利だろうな。
旅の装備とかが大幅に減らせるだろう。
特に水だ。
水っていうのは案外荷物になるからな。
だけど人は水を飲まなきゃ生きていけねえから、持っていかないわけにはいかない。
魔法で水を出せるとなりゃあ、かなり荷物が軽くなるぜ。
「篠原さん!ライターや水道みたいな魔法は僕はいいんで、手から稲妻を出したりする魔法を教えてください!」
「いや、そんな高度なのは最初からは使えないと思いますよ。まずは指先に火を灯す程度の魔法から練習していきましょう」
まあこういうのには順序ってもんがあるよな。
ゲームを作りたいからっていきなり本格的なプログラミングを勉強してみたところで、基礎知識がなけりゃあなんのことだか全く分からないだろう。
どんな教本でも始めはくだらねえジャンケンゲームとかを作りながらプログラミングの基礎を勉強させられるものだぜ。
「それじゃあまず私がやってみせます」
篠原はぱっと一瞬で指先に火を灯らせて見せた。
こいつは便利だ。
街の雑貨屋にも安価な着火装置なんぞ売ってなかったからな。
魔石を使って火を灯す魔道具は馬鹿みてえに高かった。
あんなもの中流家庭でやっとこさ買えるくらいの値段だぜ。
そのせいで、この国じゃあ中流以上の家庭と貧乏人の間には生活にかなりの格差がある。
一部の富裕層は魔道具をバリバリ使って快適な生活を送ってやがるのに対して、貧乏人は竈に火打ち石、日の出と共に起きて日が沈んだら寝る原始的な暮らしぶりをしている。
便利な魔法ってもんがあるんだから、もっと使えばいいと思うんだがな。
魔法を習うにも金がいるんだろうから、結局同じなのかもな。
高い金を払って習った魔法を、金も払ってない奴には教えたくないよな。
だから魔法がそれほど広まっていないんだろう。
無償で教えてもらえるんだから、俺達はラッキーだったぜ。
使えるようになるかどうかは別としてな。
「体の中にある魔力を細く長く伸ばして、この形を描くようにイメージしてください」
篠原が紙に書いた単純な図形をイメージして目を閉じる。
ダメだな、魔力ってものがなんなのか全くわからん。
俺の中に魔力なんて本当にあるのか?
俺は手の平をじっと見つめる。
「あぁ!?」
「どうしました?」
「い、いや……」
なんだかわからねえが、自分の手からヌルリと糸を引く粘液のようなものが伸びたのが見えた。
気持ち悪いな。
服で手を拭うが、とれねえ。
なんなんだ?こりゃあ。
俺はメガネを外して目を擦る。
よし、見えなくなったな。
メガネをかける。
ヌルリ。
なんだってんだよこりゃあ。
メガネをかけるとこのヌルヌルが見えやがる。
というか、今気が付いたがメガネをとっても別に視界がかわらねえ。
俺は酷い乱視だったはずなんだが、くっきりはっきり見える。
メガネかける意味ねーな。
慣れたらメガネが無いと心細い気がするからかけるけどよ、そしたらやっぱりヌルヌルが見えやがるんだよな。
このヌルヌル、他の奴らも体から出てやがる。
平気なのかよ。
「篠原さん、ちょっともう一度お手本見せてもらってもいい?僕は感覚で覚えるタイプだから」
「いいですよ」
篠原が人差し指を立てる。
するとヌルヌルが渦巻いてあっという間にさっき篠原が紙に描いた図形を形作る。
まさか、このヌルヌルが魔力ってやつなのかよ。
おいおい、これは目に見えねえはずだろ。
賢者の丸メガネの説明文にあった、目がよくなるって魔力まで見えるようになっちまうって意味なのかよ。
くそっ、そうなってくると頭もよくなるってなんだ?
向こうの世界のことを良く思い出してみりゃあ、俺ってこんなに明瞭に物事を考えられるタイプだったか?
もっと何も考えずにただ毎日をだらだら過ごすような人間だった気がするぜ。
やべえ、神器ってやつは本当にやべえ。
人間性すらも軽く変わっちまったってことだぜ。
ほんじゃなにか、俺は今睡眠が必要なくてメンタル不動で魔力が見えて視力が良くて思考能力も少し強化されているわけか。
もはやサイボーグじゃねえかよ。
はぁ、もうあまり考えないようにするか。
なるようになるぜ。
「ほい着火と」
「すごい!ミタケン一発じゃん!僕も頑張るよ!」
「一発……そんなはずは……」
ぐぐぐっとどこにあるか分からない器官を動かし、粘つく粘液状のエネルギーを紙に描かれたとおりの図形に変形させたらすぐに俺の指先に火が灯った。
どういうわけか魔力の動かし方も篠崎がやるのを見ていたら大体分かった。
魔力も見える。
失敗しようがねえだろ。
「そうです。魔導書なんかの魔法系の神器なら開いただけで使えるようになるんですけど、自力でも習得できなくは無いんですよ」
「そりゃあ使えるようになって損はねえな」
「僕がノートに書き溜めた最強の魔法を実現するときが来たようだね。ノートは無いけど全部頭の中に入っている。問題ない」
問題あるだろ、頭に。
薄々思ってはいたが、こいつ中二病ってやつなんじゃないか?
小説の知識を信じるってよく考えたらおかしいよな。
まあそういう奴もいるかな。
人に害をなすわけじゃねえし、まともなときは気の良い青年だぜ。
「この世界の魔法は私たちの体内にある魔力というエネルギーを操って、一定の図形を描くことで発動します。魔法陣ってやつですね。魔力の量と図形の組み合わせ次第ではものすごい現象を引き起こすことも可能な力です。ライターくらいの火を出したり、コップ1杯分の水を出したりする程度の魔法でも使えると便利ですので覚えてみるといいですよ」
何もないところから火が出せたり、水が出せたりしたらそりゃあ便利だろうな。
旅の装備とかが大幅に減らせるだろう。
特に水だ。
水っていうのは案外荷物になるからな。
だけど人は水を飲まなきゃ生きていけねえから、持っていかないわけにはいかない。
魔法で水を出せるとなりゃあ、かなり荷物が軽くなるぜ。
「篠原さん!ライターや水道みたいな魔法は僕はいいんで、手から稲妻を出したりする魔法を教えてください!」
「いや、そんな高度なのは最初からは使えないと思いますよ。まずは指先に火を灯す程度の魔法から練習していきましょう」
まあこういうのには順序ってもんがあるよな。
ゲームを作りたいからっていきなり本格的なプログラミングを勉強してみたところで、基礎知識がなけりゃあなんのことだか全く分からないだろう。
どんな教本でも始めはくだらねえジャンケンゲームとかを作りながらプログラミングの基礎を勉強させられるものだぜ。
「それじゃあまず私がやってみせます」
篠原はぱっと一瞬で指先に火を灯らせて見せた。
こいつは便利だ。
街の雑貨屋にも安価な着火装置なんぞ売ってなかったからな。
魔石を使って火を灯す魔道具は馬鹿みてえに高かった。
あんなもの中流家庭でやっとこさ買えるくらいの値段だぜ。
そのせいで、この国じゃあ中流以上の家庭と貧乏人の間には生活にかなりの格差がある。
一部の富裕層は魔道具をバリバリ使って快適な生活を送ってやがるのに対して、貧乏人は竈に火打ち石、日の出と共に起きて日が沈んだら寝る原始的な暮らしぶりをしている。
便利な魔法ってもんがあるんだから、もっと使えばいいと思うんだがな。
魔法を習うにも金がいるんだろうから、結局同じなのかもな。
高い金を払って習った魔法を、金も払ってない奴には教えたくないよな。
だから魔法がそれほど広まっていないんだろう。
無償で教えてもらえるんだから、俺達はラッキーだったぜ。
使えるようになるかどうかは別としてな。
「体の中にある魔力を細く長く伸ばして、この形を描くようにイメージしてください」
篠原が紙に書いた単純な図形をイメージして目を閉じる。
ダメだな、魔力ってものがなんなのか全くわからん。
俺の中に魔力なんて本当にあるのか?
俺は手の平をじっと見つめる。
「あぁ!?」
「どうしました?」
「い、いや……」
なんだかわからねえが、自分の手からヌルリと糸を引く粘液のようなものが伸びたのが見えた。
気持ち悪いな。
服で手を拭うが、とれねえ。
なんなんだ?こりゃあ。
俺はメガネを外して目を擦る。
よし、見えなくなったな。
メガネをかける。
ヌルリ。
なんだってんだよこりゃあ。
メガネをかけるとこのヌルヌルが見えやがる。
というか、今気が付いたがメガネをとっても別に視界がかわらねえ。
俺は酷い乱視だったはずなんだが、くっきりはっきり見える。
メガネかける意味ねーな。
慣れたらメガネが無いと心細い気がするからかけるけどよ、そしたらやっぱりヌルヌルが見えやがるんだよな。
このヌルヌル、他の奴らも体から出てやがる。
平気なのかよ。
「篠原さん、ちょっともう一度お手本見せてもらってもいい?僕は感覚で覚えるタイプだから」
「いいですよ」
篠原が人差し指を立てる。
するとヌルヌルが渦巻いてあっという間にさっき篠原が紙に描いた図形を形作る。
まさか、このヌルヌルが魔力ってやつなのかよ。
おいおい、これは目に見えねえはずだろ。
賢者の丸メガネの説明文にあった、目がよくなるって魔力まで見えるようになっちまうって意味なのかよ。
くそっ、そうなってくると頭もよくなるってなんだ?
向こうの世界のことを良く思い出してみりゃあ、俺ってこんなに明瞭に物事を考えられるタイプだったか?
もっと何も考えずにただ毎日をだらだら過ごすような人間だった気がするぜ。
やべえ、神器ってやつは本当にやべえ。
人間性すらも軽く変わっちまったってことだぜ。
ほんじゃなにか、俺は今睡眠が必要なくてメンタル不動で魔力が見えて視力が良くて思考能力も少し強化されているわけか。
もはやサイボーグじゃねえかよ。
はぁ、もうあまり考えないようにするか。
なるようになるぜ。
「ほい着火と」
「すごい!ミタケン一発じゃん!僕も頑張るよ!」
「一発……そんなはずは……」
ぐぐぐっとどこにあるか分からない器官を動かし、粘つく粘液状のエネルギーを紙に描かれたとおりの図形に変形させたらすぐに俺の指先に火が灯った。
どういうわけか魔力の動かし方も篠崎がやるのを見ていたら大体分かった。
魔力も見える。
失敗しようがねえだろ。
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