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閑話6(とある異世界人視点)

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「すまねえ、助かった」

「ありがとう、お姉さん」

「いえ、礼には及びませんよ」

 床にめり込む冷蔵庫を見た大男はなぜか血相を変えて謝り始めた。
 わけがわからねえ。
 この世界では冷蔵庫は信仰の対象なのか?
 その後、無事にギルドに登録することができた。
 あいつらは冒険者登録しに来る田舎者から金を巻き上げているチンピラ連中らしく、あいつらの手下にならねえとギルドで仕事できねえなんてルールは無いそうだ。
 ケチな連中がいたもんだ。

「少し前まではあんな連中は騎士団が許さなかったんですが、今はね……」

「騎士団に何かあったんですか?」

 少し暗い顔で騎士団のことを語る女性に、物怖じもせずに一樹が質問する。

「騎士団は、今は以前とは全く別の組織になってしまいました。こう見えても私、騎士団に所属していたんですよ」

「え?じゃあなんで辞めたの?」

 一樹はずけずけと質問する。
 こいつ、勇者だな。
 いや俺も勇者ってもんになっちまったんだったか。
 空気を読むとか勇者には必要なさそうだよな。
 必要なのは人の家の箪笥を漁るような図々しさだ。

「騎士団は、国王直属の戦力です。国王に命令されたら逆らうことができない。それがたとえ、人道に反する命令であったとしても」

「あの胡散臭そうな国王が何か命令したのか?」

「ええ。国王が命じたのは、勇者の捕縛。今、この国にいる勇者には黒い首輪が付けられています」

 どこかで聞いたような話だ。
 そもそもだ、勇者って俺達のことじゃなかったか?
 なんか勇者って言葉が出て来すぎて勇者がなんなのか分かりづらくなってきた。
 確認してみよう。

「勇者ってのは、俺達のことか?」

「あなたたちのことでもありますし、私たちのことでもある」

「僕わかった。たぶん勇者って前にも召喚されたことがあるんでしょ。小説でそういうパターン読んだことがある」

 なるほど、つまりこの目の前にいる姉ちゃんも。

「私もあなた方と同じく別の世界から召喚された異世界人です」

「神器も持ってるのか?」

「ええ、一人3つ」

「俺達も一人3つだ。それはどうやら同じなようだな」

 どうにもあのおっかねえ女、神って奴は悪趣味な奴らしい。
 どこにでもいるおっさんや二次元好きの学生、OLにとんでもねえアイテムを3つ持たせて異世界に送るなんて正気じゃねえ。
 
「で、あんたはなんで俺達みたいな首輪の付いてねえ勇者を探してたんだ?まあ予想はできるけどな」

「私の用件はあなた方と利害が一致していると思います。この国を出たい、それだけです」

「だよな」

「それだけなら私一人だけで十分なのですが、実は知り合いが首輪を付けられていまして。助けたいんです」

「それに協力して欲しいってことか?」

「はい」

 逃げるだけなら神器を持った奴が3人もいりゃあいけそうだ。
 このお嬢ちゃんと一樹の神器はわからねえが、3つとも使えねえ神器ってことはねえだろ。
 9つの神器を上手いこと使えば、この国から出るのは難しくねえはずだ。
 だが、このお嬢ちゃんの知り合いを助けるのは成功するかわからねえ。
 なにせ向こうには1000人の勇者がいる。
 単純計算で3000の神器があるんだ。
 お嬢ちゃんの知り合いってのは、十中八九勇者だろう。
 首輪を付けられていればその知り合いってのも襲い掛かってくるかもしれねえんだ。
 そんなのと戦って殺さずに無力化して、首輪を外すことが可能なのかわからねえ。

「僕は協力するよ」

「お前な、小説の中の話じゃねえんだぞ」

「わかってる。だけど、お姉さんの協力が無ければ僕たちがこの国から出るのが難しいっていうのも事実でしょ?」

 そうなんだよな。
 俺達にはあまり選択肢がない。
 自分の神器の力も把握してないから自分がどの程度のことができるのかも分からない。
 さっきは町のチンピラにいいようにやられた。
 こんなんじゃあ国から出ることもままならねえ。
 お嬢ちゃんの力が必要なのは事実だ。
 どの道お嬢ちゃんが助けてくれなかったら俺達は国境で捕まっていただろう。
 これも運命って奴なのかもな。

「わかった。俺も協力するぜ」

「ありがとうございます。そういえば名前を名乗ってなかった。私は篠原静香です」

「僕は野村一樹」

「俺は三田健三。ミタケンって呼んでくれ」


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