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110.おっさん飲み会
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ドラゴニアの街、とある女の子のいるお店。
その一角では、おっさん3人が女の子も同席させずに酒を飲んでいた。
俺と梶原さん、ドノバンさんの3人だ。
ドラゴニアのダンジョンの攻略を22層で一端やめることにした俺は、腐竜の素材を回収して腐竜が守っていた遺跡の中を少し散策してダンジョンを出た。
腐竜が守っていた遺跡の中には18階層から入った隠し階層ボス部屋後の宝箱と同じようにろくな物がなかった。
せいぜいちょいレアな魔道具レベルの物ばかりだった。
やはり昔一度攻略されているダンジョンというのは旨味が少ない。
隠し階層のそのまた隠し宝箱部屋のように隠しに隠された要素を探す以外にはダンジョンの美味しいところはすべて初回攻略者に持っていかれてしまって、あるのは残りカスだけだ。
割りに合わないとは思うが、それを拾って帰らなければもっと割りに合わない。
俺は遺跡の中の金目のものを根こそぎ回収した。
それでも腐竜の素材の買い取り価格を上回ることは無かったが。
ダンジョンから出た俺は、少し鼻を高くしながらギルドに向かった。
やはり現在の最高到達階層でフィールドボスまで倒して帰ってきたというのは少し気分がいい。
嫌味に自慢してしまいたくなる気持ちを抑え、梶原さんとドノバンさんだけにそのことを伝えた。
そして現在に至るというわけだ。
「いやぁ、すばらしい。さすがは木崎さんです。あの腐竜を一人で倒して帰ってくるなんて」
「いえ、あれは、その、ゲームで言ったらチートプログラムを使って勝ったようなものでして……」
「いやいや、そんなこと言ったらあんたたち全員神から神器もらってんだからズルだろうよ」
「そうですよ。最初からズルい力なんですから、何を使ったところで勝ちは勝ちですよ」
「まあ現実的に考えるとそうなんですがね。私はダンジョンを本気で攻略したいわけじゃないんですよ」
「どういうことですか?」
俺はダンジョンに潜った理由と、ダンジョンについての印象を話す。
そもそもダンジョンに潜ったのは暇だったからで、ついでに腐竜の心臓を取れたらいいなくらいの気持ちだった。
生活を賭けてダンジョンに潜っているわけでは無いのだ。
「真面目にダンジョンを攻略している冒険者の皆さんには申し訳ないんですが、ダンジョンってゲームみたいじゃないですか」
「ゲームっていうのはあれかい。お前さんたちの世界にあったっていう遊びだろ?まあダンジョンシーカーなんざ真面目に働いてる奴からしてみたら一攫千金狙いの遊び人みたいなものだろうがな」
「気持ちは分かりますよ。私もこの世界に来たばかりの頃は冒険者をしていましたから。ダンジョンの攻略というのは、社会に対する貢献という意味で言えば冒険者の仕事よりも低い。ただ自分の金のために挑むか、命を賭けた遊び感覚で挑むかという自己完結型の仕事です。ゲームのようだという表現は正しいと思いますよ」
「そうなんですよね。金を稼ぐだけなら冒険者でいい。充実感も稼ぎも、冒険者の仕事に不満は無いんですよ。私がダンジョンに潜ったのはやはり少しの名声と刺激を求めてという理由が強い。だからこそ、自分で自分の遊びをつまらなくしてしまうチートプログラムのような神器は使いたくなかった。それをしてしまったのは欲に負けたからです。だから自分では納得できない結果ではあるんですよね。でも自慢したい気持ちはある。困ったものです」
俺にとって冒険者という仕事は憧れだったし、実際にやってみてもそこそこやりがいがあって面白い仕事だと思っていた。
色々な街で依頼を探せば、その街特有の依頼があったりしてどんな街なのかが段々と分かってくるのも冒険者の楽しみのひとつだ。
そんな楽しい仕事である冒険者に比べて、ダンジョンシーカーという仕事は少しドライな印象を受ける。
自分の稼ぎのため、名声のために潜るのがダンジョンだ。
低層では街の名産であるドラゴン肉の確保のために潜っている冒険者もいたが、10層を越えればいなくなる。
そこから先は自己満足と一攫千金の世界。
俺にとっては、ゲームのように思えた。
だからこそ、つまらなくする神器は使いたくなかった。
だが、名声や金が欲しい自分もいる。
22階層まで潜れるBランク冒険者だとこういった店で話せば、女の子たちにちやほやされるのではないかと考えてしまう俗物的な自分がいるのだ。
「なるほど、気持ちは理解できます」
「俺はわからねえな。汚い手を使おうがズルい神器使おうが勝ちは勝ちだろうが。ダンジョンの攻略なんてそんなもんだし、ダンジョンシーカーなんて連中はどいつもこいつも姑息な攻略法を自慢するような奴らだぜ?俺なら腐竜を倒したことを自慢しまくってウハウハ気分を楽しむがな」
「それはそれで魅力的ですね」
俺は店の女の子のリストを眺める。
腐竜の守っていた遺跡の中の宝と腐竜本体の素材を売却すれば、いったいどれだけの金が手に入るのだろうか。
女の子の指名料と酒の値段を計算し、ゴクリと唾を飲み込んだ。
ドノバンさんに聞いたどのくらい貢げばアフターで連れ込み宿に行ってもらえるのかという確率論の話も俺の頭の中を駆け巡る。
酒池肉林、できそうだな。
「ドノバンさん、やっちゃいますか」
「お、やる気になったのか?金はあるんだから、そうこなくちゃな。カジワラも、今日は嫁さん帰ってこねーんだろ?」
「い、いえ、ですが私は……」
「大丈夫だって。俺達3人が秘密を守れば嫁さんにはバレっこねーよ」
「そ、そうですかね」
「心配するな。俺達の中に口の軽い奴はいねーよ」
ドノバンさんは悪魔のような誘い文句で梶原さんを共犯者に引き込む。
ちなみにドノバンさんも既婚者だ。
3人の中で独身は俺だけ。
ドノバンさんは頻繁に浮気がバレて家を追い出されているようだ。
絶対大丈夫じゃないと思うが、独身の俺には関係の無い話。
「すいませーん、この子とこの子とこの子、あとこの子も指名で!」
「ありがとうございます!ご指名入りました!!」
「「「ありがとうございます」」」
酒池肉林の開幕だ。
その一角では、おっさん3人が女の子も同席させずに酒を飲んでいた。
俺と梶原さん、ドノバンさんの3人だ。
ドラゴニアのダンジョンの攻略を22層で一端やめることにした俺は、腐竜の素材を回収して腐竜が守っていた遺跡の中を少し散策してダンジョンを出た。
腐竜が守っていた遺跡の中には18階層から入った隠し階層ボス部屋後の宝箱と同じようにろくな物がなかった。
せいぜいちょいレアな魔道具レベルの物ばかりだった。
やはり昔一度攻略されているダンジョンというのは旨味が少ない。
隠し階層のそのまた隠し宝箱部屋のように隠しに隠された要素を探す以外にはダンジョンの美味しいところはすべて初回攻略者に持っていかれてしまって、あるのは残りカスだけだ。
割りに合わないとは思うが、それを拾って帰らなければもっと割りに合わない。
俺は遺跡の中の金目のものを根こそぎ回収した。
それでも腐竜の素材の買い取り価格を上回ることは無かったが。
ダンジョンから出た俺は、少し鼻を高くしながらギルドに向かった。
やはり現在の最高到達階層でフィールドボスまで倒して帰ってきたというのは少し気分がいい。
嫌味に自慢してしまいたくなる気持ちを抑え、梶原さんとドノバンさんだけにそのことを伝えた。
そして現在に至るというわけだ。
「いやぁ、すばらしい。さすがは木崎さんです。あの腐竜を一人で倒して帰ってくるなんて」
「いえ、あれは、その、ゲームで言ったらチートプログラムを使って勝ったようなものでして……」
「いやいや、そんなこと言ったらあんたたち全員神から神器もらってんだからズルだろうよ」
「そうですよ。最初からズルい力なんですから、何を使ったところで勝ちは勝ちですよ」
「まあ現実的に考えるとそうなんですがね。私はダンジョンを本気で攻略したいわけじゃないんですよ」
「どういうことですか?」
俺はダンジョンに潜った理由と、ダンジョンについての印象を話す。
そもそもダンジョンに潜ったのは暇だったからで、ついでに腐竜の心臓を取れたらいいなくらいの気持ちだった。
生活を賭けてダンジョンに潜っているわけでは無いのだ。
「真面目にダンジョンを攻略している冒険者の皆さんには申し訳ないんですが、ダンジョンってゲームみたいじゃないですか」
「ゲームっていうのはあれかい。お前さんたちの世界にあったっていう遊びだろ?まあダンジョンシーカーなんざ真面目に働いてる奴からしてみたら一攫千金狙いの遊び人みたいなものだろうがな」
「気持ちは分かりますよ。私もこの世界に来たばかりの頃は冒険者をしていましたから。ダンジョンの攻略というのは、社会に対する貢献という意味で言えば冒険者の仕事よりも低い。ただ自分の金のために挑むか、命を賭けた遊び感覚で挑むかという自己完結型の仕事です。ゲームのようだという表現は正しいと思いますよ」
「そうなんですよね。金を稼ぐだけなら冒険者でいい。充実感も稼ぎも、冒険者の仕事に不満は無いんですよ。私がダンジョンに潜ったのはやはり少しの名声と刺激を求めてという理由が強い。だからこそ、自分で自分の遊びをつまらなくしてしまうチートプログラムのような神器は使いたくなかった。それをしてしまったのは欲に負けたからです。だから自分では納得できない結果ではあるんですよね。でも自慢したい気持ちはある。困ったものです」
俺にとって冒険者という仕事は憧れだったし、実際にやってみてもそこそこやりがいがあって面白い仕事だと思っていた。
色々な街で依頼を探せば、その街特有の依頼があったりしてどんな街なのかが段々と分かってくるのも冒険者の楽しみのひとつだ。
そんな楽しい仕事である冒険者に比べて、ダンジョンシーカーという仕事は少しドライな印象を受ける。
自分の稼ぎのため、名声のために潜るのがダンジョンだ。
低層では街の名産であるドラゴン肉の確保のために潜っている冒険者もいたが、10層を越えればいなくなる。
そこから先は自己満足と一攫千金の世界。
俺にとっては、ゲームのように思えた。
だからこそ、つまらなくする神器は使いたくなかった。
だが、名声や金が欲しい自分もいる。
22階層まで潜れるBランク冒険者だとこういった店で話せば、女の子たちにちやほやされるのではないかと考えてしまう俗物的な自分がいるのだ。
「なるほど、気持ちは理解できます」
「俺はわからねえな。汚い手を使おうがズルい神器使おうが勝ちは勝ちだろうが。ダンジョンの攻略なんてそんなもんだし、ダンジョンシーカーなんて連中はどいつもこいつも姑息な攻略法を自慢するような奴らだぜ?俺なら腐竜を倒したことを自慢しまくってウハウハ気分を楽しむがな」
「それはそれで魅力的ですね」
俺は店の女の子のリストを眺める。
腐竜の守っていた遺跡の中の宝と腐竜本体の素材を売却すれば、いったいどれだけの金が手に入るのだろうか。
女の子の指名料と酒の値段を計算し、ゴクリと唾を飲み込んだ。
ドノバンさんに聞いたどのくらい貢げばアフターで連れ込み宿に行ってもらえるのかという確率論の話も俺の頭の中を駆け巡る。
酒池肉林、できそうだな。
「ドノバンさん、やっちゃいますか」
「お、やる気になったのか?金はあるんだから、そうこなくちゃな。カジワラも、今日は嫁さん帰ってこねーんだろ?」
「い、いえ、ですが私は……」
「大丈夫だって。俺達3人が秘密を守れば嫁さんにはバレっこねーよ」
「そ、そうですかね」
「心配するな。俺達の中に口の軽い奴はいねーよ」
ドノバンさんは悪魔のような誘い文句で梶原さんを共犯者に引き込む。
ちなみにドノバンさんも既婚者だ。
3人の中で独身は俺だけ。
ドノバンさんは頻繁に浮気がバレて家を追い出されているようだ。
絶対大丈夫じゃないと思うが、独身の俺には関係の無い話。
「すいませーん、この子とこの子とこの子、あとこの子も指名で!」
「ありがとうございます!ご指名入りました!!」
「「「ありがとうございます」」」
酒池肉林の開幕だ。
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