おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉

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閑話(女神視点)

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「飽きましたね。何か別の遊びでも考えましょうか」

 ちょっと前に異世界から招きいれた人間達の観察は、最近の私の日課でした。
 以前招き入れた人たちには一人1つの神器を渡していたのですが、今回は奮発して一人3つにしてみました。
 それというのも、あちらの世界の身分の低い人には強い力を、身分の高い人には弱い力を渡したらすごく楽しかったからです。
 力によって日常から押さえつけられていた人たちが、いざ力を手に入れたらそれはもう大変。
 世界の秩序も崩壊してしまうほどの騒動になり、人間たちは私をとても楽しませてくれました。
 だから今度はもっと力を与えてみたらどうなるのかと一人3つ渡したのですが、どうやらあちらの世界は色々あって身分の差というものが表向きは無くなってしまったみたいですね。
 でも自由で平等な世だからこそ、胸の内に秘めるほの暗い感情というものもあるものです。
 それをうまく刺激するために神器の能力には優劣をつけました。
 それまで自由で平等に扱われていた人が胸の奥に秘めていた劣等感や優越感が、表に出てきてすごく楽しめました。
 あちらの世界では才能や家柄などは運次第でしたね。
 しかし神器を選んだのは自分自身。
 一体何に鬱憤をぶつければいいのか分からない葛藤を抱える人たちが、神器を他の人から奪えると分かったときの反応も大変傑作でしたね。
 そうして異世界人たちは結構長い間私を楽しませてくれました。
 アタリ神器を持つ他の異世界人には勝てないからといって、現地の人間相手に力を見せびらかして優越感に浸るもの。
 奴隷を買って欲望の限りを尽くすもの。
 権力者に気に入られて背徳的な遊びに興じるもの。
 他の異世界人を殺して神器を奪うもの。
 返り討ちにあって神器を奪われるもの。
 それらを毎日観察して楽しむのが日課だったのですが、そろそろ飽きてしまいました。
 人間達ときたらやることが大体同じなんですから。
 いい加減に飽きるというもの。

「困りましたね。新しい遊びが思い浮かびません。何か人間達が面白いことを始めないでしょうか。ん?この国は……」

 何か面白そうな気配がして、そちらに目を向けます。
 そこには怪しげな儀式を行っている人間達がいました。
 術式的には全く意味の無い儀式ですが、私の目についたのですから意味はあったといえるでしょう。
 この国は前にも異世界から人間を召喚しようとしていた国の一国です。
 前は3つの国が協力して儀式を行っていたのですが、今は一国だけですね。
 国をよく観察してみれば、前よりもずっと小さくなってしまっているようです。
 これでは他の2国と対等には話し合えないでしょうね。
 前も無意味な儀式で異世界人を召喚できたから、今度もできるだろうと思っているようです。
 そもそも人間の力だけで異世界から何百人もの人間を召喚なんてできるわけがないというのに、本当に愚かです。
 愚かで、なんて楽しい人たちなんでしょうか。
 これは異世界からまた人間を召喚してあげないといけませんね。
 待っていてください、可愛い愚か者たち。
 とっても楽しいおもちゃ神器を持った異世界の愚か者をたくさん送ってあげますからね。


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