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109.限界

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後半視点が変わるのですが、別話に分けたほうが分かりやすいかと思って分けました。
後半は次話をご覧ください。

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               以下本編
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 ザァザァと降り注ぐ強酸の雨、ボロボロの身体、一向に掴めない攻略の糸口。
 正直に言って、限界だ。
 ここが今の俺の限界。
 22階層、フィールドボス腐竜ボルネウスが今の俺と実力が拮抗する相手だった。
 あわよくば30階層まで行こうなんて、甘い考えだったとしか思えない。
 俺は腐竜の攻略を諦めた。
 正面からの攻略をだ。
 ここから先は消化試合だ。
 俺は神の苦無威を具現化し、触腕の1本に握らせて隠密能力を発動した。
 神の苦無威の隠密能力は、腐竜の高感度センサーすらも誤魔化すことに成功する。
 常に俺の隠れている方向を向いていた機銃は急に俺の位置が分からなくなって困ったように左右に動いた。
 障害物を破壊しながら真っ直ぐに向かってきていた腐竜自身も立ち止まり、頭部のカメラで周囲を探る。
 思ったとおり神の苦無威の能力を発動しての暗殺であれば、じっくり特級魔法を至近距離でぶち込むことができそうだ。
 俺は牛鬼の如意槍の刃に分子間結合力消滅ブレードを付与し、腐竜の頭と胴体を切り離した。
 ぬかるんだ地面に腐竜の頭が落ち、首から上の無くなった胴体から血が噴出す。
 腐竜の血液は赤かった。
 そのメタリックなボディは一枚剥けば肉の身体だということは最初につけた胸の傷を見れば分かる。
 機械のような見た目なので頭を潰しても動く気がしてしまうが、ちゃんと頭には脳みそが入っていて頭に致命傷を負えば死ぬ。
 それが今証明されたわけだ。
 首から上を失った腐竜の身体がぐらりと揺れ、ぬかるんだ地面に汚い音をさせて倒れこんだ。
 次に挑むのは正面突破ができるくらい力をつけてからだ。
 本当は倒さずに逃げることもできたのだが、金が欲しかったのとBランクになって増大した見栄でつい神の苦無威を使って倒してしまった。
 俺だってすごい冒険者だと思われたいという欲求はある。
 梶原さんでも倒せなかった魔物を倒して帰ったらギルドで一目置かれるのではないかという浅はかな考えだ。
 神の苦無威の能力が便利すぎてそんなどうでもいいことでも使ってしまうのだ。
 前から思っていたけど、神と名のつく神器はどれもとんでもない威力を発揮する。
 もちろん神の名を冠していなくても便利な神器はたくさんあるし、組み合わせ次第でどれだけでも強力になるのが神器だ。
 しかし神器の能力を規模と威力だけで判断するならば、神と名のつく神器は格が違う。
 神が作り人に与えた神器というアイテムの、公式のアタリという意味なのかもしれない。
 なにをアタリと判断するかは需要や価値観次第だが、神が定義するアタリの神器とはおそらくこの神の名を冠したアイテムなのだろう。
 酒やクナイはともかく、タバコや革靴、冷蔵庫をアタリにするのがあの神様らしい。
 承認欲求や闘争心から力を求める人には与えず、平穏や利便性を求める人に与える。
 そしてそれを奪い合わせる。
 平穏に暮らしたかったのにいきなり神器を求めて襲いかかられた人は、苦悩の表情を浮かべながら襲ってきた同郷の人間を殺す。
 神様は今頃あの空間で楽しんでいる頃だろうな。



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