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106.湿地フィールド
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傷口を焼いてみても、電撃で体内にダメージを与えてみても、胴体を直接攻撃してみても、何をしようとデザートヒュドラは再生した。
どうやら延々とダメージを与え続ける以外の攻略法はなさそうだ。
無限に再生し続ける生き物なんて存在しないはずだから、それでいけるはずなんだけどな。
神酒という無限に湧き出す回復アイテムを自分が所持しているだけに、いまいち信じきれない。
神器を体内に取り込んでいたりしたら無限再生の可能性も無くはないのかな。
しかし昔倒した人がいるという記録がある以上はなんらかの攻略手段が存在しているということ。
やはり無限再生はありえないな。
このまま押し切ればいつか死ぬはずだ。
俺は空中を蹴り、また2本首を切り落とした。
もはや首を刈り取るだけの作業になりつつある。
デザートヒュドラは9本の首以外はほとんど動かない。
長い9本の首が重くて胴体はあまり速くは動けないのだ。
だから必然的に攻撃の間合いは首の届く範囲に限定されてしまう。
その範囲に入って首を1、2本切り取り、離脱すれば攻撃を食らうことは無い。
たまに毒のブレスが飛んでくるが、即死するような毒では無いので首の届く範囲から離脱してからゆっくりと神酒で解毒すればいい。
完全な持久戦だ。
しかし大量のドラゴニュートとの戦いのときよりも余裕がある。
俺は持ってきたカロリーバーをかじりながら戦うことができる。
万にひとつも負けはない。
負けは無い……はずなのだが、なんでこいつこんなに死なないんだろう。
すでに戦い始めてから5時間ほどが経過している。
いくらなんでもおかしくないか?
一度引いて調べ直すか。
「え?夜だとデザートヒュドラって夜だと再生能力が弱いんですか?」
「ええ、デザートヒュドラは太陽の光を魔力に変換する能力がありまして。昼間だと無限に再生してしまうんですよ。倒すのなら夜がいいと思いますよ?」
梶原さんの話に俺は愕然とする。
俺はずっと無駄な努力をしていたというわけだ。
しかしギルドの資料にはそんなこと書かれていなかったけどな。
「すみません、誰かがその資料だけ借りパクしたようです」
借りパク許すまじ。
仕切り直して夜。
デザートヒュドラとの再戦だ。
前と同じ手順でおびき出し、一撃離脱戦法で首を切り落とす。
竜殺しの剣によって、一太刀で落ちるデザートヒュドラの長い首。
その切り口はなかなか再生しない。
「まさかこんな簡単な攻略法があるとはな……」
その部分だけ借りパクするとは、もはや悪意があるとしか思えない。
俺は借りパクした奴への恨みも込めて、数分でデザートヒュドラを首無し竜にした。
すべての首を切り落とし胴体から魔石を抜き取れば、さすがにもう再生することは無い。
夜だったらこんなに簡単に倒せる魔物だとは思わなかった。
9本の首による連携攻撃や流砂による足場の悪さ、そして毒のブレスはそこそこ厄介だが、この階層に来られるだけの力量を持っていればそれほど苦戦する相手ではないだろう。
フィールドボスは倒しても階層ボスのように宝箱部屋があるわけではないが、デザートヒュドラの素材はかなり高く売れる。
昼間切り落とした大量の首と大きな魔石だけでも数年暮らしていけるくらいの金額になるだろう。
せっかくBランク冒険者になったのに、稼ぎがしょぼくては笑われてしまうからね。
一回のダンジョンアタックでそのくらいは稼がないと。
ドラゴニアのダンジョン20階層。
ここからは湿地フィールドらしい。
「これは、湿地というよりも……」
廃墟と言ったほうがいいかもしれない。
コンセプトは荒廃した機械文明といったところか。
あちらこちらに朽ち果てた建物のようなものが残る文明滅亡後の世界。
振り続ける酸の雨によって地面はぬかるんでいる。
確かに湿地だけど、湿地はおまけみたいなものだろう。
出てくる魔物も機械と生命が融合したような禁断の科学じみた奴ばかりだし、終末期機械文明フィールドとでも呼んだほうがいいのではないだろうか。
もしかしたら竜種自体が人類が人工的に作り出した生物という設定なのかもしれない。
それにしても酷いフィールドだ。
雨が溜まった水たまりはボコボコと泡立って鼻がツンとする匂いを発しているし、当然地面には草1本として生えていない。
まさに死の大地。
空気も汚染されているようで、この階層を長い時間探索するのは普通の人間には危険だろう。
こんな階層を、梶原さんはどうやって攻略したのだろうか。
梶原さんの神器はスピードに特化している。
速度の領域では他に並ぶ人はいないであろう神器の持ち主だが、この階層を進む上では過酷な環境に適応するための能力が必要になるだろう。
梶原さんの持っている古の魔導書(水)で身につけることのできる水魔法で薄い水の膜を作って身体を包み込めば、多少は進むことができるかもしれない。
しかしいつかは膜の中の酸素が尽きる。
もしかしてスピードによるゴリ押しで進めるところまで進んだのだろうか。
22階層の腐竜との戦いも、そのへんが原因で負けてしまったのかもしれないな。
俺はこのフィールドに、どうやって対処していこうか。
やはりこの階層の空気はあまり吸わない方向で行くべきだろう。
病気は神酒で治るとはいえ、なんらかの有害物質が身体に蓄積してしまう可能性もある。
放射性物質のように、俺の身体に付着した物質から副次的に人体にとって有害な放射能のようなものが出る可能性もある。
そうなったらダンジョンから出て有害物質を撒き散らす人になってしまう。
なるべくこのフィールドの空気に触れないように風魔法で空気を遮断して、空間魔法で異空間に蓄えた空気を吸うことにしよう。
1時間に1回くらいはアルコール低めの神酒を摂取したほうがいいだろう。
とにかく嫌なフィールドだから、用心に用心を重ねて攻略していくとしよう。
どうやら延々とダメージを与え続ける以外の攻略法はなさそうだ。
無限に再生し続ける生き物なんて存在しないはずだから、それでいけるはずなんだけどな。
神酒という無限に湧き出す回復アイテムを自分が所持しているだけに、いまいち信じきれない。
神器を体内に取り込んでいたりしたら無限再生の可能性も無くはないのかな。
しかし昔倒した人がいるという記録がある以上はなんらかの攻略手段が存在しているということ。
やはり無限再生はありえないな。
このまま押し切ればいつか死ぬはずだ。
俺は空中を蹴り、また2本首を切り落とした。
もはや首を刈り取るだけの作業になりつつある。
デザートヒュドラは9本の首以外はほとんど動かない。
長い9本の首が重くて胴体はあまり速くは動けないのだ。
だから必然的に攻撃の間合いは首の届く範囲に限定されてしまう。
その範囲に入って首を1、2本切り取り、離脱すれば攻撃を食らうことは無い。
たまに毒のブレスが飛んでくるが、即死するような毒では無いので首の届く範囲から離脱してからゆっくりと神酒で解毒すればいい。
完全な持久戦だ。
しかし大量のドラゴニュートとの戦いのときよりも余裕がある。
俺は持ってきたカロリーバーをかじりながら戦うことができる。
万にひとつも負けはない。
負けは無い……はずなのだが、なんでこいつこんなに死なないんだろう。
すでに戦い始めてから5時間ほどが経過している。
いくらなんでもおかしくないか?
一度引いて調べ直すか。
「え?夜だとデザートヒュドラって夜だと再生能力が弱いんですか?」
「ええ、デザートヒュドラは太陽の光を魔力に変換する能力がありまして。昼間だと無限に再生してしまうんですよ。倒すのなら夜がいいと思いますよ?」
梶原さんの話に俺は愕然とする。
俺はずっと無駄な努力をしていたというわけだ。
しかしギルドの資料にはそんなこと書かれていなかったけどな。
「すみません、誰かがその資料だけ借りパクしたようです」
借りパク許すまじ。
仕切り直して夜。
デザートヒュドラとの再戦だ。
前と同じ手順でおびき出し、一撃離脱戦法で首を切り落とす。
竜殺しの剣によって、一太刀で落ちるデザートヒュドラの長い首。
その切り口はなかなか再生しない。
「まさかこんな簡単な攻略法があるとはな……」
その部分だけ借りパクするとは、もはや悪意があるとしか思えない。
俺は借りパクした奴への恨みも込めて、数分でデザートヒュドラを首無し竜にした。
すべての首を切り落とし胴体から魔石を抜き取れば、さすがにもう再生することは無い。
夜だったらこんなに簡単に倒せる魔物だとは思わなかった。
9本の首による連携攻撃や流砂による足場の悪さ、そして毒のブレスはそこそこ厄介だが、この階層に来られるだけの力量を持っていればそれほど苦戦する相手ではないだろう。
フィールドボスは倒しても階層ボスのように宝箱部屋があるわけではないが、デザートヒュドラの素材はかなり高く売れる。
昼間切り落とした大量の首と大きな魔石だけでも数年暮らしていけるくらいの金額になるだろう。
せっかくBランク冒険者になったのに、稼ぎがしょぼくては笑われてしまうからね。
一回のダンジョンアタックでそのくらいは稼がないと。
ドラゴニアのダンジョン20階層。
ここからは湿地フィールドらしい。
「これは、湿地というよりも……」
廃墟と言ったほうがいいかもしれない。
コンセプトは荒廃した機械文明といったところか。
あちらこちらに朽ち果てた建物のようなものが残る文明滅亡後の世界。
振り続ける酸の雨によって地面はぬかるんでいる。
確かに湿地だけど、湿地はおまけみたいなものだろう。
出てくる魔物も機械と生命が融合したような禁断の科学じみた奴ばかりだし、終末期機械文明フィールドとでも呼んだほうがいいのではないだろうか。
もしかしたら竜種自体が人類が人工的に作り出した生物という設定なのかもしれない。
それにしても酷いフィールドだ。
雨が溜まった水たまりはボコボコと泡立って鼻がツンとする匂いを発しているし、当然地面には草1本として生えていない。
まさに死の大地。
空気も汚染されているようで、この階層を長い時間探索するのは普通の人間には危険だろう。
こんな階層を、梶原さんはどうやって攻略したのだろうか。
梶原さんの神器はスピードに特化している。
速度の領域では他に並ぶ人はいないであろう神器の持ち主だが、この階層を進む上では過酷な環境に適応するための能力が必要になるだろう。
梶原さんの持っている古の魔導書(水)で身につけることのできる水魔法で薄い水の膜を作って身体を包み込めば、多少は進むことができるかもしれない。
しかしいつかは膜の中の酸素が尽きる。
もしかしてスピードによるゴリ押しで進めるところまで進んだのだろうか。
22階層の腐竜との戦いも、そのへんが原因で負けてしまったのかもしれないな。
俺はこのフィールドに、どうやって対処していこうか。
やはりこの階層の空気はあまり吸わない方向で行くべきだろう。
病気は神酒で治るとはいえ、なんらかの有害物質が身体に蓄積してしまう可能性もある。
放射性物質のように、俺の身体に付着した物質から副次的に人体にとって有害な放射能のようなものが出る可能性もある。
そうなったらダンジョンから出て有害物質を撒き散らす人になってしまう。
なるべくこのフィールドの空気に触れないように風魔法で空気を遮断して、空間魔法で異空間に蓄えた空気を吸うことにしよう。
1時間に1回くらいはアルコール低めの神酒を摂取したほうがいいだろう。
とにかく嫌なフィールドだから、用心に用心を重ねて攻略していくとしよう。
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