57 / 205
57.海賊
しおりを挟む
海賊はそこそこ手練ぞろいだった。
普通の貨物船とかだったら、ほとんどの場合なす術もなく荷物を奪われて最悪船員も奴隷として売られてしまうか殺されてしまうんじゃないかな。
勇者もいることだし、この海賊団は早めに駆除することができて幸いだったかもしれない。
「くそっ、こいつ強えぞ!」
「当たり前よ、勇者なんだから。一人でやろうとしないで、みんなはあたしがあいつに一撃入れる隙を作ってくれればいいから」
「「「了解!」」」
やけに足並みが揃っていると思えば、彼女自身がこの海賊団のまとめ役というわけか。
いったい何がどうなればそんなことになるんだ。
海賊たちは先程よりも、より連携を意識した動きで俺に攻撃を仕掛けてくる。
大降りはせず、コンパクトな立ち回りでチクチクと四方八方から剣撃を放つ海賊たち。
それに対して、俺は1人ずつ各個撃破していくことで対応する。
正直言って彼らがいくら俺に攻撃を仕掛けようと俺にはほとんどダメージが入らないのだ。
アンネローゼさんクラスの腕力と技量を持った人が名刀を用いて、やっと浅く傷付けることができるというレベルに俺の身体は人間離れした防御力になってしまっている。
海賊の刃こぼれしたナマクラなんか素手で掴んでも痛くも痒くも無いのだ。
「ひっ、こいつ、剣を素手で……」
「はなせっ、はなせよぉ!!」
そっちが離せばいいのに、武器を捨てる選択を取ることができなかった哀れな海賊は俺の前蹴りで甲板から蹴り出され海の藻屑となる。
「くそぅ、なんて野朗だ……」
「あんたたちっ、何してるの!早くあいつの動きを止めてよ!!」
伊藤から激を飛ばされる海賊たちだが、どれだけ頑張ろうと俺に通用する武器すら無い状況ではどうにもならない。
一人、また一人と海に蹴り出されていく。
そしてついに最後の一人。
「ひっ、た、助けてくれぇ」
俺はその懇願を聞き入れることなく、最後の一人となった海賊を蹴り出す。
ぼちゃんっという海賊が海に落ちる音。
「ま、待って。話し合いましょう」
「何をかな?」
「そ、そうだ。あたしって結構可愛くない?おじさんに抱かれてあげてもいいよ。こんな可愛い女子高生を好きにできる機会なんて、向こうの世界だったら無いんだから」
「生憎とおじさんはシャワー浴びてる間に財布を盗られそうな子とは遊ばないことにしてるんだよ」
「へ、へー。そうなんだ……」
俺の取り付く島もない返答に、冷や汗を垂らして焦る伊藤。
キョロキョロと周囲を見回して、現状を打破できる手を探しているようだ。
おじさんはもう無理だと思うけどな。
結局何の策も思いつかなかったのか、ありったけの矢を放ってきた。
弓のくせに連射も可能なのか、雨あられと飛んでくる矢。
しかし連射するとさすがに威力が落ちるようで、1発1発はそれほど重くなかった。
俺は剣をひゅんひゅんと振り回して自分に当たるものだけ叩き落していく。
「は、ははは、嘘でしょ……」
「嘘じゃないんだよ。自分でも化け物じみていると思っているけどね」
「はぁ、降参……」
伊藤は手をあげて降参する。
同じ日本人が相手ならば降参すれば命までは奪われないと思っているのか、その表情にはそこまで悲壮感が無い。
確かに俺も無抵抗の日本人を殺したくはない。
しかしそれも、今までの所業次第だろう。
日本人だというだけで無条件に優遇するつもりは俺には無い。
一度男爵に指示を仰いで、普通の海賊にするものと同じような対処をすることにしよう。
「海賊の対処は盗賊と概ね同じですね。殺すか捕らえて犯罪奴隷にするかです」
「なるほど。しかし奴隷にするにしても男爵領はルーガル王国から孤立してしまっていますから、売り先に困りますね。転移で他国に運んで売ってもいいですけど、そこまでして売りたいわけでもないですからね」
俺と男爵は同じタイミングで捕らえられた海賊たちと勇者を見る。
海賊たちは海に落としたけれど、全員生きていたので一応捕らえてきたのだ。
海の男はしぶといな。
「ま、待ってくれよ。なあ、俺達あんたたちの役にたつから!」
「命だけは勘弁してくれよぉぉ」
「死にたくないよぉ」
「お、おじさん!同じ日本人でしょ!!」
その同じ日本人を先に襲ってきたのは君でしょうが。
おじさんだって許せることと許せないことがあるよ。
俺が矢を防いでいなければ、男爵領警備隊に2人の死者が出ていたことは間違いないんだ。
俺は古い考えの人間だから、女性には多少甘い。
しかし彼女はダメだ。
すでに甘いで助けられる範疇を越えている。
償いが必要だ。
「ふむ、船員が欲しいですな。文句を言わず働く愚直な船員が」
「男爵?」
男爵の言葉に俺は軽く驚く。
男爵の言葉ではまるで、奴隷として男爵領で働かせると言っているようだ。
海賊なんてやっていた奴等を働かせて大丈夫なのだろうか。
「獣人奴隷を解放したときに、大量に回収した隷属の首輪があったと思いますが」
「ああ、そういえばそんなものがありましたね。それを使ってこいつらを隷属させるのですね」
「はい。正直船に乗って海に出るのは領内の警備とは桁違いに危険です。一応特別手当は出していますが、今後任務として命令するのは大変心苦しい」
「言い方は悪いですけど、こいつらならたとえ死んでも惜しくないってわけですね」
「そういうことです」
まあ犯罪奴隷の使い方なんてこんなものだろう。
鉱山とか、船員とか、あとは戦争の最前線の肉壁など。
これなら償いとしても十分だろう。
こうして俺達は、船1隻と労働者を獲得したのだった。
普通の貨物船とかだったら、ほとんどの場合なす術もなく荷物を奪われて最悪船員も奴隷として売られてしまうか殺されてしまうんじゃないかな。
勇者もいることだし、この海賊団は早めに駆除することができて幸いだったかもしれない。
「くそっ、こいつ強えぞ!」
「当たり前よ、勇者なんだから。一人でやろうとしないで、みんなはあたしがあいつに一撃入れる隙を作ってくれればいいから」
「「「了解!」」」
やけに足並みが揃っていると思えば、彼女自身がこの海賊団のまとめ役というわけか。
いったい何がどうなればそんなことになるんだ。
海賊たちは先程よりも、より連携を意識した動きで俺に攻撃を仕掛けてくる。
大降りはせず、コンパクトな立ち回りでチクチクと四方八方から剣撃を放つ海賊たち。
それに対して、俺は1人ずつ各個撃破していくことで対応する。
正直言って彼らがいくら俺に攻撃を仕掛けようと俺にはほとんどダメージが入らないのだ。
アンネローゼさんクラスの腕力と技量を持った人が名刀を用いて、やっと浅く傷付けることができるというレベルに俺の身体は人間離れした防御力になってしまっている。
海賊の刃こぼれしたナマクラなんか素手で掴んでも痛くも痒くも無いのだ。
「ひっ、こいつ、剣を素手で……」
「はなせっ、はなせよぉ!!」
そっちが離せばいいのに、武器を捨てる選択を取ることができなかった哀れな海賊は俺の前蹴りで甲板から蹴り出され海の藻屑となる。
「くそぅ、なんて野朗だ……」
「あんたたちっ、何してるの!早くあいつの動きを止めてよ!!」
伊藤から激を飛ばされる海賊たちだが、どれだけ頑張ろうと俺に通用する武器すら無い状況ではどうにもならない。
一人、また一人と海に蹴り出されていく。
そしてついに最後の一人。
「ひっ、た、助けてくれぇ」
俺はその懇願を聞き入れることなく、最後の一人となった海賊を蹴り出す。
ぼちゃんっという海賊が海に落ちる音。
「ま、待って。話し合いましょう」
「何をかな?」
「そ、そうだ。あたしって結構可愛くない?おじさんに抱かれてあげてもいいよ。こんな可愛い女子高生を好きにできる機会なんて、向こうの世界だったら無いんだから」
「生憎とおじさんはシャワー浴びてる間に財布を盗られそうな子とは遊ばないことにしてるんだよ」
「へ、へー。そうなんだ……」
俺の取り付く島もない返答に、冷や汗を垂らして焦る伊藤。
キョロキョロと周囲を見回して、現状を打破できる手を探しているようだ。
おじさんはもう無理だと思うけどな。
結局何の策も思いつかなかったのか、ありったけの矢を放ってきた。
弓のくせに連射も可能なのか、雨あられと飛んでくる矢。
しかし連射するとさすがに威力が落ちるようで、1発1発はそれほど重くなかった。
俺は剣をひゅんひゅんと振り回して自分に当たるものだけ叩き落していく。
「は、ははは、嘘でしょ……」
「嘘じゃないんだよ。自分でも化け物じみていると思っているけどね」
「はぁ、降参……」
伊藤は手をあげて降参する。
同じ日本人が相手ならば降参すれば命までは奪われないと思っているのか、その表情にはそこまで悲壮感が無い。
確かに俺も無抵抗の日本人を殺したくはない。
しかしそれも、今までの所業次第だろう。
日本人だというだけで無条件に優遇するつもりは俺には無い。
一度男爵に指示を仰いで、普通の海賊にするものと同じような対処をすることにしよう。
「海賊の対処は盗賊と概ね同じですね。殺すか捕らえて犯罪奴隷にするかです」
「なるほど。しかし奴隷にするにしても男爵領はルーガル王国から孤立してしまっていますから、売り先に困りますね。転移で他国に運んで売ってもいいですけど、そこまでして売りたいわけでもないですからね」
俺と男爵は同じタイミングで捕らえられた海賊たちと勇者を見る。
海賊たちは海に落としたけれど、全員生きていたので一応捕らえてきたのだ。
海の男はしぶといな。
「ま、待ってくれよ。なあ、俺達あんたたちの役にたつから!」
「命だけは勘弁してくれよぉぉ」
「死にたくないよぉ」
「お、おじさん!同じ日本人でしょ!!」
その同じ日本人を先に襲ってきたのは君でしょうが。
おじさんだって許せることと許せないことがあるよ。
俺が矢を防いでいなければ、男爵領警備隊に2人の死者が出ていたことは間違いないんだ。
俺は古い考えの人間だから、女性には多少甘い。
しかし彼女はダメだ。
すでに甘いで助けられる範疇を越えている。
償いが必要だ。
「ふむ、船員が欲しいですな。文句を言わず働く愚直な船員が」
「男爵?」
男爵の言葉に俺は軽く驚く。
男爵の言葉ではまるで、奴隷として男爵領で働かせると言っているようだ。
海賊なんてやっていた奴等を働かせて大丈夫なのだろうか。
「獣人奴隷を解放したときに、大量に回収した隷属の首輪があったと思いますが」
「ああ、そういえばそんなものがありましたね。それを使ってこいつらを隷属させるのですね」
「はい。正直船に乗って海に出るのは領内の警備とは桁違いに危険です。一応特別手当は出していますが、今後任務として命令するのは大変心苦しい」
「言い方は悪いですけど、こいつらならたとえ死んでも惜しくないってわけですね」
「そういうことです」
まあ犯罪奴隷の使い方なんてこんなものだろう。
鉱山とか、船員とか、あとは戦争の最前線の肉壁など。
これなら償いとしても十分だろう。
こうして俺達は、船1隻と労働者を獲得したのだった。
76
お気に入りに追加
8,903
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい
兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない
兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
寝て起きたら世界がおかしくなっていた
兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる