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46.出航
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獣人奴隷を解放し、男爵領で保護する。
言うは簡単だが、それには多くの問題があった。
まず、奴隷にされている獣人の把握。
それは俺の偵察用虫型ゴーレムの情報収集能力によって解決。
次に、解放するための手段。
まあそれはチートの力で解決。
次に、解放された獣人たちが素直に従ってくれないかもしれないという問題。
それはアンネローゼさんに同行してもらうことで解決。
次に、男爵領への移動手段。
男爵領に移動したとバレれば王国側がうるさいので、誰にも気付かれることなく男爵領へ移動する方法が必要だった。
しかしそれも、チートな魔法によって解決。
全員転移で男爵領へ送った。
だが、男爵領に送ってからも問題は続く。
まず、住居の問題。
5000人といえば、男爵領の領民よりも数的には多い。
となれば住むところを用意するのも大変だ。
しかしこれは、土木工事に慣れた男爵領警備隊によって解決。
公民館のような広めの仮設住宅を100ほど用意して、そこに50人くらいずつ住んでもらうことになった。
衣、食、住の住は解決したわけだ。
となれば次に解決しなければならないのは、食だ。
食べるものが無ければ人は生きていけない。
食べ物があまり気味の男爵領だが、さすがに5000人を何ヶ月も養えるだけの食料は無かった。
これを解決したのが、神酒だった。
見るからに成長の遅そうな神樹の実は、毎日神酒をあげたおかげで10日ほどで実をつけた。
今では俺の背丈を越え、植木鉢を変えなければいけないほどに成長している。
これ以上育つと地面に植えなければいけなくなるので、神酒を与えるのは一度辞めている。
今日までにつけた実の数はもはや数えることが難しいほどだ。
神酒を与えれば植物が異常成長する。
そんな性質に目を付けた男爵は、口の堅い農家さんを選んで農作物に神酒を与えさせた。
農作物は3日サイクルで実を付け始めた。
種を蒔いて、芽が出て、成長して、収穫する。
そこまで3日だ。
土壌に与える影響が気になるので、あまり多用はしたくないな。
しかしこれにより、男爵領の食料はほぼ無限となった。
獣人たちの食の問題は解決だ。
しかしまだまだ問題は尽きない。
住、食、ときたら次は衣だ。
まあ衣はそこまで差し迫ってはいなかった。
なぜなら獣人の半分ほどは、毛皮を纏っている人だからだ。
自前の毛皮があるので大事なところだけ隠したい、みたいな人が多かった。
残り半分は、男爵領で集めた古着や古布で事足りた。
新しい服を作りたい人には、申し訳ないけれど綿花の糸を紡ぐところから自作してもらった。
神酒の力で綿花だけはいくらでも提供できたからね。
というわけで衣の問題はそこまで悩むことなく解決。
さて、衣、食、住、が揃った獣人たちはじっとしていられなくなる。
その血の気の多さが次の問題となった。
一つの仮設住宅に50人くらいも詰め込んだのも、ストレスとなっていたのだろう。
結構な頻度で殴り合いの喧嘩が発生するようになった。
酷い怪我をして、神酒で治療したのも両手の指で数えられる回数ではない。
領境の壁付近に作られた獣人のための隔離区域は、彼らには狭すぎた。
家畜のように餌を与えられて閉じ込められる難民生活は、獣人の性質とは相性が悪かったのだ。
暴動を起こしそうになる獣人たち。
俺は慌ててアンネローゼさんに頼んで彼らを宥めてもらった。
アンネローゼさんたち元軍人の獣人たちは、それまで元奴隷の獣人たちとは別で男爵邸付近の宿で生活していたのだけれど、急遽隔離区域に移住してもらった。
獣人たちを纏める人がいないと大変なことになってしまうからね。
夜伽とか言って毎日のように男爵邸のネバネバ罠に引っかかる人が居なくなって俺も安心。
一石二鳥だ。
数々の問題を解決してきたけれど、最大の問題といえば獣人たちを送り返すための船が男爵領に存在していなかったことだろう。
見切り発車で行動すると、ここまで多くの問題に直面するということを俺は学んだ。
長かったが、最後の問題である船もようかく完成した。
「さて、出航しますか」
「お気をつけて」
「ちょくちょく帰ってきますよ」
男爵のお祖父さんが造らせ、船大工のコンラートさんが修理し、俺が魔改造した船、ビューティフルマリーベル号が今出航しようとしていた。
時を経た船ならではの味を壊したくなかったのでなかなか苦労したが、なんとか外観だけは変えずに魔法を付与することができた。
どこからどう見ても5000人も乗れそうにない船だが、中は1万人乗ってもまだ余裕があるほどの広さになっている。
静香さんの神の冷蔵庫と違って、重さは何人乗っても変わらない。
あの船の浮力で5000人分の重さなんて支えきれないからね。
特級魔法を何発撃っても無くならないくらいの俺の魔力を、何度も空になるまで使って手を加えた自信作だ。
ちょっとやりすぎた感はある。
主砲に魔導レールガンとか装備して何と戦うつもりなのか、自分でも疑問だ。
徹夜続きで少し頭がおかしくなっていた。
しかし付けてしまったものはしょうがない。
使わなくても済むように願っていようか。
「それじゃ、出航!」
船長は男爵だ。
男爵の船だからね。
男爵領を離れることになるが、すでに男爵は転移の魔法を使いこなしているので定期的に戻ることが可能だ。
他に気楽に海の旅が楽しめる貴族がいるかな。
中央のあたりで勇者だ神器だと、不毛な争いを続けている貴族共は人生を損しているな。
どれだけの力を持とうが、所詮それは手段であって目的ではない。
結局、人生楽しんだ奴が最終的に勝者なんだ。
俺も、昼間から酒でも飲んで楽しむとしよう。
人生ってやつを。
言うは簡単だが、それには多くの問題があった。
まず、奴隷にされている獣人の把握。
それは俺の偵察用虫型ゴーレムの情報収集能力によって解決。
次に、解放するための手段。
まあそれはチートの力で解決。
次に、解放された獣人たちが素直に従ってくれないかもしれないという問題。
それはアンネローゼさんに同行してもらうことで解決。
次に、男爵領への移動手段。
男爵領に移動したとバレれば王国側がうるさいので、誰にも気付かれることなく男爵領へ移動する方法が必要だった。
しかしそれも、チートな魔法によって解決。
全員転移で男爵領へ送った。
だが、男爵領に送ってからも問題は続く。
まず、住居の問題。
5000人といえば、男爵領の領民よりも数的には多い。
となれば住むところを用意するのも大変だ。
しかしこれは、土木工事に慣れた男爵領警備隊によって解決。
公民館のような広めの仮設住宅を100ほど用意して、そこに50人くらいずつ住んでもらうことになった。
衣、食、住の住は解決したわけだ。
となれば次に解決しなければならないのは、食だ。
食べるものが無ければ人は生きていけない。
食べ物があまり気味の男爵領だが、さすがに5000人を何ヶ月も養えるだけの食料は無かった。
これを解決したのが、神酒だった。
見るからに成長の遅そうな神樹の実は、毎日神酒をあげたおかげで10日ほどで実をつけた。
今では俺の背丈を越え、植木鉢を変えなければいけないほどに成長している。
これ以上育つと地面に植えなければいけなくなるので、神酒を与えるのは一度辞めている。
今日までにつけた実の数はもはや数えることが難しいほどだ。
神酒を与えれば植物が異常成長する。
そんな性質に目を付けた男爵は、口の堅い農家さんを選んで農作物に神酒を与えさせた。
農作物は3日サイクルで実を付け始めた。
種を蒔いて、芽が出て、成長して、収穫する。
そこまで3日だ。
土壌に与える影響が気になるので、あまり多用はしたくないな。
しかしこれにより、男爵領の食料はほぼ無限となった。
獣人たちの食の問題は解決だ。
しかしまだまだ問題は尽きない。
住、食、ときたら次は衣だ。
まあ衣はそこまで差し迫ってはいなかった。
なぜなら獣人の半分ほどは、毛皮を纏っている人だからだ。
自前の毛皮があるので大事なところだけ隠したい、みたいな人が多かった。
残り半分は、男爵領で集めた古着や古布で事足りた。
新しい服を作りたい人には、申し訳ないけれど綿花の糸を紡ぐところから自作してもらった。
神酒の力で綿花だけはいくらでも提供できたからね。
というわけで衣の問題はそこまで悩むことなく解決。
さて、衣、食、住、が揃った獣人たちはじっとしていられなくなる。
その血の気の多さが次の問題となった。
一つの仮設住宅に50人くらいも詰め込んだのも、ストレスとなっていたのだろう。
結構な頻度で殴り合いの喧嘩が発生するようになった。
酷い怪我をして、神酒で治療したのも両手の指で数えられる回数ではない。
領境の壁付近に作られた獣人のための隔離区域は、彼らには狭すぎた。
家畜のように餌を与えられて閉じ込められる難民生活は、獣人の性質とは相性が悪かったのだ。
暴動を起こしそうになる獣人たち。
俺は慌ててアンネローゼさんに頼んで彼らを宥めてもらった。
アンネローゼさんたち元軍人の獣人たちは、それまで元奴隷の獣人たちとは別で男爵邸付近の宿で生活していたのだけれど、急遽隔離区域に移住してもらった。
獣人たちを纏める人がいないと大変なことになってしまうからね。
夜伽とか言って毎日のように男爵邸のネバネバ罠に引っかかる人が居なくなって俺も安心。
一石二鳥だ。
数々の問題を解決してきたけれど、最大の問題といえば獣人たちを送り返すための船が男爵領に存在していなかったことだろう。
見切り発車で行動すると、ここまで多くの問題に直面するということを俺は学んだ。
長かったが、最後の問題である船もようかく完成した。
「さて、出航しますか」
「お気をつけて」
「ちょくちょく帰ってきますよ」
男爵のお祖父さんが造らせ、船大工のコンラートさんが修理し、俺が魔改造した船、ビューティフルマリーベル号が今出航しようとしていた。
時を経た船ならではの味を壊したくなかったのでなかなか苦労したが、なんとか外観だけは変えずに魔法を付与することができた。
どこからどう見ても5000人も乗れそうにない船だが、中は1万人乗ってもまだ余裕があるほどの広さになっている。
静香さんの神の冷蔵庫と違って、重さは何人乗っても変わらない。
あの船の浮力で5000人分の重さなんて支えきれないからね。
特級魔法を何発撃っても無くならないくらいの俺の魔力を、何度も空になるまで使って手を加えた自信作だ。
ちょっとやりすぎた感はある。
主砲に魔導レールガンとか装備して何と戦うつもりなのか、自分でも疑問だ。
徹夜続きで少し頭がおかしくなっていた。
しかし付けてしまったものはしょうがない。
使わなくても済むように願っていようか。
「それじゃ、出航!」
船長は男爵だ。
男爵の船だからね。
男爵領を離れることになるが、すでに男爵は転移の魔法を使いこなしているので定期的に戻ることが可能だ。
他に気楽に海の旅が楽しめる貴族がいるかな。
中央のあたりで勇者だ神器だと、不毛な争いを続けている貴族共は人生を損しているな。
どれだけの力を持とうが、所詮それは手段であって目的ではない。
結局、人生楽しんだ奴が最終的に勝者なんだ。
俺も、昼間から酒でも飲んで楽しむとしよう。
人生ってやつを。
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