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43.混沌とする王国内
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「王家からの使者である!門を開けよ!!」
男爵領の境界に築かれた城壁。
そこを通行するための門はたったひとつだけ。
そんな門の前で先ほどから喚きまわる数人の人間達。
実は彼らは今日初めて訪れたわけではない。
1週間ほど前に初めて訪れ、その時は男爵が居なかったので俺の判断で追い返した。
しかしそれから毎日のように門の前で騒ぎ立てている。
迷惑な人たちだ。
どうせ男爵が勝手に持ち場を離れたとか、貴族たちが裏切ったので助けてくれだとか、そんな内容だろう。
今、王国内は結構めちゃくちゃなのだ。
俺が奴隷を助けるために何人か国の重要人物を殺したことも原因のひとつなのだろうが、混乱の最も大きな理由は王国四大貴族のうちの3人が互いに争っているからだろう。
誰が明かしたのか、すでに勇者同士であれば神器を奪うことが可能なことが広く知られてしまっている。
貴族たちは3人の大貴族の派閥に分かれて勇者と神器の奪い合いを始めた。
そのせいで連合国軍にずいぶん深くまで攻め込まれている前線もあるくらいだ。
これはまずいと国王の直属の陣営である騎士団が止めに入ったのだが、静香さんというアタリ神器を持つ勇者を陣営に抱える騎士団も争いに無関係ではいられない。
大貴族と中小貴族、王国騎士団が混ざり合わさってすったもんだしている。
はぁ、乱世乱世。
静香さんのもとにはまだ偵察用虫型ゴーレムを置いてあるので、何かあったらまた駆けつけることはできる。
後は放置だ。
いちいち構ってられん。
あと、俺も一応神酒というアタリ神器を持つ勇者という認識をされているので、貴族が軍勢を率いて男爵領にやってきたりもする。
まあ壁に阻まれて何もできずに帰るんだけどね。
たまに勇者が来たりするのでその時は一度だけ降伏勧告をして、その後ネバネバにして帰す。
一人狂った奴がいて、そいつだけは殺した。
そいつはどこに隠していたのか、俺の把握できていなかった獣人奴隷を突き出してきて目の前で拷問し始めたから残念ながら死んでもらった。
一見虫も殺しそうにないような優男に見えたのだけれど、人っていうのは分からんものだ。
あんな奴が何食わぬ顔して電車の同じ車両に乗っていたということなのだから、薄ら寒い。
現代日本の闇を垣間見た気がした。
それで、そいつが持っていた神器は2つしかなかった。
1つは水精の短剣。
これは水を操る力を持つ短剣のようだ。
そしてもうひとつは神のスマホ。
俺も思わず、ん?となった。
スマホはスマホじゃなかったのか、と。
しかしこのスマホ、使ってみると確かに他のスマホとは違うことがよく分かる。
他のスマホにできることはもちろんできるが、このスマホにはその他にも段違いの機能があった。
まず、他の神器所有者の位置がすべて分かる。
更に、持っている神器の能力や本人の性格、日本での経歴などもすべて書かれたプロフィールが見られる。
そして極めつけはこちらに来てからの生活をすべて動画で見ることができるのだ。
今現在のリアルタイム映像もある。
ぞっとするような性能の神器だ。
たくさんあったスマホの中にすごいアタリが入っていたものだ。
それも最悪の奴の手に渡っていた。
しかしこれを持っていた奴はなぜ俺を狙おうと思ったのだろうか。
自分で言うのもなんだが、俺は勇者の中でもトップクラスの戦闘力を持っている。
スマホの力で他の奴等の神器を見ても、もらった神器すべてが明確なアタリだった奴は他にいない。
確かにその分俺から神器を奪うことができれば収穫はでかいが、なぜ奪えると思ったのかな。
つい先日王国中の獣人奴隷を解放したばかりだから、それを見て獣人奴隷を盾にすればいけるとでも思ったのかもしれない。
まあ実際片目を潰されたしな。
神酒ですぐに治ったけど。
神のスマホには、俺でも知らない俺の弱点が記されていた。
それが眼球への攻撃だ。
神器を用いた全力の攻撃ならば、俺の眼球は耐えられないということが分かった。
すぐに瞼を閉じたら奴の突き込んだ水精の短剣が抜けなくなって、その後は成す術もなく死んでいったんだけど。
あいつが間抜けでよかった。
弱点があるのなら、気をつけて戦えばいいだけの話だからね。
ちなみに奴が2つしか神器を持っていなかったのは、3つ目が神樹の実のように使ったら無くなってしまうタイプの神器だったからだ。
スマホに書いてあった奴の3つ目の神器は古の魔導書(火)だ。
これは開くだけで初級から上級までの火魔法をすべて使えるようになるという神器だった。
開いたら魔導書は燃えて灰になってしまうようだ。
どの道俺には必要のない神器だったので惜しくもないが。
死ぬ間際になにやら魔法を発動しようとしている気配はあったけれど、あの発動スピードを見るにあまり練習はしていなかったみたいだな。
本当に何がしたかったのか。
俺は水精の短剣を具現化し、日に透かしてみる。
刃の部分が水晶かなにかでできているかのように透き通った美しい短剣だ。
ちょっとスマホの能力はぞっとするので、実質これだけが戦利品かな。
能力的には魔法で代用できるのでべつに大したものじゃないが、美術品としてはこれは素晴らしい。
「こらぁ!聞いておるのか!!門を開けよと言っておるだろうが!!」
国王の使者だと言う人物は体力の続く限り騒ぎ続ける。
喉強いな。
しかしもう1週間もここで騒ぎ続けられている。
いい加減にうんざりしてくる。
俺と一緒に壁の上に詰めている警備隊の面々もなんともいえない顔だ。
この近くには獣人さんたちを保護している区域もあるから、ちょっとそっちからも苦情が来ているんだよな。
「とりあえず、水でも撒いておくか」
俺は手に持った水精の短剣を一振りして、使者殿たちの頭上だけに雨を降らせた。
早く帰ってくれないかな。
男爵領の境界に築かれた城壁。
そこを通行するための門はたったひとつだけ。
そんな門の前で先ほどから喚きまわる数人の人間達。
実は彼らは今日初めて訪れたわけではない。
1週間ほど前に初めて訪れ、その時は男爵が居なかったので俺の判断で追い返した。
しかしそれから毎日のように門の前で騒ぎ立てている。
迷惑な人たちだ。
どうせ男爵が勝手に持ち場を離れたとか、貴族たちが裏切ったので助けてくれだとか、そんな内容だろう。
今、王国内は結構めちゃくちゃなのだ。
俺が奴隷を助けるために何人か国の重要人物を殺したことも原因のひとつなのだろうが、混乱の最も大きな理由は王国四大貴族のうちの3人が互いに争っているからだろう。
誰が明かしたのか、すでに勇者同士であれば神器を奪うことが可能なことが広く知られてしまっている。
貴族たちは3人の大貴族の派閥に分かれて勇者と神器の奪い合いを始めた。
そのせいで連合国軍にずいぶん深くまで攻め込まれている前線もあるくらいだ。
これはまずいと国王の直属の陣営である騎士団が止めに入ったのだが、静香さんというアタリ神器を持つ勇者を陣営に抱える騎士団も争いに無関係ではいられない。
大貴族と中小貴族、王国騎士団が混ざり合わさってすったもんだしている。
はぁ、乱世乱世。
静香さんのもとにはまだ偵察用虫型ゴーレムを置いてあるので、何かあったらまた駆けつけることはできる。
後は放置だ。
いちいち構ってられん。
あと、俺も一応神酒というアタリ神器を持つ勇者という認識をされているので、貴族が軍勢を率いて男爵領にやってきたりもする。
まあ壁に阻まれて何もできずに帰るんだけどね。
たまに勇者が来たりするのでその時は一度だけ降伏勧告をして、その後ネバネバにして帰す。
一人狂った奴がいて、そいつだけは殺した。
そいつはどこに隠していたのか、俺の把握できていなかった獣人奴隷を突き出してきて目の前で拷問し始めたから残念ながら死んでもらった。
一見虫も殺しそうにないような優男に見えたのだけれど、人っていうのは分からんものだ。
あんな奴が何食わぬ顔して電車の同じ車両に乗っていたということなのだから、薄ら寒い。
現代日本の闇を垣間見た気がした。
それで、そいつが持っていた神器は2つしかなかった。
1つは水精の短剣。
これは水を操る力を持つ短剣のようだ。
そしてもうひとつは神のスマホ。
俺も思わず、ん?となった。
スマホはスマホじゃなかったのか、と。
しかしこのスマホ、使ってみると確かに他のスマホとは違うことがよく分かる。
他のスマホにできることはもちろんできるが、このスマホにはその他にも段違いの機能があった。
まず、他の神器所有者の位置がすべて分かる。
更に、持っている神器の能力や本人の性格、日本での経歴などもすべて書かれたプロフィールが見られる。
そして極めつけはこちらに来てからの生活をすべて動画で見ることができるのだ。
今現在のリアルタイム映像もある。
ぞっとするような性能の神器だ。
たくさんあったスマホの中にすごいアタリが入っていたものだ。
それも最悪の奴の手に渡っていた。
しかしこれを持っていた奴はなぜ俺を狙おうと思ったのだろうか。
自分で言うのもなんだが、俺は勇者の中でもトップクラスの戦闘力を持っている。
スマホの力で他の奴等の神器を見ても、もらった神器すべてが明確なアタリだった奴は他にいない。
確かにその分俺から神器を奪うことができれば収穫はでかいが、なぜ奪えると思ったのかな。
つい先日王国中の獣人奴隷を解放したばかりだから、それを見て獣人奴隷を盾にすればいけるとでも思ったのかもしれない。
まあ実際片目を潰されたしな。
神酒ですぐに治ったけど。
神のスマホには、俺でも知らない俺の弱点が記されていた。
それが眼球への攻撃だ。
神器を用いた全力の攻撃ならば、俺の眼球は耐えられないということが分かった。
すぐに瞼を閉じたら奴の突き込んだ水精の短剣が抜けなくなって、その後は成す術もなく死んでいったんだけど。
あいつが間抜けでよかった。
弱点があるのなら、気をつけて戦えばいいだけの話だからね。
ちなみに奴が2つしか神器を持っていなかったのは、3つ目が神樹の実のように使ったら無くなってしまうタイプの神器だったからだ。
スマホに書いてあった奴の3つ目の神器は古の魔導書(火)だ。
これは開くだけで初級から上級までの火魔法をすべて使えるようになるという神器だった。
開いたら魔導書は燃えて灰になってしまうようだ。
どの道俺には必要のない神器だったので惜しくもないが。
死ぬ間際になにやら魔法を発動しようとしている気配はあったけれど、あの発動スピードを見るにあまり練習はしていなかったみたいだな。
本当に何がしたかったのか。
俺は水精の短剣を具現化し、日に透かしてみる。
刃の部分が水晶かなにかでできているかのように透き通った美しい短剣だ。
ちょっとスマホの能力はぞっとするので、実質これだけが戦利品かな。
能力的には魔法で代用できるのでべつに大したものじゃないが、美術品としてはこれは素晴らしい。
「こらぁ!聞いておるのか!!門を開けよと言っておるだろうが!!」
国王の使者だと言う人物は体力の続く限り騒ぎ続ける。
喉強いな。
しかしもう1週間もここで騒ぎ続けられている。
いい加減にうんざりしてくる。
俺と一緒に壁の上に詰めている警備隊の面々もなんともいえない顔だ。
この近くには獣人さんたちを保護している区域もあるから、ちょっとそっちからも苦情が来ているんだよな。
「とりあえず、水でも撒いておくか」
俺は手に持った水精の短剣を一振りして、使者殿たちの頭上だけに雨を降らせた。
早く帰ってくれないかな。
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