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41.船
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男爵領と隣の領地の境には以前ならば隣の領主が作った関所があった。
しかし今、そこにあるのは巨大な壁だった。
領地と領地を隔てるように、天高く聳え立つ城壁。
その高さは優に100メートルはあり、王都の第一城壁よりも高い。
造ったのは俺だ。
自慢ではないが、なかなかの出来だと思う。
まず眺めが最高だ。
一定距離ごとに設置された物見櫓に登れば、地面からの高さは150メートルくらいになる。
男爵領と王都の間には山がいくつもあるのでさすがに王都まで見渡すことはできないが、近隣の領地は大体見渡すことができる。
そしてそれは向こうからも見えているということだ。
近隣の領地を治める貴族からはあの壁はなんだと問い合わせる使者が何人も来た。
しかし壁は壁だ。
壁ですと言って追い返した。
どうやって作ったとか、誰が作ったとかそんなのは答える必要も無い。
何人か血の気の多い貴族の使者が弓矢を射掛けてきたり、壁を破壊しようと魔法を放ってきたこともあった。
だが、この壁は強度にも自信がある。
地魔法でじっくりと練り上げた継ぎ目の一切無い壁に、更に上級の付与魔法で守りの魔法を幾重にもかけているのだ。
特級魔法だって1発2発くらいなら耐え切れる自信がある。
この壁のおかげで内陸側からの守りは万全だ。
強いて問題点を挙げるならば、人の少なさだろうか。
この壁に配置する兵の数が圧倒的に足りていない。
一応各物見櫓には偵察用と反撃用を兼ね備えた万能型ゴーレムを配置して、その映像を24時間監視塔に送るようにはしている。
監視塔には男爵領警備隊の兵士が交代で詰めていて、問題があればその場所に空いている隊が出向くという警備方式だ。
しかし男爵領は今元獣人奴隷の人たちを保護している関係で、領内にも一定数の警備人員を裂かなければならない。
足りない場所を俺のゴーレムで代用しているような現状は不健全だと思うんだよな。
俺は別にそこまで忙しいわけじゃないからいいのだけどね。
「やはり、今から船を造っていたのでは間に合いませんね」
一番高い物見櫓のてっぺんで海を見つめてたそがれていたら、後ろから男爵が話しかけて来た。
手には黒ビールの瓶とソーセージの乗った皿。
いいっすね。
最近は男爵も転移の魔法を使いこなせるようになってきて、1分ほどあれば発動できるようになっている。
その力で領内を駆けずり回っているのだが、時折こうして俺に差し入れを持ってきてくれるのだ。
俺なんかより忙しいと思うのだが、男爵のこういうところが尊敬できるな。
マメな男はもてると言うが、確かに男爵は夜の店でもモテモテだ。
男爵領だけでなく、あの元悪徳の町ロードスの夜の蝶たちにも大人気だったのだから本物だ。
しかし、船か。
これが今俺達が直面している問題だ。
船大工が少なくて船の建造に時間がかかる。
船なんてそんなちゃっちゃかポンポン造れるものじゃない。
王国中から助け出した獣人は5000人ほど。
そんな数の人が乗れる船はこの世界には無い。
もっと小さな船に分乗することになるだろう。
男爵領で作れる最大の大きさの船に乗れる人の数は、詰め込んでも100人が限界だ。
50隻はないと全員乗れないだろう。
船大工にはあと3代先までかかっても造れないと言われた。
何か他の方法を考えるしかないだろう。
俺はグラスを2つ取り出し、男爵の持っていた黒ビールを片方に注ぐ。
男爵がもう片方に注ぎ、軽くグラスを合わせて一口飲んだ。
苦味の中にカラメル麦芽の微かな甘味とコク。
テーブルに置かれたソーセージを齧れば、レモンのようなハーブの香りがすっと鼻に抜け肉汁が口いっぱいに広がった。
ビールが止まらん。
1杯飲み干し、2杯目は手酌で。
もう半分ほど飲み干してやっと落ち着き、俺は口を開く。
「船ですか……。男爵領には元々持っている船とか、無いんですか?」
「うーむ。私の祖父の代くらいに建造された大きな船があったような気はしましたが、ちょっと古すぎてたぶん使えないと思うのですがね」
「一応明日見にいってみませんか?魔法を使えば直せなくもないでしょうし」
「そうですね。そうしてみましょうか」
俺達は明日船を見にいくこととし、今夜は少し深酒することにした。
つまみの追加を貰いに行こう。
次の日だ。
前日あれだけ飲んだにも関わらず、すっきりと起きられるというのは本当にありがたい。
あちらの世界では毎週のように二日酔いに苦しんでいたけれど、こちらの世界に来てからは縁遠くなった。
俺は手早く服を着替え、男爵から預かった剣を腰に吊るす。
服はやっぱり前の世界のほうが利便性が高かったな。
俺はそこそこ上質の皮ズボンと木綿のシャツを普段は着ているが、こちらではボタン一つとっても高級品だ。
ツルツルの質感のものほど高い。
だから俺のズボンは紐で止めるタイプだし、シャツのボタンはザラザラとした木でできている。
皮ズボンは蒸れるし、シャツの肌触りも悪い。
Tシャツが恋しいな。
俺は最後に靴先を軽く磨いて部屋を出る。
なんとなくサラリーマン時代からのクセなんだよな。
「おはようございます」
「ああ、おはようございます」
すれ違う使用人の人たちに挨拶をしながら男爵の元に向かう。
この屋敷で働いている使用人の人たちはほぼ全員ご年配だ。
男爵が王都に連れて行くために領民の中から見目の良い者を探した理由がよく分かる。
そもそも長旅に耐えられるか分からない感じの人が多いからね。
俺は男爵の執務室の扉を軽くノックし、返事を待って入室する。
「おはようございます」
「おはようございます、シゲノブ殿。あんなに飲んでも二日酔いにならないというのは本当に良いものですね」
「あはは、私も起きた時そう思いました」
「では、参りましょうか」
「はい」
男爵と連れ立って、造船所に向かう。
護衛は3人、男爵領警備隊の中からついて来ている。
以前の男爵領なら俺だけでも十分だったのだけどね。
獣人さんたちは悪い人たちではないのだけれど、少々血の気が多い。
人間に対して良くない感情を抱いている人もいるので、領境の壁の近くに隔離している状態だ。
アンネローゼさんたちが居なかったらたぶん暴動みたいになっていた可能性はあるな。
まあそんなわけで、一応警備は厳重にしておかないと。
そして船を急いでなんとかする。
やがて造船所が見えてくる。
結構大きな造船所だ。
男爵家所有の船の倉庫もかねているようだから、そのせいだろうか。
市民体育館が3つくらい入りそうな大きさだ。
「おはようございます。お待ちしておりました」
船大工のコンラートさんが出迎えてくれる。
コンラートさんは造船一筋30年のベテラン船大工だ。
先祖代々受け継がれた大型船の造り方は教わっているそうだが、造ったことは無いそうだ。
当たり前の話だが、大型船なんてこの町では使う人間が居ない。
造船所に求められるのは小型の漁船を作る業務だ。
「それで、ビューティフルマリーベル号は奥ですかな?」
ビューティフルマリーベル号は男爵のお祖父さんが奥さんである男爵のお祖母さん、マリーベルさんのために造った大型船なのだという。
その散財のせいで一時男爵領の経営は傾きかけたというのだからなんとも反応に困る。
「こちらでございます」
コンラートさんは一番奥のドックに俺達を案内する。
コンラートさんが灯りの魔道具のスイッチをオンにした。
そこには、鮮やかな朱色に塗られた古い大型ガレオン船が鎮座していた。
しかし今、そこにあるのは巨大な壁だった。
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その高さは優に100メートルはあり、王都の第一城壁よりも高い。
造ったのは俺だ。
自慢ではないが、なかなかの出来だと思う。
まず眺めが最高だ。
一定距離ごとに設置された物見櫓に登れば、地面からの高さは150メートルくらいになる。
男爵領と王都の間には山がいくつもあるのでさすがに王都まで見渡すことはできないが、近隣の領地は大体見渡すことができる。
そしてそれは向こうからも見えているということだ。
近隣の領地を治める貴族からはあの壁はなんだと問い合わせる使者が何人も来た。
しかし壁は壁だ。
壁ですと言って追い返した。
どうやって作ったとか、誰が作ったとかそんなのは答える必要も無い。
何人か血の気の多い貴族の使者が弓矢を射掛けてきたり、壁を破壊しようと魔法を放ってきたこともあった。
だが、この壁は強度にも自信がある。
地魔法でじっくりと練り上げた継ぎ目の一切無い壁に、更に上級の付与魔法で守りの魔法を幾重にもかけているのだ。
特級魔法だって1発2発くらいなら耐え切れる自信がある。
この壁のおかげで内陸側からの守りは万全だ。
強いて問題点を挙げるならば、人の少なさだろうか。
この壁に配置する兵の数が圧倒的に足りていない。
一応各物見櫓には偵察用と反撃用を兼ね備えた万能型ゴーレムを配置して、その映像を24時間監視塔に送るようにはしている。
監視塔には男爵領警備隊の兵士が交代で詰めていて、問題があればその場所に空いている隊が出向くという警備方式だ。
しかし男爵領は今元獣人奴隷の人たちを保護している関係で、領内にも一定数の警備人員を裂かなければならない。
足りない場所を俺のゴーレムで代用しているような現状は不健全だと思うんだよな。
俺は別にそこまで忙しいわけじゃないからいいのだけどね。
「やはり、今から船を造っていたのでは間に合いませんね」
一番高い物見櫓のてっぺんで海を見つめてたそがれていたら、後ろから男爵が話しかけて来た。
手には黒ビールの瓶とソーセージの乗った皿。
いいっすね。
最近は男爵も転移の魔法を使いこなせるようになってきて、1分ほどあれば発動できるようになっている。
その力で領内を駆けずり回っているのだが、時折こうして俺に差し入れを持ってきてくれるのだ。
俺なんかより忙しいと思うのだが、男爵のこういうところが尊敬できるな。
マメな男はもてると言うが、確かに男爵は夜の店でもモテモテだ。
男爵領だけでなく、あの元悪徳の町ロードスの夜の蝶たちにも大人気だったのだから本物だ。
しかし、船か。
これが今俺達が直面している問題だ。
船大工が少なくて船の建造に時間がかかる。
船なんてそんなちゃっちゃかポンポン造れるものじゃない。
王国中から助け出した獣人は5000人ほど。
そんな数の人が乗れる船はこの世界には無い。
もっと小さな船に分乗することになるだろう。
男爵領で作れる最大の大きさの船に乗れる人の数は、詰め込んでも100人が限界だ。
50隻はないと全員乗れないだろう。
船大工にはあと3代先までかかっても造れないと言われた。
何か他の方法を考えるしかないだろう。
俺はグラスを2つ取り出し、男爵の持っていた黒ビールを片方に注ぐ。
男爵がもう片方に注ぎ、軽くグラスを合わせて一口飲んだ。
苦味の中にカラメル麦芽の微かな甘味とコク。
テーブルに置かれたソーセージを齧れば、レモンのようなハーブの香りがすっと鼻に抜け肉汁が口いっぱいに広がった。
ビールが止まらん。
1杯飲み干し、2杯目は手酌で。
もう半分ほど飲み干してやっと落ち着き、俺は口を開く。
「船ですか……。男爵領には元々持っている船とか、無いんですか?」
「うーむ。私の祖父の代くらいに建造された大きな船があったような気はしましたが、ちょっと古すぎてたぶん使えないと思うのですがね」
「一応明日見にいってみませんか?魔法を使えば直せなくもないでしょうし」
「そうですね。そうしてみましょうか」
俺達は明日船を見にいくこととし、今夜は少し深酒することにした。
つまみの追加を貰いに行こう。
次の日だ。
前日あれだけ飲んだにも関わらず、すっきりと起きられるというのは本当にありがたい。
あちらの世界では毎週のように二日酔いに苦しんでいたけれど、こちらの世界に来てからは縁遠くなった。
俺は手早く服を着替え、男爵から預かった剣を腰に吊るす。
服はやっぱり前の世界のほうが利便性が高かったな。
俺はそこそこ上質の皮ズボンと木綿のシャツを普段は着ているが、こちらではボタン一つとっても高級品だ。
ツルツルの質感のものほど高い。
だから俺のズボンは紐で止めるタイプだし、シャツのボタンはザラザラとした木でできている。
皮ズボンは蒸れるし、シャツの肌触りも悪い。
Tシャツが恋しいな。
俺は最後に靴先を軽く磨いて部屋を出る。
なんとなくサラリーマン時代からのクセなんだよな。
「おはようございます」
「ああ、おはようございます」
すれ違う使用人の人たちに挨拶をしながら男爵の元に向かう。
この屋敷で働いている使用人の人たちはほぼ全員ご年配だ。
男爵が王都に連れて行くために領民の中から見目の良い者を探した理由がよく分かる。
そもそも長旅に耐えられるか分からない感じの人が多いからね。
俺は男爵の執務室の扉を軽くノックし、返事を待って入室する。
「おはようございます」
「おはようございます、シゲノブ殿。あんなに飲んでも二日酔いにならないというのは本当に良いものですね」
「あはは、私も起きた時そう思いました」
「では、参りましょうか」
「はい」
男爵と連れ立って、造船所に向かう。
護衛は3人、男爵領警備隊の中からついて来ている。
以前の男爵領なら俺だけでも十分だったのだけどね。
獣人さんたちは悪い人たちではないのだけれど、少々血の気が多い。
人間に対して良くない感情を抱いている人もいるので、領境の壁の近くに隔離している状態だ。
アンネローゼさんたちが居なかったらたぶん暴動みたいになっていた可能性はあるな。
まあそんなわけで、一応警備は厳重にしておかないと。
そして船を急いでなんとかする。
やがて造船所が見えてくる。
結構大きな造船所だ。
男爵家所有の船の倉庫もかねているようだから、そのせいだろうか。
市民体育館が3つくらい入りそうな大きさだ。
「おはようございます。お待ちしておりました」
船大工のコンラートさんが出迎えてくれる。
コンラートさんは造船一筋30年のベテラン船大工だ。
先祖代々受け継がれた大型船の造り方は教わっているそうだが、造ったことは無いそうだ。
当たり前の話だが、大型船なんてこの町では使う人間が居ない。
造船所に求められるのは小型の漁船を作る業務だ。
「それで、ビューティフルマリーベル号は奥ですかな?」
ビューティフルマリーベル号は男爵のお祖父さんが奥さんである男爵のお祖母さん、マリーベルさんのために造った大型船なのだという。
その散財のせいで一時男爵領の経営は傾きかけたというのだからなんとも反応に困る。
「こちらでございます」
コンラートさんは一番奥のドックに俺達を案内する。
コンラートさんが灯りの魔道具のスイッチをオンにした。
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