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36.決闘
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「受けていただけるか?」
「そ、その前に、なぜそういった結論に至ったのかお聞かせいただけますか?」
「そもそも、私はまどろっこしいことが嫌いなのだ。ここにいる者共は大体捕虜交換を認める者と認めぬ者、半々くらいだ。そんなものどうしろというのだ!もはや貴様らの決定など必要ない。私は私の裁量でできることをするまで」
「それが、決闘ですか」
「そうだ。貴殿の所属している国では知らんが、連合国では決闘と言えば誰も口を挟むことのできぬもの。私自身の命を賭けることにより、この場を収めることとしよう。私が勝てば我が家の愚妹を返してもらう。貴殿が勝てばこちらの捕虜を返す。簡単なルールだろ。それでも足りねば私のこの身も賭けようか。こう見えても立派な処女だぞ。鍛えているから締まりもいいはずだ」
いちいち下ネタがド直球な人だ。
そこまで言われて決闘を受けないわけにはいかないだろう。
第一断れる雰囲気でもない。
周りはみんな好戦的な獣人ばかりなんだ。
「いいぞ!」
「最初からそうすればよかったのだ!」
「人間などぶちのめしてください総隊長!」
めちゃくちゃ盛り上がっている。
アマーリエも一緒にやっちゃえお姉ちゃんなどと盛り上がっている。
おじさん怒るよ?
「わかりました。決闘をお受けします。しかし条件は平等でいいですよ。私が負けたら私のこの身も差し上げましょう。こんなおっさんを貰っても嬉しくないかもしれませんがね」
「いや、いい玩具ができる。ちょうど棒のようなものが欲しかったところだ。毎日枯れ果てるまで使い込んでやるさ」
さすがにおっさんも赤面しちゃうよ、その発言には。
ちょっと負けてもいいかもしれないと思ってしまったじゃないか。
しかし負けたら静香さんまで連合国に連れて行かれることになってしまう。
人間の国で獣人が酷い目にあうように、あちらでは人間が酷い目にあってもおかしくはない。
それくらいには人間に対する恨みも溜まっていよう。
そんな目にはあってほしくないな。
やはり勝たなければならない。
「勝負は真剣で?」
「ああ、決闘は命賭けで行うものだ。当然刃引きのされた武器などではなく真剣だ」
「わかりました。細かい取り決めなどはありますか?」
「無い。どちらかが死ぬか、参ったと言うまで戦う。1対1ということを破る以外に反則も無い。己に持てる力の全てを使用してよい。私は剣と魔法を使う」
「わかりました。私も剣と魔法を使います」
「分かった。では広いところに行こうか」
俺とアンネローゼさんが立って移動すると、周りの獣人たちは囃し立てるように騒ぎながら付いてくる。
大体獣人という種族の気質は分かった。
とにかく戦いが好きなんだな。
周りの獣人たちの顔を見れば、どいつもこいつも血が滾るという顔をしている。
はぁ、一戦で終わるんだろうか。
「ここだ」
そう言って案内されたのは本陣内に作られた練兵場だった。
湿地の水分を魔法で抜いただけのだだっ広い空間。
そこでは兵たちが身体を鈍らせまいと必死に訓練をしていた。
「皆のもの、決闘だ!!決闘が始まる!!場所を空けよ!!」
「決闘だって!?」
「決闘だ!!」
「誰と!?」
「誰が!?」
獣人たちは枝葉末端にいたるまでみんな決闘が好きなのか、場所は空いたものの兵たちがぐるりと俺達を囲んで見守っている。
今にも手拍子でも打ち鳴らしそうな雰囲気だ。
ダンッと、誰かが軍靴を踏み鳴らす。
それに釣られてダンッダンッと全員が軍靴を踏み鳴らしてリズムを取り出した。
腹の底に響くような音だ。
まるで地響きだな。
もはや会場のボルテージは最高潮だ。
「では始めようか」
「よろしくお願いします」
アンネローゼさんと俺は同時に剣を抜いた。
アンネローゼさんの剣はサーベルのような細身で片刃の剣だ。
軽く反りが入ったその剣を片手で握り、もう片方の手は腰の後ろに回している。
隙が無い。
間違いなく強いだろう。
それも先日戦った勇者のような付け焼刃の強さではなく、正真正銘幼い頃から積み上げてきた強さだ。
俺のような昨日今日手に入れた力で対抗できるだろうか。
他力本願なようで情けないが、己の神器の持つポテンシャルを信じるじかあるまい。
俺にできるのはアンネローゼさんの剣を見定めることだけだ。
「行くぞぉ!」
アンネローゼさんが突っ込んでくる。
速い。
なんと苛烈な剣だろうか。
肉体の限界を超えるような勢いで剣が引き戻される。
獣人のしなやかな筋肉でなかったら、腱が切れているような身体の動かし方だ。
しかし俺の非常識な身体との相性も良さそうな剣術だ。
獣人でも無理のかかっているような動きでも、俺の身体であれば無理なくできるだろう。
観察して、自分のものとする。
「ふぅ、ふぅ、やはり貴殿には届かんか。だが、私も獣人の端くれ。敵わぬとわかっていても愚直に向かっていく身体を止める手段など持ち合わせておらん!!」
魔力の動きを感じた。
次は魔法が来る。
普通の人間には魔力はなんとなくしか感じ取れないようだが、俺にははっきりと魔力の動きが見える。
魔法陣の形は風系統のようだ。
自身の後ろから突風をぶち当て、突進の速度を速める魔法のようだ。
この魔法もずいぶんと肉体に負担がかかりそうだ。
人間だったら内臓とか口から出てるかもしれないぞ。
アンネローゼさんが先ほどとは桁違いのスピードで突っ込んでくる。
「雷撃!!」
「がっ……」
なんだ。
なんの前兆もなくアンネローゼさんの金色の角から紫電が弾けた。
そして俺の身体は雷に打たれたような衝撃で一瞬硬直する。
アンネローゼさんの剣が俺に迫る。
必死に身体を動かそうとするが、ビリビリと痺れてうまく力が入らない。
前のめりに倒れる俺の脇腹を切り裂くように走る剣。
ギンッという金属同士が擦れるような音。
「貴殿はどんな肉体をしているんだ……」
アンネローゼさんの剣は俺の脇腹を浅く切り裂いたが、その刀身が根元から折れてしまっていた。
相変わらず、神巻きタバコの効果はエグい。
もう慣れてきちゃったけどね。
開き直れば便利な身体だ。
「どうしますか?今の一撃は結構効きました。私の負けでいいですが。その場合は静香さんの扱いに対してお願いしたいことが……」
「いや、私の負けだ。貴殿を殺せる方法が思いつかない。決闘は己の持てる力で戦うという決まりだ。貴殿のその文字通り鋼のような肉体も貴殿の持つ力のひとつであると言えよう」
「そうですか。そう言っていただけてありがたいです」
しかしおっさんの胸中は複雑だ。
チートな神器を3つも貰ったのに、負けととられても不思議ではない攻撃を食らってしまい醜態を晒してしまった。
明日から剣の訓練も頑張ろう。
あ、やっぱり今日から。
「そ、その前に、なぜそういった結論に至ったのかお聞かせいただけますか?」
「そもそも、私はまどろっこしいことが嫌いなのだ。ここにいる者共は大体捕虜交換を認める者と認めぬ者、半々くらいだ。そんなものどうしろというのだ!もはや貴様らの決定など必要ない。私は私の裁量でできることをするまで」
「それが、決闘ですか」
「そうだ。貴殿の所属している国では知らんが、連合国では決闘と言えば誰も口を挟むことのできぬもの。私自身の命を賭けることにより、この場を収めることとしよう。私が勝てば我が家の愚妹を返してもらう。貴殿が勝てばこちらの捕虜を返す。簡単なルールだろ。それでも足りねば私のこの身も賭けようか。こう見えても立派な処女だぞ。鍛えているから締まりもいいはずだ」
いちいち下ネタがド直球な人だ。
そこまで言われて決闘を受けないわけにはいかないだろう。
第一断れる雰囲気でもない。
周りはみんな好戦的な獣人ばかりなんだ。
「いいぞ!」
「最初からそうすればよかったのだ!」
「人間などぶちのめしてください総隊長!」
めちゃくちゃ盛り上がっている。
アマーリエも一緒にやっちゃえお姉ちゃんなどと盛り上がっている。
おじさん怒るよ?
「わかりました。決闘をお受けします。しかし条件は平等でいいですよ。私が負けたら私のこの身も差し上げましょう。こんなおっさんを貰っても嬉しくないかもしれませんがね」
「いや、いい玩具ができる。ちょうど棒のようなものが欲しかったところだ。毎日枯れ果てるまで使い込んでやるさ」
さすがにおっさんも赤面しちゃうよ、その発言には。
ちょっと負けてもいいかもしれないと思ってしまったじゃないか。
しかし負けたら静香さんまで連合国に連れて行かれることになってしまう。
人間の国で獣人が酷い目にあうように、あちらでは人間が酷い目にあってもおかしくはない。
それくらいには人間に対する恨みも溜まっていよう。
そんな目にはあってほしくないな。
やはり勝たなければならない。
「勝負は真剣で?」
「ああ、決闘は命賭けで行うものだ。当然刃引きのされた武器などではなく真剣だ」
「わかりました。細かい取り決めなどはありますか?」
「無い。どちらかが死ぬか、参ったと言うまで戦う。1対1ということを破る以外に反則も無い。己に持てる力の全てを使用してよい。私は剣と魔法を使う」
「わかりました。私も剣と魔法を使います」
「分かった。では広いところに行こうか」
俺とアンネローゼさんが立って移動すると、周りの獣人たちは囃し立てるように騒ぎながら付いてくる。
大体獣人という種族の気質は分かった。
とにかく戦いが好きなんだな。
周りの獣人たちの顔を見れば、どいつもこいつも血が滾るという顔をしている。
はぁ、一戦で終わるんだろうか。
「ここだ」
そう言って案内されたのは本陣内に作られた練兵場だった。
湿地の水分を魔法で抜いただけのだだっ広い空間。
そこでは兵たちが身体を鈍らせまいと必死に訓練をしていた。
「皆のもの、決闘だ!!決闘が始まる!!場所を空けよ!!」
「決闘だって!?」
「決闘だ!!」
「誰と!?」
「誰が!?」
獣人たちは枝葉末端にいたるまでみんな決闘が好きなのか、場所は空いたものの兵たちがぐるりと俺達を囲んで見守っている。
今にも手拍子でも打ち鳴らしそうな雰囲気だ。
ダンッと、誰かが軍靴を踏み鳴らす。
それに釣られてダンッダンッと全員が軍靴を踏み鳴らしてリズムを取り出した。
腹の底に響くような音だ。
まるで地響きだな。
もはや会場のボルテージは最高潮だ。
「では始めようか」
「よろしくお願いします」
アンネローゼさんと俺は同時に剣を抜いた。
アンネローゼさんの剣はサーベルのような細身で片刃の剣だ。
軽く反りが入ったその剣を片手で握り、もう片方の手は腰の後ろに回している。
隙が無い。
間違いなく強いだろう。
それも先日戦った勇者のような付け焼刃の強さではなく、正真正銘幼い頃から積み上げてきた強さだ。
俺のような昨日今日手に入れた力で対抗できるだろうか。
他力本願なようで情けないが、己の神器の持つポテンシャルを信じるじかあるまい。
俺にできるのはアンネローゼさんの剣を見定めることだけだ。
「行くぞぉ!」
アンネローゼさんが突っ込んでくる。
速い。
なんと苛烈な剣だろうか。
肉体の限界を超えるような勢いで剣が引き戻される。
獣人のしなやかな筋肉でなかったら、腱が切れているような身体の動かし方だ。
しかし俺の非常識な身体との相性も良さそうな剣術だ。
獣人でも無理のかかっているような動きでも、俺の身体であれば無理なくできるだろう。
観察して、自分のものとする。
「ふぅ、ふぅ、やはり貴殿には届かんか。だが、私も獣人の端くれ。敵わぬとわかっていても愚直に向かっていく身体を止める手段など持ち合わせておらん!!」
魔力の動きを感じた。
次は魔法が来る。
普通の人間には魔力はなんとなくしか感じ取れないようだが、俺にははっきりと魔力の動きが見える。
魔法陣の形は風系統のようだ。
自身の後ろから突風をぶち当て、突進の速度を速める魔法のようだ。
この魔法もずいぶんと肉体に負担がかかりそうだ。
人間だったら内臓とか口から出てるかもしれないぞ。
アンネローゼさんが先ほどとは桁違いのスピードで突っ込んでくる。
「雷撃!!」
「がっ……」
なんだ。
なんの前兆もなくアンネローゼさんの金色の角から紫電が弾けた。
そして俺の身体は雷に打たれたような衝撃で一瞬硬直する。
アンネローゼさんの剣が俺に迫る。
必死に身体を動かそうとするが、ビリビリと痺れてうまく力が入らない。
前のめりに倒れる俺の脇腹を切り裂くように走る剣。
ギンッという金属同士が擦れるような音。
「貴殿はどんな肉体をしているんだ……」
アンネローゼさんの剣は俺の脇腹を浅く切り裂いたが、その刀身が根元から折れてしまっていた。
相変わらず、神巻きタバコの効果はエグい。
もう慣れてきちゃったけどね。
開き直れば便利な身体だ。
「どうしますか?今の一撃は結構効きました。私の負けでいいですが。その場合は静香さんの扱いに対してお願いしたいことが……」
「いや、私の負けだ。貴殿を殺せる方法が思いつかない。決闘は己の持てる力で戦うという決まりだ。貴殿のその文字通り鋼のような肉体も貴殿の持つ力のひとつであると言えよう」
「そうですか。そう言っていただけてありがたいです」
しかしおっさんの胸中は複雑だ。
チートな神器を3つも貰ったのに、負けととられても不思議ではない攻撃を食らってしまい醜態を晒してしまった。
明日から剣の訓練も頑張ろう。
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