33 / 205
33.捕虜
しおりを挟む
「シゲノブ殿!?なぜここに」
「「シゲさん!!」」
王国騎士団の指揮官、グレイス・マリステラ子爵は俺の訪問に大層驚いた。
高校生コンビは泣きそうな顔をして、俺のほうを見る。
俺は男爵の書状を見せてマリステラ卿に話を聞いた。
「ご助力感謝します。お恥ずかしい話なのですが……」
マリステラ卿の話によれば、王国軍は砦の守りに3000を残して5000の兵で打って出たそうだ。
勇者は静香さんとかえでちゃんが砦の守りに残った。
その代わりに隼人君が攻撃側についていった。
マリステラ卿は奇抜さは無いものの堅実な用兵で、魔族軍6000と互角の戦いを繰り広げ何人かの敵部隊長を捕虜にすることに成功したそうだ。
捕虜を取ったのはこちらが先だったということか。
では、静香さんは捕虜交換を目的として捕らえられたのだろうか。
だとすれば交渉の余地はあるか。
しかし砦の守りに就いていたはずの静香さんが、なぜ捕まってしまったのだろうか。
「お、俺のせいなんだよ!静香さんが捕まったのは、俺を助けるためだったんだ!!」
隼人君は涙をぽろぽろこぼしながら俺にそう訴える。
つられてかえでちゃんもぽろぽろ泣き出した。
静香さんはまだ死んでないというのに、お通夜みたいな雰囲気だな。
「いえ、作戦を立てたのは私です。すべては指揮官である私の責任。敵軍深くまで入り込みすぎたのだ」
人間同士の戦いならば、敵部隊長を捕らえればその部隊は瓦解したり戦意が低くなったりするだろう。
しかし魔族は違った。
烏合の衆とはなったが、魔族は人間の2倍から3倍の身体能力を持っているんだ。
戦意を失わないというだけでも十分に脅威となった。
魔族と人間の身体能力の違いやメンタリティの違いを読み間違ったマリステラ卿のミスというのは間違っていない。
「俺は殿で、敵の中に取り残されたところを静香さんが助けてくれたんだ。そんで、俺を逃がして敵に捕まっちゃったんだ」
大体の話はわかった。
あとは捕虜の中に向こうが交換しようとしている捕虜がいるのかどうかということか。
死んでしまっていれば交渉は難航するだろう。
捕虜を多少取り調べる必要がありそうだ。
「それで、捕らえた捕虜はどこに?」
「地下牢に入れてあります」
ああ、そういえばそんなものも作った記憶がある。
上の建物を作ってしまった後に敵を捕らえるための牢屋が必要だと言われて、地下に作ったんだ。
しかし地下牢と口に出すとなぜか後ろ暗いことのように思えるのはなぜだろうか。
「どんな人物を捕虜にしたんですか?」
「捕虜は3人ですな。狼のような耳と尻尾を持つ男、羽の生えた女、それと金の巻角を持つ女でした」
なるほどわかった。
魔族軍がどの捕虜を静香さんと交換しようとしているのか。
「ちなみに、巻角の女の髪は赤でしたか?」
「ええ、燃えるような赤髪でした」
たぶん今魔族軍を指揮している女将校の血縁者だろうな。
とりあえず会ってみるか。
マリステラ卿の案内で地下牢に向かう。
「赤髪の女はこの房です」
「そうですか」
牢は日本の刑務所を参考にして作ったので扉がある。
俺はその扉をノックした。
「勝手に入ればいいでしょ……」
少し気だるげな女の声が聞こえる。
声の感じは若い。
高校生のかえでちゃんと同じような年齢に感じさせる声だ。
俺は扉を開けて中に入った。
そこにいたのは魔族軍の女将校によく似た、16、7歳くらいの少女。
確実に血縁関係はあるだろう。
「初めまして、俺はシゲノブ・キザキ。君の名前はなんていうのかな」
「おじさんが拷問官ってわけだ。言っとくけど、あたしは何も話す気はない。拷問しても無駄だから早く殺してくんないかな」
話がかみ合わない。
それに、気丈なことを言っているけどこの子さっきから足が震えてるんだよな。
どうしたものか。
あまり時間はかけたくないのだけどな。
「俺が拷問なんてしそうな顔に見えるかな」
「拷問はしそうにないけど、エッチなことはしそうな顔してる」
俺は自分の顔を触ってみる。
そんな顔してるかな。
鼻の下を少し押し上げてみる。
「少しはマシになったね」
「それはありがとう。じゃあ君の名前を教えてくれるかな」
「いいよ。あたしの名前はアマーリエ・ベルタ。エルカザド連合国の下級騎士だよ」
エルカザド連合国。
それが魔族の国の国名か。
魔族という言い方も良くないかな。
「君たちは人間とは違う種族のようだけど、呼び名とかはあるのかな」
「あたしたちは自分たちのことを獣人と呼んでいるかな。人間は魔族って呼ぶみたいだけど」
獣人か。
獣の因子を身体の一部に持つ人という意味かな。
これからは獣人と呼んだほうが良さそうだな。
「君たちの国は、なぜ戦争を起こしたんだい?」
「人間の国があたしたちの国に来て国民を捕らえていくからじゃないか!あたしたちも我慢の限界だよ!!」
一理ある。
向こうの国に行って国民を奴隷として捕らえて連れてきていたとしたら、戦争の理由としては十分だ。
まあそんなことだろうと思っていた。
「最後の質問だ。連合国軍の指揮官の女性とは、どういう関係?」
「あたしのお姉ちゃん」
なるほど。
知りたいことはすべて分かった。
「「シゲさん!!」」
王国騎士団の指揮官、グレイス・マリステラ子爵は俺の訪問に大層驚いた。
高校生コンビは泣きそうな顔をして、俺のほうを見る。
俺は男爵の書状を見せてマリステラ卿に話を聞いた。
「ご助力感謝します。お恥ずかしい話なのですが……」
マリステラ卿の話によれば、王国軍は砦の守りに3000を残して5000の兵で打って出たそうだ。
勇者は静香さんとかえでちゃんが砦の守りに残った。
その代わりに隼人君が攻撃側についていった。
マリステラ卿は奇抜さは無いものの堅実な用兵で、魔族軍6000と互角の戦いを繰り広げ何人かの敵部隊長を捕虜にすることに成功したそうだ。
捕虜を取ったのはこちらが先だったということか。
では、静香さんは捕虜交換を目的として捕らえられたのだろうか。
だとすれば交渉の余地はあるか。
しかし砦の守りに就いていたはずの静香さんが、なぜ捕まってしまったのだろうか。
「お、俺のせいなんだよ!静香さんが捕まったのは、俺を助けるためだったんだ!!」
隼人君は涙をぽろぽろこぼしながら俺にそう訴える。
つられてかえでちゃんもぽろぽろ泣き出した。
静香さんはまだ死んでないというのに、お通夜みたいな雰囲気だな。
「いえ、作戦を立てたのは私です。すべては指揮官である私の責任。敵軍深くまで入り込みすぎたのだ」
人間同士の戦いならば、敵部隊長を捕らえればその部隊は瓦解したり戦意が低くなったりするだろう。
しかし魔族は違った。
烏合の衆とはなったが、魔族は人間の2倍から3倍の身体能力を持っているんだ。
戦意を失わないというだけでも十分に脅威となった。
魔族と人間の身体能力の違いやメンタリティの違いを読み間違ったマリステラ卿のミスというのは間違っていない。
「俺は殿で、敵の中に取り残されたところを静香さんが助けてくれたんだ。そんで、俺を逃がして敵に捕まっちゃったんだ」
大体の話はわかった。
あとは捕虜の中に向こうが交換しようとしている捕虜がいるのかどうかということか。
死んでしまっていれば交渉は難航するだろう。
捕虜を多少取り調べる必要がありそうだ。
「それで、捕らえた捕虜はどこに?」
「地下牢に入れてあります」
ああ、そういえばそんなものも作った記憶がある。
上の建物を作ってしまった後に敵を捕らえるための牢屋が必要だと言われて、地下に作ったんだ。
しかし地下牢と口に出すとなぜか後ろ暗いことのように思えるのはなぜだろうか。
「どんな人物を捕虜にしたんですか?」
「捕虜は3人ですな。狼のような耳と尻尾を持つ男、羽の生えた女、それと金の巻角を持つ女でした」
なるほどわかった。
魔族軍がどの捕虜を静香さんと交換しようとしているのか。
「ちなみに、巻角の女の髪は赤でしたか?」
「ええ、燃えるような赤髪でした」
たぶん今魔族軍を指揮している女将校の血縁者だろうな。
とりあえず会ってみるか。
マリステラ卿の案内で地下牢に向かう。
「赤髪の女はこの房です」
「そうですか」
牢は日本の刑務所を参考にして作ったので扉がある。
俺はその扉をノックした。
「勝手に入ればいいでしょ……」
少し気だるげな女の声が聞こえる。
声の感じは若い。
高校生のかえでちゃんと同じような年齢に感じさせる声だ。
俺は扉を開けて中に入った。
そこにいたのは魔族軍の女将校によく似た、16、7歳くらいの少女。
確実に血縁関係はあるだろう。
「初めまして、俺はシゲノブ・キザキ。君の名前はなんていうのかな」
「おじさんが拷問官ってわけだ。言っとくけど、あたしは何も話す気はない。拷問しても無駄だから早く殺してくんないかな」
話がかみ合わない。
それに、気丈なことを言っているけどこの子さっきから足が震えてるんだよな。
どうしたものか。
あまり時間はかけたくないのだけどな。
「俺が拷問なんてしそうな顔に見えるかな」
「拷問はしそうにないけど、エッチなことはしそうな顔してる」
俺は自分の顔を触ってみる。
そんな顔してるかな。
鼻の下を少し押し上げてみる。
「少しはマシになったね」
「それはありがとう。じゃあ君の名前を教えてくれるかな」
「いいよ。あたしの名前はアマーリエ・ベルタ。エルカザド連合国の下級騎士だよ」
エルカザド連合国。
それが魔族の国の国名か。
魔族という言い方も良くないかな。
「君たちは人間とは違う種族のようだけど、呼び名とかはあるのかな」
「あたしたちは自分たちのことを獣人と呼んでいるかな。人間は魔族って呼ぶみたいだけど」
獣人か。
獣の因子を身体の一部に持つ人という意味かな。
これからは獣人と呼んだほうが良さそうだな。
「君たちの国は、なぜ戦争を起こしたんだい?」
「人間の国があたしたちの国に来て国民を捕らえていくからじゃないか!あたしたちも我慢の限界だよ!!」
一理ある。
向こうの国に行って国民を奴隷として捕らえて連れてきていたとしたら、戦争の理由としては十分だ。
まあそんなことだろうと思っていた。
「最後の質問だ。連合国軍の指揮官の女性とは、どういう関係?」
「あたしのお姉ちゃん」
なるほど。
知りたいことはすべて分かった。
79
お気に入りに追加
8,868
あなたにおすすめの小説
スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい
兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
寝て起きたら世界がおかしくなっていた
兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。
チートをもらえるけど戦国時代に飛ばされるボタン 押す/押さない
兎屋亀吉
ファンタジー
チートはもらえるけど戦国時代に強制トリップしてしまうボタン。そんなボタンが一人の男の元にもたらされた。深夜に。眠気で正常な判断のできない男はそのボタンを押してしまう。かくして、一人の男の戦国サバイバルが始まる。『チートをもらえるけど平安時代に飛ばされるボタン 押す/押さない』始めました。ちなみに、作中のキャラクターの話し方や人称など歴史にそぐわない表現を使う場面が多々あります。フィクションの物語としてご理解ください。
ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない
兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる