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32.女騎士のピンチ
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勇者同士であれば神器は奪えるという事実が判明したが、現状でできることは少ない。
今は俺達男爵領軍に与えられたロードスの町の治安維持という任務に専念しよう。
今日も元気に男爵領警備隊のみんなは町で悪漢を取り締まる。
『きさまら、噂の男爵軍の連中か。フレデリックをやったからっていい気になるんじゃねーぜ!!』
『『『雷弾!』』』
『あばばばばばば』
『アニキ!てめーら、アニキをよくも!魔法が使えるのはてめーらだけじゃねーぜ!!ファイアボーール!!』
『『『土壁!』』』
『くそっ俺の攻撃が通らねえ!かくなる上は、直接殴ってやるよ!!』
『『『泥沼!』』』
『ぐばっ。ぺっぺっ、なんだこれ。地面が突然泥に』
『『『雷弾!』』』
『あばばばばばば』
先日作られた臨時作戦本部は治安維持部隊司令室に名前を変え、壁に掛けられた鏡には町の様子が映し出され続けている。
警備隊のみんなも部隊を4つに分けて交代勤務にすることによって、十分な休息が取れている。
非常に充実した日々だ。
あの後男爵の元にはウィンコット伯からの抗議の使者などが来たようだが、スクアード辺境伯からの書状などを見せたらあっさりと引いていった。
向こうも分かってはいたのだろうが、貴族というのは面子や体面を気にするところがあるから一度は抗議をしておかないと弱腰だと思われるとでも思ったのだろう。
ツッパッた高校生じゃあるまいし。
俺などはこの町を今まで放置していたことのほうが、よっぽど体面が悪いような気がするのだけどな。
治安維持の任期が終わる頃には、小奇麗でさっぱりとした町に生まれ変わっていることだろう。
ウィンコット伯にはスクアード辺境伯からこの町に対する苦言をつらつらと書き綴った書状が届く手筈になっているので、今後はもっと治安維持にも力を入れることだろう。
そういえば兵舎で身を寄せ合っていた子供たちだが、男爵領へと連れて行くことになった。
この町もこれから少しずつ変わっていくのだろうが、子供たちは今困窮しているのだ。
今のこの町には、子供たちを救済するような施設は無い。
置いておくのは忍びないので、男爵領に連れて帰り孤児院で生活してもらうこととなった。
男爵領は食料だけは供給過多なので孤児院でも美味しいご飯が食べられるだろう。
すべてが順調に思えた。
『くっ、殺せ……』
クロト湿原を偵察中の虫型ゴーレムからそんな音声が届くまでは。
『この者を捕虜とする』
そう宣言したのは魔族軍の将校。
真っ赤な髪を後ろで一括りにした大柄な女だ。
身長は180センチはあろうか。
その身体つきは筋肉質で、スポーツ選手のように引き締まった肉体をしている。
耳の後ろの辺りからは金色の巻角が生えており、その女が魔族であることを証明している。
それ以外はいたって普通の人間となんら変わらない姿の女だった。
『捕虜になどなるつもりは無い。殺せ!』
そう叫ぶのは王国騎士団所属の勇者、篠原静香さんだ。
白銀に輝く鎧が良く似合うきつめの黒髪美人。
しかし今はその鎧も脱がされ、薄い鎧下の上から縄がかけられている。
むっちりとした女性的な身体のラインが出てしまって、非常に扇情的だ。
しかしじっくりと眺めている場合ではない。
すぐに助けに行かなくては。
「男爵、少しいいですか?」
「はい、なんでしょう?」
俺は男爵に静香さんが陥ってしまっている現状を伝える。
「それは大変なことですな。すぐにマリステラ卿への書状を書きます」
「おねがいします」
助けに向かうにも、静香さんが所属している王国騎士団という頭を飛び越えて助けにいくことはできない。
めんどうなことだ。
マリステラ卿ならば大丈夫だと思うが、もし救出の許可が出なかった場合は独断専行も辞さない覚悟だ。
静香さんには色々とお世話になった。
なるべく早く助け出したい。
この世界には倫理もなにもあったものじゃない。
戦時協定も無いし、捕虜にどんなことが行われるかわからない。
男爵がペンを走らせる時間さえも惜しく感じる。
偵察用虫型ゴーレムからの映像はずっと送られてきているので、向こうの状況は分かっているのだけどね。
まだそれほど悲惨なことにはなっていないが、馬に荷物のように載せられているし扱いが結構乱暴なので油断はできない。
幸いなのは向こうの将校が女なことだろうか。
同じ女としての慈悲などはあまり期待できないかもしれないが、本人が女には興味がないことが救いだ。
しかし魔族は言ってはなんだが、脳筋だ。
捕虜を取って身代金などを要求するようなタイプには見えないのだけどな。
なぜ魔族軍は捕虜など取ったのだろうか。
そもそもなんで静香さんは捕まってしまったのだろうか。
虫型ゴーレムに録画機能は無い。
俺もたまに戦場を覗いていて、たまたま静香さんが捕まっている状況を目にしただけなのでいまいち現状が掴めない。
まずは男爵の書状が書け次第、王国騎士団本陣に状況を確認しに行くのが先決かな。
「シゲノブ殿、書けました。こちらをマリステラ卿に。ロードスの町のことは心配なさらなくても大丈夫です。お気をつけて行ってきてください」
「ありがとうございます。では少し行ってきます」
俺はクロト湿原に建造された砦の近くに転移した。
今は俺達男爵領軍に与えられたロードスの町の治安維持という任務に専念しよう。
今日も元気に男爵領警備隊のみんなは町で悪漢を取り締まる。
『きさまら、噂の男爵軍の連中か。フレデリックをやったからっていい気になるんじゃねーぜ!!』
『『『雷弾!』』』
『あばばばばばば』
『アニキ!てめーら、アニキをよくも!魔法が使えるのはてめーらだけじゃねーぜ!!ファイアボーール!!』
『『『土壁!』』』
『くそっ俺の攻撃が通らねえ!かくなる上は、直接殴ってやるよ!!』
『『『泥沼!』』』
『ぐばっ。ぺっぺっ、なんだこれ。地面が突然泥に』
『『『雷弾!』』』
『あばばばばばば』
先日作られた臨時作戦本部は治安維持部隊司令室に名前を変え、壁に掛けられた鏡には町の様子が映し出され続けている。
警備隊のみんなも部隊を4つに分けて交代勤務にすることによって、十分な休息が取れている。
非常に充実した日々だ。
あの後男爵の元にはウィンコット伯からの抗議の使者などが来たようだが、スクアード辺境伯からの書状などを見せたらあっさりと引いていった。
向こうも分かってはいたのだろうが、貴族というのは面子や体面を気にするところがあるから一度は抗議をしておかないと弱腰だと思われるとでも思ったのだろう。
ツッパッた高校生じゃあるまいし。
俺などはこの町を今まで放置していたことのほうが、よっぽど体面が悪いような気がするのだけどな。
治安維持の任期が終わる頃には、小奇麗でさっぱりとした町に生まれ変わっていることだろう。
ウィンコット伯にはスクアード辺境伯からこの町に対する苦言をつらつらと書き綴った書状が届く手筈になっているので、今後はもっと治安維持にも力を入れることだろう。
そういえば兵舎で身を寄せ合っていた子供たちだが、男爵領へと連れて行くことになった。
この町もこれから少しずつ変わっていくのだろうが、子供たちは今困窮しているのだ。
今のこの町には、子供たちを救済するような施設は無い。
置いておくのは忍びないので、男爵領に連れて帰り孤児院で生活してもらうこととなった。
男爵領は食料だけは供給過多なので孤児院でも美味しいご飯が食べられるだろう。
すべてが順調に思えた。
『くっ、殺せ……』
クロト湿原を偵察中の虫型ゴーレムからそんな音声が届くまでは。
『この者を捕虜とする』
そう宣言したのは魔族軍の将校。
真っ赤な髪を後ろで一括りにした大柄な女だ。
身長は180センチはあろうか。
その身体つきは筋肉質で、スポーツ選手のように引き締まった肉体をしている。
耳の後ろの辺りからは金色の巻角が生えており、その女が魔族であることを証明している。
それ以外はいたって普通の人間となんら変わらない姿の女だった。
『捕虜になどなるつもりは無い。殺せ!』
そう叫ぶのは王国騎士団所属の勇者、篠原静香さんだ。
白銀に輝く鎧が良く似合うきつめの黒髪美人。
しかし今はその鎧も脱がされ、薄い鎧下の上から縄がかけられている。
むっちりとした女性的な身体のラインが出てしまって、非常に扇情的だ。
しかしじっくりと眺めている場合ではない。
すぐに助けに行かなくては。
「男爵、少しいいですか?」
「はい、なんでしょう?」
俺は男爵に静香さんが陥ってしまっている現状を伝える。
「それは大変なことですな。すぐにマリステラ卿への書状を書きます」
「おねがいします」
助けに向かうにも、静香さんが所属している王国騎士団という頭を飛び越えて助けにいくことはできない。
めんどうなことだ。
マリステラ卿ならば大丈夫だと思うが、もし救出の許可が出なかった場合は独断専行も辞さない覚悟だ。
静香さんには色々とお世話になった。
なるべく早く助け出したい。
この世界には倫理もなにもあったものじゃない。
戦時協定も無いし、捕虜にどんなことが行われるかわからない。
男爵がペンを走らせる時間さえも惜しく感じる。
偵察用虫型ゴーレムからの映像はずっと送られてきているので、向こうの状況は分かっているのだけどね。
まだそれほど悲惨なことにはなっていないが、馬に荷物のように載せられているし扱いが結構乱暴なので油断はできない。
幸いなのは向こうの将校が女なことだろうか。
同じ女としての慈悲などはあまり期待できないかもしれないが、本人が女には興味がないことが救いだ。
しかし魔族は言ってはなんだが、脳筋だ。
捕虜を取って身代金などを要求するようなタイプには見えないのだけどな。
なぜ魔族軍は捕虜など取ったのだろうか。
そもそもなんで静香さんは捕まってしまったのだろうか。
虫型ゴーレムに録画機能は無い。
俺もたまに戦場を覗いていて、たまたま静香さんが捕まっている状況を目にしただけなのでいまいち現状が掴めない。
まずは男爵の書状が書け次第、王国騎士団本陣に状況を確認しに行くのが先決かな。
「シゲノブ殿、書けました。こちらをマリステラ卿に。ロードスの町のことは心配なさらなくても大丈夫です。お気をつけて行ってきてください」
「ありがとうございます。では少し行ってきます」
俺はクロト湿原に建造された砦の近くに転移した。
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