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25.スマホの能力と配置換え

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「シゲノブ殿、このカクテルという酒は実に美味いですな。他にも色々な種類があるとか。是非すべての種類を飲んでみたいですな」

「ちょっとマリステラさん、今俺とかえでが繁信さんと話してるでしょうが!んでね繁信さん、俺もかえでも神器ひとつはスマホなんすよ!」

「おそろいなんだよねー!!」

 なんか懐かれた。
 3人とも甘いカクテルが気に入ったようで、機嫌よくおしゃべりを続けている。
 マリステラ卿は甘い酒が大好きなようで他にはどんな種類があるのかとか、他のも飲んでみたいみたいな圧力をかけてくる。
 でも俺はカクテルにはそんなに詳しくないんですよ。
 バカップルは最初からあまり調子が変わっていないが、俺のことを名前で呼ぶようになった。
 俺も隼人くんとかえでちゃんと呼ぶようにした。
 2人共神器のひとつはスマホだそうだ。
 名前はそのままずばりスマホ。
 ひねれ。

「でもスマホはあんまし凄いアイテムって感じしな~い」

「まあ出来ることが前の世界のスマホと変わんないからな」

 スマホの能力は異世界でもネット検索と電話ができることだそうだ。
 もちろん元の世界に連絡を取ることはできないが、スマホの神器を持っているもの同士の連絡が取れるらしい。
 ネット検索もこちらから掲示板やSNSに書き込むことはできない。
 面白い神器だ。
 使いようによってはかなり有用な神器なのではないだろうか。
 俺も蒸留器の造り方とか、カクテルの種類とか検索したいし。
 協力してもらうには、やっぱり神酒をあげるのがいいかな。
 一応すごい回復アイテムでもあるんだし。
 篠原さんの冷蔵庫には無限に物が入るらしいので、2人とついでにマリステラ卿のために何種類かの甘いカクテルを預けておくとしよう。
 いざという時のは飲めば回復もできるし。
 どんなにすごい神器を持っていようと、戦争なんて何が起こるか分からないものだ。
 せっかく知り合って少しは仲良くなれたと思う人たちには死んでほしくない。
 俺は少し多めに神酒を篠原さんに預けた。
 少しなら王国騎士団の他の人にも飲ませてもいいと言っておいた。
 さすがに取り上げられるようなことは無いだろうけど。
 





「繁信さん、お気をつけて」

「シゲさん、ばいばい」

「シゲさん、またね~」

 とうとう俺達男爵軍はお役ごめんとなり、国内の治安維持部隊に配置換えとなった。
 当然砦建造の手柄は王国騎士団のものとなる。
 まあそれを狙っていたのだからいいのだけどね。
 王国騎士団の指揮官や勇者も悪い人じゃなかったし。
 軍監のようにもっと偉っそうにした馬鹿な指揮官が来るのかと思ったら、空気は読めないけど仕事はできる人だった。
 勇者のみんなはいい人ばかりだったし。
 静香さんと名前で呼び合えるほど仲良くなれたのは良かったが、高校生コンビの2人にはシゲさんという俺の高校時代のあだ名で呼ばれるようになってしまった。
 静香さんからはかなりの量の食料やアイスなどをもらった。
 俺もタダで貰うわけにはいかないからと神酒をかなりの量あげた。
 互いにこんなにもらえないからお返しにと渡し合っていたら、いつの間にか軍が賄えるような量になっていたのだ。
 俺の神酒は対価も無しに酒が出てくるのだから気にしなくていいと言ったのだけれど、静香さんはゆずらなかった。
 向こうは対価に魔石を払っているというのだから、ちょっと申し訳ないな。
 何かあったら助けに来よう。
 俺は偵察用虫型ゴーレムを200機ばかり野に放っていくことにした。
 一応鳥型も100くらい放っておくか。
 これで遠くからでもここの状況を知ることができる。
 もちろん悪用厳禁だ。
 戦況を知るために時々空や壁の上から見るだけにしておこう。
 そこまでして覗きを働こうという童貞力はおっさんにはないよ。
 ちょっと金払えばお店でプロにお願いできるんだから。
 早く領地に帰ってリゼさんのお店に行きたいな。
 誰か戦争終わらせてくれないかね。
 




 パッカパッカとゴーレム馬は進み、目的地であるロードスという町に到着した。
 この町が男爵軍の次の任務地だ。
 毎回毎回移動距離の長い場所ばかり指定しおって。
 中央の馬鹿貴族は俺の妄想の中で10回くらい皆殺しになっている。
 さらに最悪なのはこの町だ。
 ロードスという町は戦争以前からそもそも治安が最悪な町なのだ。
 秩序とか規則とか、そんなもんは初めから存在していないようなアウトローたちが集まる町。
 支配しているのは領主貴族の息のかかったチンピラヤクザみたいな町の顔役。
 領主貴族はその顔役が自分たちに逆らいさえしなければ、ほとんどの悪事を見逃す。
 ここではありとあらゆる悪行が見逃される。
 力無き者は食われ、力ある者は食い散らかす。
 ロードスという町はそんな悪徳の町なのだ。
 こんな町の治安維持が任務なんて嫌がらせとしか思えない。
 
「どうも」

「どうも」

 こんな町にも一応名前だけの代官というものは存在している。
 もやしが眼鏡をかけているみたいに見えるほど痩せた男だ。
 不健康そうなのでお近づきのしるしに神酒を振舞う。
 明日死んでもらっても困るから。
 
「はぁ、正直言ってこんなの嫌がらせだと思うんですよ。この町に治安維持の仕事なんてありません。私も代官なんて呼ばれていますが、実質この町の顔役であるフレデリックという男の使いぱしりですよ」

「まあそうでしょうなぁ。しかし我々も命令された以上は何かしら仕事をしなければなりません」

「困りましたね。とりあえずは兵舎として一棟建物を用意しますのでそこで待機してもらってもよろしいでしょうか。フレデリックに一度確認してみます」

 町の代官が顔役に指示を伺うとは。
 他の町とは立場が逆転してしまっているようだ。
 町の顔役であるフレデリックという男は領主貴族ともずぶずぶの関係だというから、代官などよりもよほど領主に近い立場なのだろう。
 前途多難の予感がする。


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