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4.各陣営
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「ことの起こりは半年前にございます」
とても長い話だったが、要約すればこうだ。
ルーガル王国、ステルシア聖王国、ムルガ共和国の三国と国境を接する領土に住む魔族と呼ばれる異民族たちがいきなり攻めてきた。
ピンチなので古の業で異世界から勇者を召喚した。
「やつらの価値観は我々とは異なります。人々の和をもって国を治める我々人間と違い、やつらは強さこそがすべてなのです。ですので、自分達より弱いものからは奪ってもいいという理屈によって古来より我ら三国に何度も侵攻を繰り返しているのです」
というのは人間側の意見だ。
魔族側の事情もあるのかもしれないけれど、どうにも普通の戦争っぽいな。
エドガーさんは時々あの獣共とかちょっと差別的発言をしているので、人間側にも魔族と戦う理由がありそうな気がする。
なんとも泥沼化しそうな戦争だ。
できれば遠慮したいところだが、俺はこの世界のことを何も知らない。
ある程度の常識や知識を身につけるまでは、三国の庇護を受けておいたほうが無難だろう。
「わかりました。できるだけ協力したいと思います」
「おお、ありがとうございます。それではこちらへ」
エドガーさんは歩き出す。
石造りの階段を上り、これまた石造りの長い廊下を歩いていく。
こんなに全部石造りだと地震がきたときにすぐに倒壊してしまいそうだ。
だがこの歴史のありそうな回廊が残っているということは、地震が少ない土地なのだろう。
それにしても広い建物だ。
どこかの国の王城なのかもかもしれない。
「こちらに皆様お集まりです。我々三国の主要な陣営が皆様に自陣営をアピールしております」
そこは市民体育館くらいの広さの部屋。
各陣営が壁際に旗を並べ、にこやかに笑顔を浮かべている。
召喚者たちはあちこち歩き回り、各陣営の特徴や待遇などを聞いて回っているようだ。
まるで合同企業説明会のようだ。
なんか思っていたのと違う。
「我々三国同盟は志を同じくして戦う同志ではありますが、三国がすべて同じ場所を向いて戦っているのかと問われればそれは微妙に違います。敵は同じで目指すべき場所もまた同じであるのですが、我々は別の国同士が集まった共同体なのです」
つまりは、召喚は一緒にしたけど勘違いしないでよね、軍隊は別なんだからね、ってことか。
そして各国の思惑もまた違う。
この戦争に対しての各国のスタンスもまた違うのかもしれない。
どこの国も自分の国が一番損が少なく利益を大きくしたいに決まっている。
ならば召喚勇者の誘致や囲い込みは各国別々に行うということなのか。
さらに神器にはアタリハズレがある。
それをエドガーさんたちが知っているかは分からないが、単純に誘致できた人数がイコール戦力にはならないということだ。
俺もどの陣営に行くのかは慎重に選ぶ必要があるな。
待遇はそこそこでいいからできるだけ締め付けが厳しくない陣営がいいものだ。
40近いおっさんが運動不足の身体を引きずって軍隊式の訓練とか付いていけないからな。
俺は各国の陣営をじっくりと眺める。
三国しかないはずなのに、ずいぶんと旗の数が多いな。
まさか国内でも陣営が別れているのか?
そうなると選ぶのは容易ではない。
全部話を聞くだけでも大変だ。
「よろしければ、簡単にどの陣営がどの国のどんな陣営なのか説明いたしましょうか?」
ありがたい申し出だ。
俺はエドガーさんに頼んで説明してもらう。
「まず、ルーガル王国。私が所属している国です。陣営は王国騎士団と、各領地を治める貴族総勢24名」
24名って、数ある陣営の半分以上がルーガル王国じゃないか。
それだけ貴族が多くて無視できないってことか。
ルーガル王国は貴族の力が強い国なのかもしれない。
そういう国は治めるのが大変そうだよな。
すぐに貴族が離反しそうで。
「一番大きな旗が王国騎士団で、そこから順に旗が小さくなるごとに爵位が下がっていくような並びになっております」
貴族も色々あって大変そうだ。
一番下座の人なんて旗が切り取られてしまっているもの。
多分大きすぎる旗を持ってきてしまって、爵位が上の人より大きな旗を掲げるわけにもいかないから自分で切ったんだな。
可哀想に。
「待遇は、やはり大貴族の方々が一番良いみたいですね。王国騎士団の隣のお三方でございます。右からオスマン公爵、ドルスール公爵、ライエル侯爵です」
煌びやかな絹の服を着た3人の男。
彼らがルーガル王国の大貴族か。
おっかない目をしている。
俺おっさんのくせに悪役令嬢モノとか読んでるから貴族ってちょっと苦手なんだよね。
「本来ならばスクアード辺境伯も入れて王国四大貴族と呼ばれているのですが、スクアード辺境伯は国境に詰めておりますのでこちらにはおいでになっておりません」
なんか来ていない貴族のほうが好感が持てるという不思議。
頑張って国境を守っていらっしゃるのだろう。
でも前線は勘弁。
「王国騎士団は下級貴族家よりは待遇が良いとは思いますけど、お勧めはできませんね。なにやら無茶な訓練計画を立てていましたから」
脳筋はノーサンキュー。
きつい訓練とかおっさんには無理だから。
「我が国についてはこのへんでいいですかね。では次に参ります。次にステルシア聖王国でございます」
エドガーさんが指し示す方向には、法衣を身に纏った老人の集団がいた。
お坊さんの国かな。
いや、どちらかといえば聖職者かもしれない。
ステルシア聖王国は聖職者の国なのか。
「お察しのとおり、ステルシア聖王国は聖職者の治める国でございます。陣営は4つ、法王陣営と3人の枢機卿陣営でございます。待遇はそこそこ良いようですが、法王も枢機卿も選挙で選ばれた人物ですので少々立場は不安定です」
これはまた難しそうな陣営だ。
その陣営のトップが失脚したり、次の選挙で落ちたりしたらどうなるのか。
あとはステルシア聖王国が宗教の国だとして、どんな教義の宗教なのかというのも重要になってくる。
その陣営に付いていって、あなたは今日から一生肉が食べられませんってことだってありえるのだ。
厳しい戒律の宗教は堕落したおっさんには無理だな。
とても長い話だったが、要約すればこうだ。
ルーガル王国、ステルシア聖王国、ムルガ共和国の三国と国境を接する領土に住む魔族と呼ばれる異民族たちがいきなり攻めてきた。
ピンチなので古の業で異世界から勇者を召喚した。
「やつらの価値観は我々とは異なります。人々の和をもって国を治める我々人間と違い、やつらは強さこそがすべてなのです。ですので、自分達より弱いものからは奪ってもいいという理屈によって古来より我ら三国に何度も侵攻を繰り返しているのです」
というのは人間側の意見だ。
魔族側の事情もあるのかもしれないけれど、どうにも普通の戦争っぽいな。
エドガーさんは時々あの獣共とかちょっと差別的発言をしているので、人間側にも魔族と戦う理由がありそうな気がする。
なんとも泥沼化しそうな戦争だ。
できれば遠慮したいところだが、俺はこの世界のことを何も知らない。
ある程度の常識や知識を身につけるまでは、三国の庇護を受けておいたほうが無難だろう。
「わかりました。できるだけ協力したいと思います」
「おお、ありがとうございます。それではこちらへ」
エドガーさんは歩き出す。
石造りの階段を上り、これまた石造りの長い廊下を歩いていく。
こんなに全部石造りだと地震がきたときにすぐに倒壊してしまいそうだ。
だがこの歴史のありそうな回廊が残っているということは、地震が少ない土地なのだろう。
それにしても広い建物だ。
どこかの国の王城なのかもかもしれない。
「こちらに皆様お集まりです。我々三国の主要な陣営が皆様に自陣営をアピールしております」
そこは市民体育館くらいの広さの部屋。
各陣営が壁際に旗を並べ、にこやかに笑顔を浮かべている。
召喚者たちはあちこち歩き回り、各陣営の特徴や待遇などを聞いて回っているようだ。
まるで合同企業説明会のようだ。
なんか思っていたのと違う。
「我々三国同盟は志を同じくして戦う同志ではありますが、三国がすべて同じ場所を向いて戦っているのかと問われればそれは微妙に違います。敵は同じで目指すべき場所もまた同じであるのですが、我々は別の国同士が集まった共同体なのです」
つまりは、召喚は一緒にしたけど勘違いしないでよね、軍隊は別なんだからね、ってことか。
そして各国の思惑もまた違う。
この戦争に対しての各国のスタンスもまた違うのかもしれない。
どこの国も自分の国が一番損が少なく利益を大きくしたいに決まっている。
ならば召喚勇者の誘致や囲い込みは各国別々に行うということなのか。
さらに神器にはアタリハズレがある。
それをエドガーさんたちが知っているかは分からないが、単純に誘致できた人数がイコール戦力にはならないということだ。
俺もどの陣営に行くのかは慎重に選ぶ必要があるな。
待遇はそこそこでいいからできるだけ締め付けが厳しくない陣営がいいものだ。
40近いおっさんが運動不足の身体を引きずって軍隊式の訓練とか付いていけないからな。
俺は各国の陣営をじっくりと眺める。
三国しかないはずなのに、ずいぶんと旗の数が多いな。
まさか国内でも陣営が別れているのか?
そうなると選ぶのは容易ではない。
全部話を聞くだけでも大変だ。
「よろしければ、簡単にどの陣営がどの国のどんな陣営なのか説明いたしましょうか?」
ありがたい申し出だ。
俺はエドガーさんに頼んで説明してもらう。
「まず、ルーガル王国。私が所属している国です。陣営は王国騎士団と、各領地を治める貴族総勢24名」
24名って、数ある陣営の半分以上がルーガル王国じゃないか。
それだけ貴族が多くて無視できないってことか。
ルーガル王国は貴族の力が強い国なのかもしれない。
そういう国は治めるのが大変そうだよな。
すぐに貴族が離反しそうで。
「一番大きな旗が王国騎士団で、そこから順に旗が小さくなるごとに爵位が下がっていくような並びになっております」
貴族も色々あって大変そうだ。
一番下座の人なんて旗が切り取られてしまっているもの。
多分大きすぎる旗を持ってきてしまって、爵位が上の人より大きな旗を掲げるわけにもいかないから自分で切ったんだな。
可哀想に。
「待遇は、やはり大貴族の方々が一番良いみたいですね。王国騎士団の隣のお三方でございます。右からオスマン公爵、ドルスール公爵、ライエル侯爵です」
煌びやかな絹の服を着た3人の男。
彼らがルーガル王国の大貴族か。
おっかない目をしている。
俺おっさんのくせに悪役令嬢モノとか読んでるから貴族ってちょっと苦手なんだよね。
「本来ならばスクアード辺境伯も入れて王国四大貴族と呼ばれているのですが、スクアード辺境伯は国境に詰めておりますのでこちらにはおいでになっておりません」
なんか来ていない貴族のほうが好感が持てるという不思議。
頑張って国境を守っていらっしゃるのだろう。
でも前線は勘弁。
「王国騎士団は下級貴族家よりは待遇が良いとは思いますけど、お勧めはできませんね。なにやら無茶な訓練計画を立てていましたから」
脳筋はノーサンキュー。
きつい訓練とかおっさんには無理だから。
「我が国についてはこのへんでいいですかね。では次に参ります。次にステルシア聖王国でございます」
エドガーさんが指し示す方向には、法衣を身に纏った老人の集団がいた。
お坊さんの国かな。
いや、どちらかといえば聖職者かもしれない。
ステルシア聖王国は聖職者の国なのか。
「お察しのとおり、ステルシア聖王国は聖職者の治める国でございます。陣営は4つ、法王陣営と3人の枢機卿陣営でございます。待遇はそこそこ良いようですが、法王も枢機卿も選挙で選ばれた人物ですので少々立場は不安定です」
これはまた難しそうな陣営だ。
その陣営のトップが失脚したり、次の選挙で落ちたりしたらどうなるのか。
あとはステルシア聖王国が宗教の国だとして、どんな教義の宗教なのかというのも重要になってくる。
その陣営に付いていって、あなたは今日から一生肉が食べられませんってことだってありえるのだ。
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