スライムを出すだけのゴミスキルだと思ったけど妖精や精霊はこのドロドロが好きみたいです

兎屋亀吉

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5.役立たずの生活

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 異世界の森生活も今日で1か月ほどになる。
 スライムを出すスキルがチート化して無双するなんてことはやはり無く、俺は毎日ボーラやくくり罠を使った原始的な狩りに勤しんでいた。
 スキルで集団の役に立つことができない以上はこうして狩りや雑用で少しでも貢献する以外無いのだ。
 幸いにも俺は小さい頃毎年のように実家の裏山でサバイバルをしていた経験がある。
 野兎や鳥くらいだったら狩ることも不可能じゃない。
 まあそれがこの集団にとって本当に役に立っているかは微妙だが。
 俺の手には今日の収穫である大きなカラスのような鳥がぶら下がっている。
 異世界らしい魔法のような危険な攻撃をしてくることもなく、俺でも狩ることができて肉も食べられることが確認済みの獲物だが、羽だけじゃなく肉から内臓まですべて真っ黒で気持ち悪いので他の人たちには不評だ。
 こんなものを持って行っても喜ばれることは無いのだろうし、何より必要もないだろう。
 この森は最初に俺たちが倒れていた現野営地から離れるほどに化け物みたいな生き物が出るようになる。
 陰キャ高校生たちは魔物と呼んでいたが、豚の魔物オークや牛の魔物ミノタウロスなどは食肉としてもあちらの世界の食べるためだけに飼育された豚の肉や牛の肉を遥かに凌ぐほどの味を持っている。
 毒などもなく食用可能なことは【鑑定】スキルを持つ大野さんが確認済みだ。
 魔物は普通の人間だったら絶対に敵わないほどに強いけれど、スキルがチートなハーレム陽キャパーティにかかれば敵ではなかった。
 結果、凶悪な敵は美味しい肉となった。
 三井さんの【気配察知】スキルを使えば完全に先制攻撃を仕掛けることができるため危険もそれほどないし、何トンあるのかわからない魔物の巨体も金田さんの【収納】スキルで簡単に持ち運ぶことができる。
 1匹狩れば17人で食べても何日分にもなる肉が容易に手に入るのだ。
 美味しい肉が安定して大量に手に入るのに、俺なんかが持ってくる気持ち悪い黒い肉なんかは絶対に必要ないだろう。
 だからこれはただの自己満足でしかない。
 集団の誰もが有用な能力を持ち、役割を得ている状況で、俺だけが何もしないというのが苦痛だった。
 





 野営地に戻ると、そこには土で出来た壁のようなものが出来上がっていた。
 そういえば今日、チャラ男大学生の青木さんが【土魔法】スキルを使って野営地を守る防壁を作ると話していたのを思い出す。
 この野営地周辺には危険な魔物が近づいたことはないとはいえ、今後も全く出ない保証はない。
 防壁を作ることには賛成だが、この土壁は防御力がそれほどあるように見えない。
 大丈夫なんだろうか。

「あれ?スライム野郎の滝川君じゃん?なにしてんの?ああまたあの激キモ真っ黒鳥狩ってきたんだ?」

「あれめっっちゃキモイから滝川君絶対全部食べてよ?」

 頼りない土壁を眺めていた俺に話しかけてきたのはチャラ男大学生の2人だ。
 大学生だから俺は最初年下だと思っていたのだが、どうやら何年か留年しているらしく年上だった。
 2人はあちらの世界で怪しげなイベントサークルの共同代表を務めていたらしく、場の空気を盛り上げるのが上手かった。
 しかし女性と男性で露骨に態度を変えたり、陽キャ以外を見下したりするので俺はかなり苦手なタイプだ。

「わかってますよ……」

 面倒だったので土壁のことは聞かずに2人の横を通り過ぎる。
 今日はいつになくニヤニヤしていて気味が悪いくらいだった。





 門というよりもただの立てかけられた板をくぐり、野営地の中に入る。
 チャラ男大学生2人組の態度には妙な気持ち悪さがあったので少し不安だったが、野営地の中はいつもと変わりない。
 妙ないたずらでも仕掛けたのかと思ったが、思い違いだったようだ。
 簡素ではあるが建築物が立ち並ぶこの野営地は、もう野営地ではなく拠点と呼ぶべきなのかもしれない。
 建物は20棟ほど。
 【木工】スキルを得た女子中学生の榎本さんと、【錬金術】スキルを得た松平君がスキルを駆使して作った大き目の東屋のような調理場と、竪穴式住居が人数分。
 あとは男女に分かれた風呂とトイレがある。
 松平君が言っていたように生産系のスキルは間違いなくチートだった。
 なにせ道具も何も使わずにこの拠点を作り上げたというのだから凄まじい建築能力だ。
 榎本さんのスキル【木工】は木を加工するスキルで、木に触れて思い描くだけで自由自在に形を変えることのできるスキルだった。
 松平君のスキル【錬金術】は【木工】の上位互換のようなスキルで、木だけでなくすべての物を触れただけで自由自在に変形させた。
 松平君の話では錬金術にはまだまだ可能性がありそうだし、本当にチートな生産職になりそうだ。
 俺は鳥を手に立派な屋根のある調理場に向かう。
 調理場では【料理】スキルを持つOLの友野さんが料理の下ごしらえをしていた。
 友野さんの年齢は30代半ばくらいで、美人だが人を殺せそうなほど目つきが鋭い。
 いまだにあの視線には慣れなくてちょっと怖いのだが、話しかけないわけにはいかない。

「あの、友野さん、これよかったら食料の足しに……」

「必要ありません。そんな黒い鳥食べたくないですし、美味しくなさそうです」

「ですよね……」

「それよりも滝川さん、戻ってきたならまず最初にお疲れ様ですとか言えないんですか?社会人としての常識ですよ?あなたもあちらの世界では会社組織の一員だったんですよね。それなのに大学生みたいな気分で……」

「あ、すいません」

「すいませんではありません。きちんとすみませんと言いなさい。社会人としての常識ですよ?」

 友野さんはあれだ。
 絶対上司にしたくないタイプ。
 口癖は社会人としての常識、説教は落としどころがわからないエンドレス地獄、自分は論理よりも感情を優先するタイプなのに部下には仕事に感情を持ち込むなと言うようなタイプだ。
 
「はぁ、あなたには何を言っても無駄ですね。もういいですよ。その代わり、薪が切れそうなので拾ってきていただけますか?ちょっと大量に必要なのでいちいちここまで持って来ずに土壁の外側に積んでおいてください。あとで金田さんに回収してもらいますから」

「わかりました」

 いつもよりもあっさりと説教が終わったことに違和感を感じるが、まあそういう気分のときもあるのだろう。
 ラッキーだと思おう。
 俺は言われたとおり薪を拾いに森の中に戻った。

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