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お題:あつすぎるぜ~

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『あつすぎる日でも』



 異国で家族と別れた日。
 日本のふるさとで再会しようと誓いあった。

 また家族と会える日を信じて、涙さえ凍りつく地でもなんとか生きていた。
 朝めざめると、隣で寝ていた人が凍っていた。
 明日の朝も目が覚めるだろうか。
 そんな恐怖と戦いながら、家族との再会を信じて生き続けていた。

 終戦からどれほどの年月が過ぎたのだろうか。
 ようやく船に乗れた。
 港には多くの人がいた。
 皆たいせつな家族の帰国を待ちわびていたのだ。
 
 そこに私の家族はいなかった。
 それでも。
 老いた母は港までくることができなかったのだと思い込んだ。

 私は駅に向かった。
 ふるさとへ向かう切符を買った。

 日本はすっかり様変わりしていた。
 もうほとんど戦争の雰囲気は感じられなかった。
 ぼろぼろの軍服を着て、軍靴のかかとから金を出した私を、駅員は不思議そうな顔をして見ていた。

 ふるさとの駅についた。
 駅前でわたしを迎えてくれたのは、家族ではなかった。
 私の帰国の知らせを受け取っていたのは、隣家の住民だった。

 そこで私は家に誰も帰ってきていないことを知った。
 私と血のつながった家族は、誰も生きて日本に帰ってはこられなかったのだ。

 終戦から何年経ったのだろう。
 いまも異国で別れた家族は誰も帰ってこない。
 
 8月15日。 
 例年、この日はうだるような暑さだ。
 それでも私は、しっかりと背筋を伸ばして手を合わせる。
 きっと魂だけは帰ってきてくれていると信じているから。
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