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お題:マスカラでつくる、今日の私。

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※ここからは化粧品メーカーとのコラボコンテストお題のお話です。
 コラボを行っていたサイトからの転載なので、念のためメーカー名と商品名に〇でぼかしを入れています。
 こちらもすべて一話完結となっております。



『私の魔法』


 まつげがくるりと上にあがった瞬間。
 私の運命も上向きに変わった気がした。

 高校三年、第一志望の大学に落ちてしまった。
 迷ったけれど、浪人は嫌で第二志望の大学に進学することを決めた。

 それから気持ちはずっと下向き。
 友達と卒業旅行の話をしていても、ぼんやり集中できない。
 だけど、大学からはひとり暮らし。
 引っ越しの準備をしなくてはいけないし、大忙しだった。

 そんな日々の中、ひとり暮らしに必要なものを買いに行く、そう親に声をかけられた。
 連れていかれたのはショッピングセンターの化粧品売り場、そこにあるカウンターに私は座らされた。
 大学生になったら化粧くらいしなきゃね、親はそう言ったけれど、私には化粧なんて未知の世界だった。

 私は真面目な高校生だった。
 化粧に興味がないわけではない。けれど、校則で禁止されているから、化粧をするのはよくないことだと思っていた。

 カウンターに座る私の横には、ばっちりメイクした綺麗なお姉さん。
 適当に形を整えただけの私のまゆげを見て、苦笑していた。
 なんだか恥ずかしくて、下を向きたくなった。
 だけど、お姉さんは任せてくださいって力強く言って、私をまっすぐ鏡に向かわせた。

 それからは魔法の時間。
 あっという間に私が私じゃなくなった。

 ふわふわ透明感のある肌に仕上がった頬に、うるっと艶やかなチークをのせて。
 きらきら輝く目元、アイライナーを目尻から長めに引いてきりっとさせて。
 ぷるんとみずみずしいくちびるは、少しだけあざといかもしれない。

 それからの私は下を向かなくなった。
 自分でまっすぐ前を向いて、笑えるようになった。
 おかげで大学に入学してからすぐに友達ができた。
 
 今日は大学で出会った気になる男子と、二人ででかける約束をしている。
 
「かわいい!」

 鏡に映る自分を見て、おもわず声が出た。
 いままで私が使っていたマスカラとは別の色、まつ毛の束間までまったく違う。
 親に買ってもらったマスカラじゃない。
 
 ──C〇NMAKE POP UP STORE

 はじめて自分の意思でショップに行って選んだマスカラ。
 かわいいって思われたくて、どんな風にメイクをしたらいいのか研究した。
 
 まつげがきゅるんと上を向いている。
 私の気持ちも急上昇。
 マスカラのふたをきゅっと締めて、ポーチにしまう。
 この中には、いまの私が使える魔法が詰まってる。
 
「今日の私、最高にかわいいじゃん」
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