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お題:オムライスから見たあの子

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『オムライスのフィナーレ』


 ──るーるるるー

 誰かが鼻歌を口ずさんでいる。
 静かな家の中に、小さな声が響き渡る。
 重たい旋律だなと思った。
 歌を口ずさんでいるようで、心のうちに抱えた感情を世間に対して吐き出している。
 ずっしりと暗闇が私の上に振ってくる。

 ──るーるるるー

 学校に行けなくなってしまった。
 明確な理由はとくにない。
 自分ではっきりとした原因がわからないから、苦しい。
 張りつめていた心の糸が切れてしまった。
 それって結局はどういうことなんだろうね。
 わからないから余計に辛い。

 ──るーるるるー

 生きていたいよね。
 死ぬのは怖い。
 だけど、生きているのは難しい。
 傷つけたいわけじゃなかった。
 傷つきたいわけでもなかった。
 いつでも笑いあうことができたら、どんなに幸せだろう。

 ──るーるるるー

 綺麗に盛り付けられていたおいしそうな私。
 愛情がなければできないことだとわかるから、余計に辛いね。
 生ゴミまみれ。
 汚くて、臭くて、目をそらしたくなるほど痛ましいありさま。
 そうなるべきは自分だったと思うんだね。
 それでも生きていたいよね。
 
 ──るーるるるー
 
 あなたの瞳には光がある。
 私を見たあの目を覚えているよ。
 いまは気が済むまで歌って。
 吐き出して。
 誰かを傷つけたり、傷つけられたり。
 生きていればそんな日もあるよ。

 ──るーるるるー
 
 いまは体が重たく苦しくて、下しか見れていないんだね。
 だけど、気が向いたらカーテンを開けてみて。
 部屋の外に出なくたっていいから。
 学校に行かなくていい。
 ただ、窓から空を見上げてみてほしいんだ。
 きっと綺麗なはずだから。
 
 ──るーるるるー

 明るい光が差し込んでくるでしょ。
 少しだけ体が軽くならないかな。
 生きていれば迷ってばかりで、立ち止まってばかりで。
 一歩も前に進めなくなることはいくらでもある。
 そんなときは空を見て。
 きっとほんの少しだけ、心も軽くなるから。

 ──るーるるるー

 空を見上げることができたなら。
 私のことも思い出してくれると嬉しいな。
 辛くなったらそばにいくよ。
 君のことをふわふわの卵で包み込んであげるから。
 たまには失敗して穴があいたりしちゃうけど、そのときはケチャップでごまかす私を笑っていいよ。

 ──るーるるるー
 
 いまはまだ外の光が眩しくて動けないよね。
 たくさん歌って。
 いっぱい吐き出して。
 気が済むまで叫んでいいから。
 あなたの未来で私がおいしいって言われていることを願っています。
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