お題に挑戦した短編・掌編集

お題：恋予報

『妄想恋予報』


　仕事帰り
　いつも立ち寄る本屋さん

　好きな作家さんの本はお取り寄せと決めている
　今日も新発売の本を取りに行く

「新作おもしろかったですよ」
　予約票を持ってレジにきた私に話しかけてくれたのはいつもいる店員さん

「もうお読みになったんですか？」
「お昼休みに集中して読んじゃいました」

　レジで軽く会話をするのはいつものこと
　えくぼがあるかわいらしい笑顔の店員さん

　てきぱきと会計をすませる
　流れるような作業にほれぼれしてしまう

「ありがとうございました。またお待ちしております」
「ありがとう。じゃあまた」

　簡単に別れの挨拶
　店員と客なら当たり前のやり取り

　わかってはいるのに、もしかしたらと思ってしまう
　いくら客でも嫌なやつなら雑談はしない、よね？

　恋の予報
　あの人とつきあえる確率は何％だろうか

　こんなことを考えている時点で人として終わっているかもしれない
　だけど、妄想するくらいは許してほしい

　今日は寝る前にせっせと買ってきた本を読む
　店員さんと新作の感想を語り合う姿を想像しながら