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大型ダンジョン いいえ、普通のお城ですよ?
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「………………………………………………すっげえ美人じゃん」
警備兵がぽつりとなにかをつぶやいた。
サクラは警備兵がなにを言ったかわからず、首をかしげた。
「あの、いかがなさったのでしょうか?」
「……どうして、どうしてなのですか……」
サクラが声をかけると、警備兵は声を震わせながら話はじめた。
「なぜ、どうして。あんな変人にこんな、こんな……」
「どうしてとは、いったいなんでしょう? はっきりとおっしゃってくださいませ」
警備兵が、先ほどよりもさらにぐいっと顔をサクラに近づけてきた。
警備兵の目が血走っている。
その様子に、サクラの背筋に嫌な汗が流れた。
いよいよ逃げた方がいいかもしれない。
サクラは頭の中に、クロビスの家からここまでの道のりを思い浮かべる。
「あなたのような美しい方が、どうして軍医殿と婚約することになったのですか?」
「………………は、はあぁああ⁉︎」
予想外の質問をされた。
おもいがけない言葉に、サクラは声が裏返ってしまう。
「あなたのような美しい方が、どうして軍医殿と婚約することに……」
「質問は聞こえておりますわ!」
サクラが戸惑っていると、警備兵は同じ質問をもういちど口にしようとする。
慌てて止めると、警備兵はじっとサクラの目をみつめたまま黙り込む。
──っもう! このすぐ黙って見てくるやつ何回目なのよ。いい加減イライラしてきたな。
サクラは警備兵に対して苛立ちを覚える。
もしいまの自分がゲーム内と同じ立ち回りができるのならば、とっくに切り捨てているだろう。
装備品の一つや二つ、奪い取って商人に売りつけて金にしてやるところだ。
「おいおい、なにごとだ?」
黙り込んでいる警備兵のうしろから声がした。
警備兵がサクラをみつめたまま固まっているので、もう一人の城門警備の兵士がこちらへ近づいてきたのだ。
「いつまでもボケっとしていないで、さっさと仕事をしろ」
「いやあ、すまない。あんまりに驚いちまってな。こちらのお嬢さん、軍医殿の婚約者さんだってさ」
「マジで! 軍医殿ってクロビスさまのことかよ」
「そうそう。あのクロビスさまの婚約者さんだってよ」
最初に声をかけてきた警備兵が、あとから来た警備兵にサクラのことを話している。
あとからやってきた警備兵もバイザーをあげて、まじまじとサクラをみつめてくる。
「……そ、そんなに意外なのでしょうか?」
またこれかと、半ば呆れながらサクラは警備兵に問いかける。
「意外ってもんじゃありませんよ。あの方に人を愛する心とかあったのかって、驚いています」
「俺は軍医殿にも人並みに感情があったのかって、むしろ感動していますね」
サクラの質問に、二人の警備兵は大きな声で答えた。
それから二人の警備兵は、わいわい盛り上がってその場で話しこんでしまう。
「……あのう、入城の手続きをお願いしたいのですがー……」
ノルウェットが遠慮がちに警備兵に声をかける。
しかし、楽しそうに話し込む二人の警備兵には届かない。
すると、たまたま城門付近を通りかかった別の兵士たちが、なにごとかとこちらに近づいてきた。
そうしていつの間にか、サクラの周囲には十名ほどの兵士がいる。
彼らは大声で話しながら、ときおりチラチラとサクラに視線を送ってくる。
「…………この状況ってさ、もしかしてゲーム的にはかなりピンチなのでは?」
警備兵がぽつりとなにかをつぶやいた。
サクラは警備兵がなにを言ったかわからず、首をかしげた。
「あの、いかがなさったのでしょうか?」
「……どうして、どうしてなのですか……」
サクラが声をかけると、警備兵は声を震わせながら話はじめた。
「なぜ、どうして。あんな変人にこんな、こんな……」
「どうしてとは、いったいなんでしょう? はっきりとおっしゃってくださいませ」
警備兵が、先ほどよりもさらにぐいっと顔をサクラに近づけてきた。
警備兵の目が血走っている。
その様子に、サクラの背筋に嫌な汗が流れた。
いよいよ逃げた方がいいかもしれない。
サクラは頭の中に、クロビスの家からここまでの道のりを思い浮かべる。
「あなたのような美しい方が、どうして軍医殿と婚約することになったのですか?」
「………………は、はあぁああ⁉︎」
予想外の質問をされた。
おもいがけない言葉に、サクラは声が裏返ってしまう。
「あなたのような美しい方が、どうして軍医殿と婚約することに……」
「質問は聞こえておりますわ!」
サクラが戸惑っていると、警備兵は同じ質問をもういちど口にしようとする。
慌てて止めると、警備兵はじっとサクラの目をみつめたまま黙り込む。
──っもう! このすぐ黙って見てくるやつ何回目なのよ。いい加減イライラしてきたな。
サクラは警備兵に対して苛立ちを覚える。
もしいまの自分がゲーム内と同じ立ち回りができるのならば、とっくに切り捨てているだろう。
装備品の一つや二つ、奪い取って商人に売りつけて金にしてやるところだ。
「おいおい、なにごとだ?」
黙り込んでいる警備兵のうしろから声がした。
警備兵がサクラをみつめたまま固まっているので、もう一人の城門警備の兵士がこちらへ近づいてきたのだ。
「いつまでもボケっとしていないで、さっさと仕事をしろ」
「いやあ、すまない。あんまりに驚いちまってな。こちらのお嬢さん、軍医殿の婚約者さんだってさ」
「マジで! 軍医殿ってクロビスさまのことかよ」
「そうそう。あのクロビスさまの婚約者さんだってよ」
最初に声をかけてきた警備兵が、あとから来た警備兵にサクラのことを話している。
あとからやってきた警備兵もバイザーをあげて、まじまじとサクラをみつめてくる。
「……そ、そんなに意外なのでしょうか?」
またこれかと、半ば呆れながらサクラは警備兵に問いかける。
「意外ってもんじゃありませんよ。あの方に人を愛する心とかあったのかって、驚いています」
「俺は軍医殿にも人並みに感情があったのかって、むしろ感動していますね」
サクラの質問に、二人の警備兵は大きな声で答えた。
それから二人の警備兵は、わいわい盛り上がってその場で話しこんでしまう。
「……あのう、入城の手続きをお願いしたいのですがー……」
ノルウェットが遠慮がちに警備兵に声をかける。
しかし、楽しそうに話し込む二人の警備兵には届かない。
すると、たまたま城門付近を通りかかった別の兵士たちが、なにごとかとこちらに近づいてきた。
そうしていつの間にか、サクラの周囲には十名ほどの兵士がいる。
彼らは大声で話しながら、ときおりチラチラとサクラに視線を送ってくる。
「…………この状況ってさ、もしかしてゲーム的にはかなりピンチなのでは?」
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