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しおりを挟む「ごきげんよう。ユキ様はいらっしゃるかしら」
メリッサは、良家の子供たちが通う王立学園にやってきていた。
留学中でほとんど通っていないとはいえ、メリッサもこの学園に籍がある生徒なのである。
「……なに?」
メリッサは満面の笑みを浮かべているが、訪ねた相手は仏頂面をしている。
「ここでは人の目がございますので、別の場所に行きませんか?」
「皆の前では話せないことなの?」
ユキは夜会で会った時のように、無礼な態度でメリッサを睨みつけてくる。
「ユキ様にしかできないご相談がありますの。殿下のことなどもございますので、皆の前ではちょっと……」
「殿下のことですか?」
ここは教室だ。多くの生徒がいるのでメリッサは声を落として話しかけるが、ユキは構わずに大きな声で話す。
メリッサは空気を読んでくれと心の中で声を上げるが、彼女には届かない。
「まあ、いいでしょう。話くらいは聞いてあげる!」
教室の中にいる生徒たちは、夜会でメリッサの身に起きたことを知っているのだろう。
興味津々にこちらを窺ってくるので、恥ずかしくてたまらない。
ユキは胡散臭そうにメリッサを見ていたが、殿下のことと言われると拒否はできないらしい。ふんと鼻を鳴らして廊下を歩き出した。
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