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散策

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 森を抜けてやっと街が見えてきた。
 ライラとエリクの二人が街に帰り着いたころには日が傾きはじめていた。

「やっと着いたあ。もうこれ以上は歩きたくないわ……」

 ライラがぼやいていると、一人の兵士がこちらに気が付いて慌てて駆け寄ってきた。
 馬だけが先に帰ってきたので、何かあったのかと心配して街の入り口で待機していたらしい。
 エリクはライラに聞こえないように小さな声で兵士と言葉を交わす。
 彼はしばらく兵士と話した後に、ライラを振り返って声をかけてきた。

「私はこのまま森であったことの報告に向かいます。ライラ殿もご一緒していただけますか?」

 エリクの言葉は疑問形だが、断れる雰囲気ではない。

「……そうね、ご一緒するわ。だけど着替えてからでもいいかしら?」

 ライラはスカートの裾をつまんで足もとに視線を落としながら溜め息をついた。
 もう足が痛くてたまらない。せめて靴だけでも履き替えてからにしてほしい。
 エリクはライラの返答に苦笑いをしたあと、傍にいた兵士にまた小さな声で話しかける。
 頷きながら話を聞いていた兵士は敬礼をしたあと、こちらに背を向けて走り去っていった。

「冒険者組合に関係者を集めるように手配しました。着替えてから向かえば皆さまが揃うころだと思います」

 エリクはそう言ったあと、着ていた上着を脱いでライラの肩にそっとかけてくれた。
 
「宿までお送りいたします」

「一人で大丈夫よ。あなたは先に行ったほうがいいのじゃない?」

 ライラは断ったが、エリクは引き下がらなかった。
 
「街中では襲ってこないと思いますが、念のため一人になるのは避けた方がよろしいかと」

「………………ありがとう」

 ライラは厚意を受け入れてエリクと一緒に宿にしている定食屋に向かうことにした。
 森の中で襲われたとき、服の左袖が裂けてしまっていた。このまま街中を歩き回るのは悪目立ちしそうで嫌だと思っていたので、上着を貸してもらえたのは助かる。

 ――皆さまというのは例の作戦とやらに関係する方たちなのかしら。そうなると、殿下に協力するのかどうかという答えを今日中に出さなければいけないのかしらね。

 ライラは定食屋に向かう道中、第二王子の件について真剣に考え込んでいた。
 エリクは何かを察してか、話しかけてくることはなかった。
 そうしているうちに、あっという間に定食屋のある通りまでたどり着いた。

「……何か騒がしいですね」

「あら本当だわ。何かあったのかしら?」

 通りの様子がいつもと異なる。道行く人々の表情が険しい。
 よく見れば定食屋の周囲に住民が集まり、店内を覗き込んでいる。

 ライラとエリクは互いに顔を見合せた。
 それからすぐに群がる人々をかき分けて店の入り口に向かう。

 ライラは何故かとても嫌な予感がして眉間に皺を寄せた。
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