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1章 前橋死守編
前橋防衛戦 怨念
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ー前橋基地司令部
「北部、西部、東部、南部、今のところ問題はありません」
部下からの報告に私は安堵の息を吐いた。
「なんとか作戦通りうまくいったようだな」
すると片山参与が突如現れ、私に言葉をかけた。
「さすが榎本さん、長年エイリアンの軍勢と戦い、研究を重ねてきた人は違いますね」
「いえいえ、たまたまうまく事を進められただけです…」
そして私は、とある調査の進捗状況を片山参与に聞いた。
「そういえば参与、例の調査はどうなりましたか?この戦いの状況によっては、エイリアンに情報を流す"内通者"がわかるとのことですが…」
「今のところはまだ確定した人物はいないけど…だいぶもう候補が絞れてきたよ」
片山は各防犯カメラの映像と通信レーダーを眺めながら私にそう言った。
エイリアンの大軍勢がここ前橋に侵攻しているにも関わらず、片山は冷静だった。
「自衛隊の方たちも優秀ですね、エイリアンたちにばれずに背後に回って攻撃し、しかも銃がほとんど効かない代わりに対空機銃と迫撃砲で撃退するなんてね」
「いえ、それだけではありませんよ片山参与、通常装備でも防備がされていない所…関節部分と前方の首に弾丸を通すことができるんですよ、まあ…そこに命中させるのも難しいですが…」
「いやそれでもすごいよ、この調子なら…エイリアンを地球から追い出すことも夢じゃないね」
「まあ…それが叶うといいですね」
「ん?どうかしたかい?なんだか元気ないけど、体調悪い?」
片山参与が私を心配し、体調の調子はどうか聞いてくる。
「いえ、体調はとくに問題ないです、ただ…」
私はここ最近の悩みを片山参与に打ち明けた。
「9年前の侵攻が始まってから自衛官たちは変わってしまいました…、侵攻前は国家のためそして…国民のために誇りを持って日本国を守ってきました、しかし、今ではエイリアンへの憎しみを抱く者がほとんど…中には…親、恋人、子供を失ったがために復讐を生きがいとする者もおります」
「榎本さん、もしかしてこの前のことを気にしているのですか?」
片山参与の問いに私は答える。
「そうですね…過去に私の部下たちが捕虜として捕らえたエイリアン…そしてエルフらに拷問や殺害を繰り返してましたので…それらを防げなかった私にも責任があります…」
「まあそう自分をあまり責めないでくださいよ榎本さん、このご時世じゃあたぶん世界各国でもエイリアンやエルフたちに酷い扱いをしてますから…」
「しかし、このままでは自衛隊…いやそれどころか全世界の軍人たちがいつかエイリアンらを殺戮する誤ちを犯すかもしれません、私は元より身内もいなかったので犠牲者はおらず、私では彼らの気持ちをわかってあげれません」
「気持ちはわかるよ榎本さん、でも現状…その復讐心がなければ、僕たちはエイリアンらに勝つことはできない、僕が受け持っている部隊のほとんどはエイリアンへの復讐心に燃えてるしね…」
片山参与はどこか悲しげな表情をしながら私に言った。
「あなたも…やはりエイリアンたちを恨んでいるのですか?」
私の問いに片山参与は静かに答えた。
「そうだね…恨んでないって言ったら嘘になるかな」
「そうですか…」
「じゃあ僕はこれから大臣らに伝えなきゃいけないことがあるから指揮とかは任せたよ」
片山参与は私にそう言い、司令部を出ていった。
ー5分後
「失礼します」
ドアを開けると、室内には佐々木紘和防衛大臣と政務官の奥山政斗と橋本優正がいた。
そして、僕は大臣の前に立ち、”内通者”に関する調査結果を報告した。
「早速ですが、新しく内通者が見つかりました、内通者の名は”鈴木朔斗”、彼は防衛政策局に所属している職員であり、またエルフでもあります、エルフに関してはすでに密かに採取したDNAの検査で彼がエルフであることが証明されています、そして、彼が内通者であることはある方法を使って暴くことができました」
「その方法とはなんだね、片山双悟政策参与」
佐々木大臣の質問に僕は内通者の特定に至った経緯を説明した。
「最初はまず、かつて9年前の情報流出の件で、当時その情報を事前に知っていたことと、エイリアンに情報を流せる環境、状況にある者たちのみを候補に絞り込みました、そのときの候補者は我々以外で4人いましたが今回の前橋防衛の作戦内容の一部をその4人にそれぞれ違う内容の機密資料を彼らに託しておきました」
作戦内容の一部資料を内通者の候補らに渡していたことを知った奥山政務官が僕に怒号を浴びせてきた。
「おい貴様!内通者かもしれない奴に機密資料を渡したのか!?一体何を考えているんだ!?」
「まあまあ落ち着いてください奥山さん、片山参与には何か考えがあるんですよ」
橋本政務官は奥山政務官をなだめ、場を収める。
そして、橋本政務官は僕に本作戦の内容資料を内通者候補に漏らすようなことしたのかを聞いてきた。
「なぜ、今回の防衛戦の作戦資料を彼らに渡したのですか?」
「先程申した通り、一人ひとりそれぞれ違う内容の資料を託して、その4項目の内のどれかに作戦がエイリアンらが把握しているような動きを見せたら…」
「!…まさか…」
「はい、そのまさかです」
僕の企みに気づいた奥山政務官と橋本政務官、そして佐々木防衛大臣が驚いた様子で僕を見ていた。
「戦闘が開始されてから約1時間半といったところかな、そのとき僕は戦闘状況から見て、鈴木朔斗が内通者であることがわかったのです」
「つまり…その鈴木朔斗という者にしか渡していなかった作戦の一部資料の内容が、戦闘地域でエイリアンの軍勢がその作戦の一部を知っていたかのような動きをみせたということか?」
橋本政務官の質問に僕は答える。
「その通り!鈴木朔斗に渡した資料には"敵に防衛線の守りが誰もいないように見せて、エイリアンが入ってきたところを四方で待機していた所から集中攻撃を加える"といったことが記してある資料を彼に託したんだ」
僕の答えに奥山政務官はまた僕に怒りを向けてきた。
「おい!このことは榎本将官はご存じなのか!」
「ええ、榎本さんは今回内通者をあぶり出すのに協力するとの旨です、おかげで僕が内通者に漏らした内容を逆手に取り、急遽この日に一部4項目の作戦を変更、敵の裏をかくことができました」
説明を終えると、橋本政務官が疑問を問いかける。
「榎本将官は鈴木朔斗が内通者であることは知っていますか?」
「いいえ、まだ榎本さんには伝えておりません、では僕はこれから部下たちと共に鈴木朔斗を取り押さえに向かいますのでこのことは我々だけのご内密というわけで…」
大臣と政務官らにそう言い、僕は室内を出ていった。
「北部、西部、東部、南部、今のところ問題はありません」
部下からの報告に私は安堵の息を吐いた。
「なんとか作戦通りうまくいったようだな」
すると片山参与が突如現れ、私に言葉をかけた。
「さすが榎本さん、長年エイリアンの軍勢と戦い、研究を重ねてきた人は違いますね」
「いえいえ、たまたまうまく事を進められただけです…」
そして私は、とある調査の進捗状況を片山参与に聞いた。
「そういえば参与、例の調査はどうなりましたか?この戦いの状況によっては、エイリアンに情報を流す"内通者"がわかるとのことですが…」
「今のところはまだ確定した人物はいないけど…だいぶもう候補が絞れてきたよ」
片山は各防犯カメラの映像と通信レーダーを眺めながら私にそう言った。
エイリアンの大軍勢がここ前橋に侵攻しているにも関わらず、片山は冷静だった。
「自衛隊の方たちも優秀ですね、エイリアンたちにばれずに背後に回って攻撃し、しかも銃がほとんど効かない代わりに対空機銃と迫撃砲で撃退するなんてね」
「いえ、それだけではありませんよ片山参与、通常装備でも防備がされていない所…関節部分と前方の首に弾丸を通すことができるんですよ、まあ…そこに命中させるのも難しいですが…」
「いやそれでもすごいよ、この調子なら…エイリアンを地球から追い出すことも夢じゃないね」
「まあ…それが叶うといいですね」
「ん?どうかしたかい?なんだか元気ないけど、体調悪い?」
片山参与が私を心配し、体調の調子はどうか聞いてくる。
「いえ、体調はとくに問題ないです、ただ…」
私はここ最近の悩みを片山参与に打ち明けた。
「9年前の侵攻が始まってから自衛官たちは変わってしまいました…、侵攻前は国家のためそして…国民のために誇りを持って日本国を守ってきました、しかし、今ではエイリアンへの憎しみを抱く者がほとんど…中には…親、恋人、子供を失ったがために復讐を生きがいとする者もおります」
「榎本さん、もしかしてこの前のことを気にしているのですか?」
片山参与の問いに私は答える。
「そうですね…過去に私の部下たちが捕虜として捕らえたエイリアン…そしてエルフらに拷問や殺害を繰り返してましたので…それらを防げなかった私にも責任があります…」
「まあそう自分をあまり責めないでくださいよ榎本さん、このご時世じゃあたぶん世界各国でもエイリアンやエルフたちに酷い扱いをしてますから…」
「しかし、このままでは自衛隊…いやそれどころか全世界の軍人たちがいつかエイリアンらを殺戮する誤ちを犯すかもしれません、私は元より身内もいなかったので犠牲者はおらず、私では彼らの気持ちをわかってあげれません」
「気持ちはわかるよ榎本さん、でも現状…その復讐心がなければ、僕たちはエイリアンらに勝つことはできない、僕が受け持っている部隊のほとんどはエイリアンへの復讐心に燃えてるしね…」
片山参与はどこか悲しげな表情をしながら私に言った。
「あなたも…やはりエイリアンたちを恨んでいるのですか?」
私の問いに片山参与は静かに答えた。
「そうだね…恨んでないって言ったら嘘になるかな」
「そうですか…」
「じゃあ僕はこれから大臣らに伝えなきゃいけないことがあるから指揮とかは任せたよ」
片山参与は私にそう言い、司令部を出ていった。
ー5分後
「失礼します」
ドアを開けると、室内には佐々木紘和防衛大臣と政務官の奥山政斗と橋本優正がいた。
そして、僕は大臣の前に立ち、”内通者”に関する調査結果を報告した。
「早速ですが、新しく内通者が見つかりました、内通者の名は”鈴木朔斗”、彼は防衛政策局に所属している職員であり、またエルフでもあります、エルフに関してはすでに密かに採取したDNAの検査で彼がエルフであることが証明されています、そして、彼が内通者であることはある方法を使って暴くことができました」
「その方法とはなんだね、片山双悟政策参与」
佐々木大臣の質問に僕は内通者の特定に至った経緯を説明した。
「最初はまず、かつて9年前の情報流出の件で、当時その情報を事前に知っていたことと、エイリアンに情報を流せる環境、状況にある者たちのみを候補に絞り込みました、そのときの候補者は我々以外で4人いましたが今回の前橋防衛の作戦内容の一部をその4人にそれぞれ違う内容の機密資料を彼らに託しておきました」
作戦内容の一部資料を内通者の候補らに渡していたことを知った奥山政務官が僕に怒号を浴びせてきた。
「おい貴様!内通者かもしれない奴に機密資料を渡したのか!?一体何を考えているんだ!?」
「まあまあ落ち着いてください奥山さん、片山参与には何か考えがあるんですよ」
橋本政務官は奥山政務官をなだめ、場を収める。
そして、橋本政務官は僕に本作戦の内容資料を内通者候補に漏らすようなことしたのかを聞いてきた。
「なぜ、今回の防衛戦の作戦資料を彼らに渡したのですか?」
「先程申した通り、一人ひとりそれぞれ違う内容の資料を託して、その4項目の内のどれかに作戦がエイリアンらが把握しているような動きを見せたら…」
「!…まさか…」
「はい、そのまさかです」
僕の企みに気づいた奥山政務官と橋本政務官、そして佐々木防衛大臣が驚いた様子で僕を見ていた。
「戦闘が開始されてから約1時間半といったところかな、そのとき僕は戦闘状況から見て、鈴木朔斗が内通者であることがわかったのです」
「つまり…その鈴木朔斗という者にしか渡していなかった作戦の一部資料の内容が、戦闘地域でエイリアンの軍勢がその作戦の一部を知っていたかのような動きをみせたということか?」
橋本政務官の質問に僕は答える。
「その通り!鈴木朔斗に渡した資料には"敵に防衛線の守りが誰もいないように見せて、エイリアンが入ってきたところを四方で待機していた所から集中攻撃を加える"といったことが記してある資料を彼に託したんだ」
僕の答えに奥山政務官はまた僕に怒りを向けてきた。
「おい!このことは榎本将官はご存じなのか!」
「ええ、榎本さんは今回内通者をあぶり出すのに協力するとの旨です、おかげで僕が内通者に漏らした内容を逆手に取り、急遽この日に一部4項目の作戦を変更、敵の裏をかくことができました」
説明を終えると、橋本政務官が疑問を問いかける。
「榎本将官は鈴木朔斗が内通者であることは知っていますか?」
「いいえ、まだ榎本さんには伝えておりません、では僕はこれから部下たちと共に鈴木朔斗を取り押さえに向かいますのでこのことは我々だけのご内密というわけで…」
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