異世界の神様

神町 恵

文字の大きさ
上 下
6 / 8
序章 神となった青年

三次試練―ピクト

しおりを挟む
 ―神界

 「ダラス法神!これはどういうことですか!?」

 今回三次試練の担当になったダラスに、私が推薦した人間の試練書を見せ問いただす。

 「推薦した人間の試練内容ですが、これは中位神クラスに相当する案件です!しかもよりにもよって…天使どころか下位神でも太刀打ちできなかった魔王”ギルガ・エン”の征伐だなんて」

 ダラスは私の方を振り返り、試練の内容について口を開いた。

 「君が推薦した奴は人間だろ?人間を神にだなんてたまったもんじゃない」

 そしてダラスは続けてこう言う。

 「それに、どうせあの女の差し金だろ、そいつが推してる人間を神になんてしたらろくなもんじゃない」

 「だから、あの人間の試練だけ高難度に?」

 「あいつだけじゃない、今回受けてる人間と元人間の天使にも同様に高難度の試練にした」

 「これは…神としてあるまじき行為ですよ?」

 試練の事実に怒りを抑えながらも表情に出さすそう問うと、ダラスは言った。

 「人間なんかが神聖なる神の務めを果たせるわけがないだろう」

 その一言に苛立ちを感じつつも私はダラスに詰め寄る。

 「もし、その人間が三次試練を突破したらどうしますか?最終選別で神判を務めるのはあなたではなく最上位に位置する神々が選別します」

 対しダラスは不機嫌そうに私に言う。

 「最上位の神々であれば私と同意見でしょう、きっと人間、元人間を神になんてさせないだろ」

 ダラスはそそくさとその場を去ろうとする、そして私は立ち去るダラスに向かって遠くからでも聞こえる声量で言う。

 「あなたみたいな先入観だけで判断する神を最上位の神々と同列にしないでいただきたい、それに私はただ***に頼まれたから推薦したわけではないです、人間にだって、神になれる素質があります、だからこそ私は彼を推薦したんです」

 そして最後にこう言ってやった。

 「人間を下に見る、だからあなたは最上位の神になれないんですよ」

 そう言うとダラスがこちらを振り返り一瞬私を睨む、その後ダラスは何も反論せずそそくさと去っていった。

 「名もなき人間よ、かならず神になって、この腐った神界を変えるんだ」


 ―異世界、ガルシャ連合国ピクト

 そろそろ町、ピクトに近づいたところで俺は車を止め降りる。
 車はとりあえず異空間の中にしまい、ここからは徒歩でピクトを目指した。

 車で街に入ろうとしたら、町の人々が驚くだろうし、あまり目立つのも良くない。

 少し歩くと、ピクトの町の門が視認できた。
 門付近には特に門番はいないようだが、活気づく人々の声が聞こえるのがわかる。

 ピクトは問題なさそうだな。

 門をくぐると、町内では店や芸などが並んでおり、多くの人々で賑わっていた。
 辺りを見渡す限り、この町は比較的大きな町であることがわかる。

 とりあえず店でも回ってみるか。

 まず最初に武具店を訪れ、何か使えそうな武器があるか、またついでで旧ヒイラス王国のことを店主や客にさりげなく聞いてみることにした。

 「ぃらっしゃい!」

 武具店の中は思ってたより少し広く、鎧や槍、剣など色んな武器が店頭に置かれていた。
 店頭に並ぶ武器を人通り見ていく。

 んー…どれもパッとしないなあ、店主には申し訳ないんだけど。

 どれもいい武器なのには変わりないが、正直自分で作ってきた武器の方が性能が高い。
 しかし、旧ヒイラス王国について店主にも聞いておきたいため、一個だけでも何か買わないと失礼だ。

 「その前に…」

 俺は隣にいたおじさんに話しかけた。

 「なんだい?お前さん、見ない顔だな?」

 「突然話しかけて申し訳ない、実は少しお尋ねしたいことが…」

 俺はそのおじさんに、かつて存在していたと思われるヒイラス王国の場所とこの世界の魔王はどのような存在なのかを尋ねた。
 おじさんは俺の問いに「うーん」と唸りながら考え込む。

 「もしできたら身内でこのこと知ってそうな人とかがいれば助かるんですが…」

 「そうだな、わりい、そのヒイラス王国とやらは覚えていないが、魔王のことなら少し話せるぜ」

 旧ヒイラス王国については知らなかったようだが、魔王のことは知っているとのことなので、一旦武具店を出て場所を移して話しを聞くことにした。

 「魔王はな、俺が確か10才の時、ちょうど30年くらい前だな、見聞にはなるが、その時から突如として現れたらしい…」

 「30年前から……」

 「ああ、そこから数々の国が滅んでな、その時もしかしたらお前さんが言ってたヒイラス?とかも魔王に滅ぼされたのかもな」

 「はい、俺も詳しくはわからないですが、そのヒイラス王国があった場所に今、魔王がいると聞いたので」

 そう言うと、おじさんは一瞬目を見開いた表情を浮かべ、その後いつもの顔に戻る。

 「お前さん、まさかとは思うが、魔王を探しているのか?」

 おじさんの問いに対し俺は「はい」と答える。

 「ちょっと色々と事情がありまして」

 するとおじさんが「ちょっとこっちに」と手招きし、近づくと小声で俺に耳打ちした。

 「実はな、ここからさらに北にあるギルデュア王国、バルア王国、キル公国それぞれ北部は立ち入りが禁止されているんだ、なぜ禁止なのかはわからんが、おそらくそこに魔王がいると俺は考えてる」

 「それはなぜ?」

 「俺は禁止区域以外の国々をほとんど回り切ってるからな、少なくとも俺が今まで行った国にはまず魔王がいる様子はなかった」

 おじさんから有益な情報が得られ、俺は心の中でガッツポーズする。
 試練が始まった初日で場所が絞られるのはかなり大きい。

 「ありがとう、おかげで魔王を見つけるのが思ってたより早くなりそうだ」

 「いや待て、北部だけでもかなり広いぞ、それに、北部に入るにはその国の許可が必要だ」

 「大丈夫、それについては行く目処がある」

 そう言い、俺は御礼としておじさんに渡そうと胸ポケットから袋を出して中から金貨10枚を取り出した。

 「いや、そんないいって、俺はただ知ってることを話しただけだからさ」

 「いえ、御礼としてどうか受け取ってください、それに、用事が済んだらもう通貨は使わないですし」

 「使わない?」

 「じゃ、そういうことで!ありがとな!」

 おじさんはポカーンとしていたが、手を振るとおじさんも俺に手を振り返してくれた。
 そして俺はピクトから出て、また異空間から車を取り出してエンジンをかける。

 「よし、夜までぶっ通しで北へ向かって走らすか」

 ここからだと一番最短で着くのはギルデュア王国だ、そこ目掛けてフルスピードでアクセルを踏む。

 「禁止区域へどう突破するかは、着いた後で考えるとするか!」

 気分がハイッ!なテンションでギルデュア王国付近まで車を運転していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~

岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。 順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。 そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。 仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。 その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。 勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。 ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。 魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。 そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。 事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。 その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。 追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。 これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない

よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。 魔力があっても普通の魔法が使えない俺。 そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ! 因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。 任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。 極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ! そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。 そんなある日転機が訪れる。 いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。 昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。 そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。 精霊曰く御礼だってさ。 どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。 何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ? どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。 俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。 そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。 そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。 ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。 そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。 そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ? 何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。 因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。 流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。 俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。 因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

処理中です...