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7.幸せの裏側
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午後五時半。レセプションは滞りなく終了した。
レセプションの間、わたしは控室で待機していたのだけれど、会場内の様子が控室のモニターにライブ配信されていて、リアルタイムで熱気を感じることができた。顧客以外に宝飾業界やファッション業界、またプレス関係者など大勢が招待され、大変なにぎわいだった。
ショップスタッフの方の話によると、ライブ配信はインターネットの環境が整っていれば、誰でも無料で見られるようになっていたそうだ。その段取りをしていたのが冴島テクニカルシステムズだ。いくつかある部署とは別にライブ配信に特化した事業部があって、そこで手がけたものだった。
準備作業を間近で見ていたし、なにより冴島さんがかかわっている仕事なのだと思ったら、余計に感慨深く、今も興奮が続いている。
多くの招待客はパーティー会場のホテルへと移動しているところだった。
わたしの仕事はここまで。ジュエリーショップに残り、生け込みの花の手入れをしていた。
恒松社長から会場内の花とフラワーリースはしばらく飾っておきたいという要望だった。そのため日持ちしない花を取り除いて整え直していた。
取り除いた花は廃棄するため、すべて店に持ち帰る。次にわたしは廃棄する花を車に運ぶ作業をしていた。すると階段のほうから話し声が聞こえてきて、思わず足を止めた。
「瑠璃《るり》、今夜はスイートを予約してあるんだ。パーティーのあと、部屋で飲み直さない?」
「お酒を飲むだけ?」
「もちろんだよ。お望みならそれ以外のこともいいよ」
階段を下りながら交わされる男女の怪しげな会話。男性のほうは恒松社長だった。
やだな、立ち聞きするつもりなんてないのに。
だけどやけに色っぽいフェロモン全開の超絶美女に魅了され、目が離せない。
サファイアのような鮮やかなブルーのワンピースドレスは袖つきで露出は控えめ。でも抜群のスタイルのよさと、外国の血が混ざっているようなエキゾチックな顔立ちのせいで、色気のほうが勝っている。
さらに発せられる声は艶《なま》めかしく、女のわたしもドキリとさせられた。
恒松社長と一緒ということは、瑠璃さんと呼ばれた女性もセレブなのだろうか。
大粒のパールとダイヤモンドをあしらったボリュームのあるネックレスは、おそらくGlanzの商品。ジュエリーに詳しくないわたしにもわかる。あの輝きはかなり値が張るものだ。
ふたりは出入口に向かっていた。店の前には高級外国車が停まっている。あれは恒松社長の車だ。
「スイートだなんて素敵ね。でもどうしようかしら。明日も早いのよね」
「そう言っていつもはぐらかすんだな」
「はぐらかしてないわ、本当のことよ」
「じゃあ、いつならいい?」
どちらかというと恒松社長のほうが気のある感じだ。
恒松社長は独身らしいので相手もそうならなんの問題もないのだろうけれど。ふたりとも遊び慣れている感じがして、あまり知りたくない世界だ。
「瑠璃!」
そのとき、恒松社長とは違う男性のイラ立った声が聞こえ、わたしは反射的に柱のうしろに身を隠した。
というのは……。
「冴島社長、どうしてここへ? パーティー会場はここじゃないよ」
ホテルでのパーティーに出席するはずの冴島さんがなぜかここにいる。
恒松社長も驚いていた。
「まさかパーティー会場に一緒に行くために、わざわざわたしを迎えに来てくれたの?」
そう言ったのは瑠璃さん。彼女は冴島さんを知っているようだった。
冴島さんと瑠璃さん。ふたりはどういう関係なのだろう。
レセプションの間、わたしは控室で待機していたのだけれど、会場内の様子が控室のモニターにライブ配信されていて、リアルタイムで熱気を感じることができた。顧客以外に宝飾業界やファッション業界、またプレス関係者など大勢が招待され、大変なにぎわいだった。
ショップスタッフの方の話によると、ライブ配信はインターネットの環境が整っていれば、誰でも無料で見られるようになっていたそうだ。その段取りをしていたのが冴島テクニカルシステムズだ。いくつかある部署とは別にライブ配信に特化した事業部があって、そこで手がけたものだった。
準備作業を間近で見ていたし、なにより冴島さんがかかわっている仕事なのだと思ったら、余計に感慨深く、今も興奮が続いている。
多くの招待客はパーティー会場のホテルへと移動しているところだった。
わたしの仕事はここまで。ジュエリーショップに残り、生け込みの花の手入れをしていた。
恒松社長から会場内の花とフラワーリースはしばらく飾っておきたいという要望だった。そのため日持ちしない花を取り除いて整え直していた。
取り除いた花は廃棄するため、すべて店に持ち帰る。次にわたしは廃棄する花を車に運ぶ作業をしていた。すると階段のほうから話し声が聞こえてきて、思わず足を止めた。
「瑠璃《るり》、今夜はスイートを予約してあるんだ。パーティーのあと、部屋で飲み直さない?」
「お酒を飲むだけ?」
「もちろんだよ。お望みならそれ以外のこともいいよ」
階段を下りながら交わされる男女の怪しげな会話。男性のほうは恒松社長だった。
やだな、立ち聞きするつもりなんてないのに。
だけどやけに色っぽいフェロモン全開の超絶美女に魅了され、目が離せない。
サファイアのような鮮やかなブルーのワンピースドレスは袖つきで露出は控えめ。でも抜群のスタイルのよさと、外国の血が混ざっているようなエキゾチックな顔立ちのせいで、色気のほうが勝っている。
さらに発せられる声は艶《なま》めかしく、女のわたしもドキリとさせられた。
恒松社長と一緒ということは、瑠璃さんと呼ばれた女性もセレブなのだろうか。
大粒のパールとダイヤモンドをあしらったボリュームのあるネックレスは、おそらくGlanzの商品。ジュエリーに詳しくないわたしにもわかる。あの輝きはかなり値が張るものだ。
ふたりは出入口に向かっていた。店の前には高級外国車が停まっている。あれは恒松社長の車だ。
「スイートだなんて素敵ね。でもどうしようかしら。明日も早いのよね」
「そう言っていつもはぐらかすんだな」
「はぐらかしてないわ、本当のことよ」
「じゃあ、いつならいい?」
どちらかというと恒松社長のほうが気のある感じだ。
恒松社長は独身らしいので相手もそうならなんの問題もないのだろうけれど。ふたりとも遊び慣れている感じがして、あまり知りたくない世界だ。
「瑠璃!」
そのとき、恒松社長とは違う男性のイラ立った声が聞こえ、わたしは反射的に柱のうしろに身を隠した。
というのは……。
「冴島社長、どうしてここへ? パーティー会場はここじゃないよ」
ホテルでのパーティーに出席するはずの冴島さんがなぜかここにいる。
恒松社長も驚いていた。
「まさかパーティー会場に一緒に行くために、わざわざわたしを迎えに来てくれたの?」
そう言ったのは瑠璃さん。彼女は冴島さんを知っているようだった。
冴島さんと瑠璃さん。ふたりはどういう関係なのだろう。
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