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6.慣れない恋人関係
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それからの食事の時間は最高に楽しかった。冴島さんの学生時代の思い出をたくさん聞かせてもらい、運ばれてくるコース料理は完食。
今日は車で来ているため、残念ながらお酒は飲めなかったけれど、アルコールが入っているのかと思うくらい、冴島さんは陽気に笑っていた。
食事を終えると船のデッキに出て、海風にあたりながら夜景を見た。レインボーブリッジや高層ビル群の光に魅了され、その美しさに言葉をなくす。
そのとき、肩がふわりとなにかに包まれた。
「冷やすといけないから」
肩にかけられたのは肌触りのいいストール。シルクのようななめらかさで、薄手の生地なのに不思議とあたたかく感じた。
「これって……」
「プレゼント。船に乗る前に急きょクルーズ会社に頼んで用意してもらった」
いつの間にそんな手配までしていたのだろう。空港のターミナルビルでわたしがトイレに行っているときだろうか。どちらにしてもそのときしか思いつかない。
だけど、こんなに尽くしてもらっていいのかな。わたしはもらうだけもらって、なにも返せていない。
「ありがとうございます。これ、大事にします」
「よかった、受け取ってくれて」
「えっ?」
「“頂けません”って突っ返されるかと思ったから」
「……うれしかったので」
ストールを選んだのは別の人だけれど、用意をしてくれたそのやさしさがうれしい。
心があたたかくなっていく。
だけど、いつもわたしを見てくれているのだと思ったらドキドキして、嫌でも意識してしまう。
もう、こんなに好きなんだ。
決して強引じゃなかった。うまい具合に誘われて、気づけば冴島さんの存在はわたしの心を大きく占めていた。彼の言葉や仕草、そして表情に一喜一憂させられているのがその証拠だ。
「どうかした? もしかして船酔い?」
「い、いいえ! ぜんぜん平気です」
「じゃあ照れてるだけかな?」
からかうように言われ、またも思考を読まれているのだとわかった。
わたしは図星でなにも言い返せない。
「僕の前では正直でいてほしいって言ったよね?」
改めてこの至近距離に戸惑う。間近で顔を覗き込まれ、思わず一歩あとずさりした。
「そうですけど。恋愛なんて久しぶりですし、えっと、その……あまり経験が豊富というわけでもなくて……」
さっきよりも少しだけ開いた距離。だけど冴島さんがその分をすかさず詰めてくる。わたしは顔を見られなくて、夜の真っ黒な海に視線を移した。
冴島さんのことを好きという気持ちが急速に大きくなっていくことに、わたし自身が追いついていけないのだろうか。わたしも自分の熱い想いを伝えたいのに、いざとなると怖くなってしまう。
おかしいな。こんなはずではなかったのに。どうして怖いと思ってしまうのだろう。
「僕もどうしていいのかわかんなくなる」
「えっ?」
少し困ったように言うので、びっくりして冴島さんを見上げた。
わたし、なにかしたのだろうか。なんとなく冴島さんの気を悪くさせてしまったような気がした。
だけど冴島さんは甘く微笑みながら言った。
「春名さんのこと、現在進行形でどんどん好きになっていくよ。まさか自分がこんなにも誰かに夢中になるとは思ってもみなかった」
夜でよかった。とろけそうな彼の声を聞いているだけで、心臓がバクバクして大変なことになっている。もし明るいところできれいな顔が目の前にあったら直視できないと思う。
わたしは心を落ち着けようと深呼吸を繰り返す。
そんなわたしをよそに、冴島さんはだんだんと余裕を取り戻したみたいで、海風を気持ちよさそうに受けながら夜景を眺めていた。
今日は車で来ているため、残念ながらお酒は飲めなかったけれど、アルコールが入っているのかと思うくらい、冴島さんは陽気に笑っていた。
食事を終えると船のデッキに出て、海風にあたりながら夜景を見た。レインボーブリッジや高層ビル群の光に魅了され、その美しさに言葉をなくす。
そのとき、肩がふわりとなにかに包まれた。
「冷やすといけないから」
肩にかけられたのは肌触りのいいストール。シルクのようななめらかさで、薄手の生地なのに不思議とあたたかく感じた。
「これって……」
「プレゼント。船に乗る前に急きょクルーズ会社に頼んで用意してもらった」
いつの間にそんな手配までしていたのだろう。空港のターミナルビルでわたしがトイレに行っているときだろうか。どちらにしてもそのときしか思いつかない。
だけど、こんなに尽くしてもらっていいのかな。わたしはもらうだけもらって、なにも返せていない。
「ありがとうございます。これ、大事にします」
「よかった、受け取ってくれて」
「えっ?」
「“頂けません”って突っ返されるかと思ったから」
「……うれしかったので」
ストールを選んだのは別の人だけれど、用意をしてくれたそのやさしさがうれしい。
心があたたかくなっていく。
だけど、いつもわたしを見てくれているのだと思ったらドキドキして、嫌でも意識してしまう。
もう、こんなに好きなんだ。
決して強引じゃなかった。うまい具合に誘われて、気づけば冴島さんの存在はわたしの心を大きく占めていた。彼の言葉や仕草、そして表情に一喜一憂させられているのがその証拠だ。
「どうかした? もしかして船酔い?」
「い、いいえ! ぜんぜん平気です」
「じゃあ照れてるだけかな?」
からかうように言われ、またも思考を読まれているのだとわかった。
わたしは図星でなにも言い返せない。
「僕の前では正直でいてほしいって言ったよね?」
改めてこの至近距離に戸惑う。間近で顔を覗き込まれ、思わず一歩あとずさりした。
「そうですけど。恋愛なんて久しぶりですし、えっと、その……あまり経験が豊富というわけでもなくて……」
さっきよりも少しだけ開いた距離。だけど冴島さんがその分をすかさず詰めてくる。わたしは顔を見られなくて、夜の真っ黒な海に視線を移した。
冴島さんのことを好きという気持ちが急速に大きくなっていくことに、わたし自身が追いついていけないのだろうか。わたしも自分の熱い想いを伝えたいのに、いざとなると怖くなってしまう。
おかしいな。こんなはずではなかったのに。どうして怖いと思ってしまうのだろう。
「僕もどうしていいのかわかんなくなる」
「えっ?」
少し困ったように言うので、びっくりして冴島さんを見上げた。
わたし、なにかしたのだろうか。なんとなく冴島さんの気を悪くさせてしまったような気がした。
だけど冴島さんは甘く微笑みながら言った。
「春名さんのこと、現在進行形でどんどん好きになっていくよ。まさか自分がこんなにも誰かに夢中になるとは思ってもみなかった」
夜でよかった。とろけそうな彼の声を聞いているだけで、心臓がバクバクして大変なことになっている。もし明るいところできれいな顔が目の前にあったら直視できないと思う。
わたしは心を落ち着けようと深呼吸を繰り返す。
そんなわたしをよそに、冴島さんはだんだんと余裕を取り戻したみたいで、海風を気持ちよさそうに受けながら夜景を眺めていた。
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