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第7章 赤い口紅の女性
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翌週の木曜日の職場でのこと。
午後に入り、春山社長が出先から戻ってきたのでわたしは席を立つ。
「ついさっき、サンセットクリエイトの間宮《まみや》さんから電話がありました」
「それで、なんだって?」
立ち止まった春山社長に電話のメモを手渡す。
「星型イルミネーションのサンプル品の納期が三日ほど遅れるとのことでした。ヨーロッパの工場で機械の入れ替えがあって、製造が押してしまったそうなんです」
メモには納期の日付が書いてある。今から二週間後だ。
「参ったなあ。定例打ち合わせの当日じゃないか。午後一からなんだよ」
「前日に航空便で到着するらしいので、定例打ち合わせにはギリギリというところでしょうか」
「そうだな。とりあえず、それについてはあとで検討する」
公園整備で使うイルミネーションの一部は北欧製の輸入品を使う予定。今では日本の各家庭でもクリスマスイルミネーションがすっかり浸透しているため、中国製などの安い商品も出まわっているが、デザイン重視となると、やはり北欧などのメーカーのほうがスタイリッシュなのだ。
「大変ですけどワクワクしますね」
デザイン画には祈りを捧げたくなるような神秘的な世界が描かれていた。まるで、有名な童話の『銀河鉄道の夜』に出てくるような風景だ。
公園は遊歩道をはさんでふたつのエリアに分かれている。
ひとつは大きな噴水広場のあるアクアエリア。噴水のまわりにはクリスタルオブジェが置かれ、ライトアップされる。噴水内にも照明器具が設置され、水面が彩られるデザインとなっている。
一方、遊歩道から見下ろせる位置にあるのがスカイエリア。眼下に広がる芝生の上には十万個のLEDランプを敷きつめて、一面を宇宙に見立てる。それはまるでスワロフスキーを散りばめたような星空だ。
「これだけの数の白色LEDを見下ろすと、圧倒されちゃいそうですね」
「ほかにもいろいろ仕かけがあるんだ。音楽に合わせてLEDの色を変えたり、流れ星が現れたり、天の川を浮かべたり。点滅させるだけじゃないんだ」
「そんなことができるんですか?」
「あらかじめ、そういった複数のパターンをプログラミングしておくんだ。季節ごとにパターンを入れ替えていけば、リピーターも楽しめるだろう」
「プラネタリウムの上映内容もいろいろありますもんね。相乗効果で足を運ぶ人が増えるかもしれないですね」
刻々と変化するスカイエリアの光のアートは、噴水広場のあるアクアエリアへ移動する途中で楽しめるようになっているのだそうだ。見所はプラネタリウムだけでなく、公園全体。ひとつの敷地のなかで、さまざまな光の魅力に触れることができる。
クリスマスシーズンなんかも、見応えがありそう。いったい、どんなデザインになるのだろう。世良さんと見にいきたいな。
「うまくいくといいんだけどな」
「珍しく気弱ですね」
「毎度のことだけど工期がきついよ」
プラネタリウムのオープンは十一月下旬だが、工事は九月中旬までに終わらせなければならない。
六月中旬の現在、外観は完成に近づいている。内装や設備の工事もだいぶ進み、現在は機器設置工事が本格的に行われているようだった。
「竣工まであと三ヶ月しかないんですね」
「そうなんだよ。あとは、とにかくヨーロッパ工場の製作が順調にいくことを祈るだけだよ」
うちの事務所が請け負っているプラネタリウムのライティングは建物を傷つけることのないように、外観を下から投光器で照らす手法。白色や水色、パープルのライトで浮かびあがるドーム形の建物は宇宙船のイメージ。
それは不夜城のような荒々しくて煌々《こうこう》とした明るさではなく、無駄な光を抑えたやさしいライティング。建物のすべてを照らすのではなく、輪郭を浮かびあがらせるように光をあて、人の好奇心をかき立てる。光の装飾は陰を重んじるからこそ映えるのだ。
そちらの施工準備は順調なのだが、問題は遊歩道周辺のライティングだった。
納期が遅れる連絡があった星型イルミネーションは百メートルほどある遊歩道の手すり用の柵に取りつけるもの。
サンプル品は急ぎのために航空便で取り寄せることになったが、大量の星型イルミネーションは船便で輸入することになっている。そのため納期までかなりの日数。その分、施工日数にしわ寄せされ、スケジュールが厳しくなった。竣工に間に合わせるために作業員の確保も課題だった。
「わたしもできることはお手伝いしますから」
「ああ、頼むよ」
そのとき春山社長のスマホに着信があった。話の内容からしてお客様みたいだったので、わたしは自分のデスクに戻った。
「亜矢、コピー屋に頼んだFKビルの図面のコピーは今日中にできるんだよな?」
パソコンに向かっていたら、春山社長がスマホを持ちながらたずねてきた。
「はい、夕方までには届けてもらうように頼んであります」
さっきまでプラネタリウムの話をしていたのに、数分もたたないうちに、もう別のプロジェクトの話になっている。それ以外にも東北地方のコンベンションセンターというビッグプロジェクトのコンペも控えている。ありがたいことに本当に息つく暇もない。
だけど、この荒波にのまれていてはいけない。
「その図面、四時までに届けさせろ。打ち合わせが今日の五時に変更になった」
「四時ですか? でも、大量に発注しているので確認してみないことには……」
「確認する必要はない。午前中に頼んだ仕事だ。なにがなんでも四時までに届けろと言えばいいんだ」
「わかりました」
相変わらず厳しい。鬼だよ、鬼。コピー屋さんには申し訳ないが、今日は急いでもらおう。こういうときのために普段は納期にゆとりを持たせている。おそらく必死に頼めば融通を利かせてくれるはずだ。
嫌な役まわりだけれど、あさっての土曜日の夜は世良さんとデートの約束をしているので、それを楽しみに仕事に励むことにした。
けれど翌日の金曜の夕食後。デザートのバニラアイスを食べながら、デートの中止という残念なお知らせを聞かされた。
「なかなか忙しい社長さんみたいで……明日じゃないと都合がつかないらしいんだ」
「急用なら仕方がないですよ。気にしないでください」
「ほんとにごめん……今度また時間を作るから」
明日の土曜日の夜は一緒に外でごはんを食べる予定だったが、急にキャンセルになった。工事業者さんと会うことになったらしくて、そのこと自体は別に不審な点はないのだけれど、なんだか歯切れの悪い話し方なのが気になる。
ドタキャンなんて初めてだから責任を感じているのだろうか。まじめな世良さんらしい。
「夕飯は、どうしますか?」
「食べてくるから、いらないよ」
「日曜日も昼間はゴルフですし、大変ですね」
一週間、働き通し。日曜日のゴルフは高嶋建設の社長のおともで、とあるゼネコン主催のコンペに参加予定だった。
世良さんがゴルフをするイメージはなかった。でも建設業界の営業マンならば、ゴルフはたしなんでおいたほうがいいらしい。ゼネコンはもちろん、経済界の人脈を作る上でもゴルフは大切な営業戦略なのだそうだ。
「日曜日は三時頃には帰れるから。一緒にスーパーに行く?」
「はい、買いだめしたいのでお願いします」
バニラアイスが口のなかをさっぱりとしてくれる。今日はこってり中華の麻婆豆腐だったから日曜日の夕飯は薄味の和食にしようかなと考えながら、最後のひとくちを口に運んだ。
先に食べ終わっていた世良さんがそれを見届け、「もう一個食べる?」と聞いてくるので笑って首を振る。
「じゃあ、お茶にしようか。なにがいい?」
「今日はほうじ茶がいいです。わたしが淹れますよ」
手軽に飲めるようにと買っておいたティーバッグのお茶は数種類。ほうじ茶以外にもアップル、レモンなどのフレーバーティーとカモミールなどのハーブティーをそろえた。同じものを春山社長のために買ったのだけれど、それがなかなかおいしかったので、自宅用にも買っておいたのだ。
食事のあとは、まったりなティータイムが日課。会話の時間を大切にしてくれる世良さんは、必ずこうして時間を作ってくれる。そこではいつも他愛もない話をする。
明日はスーパーの割引デーだねとか、レタスの値段が安くなったよねとか。一緒に住んでいるからこそ、こんな会話も有意義なのだと思う。
「今日のお弁当もおいしかったよ。タラコとコンブだったね」
ほうじ茶をふーふーしながら、世良さんがマグカップに口をつけた。
「毎日、梅干しとシャケのおにぎりだと飽きちゃいますから」
世良さんのお弁当は必ずおにぎりにしている。世良さんがおにぎり好きということもあるけれど、忙しくてお昼休みがちゃんと取れない日でも、おにぎりなら食べやすいかなと思って。
「そういえば会社でからかわれませんか?」
世良さんがいきなりお弁当持参となると、会社では大騒ぎに違いない。
「最初の三日間はいろいろ言われたけど今はなにも」
「意外です。そんなものなんですね」
「陰ではいろいろ言われているかもしれないけど」
「そっか、その可能性はありますね」
たぶん、うわさされること自体が慣れっこなんだろう。あまり気にしていなさそうだった。
なにはともあれ、迷惑じゃないみたいなのでよかった。
二日後の日曜日の早朝。
世良さんは千葉のゴルフ場へ行く準備を終え、玄関に立っていた。
「僕が出かけたら、ちゃんと鍵を閉めること」
「わかりました」
「それから、もう一度ベッドに戻って、少し眠るといい」
世良さんがおどけて、わたしの頬を指でツンツンと突いた。
ついさっき起きたばかりのわたしは、寝ぐせで髪がぼさぼさで、完全な寝ぼけまなこ。そんなわたしに「ゆっくりおやすみ」と言い残し、玄関ドアを閉めたのだった。
失敗したなと思いながら鍵を閉めたけれど。掃除も洗濯も昨日のうちにすませていたので、お言葉に甘えてベッドに直行。あと一時間だけと思い、幸せの二度寝を堪能した。
しかし次に起きたらお昼近くで、結局慌てて飛び起きる羽目になった。
夕べの残りものでお昼をすませ、軽くお掃除をしたあとは、昨日買ったライティングに関する本を読んで過ごした。だけどそのうち世良さんの帰りを待ちわびて、そわそわ。本に集中できなくなって、買い物リストの書き出しをした。
「ただいま、亜矢ちゃん。収穫だよ」
三時頃、ご機嫌な声とともに世良さんが帰ってきた。
「お帰りなさい。うわあ、魚沼産コシヒカリ! しかも5キロも!」
玄関で出迎えたわたしは世良さんの手にしているお米を見てテンションアップ。
「景品でもらったんだ」
「すごーい。いい成績だったんですね」
「珍しく今日は調子がよかったんだ。いつもはそれほどでもないんだよ」
お米もそろそろなくなる頃だったので今日の買い物リストに入っていたのだけれど、これで買う必要がなくなった。
「タイミングバッチリです」
「だよね。お米、残り少なかったもんね」
お米を受け取ってキッチンに置きにいくと、世良さんはさっそくシャワーを浴びにバスルームへ。「たくさん汗かいちゃった」と言って、鼻歌まで歌っていた。
シャワーを終えた世良さんが身支度を整えると、車で近所のスーパーへ買い出しに。もうすっかり通い慣れたスーパー。今ではどこになにがあるのかを、だいたい把握している。
テキパキと食材や調味料を買い物カゴに入れて、最後に缶ビールとおつまみ用の冷凍枝豆も入れると、買い物カゴはいっぱいになった。レジで会計後、ふたりでレシートの金額に驚いて、「買いすぎちゃいましたね」と笑い合った。
ほのぼのとした時間だった。けれどアパートに到着すると、車を降りた世良さんが駐車場内で足を止め、少しあせったように言った。
「ごめん、先に行ってて」
なんだろうと思って見ると、着信があったらしく、スマホを耳にあてていた。
相手はお母さんのようだったので、ビールや調味料などの重い荷物は世良さんにおまかせして、わたしは軽めのエコバッグを一個だけ持って部屋に戻った。
だけどその後、一向に世良さんが戻ってこない。
「遅い」
いくらなんでも話が長すぎるような気がする。わたしは心配になり、駐車場まで世良さんを迎えにいくことにした。
しかし、そのとき。
「わかってるよ、母さん。父さんの立場もあるだろうから、前向きに検討してるよ。だから安心して」
エントランスで声がした。世良さんはわたしに背中を向けるように立っている。
「昨日会ったときに今度また会う約束をしたよ。そのときに正式に返事をする予定だから。……ああ、いい人だと思うよ。つき合う相手として不満はないよ」
会話の内容がさっぱりわからない。わかったのは、電話の相手というのが、昨日わたしとの約束をドタキャンして会いにいった人だということ。工事業者の社長と言っていたけれど、その社長とご実家のご両親がどうつながっているのだろう。
ふと思った。昨日会っていた人は本当に工事業者の方だったのだろうか。
この間、お見合いの話を聞いていたせいで、胸のなかでくすぶる思いがわたしを不安にさせる。
でも電話の内容に立ち入ることはできない。そんな図々しいことは言えない。
今のは聞かなかったことにしよう。わたしはそのまま引き返し、部屋に戻った。
それから五分ほどで世良さんも戻ってきた。
「ごめんね、電話が長引いちゃって」
世良さんはいつものように落ち着いた様子で、自分が持っていた買い物の荷物を冷蔵庫や戸棚にしまっていた。
電話の内容を知りたくてたまらない。だけど本当のことを聞くのが怖い。まっすぐに見つめてくれる瞳がそらされてしまったら、これまで築いてきたものが崩れてしまいそうな気がした。
それから何事もなく五日が過ぎ、金曜日になった。仕事を終え、わたしは春山デザイン事務所から数駅先にあるJRの大きな駅に来ていた。
この付近はお店が多いので、仕事帰りにショッピングで立ち寄ることも多いのだが、今日は眼科へ行くのが目的だった。コンタクトレンズを使用しているので、三ヶ月に一度通院している。
駅から歩いて七、八分ほど。メインストリートから少しはずれたところに通院している眼科がある。駅前に比べると格段に静かで、この通りにある小さなカフェや雑貨屋さんをのぞくのも楽しみのひとつだ。
石畳の通りには、街並みにとけ込むような茶色いポールの街灯が立っている。歩道にも白色のLED照明が埋め込まれていて、夜になると街路樹をささやかにライトアップしていた。
「あっ、完成したんだ」
三ヶ月前、五階建てビルの一階は工事中だったのだけれど、新しいテナントのダイニングレストランがオープンしており、店先には生花のスタンドがいくつも並んでいた。
通りに面した大きな窓にはあたたかいオレンジ色の光が映し出されている。電球色は料理をおいしそうに発色し、居心地もよくしてくれる。いい雰囲気のお店だと思った。
前からこのお店が気になっていた。どうしてかというと、建築の施工会社が高嶋建設だったからだ。工事看板を見たときに名前を見つけて勝手に親近感を抱いていた。
その後、眼科での診療を終えて夜の道を駅まで歩いた。さっきのダイニングレストランの前をもう一度通ると、お客さんが食事をしているのが見えた。それを眺めながらお腹が空いたなあと思っていると。
「世良さん?」
窓際の席に彼の姿を見た。白いワイシャツにボルドーのネクタイは今朝見たものと同じスタイル。そして、いつものように素敵な笑顔を振りまいていた。ただし、その相手はひとりのきれいな女性。ふたりは親しげな雰囲気で、かなり打ち解けている感じだった。
女性はわたしよりも少し年上という感じで、肩まで伸びた髪をひとつに束ね、形のいいおでこを見せるように長い前髪をサイドに垂らしていた。にっこりと微笑む唇には赤い口紅。それがとても色っぽくて、格好いい。
キャリアウーマン? でも、やわらかい雰囲気もある。
今日の夜は、世良さんは会社の人との飲み会があると言っていた。あの女性は会社の人なのだろうか。しかし彼女はわたしの知らない人だった。しかもふたりきり。どう見ても飲み会という感じではない。
世良さん、これはどういうことなんですか? あの女性は、世良さんとどういう関係なんですか?
窓の向こうの世良さんが楽しそうに女性に話しかけていた。
わたし以外の女性にもそんな顔をするんだ。
そんなのはあたり前のことなのに、今のわたしはそれすら許せなくて、自分の醜《みにく》さにも泣きたくなった。
この日、世良さんは帰ってこなかった。帰ってきたのは翌朝の六時過ぎ。
これってなんの仕打ちなんだろう。神様はわたしに恨みでもあるんだろうか。
午後に入り、春山社長が出先から戻ってきたのでわたしは席を立つ。
「ついさっき、サンセットクリエイトの間宮《まみや》さんから電話がありました」
「それで、なんだって?」
立ち止まった春山社長に電話のメモを手渡す。
「星型イルミネーションのサンプル品の納期が三日ほど遅れるとのことでした。ヨーロッパの工場で機械の入れ替えがあって、製造が押してしまったそうなんです」
メモには納期の日付が書いてある。今から二週間後だ。
「参ったなあ。定例打ち合わせの当日じゃないか。午後一からなんだよ」
「前日に航空便で到着するらしいので、定例打ち合わせにはギリギリというところでしょうか」
「そうだな。とりあえず、それについてはあとで検討する」
公園整備で使うイルミネーションの一部は北欧製の輸入品を使う予定。今では日本の各家庭でもクリスマスイルミネーションがすっかり浸透しているため、中国製などの安い商品も出まわっているが、デザイン重視となると、やはり北欧などのメーカーのほうがスタイリッシュなのだ。
「大変ですけどワクワクしますね」
デザイン画には祈りを捧げたくなるような神秘的な世界が描かれていた。まるで、有名な童話の『銀河鉄道の夜』に出てくるような風景だ。
公園は遊歩道をはさんでふたつのエリアに分かれている。
ひとつは大きな噴水広場のあるアクアエリア。噴水のまわりにはクリスタルオブジェが置かれ、ライトアップされる。噴水内にも照明器具が設置され、水面が彩られるデザインとなっている。
一方、遊歩道から見下ろせる位置にあるのがスカイエリア。眼下に広がる芝生の上には十万個のLEDランプを敷きつめて、一面を宇宙に見立てる。それはまるでスワロフスキーを散りばめたような星空だ。
「これだけの数の白色LEDを見下ろすと、圧倒されちゃいそうですね」
「ほかにもいろいろ仕かけがあるんだ。音楽に合わせてLEDの色を変えたり、流れ星が現れたり、天の川を浮かべたり。点滅させるだけじゃないんだ」
「そんなことができるんですか?」
「あらかじめ、そういった複数のパターンをプログラミングしておくんだ。季節ごとにパターンを入れ替えていけば、リピーターも楽しめるだろう」
「プラネタリウムの上映内容もいろいろありますもんね。相乗効果で足を運ぶ人が増えるかもしれないですね」
刻々と変化するスカイエリアの光のアートは、噴水広場のあるアクアエリアへ移動する途中で楽しめるようになっているのだそうだ。見所はプラネタリウムだけでなく、公園全体。ひとつの敷地のなかで、さまざまな光の魅力に触れることができる。
クリスマスシーズンなんかも、見応えがありそう。いったい、どんなデザインになるのだろう。世良さんと見にいきたいな。
「うまくいくといいんだけどな」
「珍しく気弱ですね」
「毎度のことだけど工期がきついよ」
プラネタリウムのオープンは十一月下旬だが、工事は九月中旬までに終わらせなければならない。
六月中旬の現在、外観は完成に近づいている。内装や設備の工事もだいぶ進み、現在は機器設置工事が本格的に行われているようだった。
「竣工まであと三ヶ月しかないんですね」
「そうなんだよ。あとは、とにかくヨーロッパ工場の製作が順調にいくことを祈るだけだよ」
うちの事務所が請け負っているプラネタリウムのライティングは建物を傷つけることのないように、外観を下から投光器で照らす手法。白色や水色、パープルのライトで浮かびあがるドーム形の建物は宇宙船のイメージ。
それは不夜城のような荒々しくて煌々《こうこう》とした明るさではなく、無駄な光を抑えたやさしいライティング。建物のすべてを照らすのではなく、輪郭を浮かびあがらせるように光をあて、人の好奇心をかき立てる。光の装飾は陰を重んじるからこそ映えるのだ。
そちらの施工準備は順調なのだが、問題は遊歩道周辺のライティングだった。
納期が遅れる連絡があった星型イルミネーションは百メートルほどある遊歩道の手すり用の柵に取りつけるもの。
サンプル品は急ぎのために航空便で取り寄せることになったが、大量の星型イルミネーションは船便で輸入することになっている。そのため納期までかなりの日数。その分、施工日数にしわ寄せされ、スケジュールが厳しくなった。竣工に間に合わせるために作業員の確保も課題だった。
「わたしもできることはお手伝いしますから」
「ああ、頼むよ」
そのとき春山社長のスマホに着信があった。話の内容からしてお客様みたいだったので、わたしは自分のデスクに戻った。
「亜矢、コピー屋に頼んだFKビルの図面のコピーは今日中にできるんだよな?」
パソコンに向かっていたら、春山社長がスマホを持ちながらたずねてきた。
「はい、夕方までには届けてもらうように頼んであります」
さっきまでプラネタリウムの話をしていたのに、数分もたたないうちに、もう別のプロジェクトの話になっている。それ以外にも東北地方のコンベンションセンターというビッグプロジェクトのコンペも控えている。ありがたいことに本当に息つく暇もない。
だけど、この荒波にのまれていてはいけない。
「その図面、四時までに届けさせろ。打ち合わせが今日の五時に変更になった」
「四時ですか? でも、大量に発注しているので確認してみないことには……」
「確認する必要はない。午前中に頼んだ仕事だ。なにがなんでも四時までに届けろと言えばいいんだ」
「わかりました」
相変わらず厳しい。鬼だよ、鬼。コピー屋さんには申し訳ないが、今日は急いでもらおう。こういうときのために普段は納期にゆとりを持たせている。おそらく必死に頼めば融通を利かせてくれるはずだ。
嫌な役まわりだけれど、あさっての土曜日の夜は世良さんとデートの約束をしているので、それを楽しみに仕事に励むことにした。
けれど翌日の金曜の夕食後。デザートのバニラアイスを食べながら、デートの中止という残念なお知らせを聞かされた。
「なかなか忙しい社長さんみたいで……明日じゃないと都合がつかないらしいんだ」
「急用なら仕方がないですよ。気にしないでください」
「ほんとにごめん……今度また時間を作るから」
明日の土曜日の夜は一緒に外でごはんを食べる予定だったが、急にキャンセルになった。工事業者さんと会うことになったらしくて、そのこと自体は別に不審な点はないのだけれど、なんだか歯切れの悪い話し方なのが気になる。
ドタキャンなんて初めてだから責任を感じているのだろうか。まじめな世良さんらしい。
「夕飯は、どうしますか?」
「食べてくるから、いらないよ」
「日曜日も昼間はゴルフですし、大変ですね」
一週間、働き通し。日曜日のゴルフは高嶋建設の社長のおともで、とあるゼネコン主催のコンペに参加予定だった。
世良さんがゴルフをするイメージはなかった。でも建設業界の営業マンならば、ゴルフはたしなんでおいたほうがいいらしい。ゼネコンはもちろん、経済界の人脈を作る上でもゴルフは大切な営業戦略なのだそうだ。
「日曜日は三時頃には帰れるから。一緒にスーパーに行く?」
「はい、買いだめしたいのでお願いします」
バニラアイスが口のなかをさっぱりとしてくれる。今日はこってり中華の麻婆豆腐だったから日曜日の夕飯は薄味の和食にしようかなと考えながら、最後のひとくちを口に運んだ。
先に食べ終わっていた世良さんがそれを見届け、「もう一個食べる?」と聞いてくるので笑って首を振る。
「じゃあ、お茶にしようか。なにがいい?」
「今日はほうじ茶がいいです。わたしが淹れますよ」
手軽に飲めるようにと買っておいたティーバッグのお茶は数種類。ほうじ茶以外にもアップル、レモンなどのフレーバーティーとカモミールなどのハーブティーをそろえた。同じものを春山社長のために買ったのだけれど、それがなかなかおいしかったので、自宅用にも買っておいたのだ。
食事のあとは、まったりなティータイムが日課。会話の時間を大切にしてくれる世良さんは、必ずこうして時間を作ってくれる。そこではいつも他愛もない話をする。
明日はスーパーの割引デーだねとか、レタスの値段が安くなったよねとか。一緒に住んでいるからこそ、こんな会話も有意義なのだと思う。
「今日のお弁当もおいしかったよ。タラコとコンブだったね」
ほうじ茶をふーふーしながら、世良さんがマグカップに口をつけた。
「毎日、梅干しとシャケのおにぎりだと飽きちゃいますから」
世良さんのお弁当は必ずおにぎりにしている。世良さんがおにぎり好きということもあるけれど、忙しくてお昼休みがちゃんと取れない日でも、おにぎりなら食べやすいかなと思って。
「そういえば会社でからかわれませんか?」
世良さんがいきなりお弁当持参となると、会社では大騒ぎに違いない。
「最初の三日間はいろいろ言われたけど今はなにも」
「意外です。そんなものなんですね」
「陰ではいろいろ言われているかもしれないけど」
「そっか、その可能性はありますね」
たぶん、うわさされること自体が慣れっこなんだろう。あまり気にしていなさそうだった。
なにはともあれ、迷惑じゃないみたいなのでよかった。
二日後の日曜日の早朝。
世良さんは千葉のゴルフ場へ行く準備を終え、玄関に立っていた。
「僕が出かけたら、ちゃんと鍵を閉めること」
「わかりました」
「それから、もう一度ベッドに戻って、少し眠るといい」
世良さんがおどけて、わたしの頬を指でツンツンと突いた。
ついさっき起きたばかりのわたしは、寝ぐせで髪がぼさぼさで、完全な寝ぼけまなこ。そんなわたしに「ゆっくりおやすみ」と言い残し、玄関ドアを閉めたのだった。
失敗したなと思いながら鍵を閉めたけれど。掃除も洗濯も昨日のうちにすませていたので、お言葉に甘えてベッドに直行。あと一時間だけと思い、幸せの二度寝を堪能した。
しかし次に起きたらお昼近くで、結局慌てて飛び起きる羽目になった。
夕べの残りものでお昼をすませ、軽くお掃除をしたあとは、昨日買ったライティングに関する本を読んで過ごした。だけどそのうち世良さんの帰りを待ちわびて、そわそわ。本に集中できなくなって、買い物リストの書き出しをした。
「ただいま、亜矢ちゃん。収穫だよ」
三時頃、ご機嫌な声とともに世良さんが帰ってきた。
「お帰りなさい。うわあ、魚沼産コシヒカリ! しかも5キロも!」
玄関で出迎えたわたしは世良さんの手にしているお米を見てテンションアップ。
「景品でもらったんだ」
「すごーい。いい成績だったんですね」
「珍しく今日は調子がよかったんだ。いつもはそれほどでもないんだよ」
お米もそろそろなくなる頃だったので今日の買い物リストに入っていたのだけれど、これで買う必要がなくなった。
「タイミングバッチリです」
「だよね。お米、残り少なかったもんね」
お米を受け取ってキッチンに置きにいくと、世良さんはさっそくシャワーを浴びにバスルームへ。「たくさん汗かいちゃった」と言って、鼻歌まで歌っていた。
シャワーを終えた世良さんが身支度を整えると、車で近所のスーパーへ買い出しに。もうすっかり通い慣れたスーパー。今ではどこになにがあるのかを、だいたい把握している。
テキパキと食材や調味料を買い物カゴに入れて、最後に缶ビールとおつまみ用の冷凍枝豆も入れると、買い物カゴはいっぱいになった。レジで会計後、ふたりでレシートの金額に驚いて、「買いすぎちゃいましたね」と笑い合った。
ほのぼのとした時間だった。けれどアパートに到着すると、車を降りた世良さんが駐車場内で足を止め、少しあせったように言った。
「ごめん、先に行ってて」
なんだろうと思って見ると、着信があったらしく、スマホを耳にあてていた。
相手はお母さんのようだったので、ビールや調味料などの重い荷物は世良さんにおまかせして、わたしは軽めのエコバッグを一個だけ持って部屋に戻った。
だけどその後、一向に世良さんが戻ってこない。
「遅い」
いくらなんでも話が長すぎるような気がする。わたしは心配になり、駐車場まで世良さんを迎えにいくことにした。
しかし、そのとき。
「わかってるよ、母さん。父さんの立場もあるだろうから、前向きに検討してるよ。だから安心して」
エントランスで声がした。世良さんはわたしに背中を向けるように立っている。
「昨日会ったときに今度また会う約束をしたよ。そのときに正式に返事をする予定だから。……ああ、いい人だと思うよ。つき合う相手として不満はないよ」
会話の内容がさっぱりわからない。わかったのは、電話の相手というのが、昨日わたしとの約束をドタキャンして会いにいった人だということ。工事業者の社長と言っていたけれど、その社長とご実家のご両親がどうつながっているのだろう。
ふと思った。昨日会っていた人は本当に工事業者の方だったのだろうか。
この間、お見合いの話を聞いていたせいで、胸のなかでくすぶる思いがわたしを不安にさせる。
でも電話の内容に立ち入ることはできない。そんな図々しいことは言えない。
今のは聞かなかったことにしよう。わたしはそのまま引き返し、部屋に戻った。
それから五分ほどで世良さんも戻ってきた。
「ごめんね、電話が長引いちゃって」
世良さんはいつものように落ち着いた様子で、自分が持っていた買い物の荷物を冷蔵庫や戸棚にしまっていた。
電話の内容を知りたくてたまらない。だけど本当のことを聞くのが怖い。まっすぐに見つめてくれる瞳がそらされてしまったら、これまで築いてきたものが崩れてしまいそうな気がした。
それから何事もなく五日が過ぎ、金曜日になった。仕事を終え、わたしは春山デザイン事務所から数駅先にあるJRの大きな駅に来ていた。
この付近はお店が多いので、仕事帰りにショッピングで立ち寄ることも多いのだが、今日は眼科へ行くのが目的だった。コンタクトレンズを使用しているので、三ヶ月に一度通院している。
駅から歩いて七、八分ほど。メインストリートから少しはずれたところに通院している眼科がある。駅前に比べると格段に静かで、この通りにある小さなカフェや雑貨屋さんをのぞくのも楽しみのひとつだ。
石畳の通りには、街並みにとけ込むような茶色いポールの街灯が立っている。歩道にも白色のLED照明が埋め込まれていて、夜になると街路樹をささやかにライトアップしていた。
「あっ、完成したんだ」
三ヶ月前、五階建てビルの一階は工事中だったのだけれど、新しいテナントのダイニングレストランがオープンしており、店先には生花のスタンドがいくつも並んでいた。
通りに面した大きな窓にはあたたかいオレンジ色の光が映し出されている。電球色は料理をおいしそうに発色し、居心地もよくしてくれる。いい雰囲気のお店だと思った。
前からこのお店が気になっていた。どうしてかというと、建築の施工会社が高嶋建設だったからだ。工事看板を見たときに名前を見つけて勝手に親近感を抱いていた。
その後、眼科での診療を終えて夜の道を駅まで歩いた。さっきのダイニングレストランの前をもう一度通ると、お客さんが食事をしているのが見えた。それを眺めながらお腹が空いたなあと思っていると。
「世良さん?」
窓際の席に彼の姿を見た。白いワイシャツにボルドーのネクタイは今朝見たものと同じスタイル。そして、いつものように素敵な笑顔を振りまいていた。ただし、その相手はひとりのきれいな女性。ふたりは親しげな雰囲気で、かなり打ち解けている感じだった。
女性はわたしよりも少し年上という感じで、肩まで伸びた髪をひとつに束ね、形のいいおでこを見せるように長い前髪をサイドに垂らしていた。にっこりと微笑む唇には赤い口紅。それがとても色っぽくて、格好いい。
キャリアウーマン? でも、やわらかい雰囲気もある。
今日の夜は、世良さんは会社の人との飲み会があると言っていた。あの女性は会社の人なのだろうか。しかし彼女はわたしの知らない人だった。しかもふたりきり。どう見ても飲み会という感じではない。
世良さん、これはどういうことなんですか? あの女性は、世良さんとどういう関係なんですか?
窓の向こうの世良さんが楽しそうに女性に話しかけていた。
わたし以外の女性にもそんな顔をするんだ。
そんなのはあたり前のことなのに、今のわたしはそれすら許せなくて、自分の醜《みにく》さにも泣きたくなった。
この日、世良さんは帰ってこなかった。帰ってきたのは翌朝の六時過ぎ。
これってなんの仕打ちなんだろう。神様はわたしに恨みでもあるんだろうか。
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家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。
こんな私でもやり直せるの?
幸せを願っても…いいの?
動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?
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【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
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