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第三章 傷だらけのロンリネス
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だが喜ぶとも思えなかった。自分のルーツを知ることをなによりも恐れている伊央を傷つけかねない。
「伊央にはこの画像を見せないで。伊央に見せたって、どうにもならないと思うし……」
「わかってる。俺も睨まれたくないし」
いつもおちゃらけている梅村も、あのときの伊央の反応が異様だと思い、彼のいないところでこの話題をしたのだろう。
「その人、今もその塾で働いているの?」
会いにいくかどうかは別として、情報はほしい。しかし梅村から返ってきた言葉は予想外のものだった。
「それがさ、一年前に病気で亡くなったらしいんだ」
「そんな……」
それではいざというときに本人に確認のしようがない。彼は伊央の実の父親かもしれないのに。
めぐるの胸がざわつきはじめる。亡くなっていると聞き、いてもたってもいられないような焦りが生まれた。
「ねえ、名前は!? 歳はいくつだった!? どこに住んでいたの!?」
「急にどうしたんだよ?」
「いいから教えて!」
「住んでいるとこまでは知らないけど、名前は御影。歳は三十くらいだったと思う」
「御影……」
理事長の名前と同じだ。
「珍しい名字だな。御影理事長の息子だったりして」
遠峯が冗談まじりで言うが。
「そういえば、輪郭と口もとが御影理事長に似てる。雫石くんも御影理事長の親戚なのかな?」
梅村が本気モードで返す。
「ここまで似てると可能性はあるよな」
「まさか雫石くんとこの人が親子ってことはないよな?」
「仮に父親だったとして、若すぎないか?」
遠峯が冷静に分析する。
「計算の仕方によっては高校生ぐらいにできた子どもってことになるけど。その年齢なら、やることやれば子どもはできるだろう?」
「幸尚ってすごいこと言うな。雫石くんには世界的に有名な博士の父親がいるんだぞ」
「養子かもしれないじゃん」
ふたりのやり取りを聞いていためぐるは、ビクビクしていた。梅村が養子だと本気で思っているのかは知らないが、どちらにしてもそんなうわさを立てられでもしたら、伊央が傷ついてしまう。
「ちょっと梅村くん!」
「わかってるって。ここだけの話だろう。いくら俺でもこんな話を誰それかまわずしないって。なあ、聖吾?」
「言わないよ。さすがにこれは冗談でも口にしちゃいけない」
ふたりの言葉を聞いてひと安心する。
けれど、やはり気になる。実際、御影理事長に息子はいたのだろうか。てっきり、ひとり娘なのかと思っていた。
娘というのは如月学園長の妻で、華耶子の母親のことだ。表にはあまり出てこないが、学園の理事のひとりである。
そうだ、華耶子ならなにか知っているかもしれない。
「梅村くん、その画像、わたしのスマホに送ってもらえるかな」
「いいけど。雫石くんに見せるの?」
「わかんない。でも本人が見たいっていうなら……」
「驚くだろうな。俺だったら会いにいっちゃうと思う。けど、この人、死んじゃったんだよな……」
そういうことだ。もし実の父親なら、他界していることも知ることになる。これは慎重にならないといけない。
めぐるは受信した画像を確認する。
御影といわれる男性を見ていると、伊央に見えてくる。奥目がちな目の虹彩は色素が薄く、鼻筋はきれいに通っている。彼も中性的な顔立ちだ。
やがて、めぐるのなかに確信が芽生えた。間違いない。この人は伊央の実の父親だ。
「伊央にはこの画像を見せないで。伊央に見せたって、どうにもならないと思うし……」
「わかってる。俺も睨まれたくないし」
いつもおちゃらけている梅村も、あのときの伊央の反応が異様だと思い、彼のいないところでこの話題をしたのだろう。
「その人、今もその塾で働いているの?」
会いにいくかどうかは別として、情報はほしい。しかし梅村から返ってきた言葉は予想外のものだった。
「それがさ、一年前に病気で亡くなったらしいんだ」
「そんな……」
それではいざというときに本人に確認のしようがない。彼は伊央の実の父親かもしれないのに。
めぐるの胸がざわつきはじめる。亡くなっていると聞き、いてもたってもいられないような焦りが生まれた。
「ねえ、名前は!? 歳はいくつだった!? どこに住んでいたの!?」
「急にどうしたんだよ?」
「いいから教えて!」
「住んでいるとこまでは知らないけど、名前は御影。歳は三十くらいだったと思う」
「御影……」
理事長の名前と同じだ。
「珍しい名字だな。御影理事長の息子だったりして」
遠峯が冗談まじりで言うが。
「そういえば、輪郭と口もとが御影理事長に似てる。雫石くんも御影理事長の親戚なのかな?」
梅村が本気モードで返す。
「ここまで似てると可能性はあるよな」
「まさか雫石くんとこの人が親子ってことはないよな?」
「仮に父親だったとして、若すぎないか?」
遠峯が冷静に分析する。
「計算の仕方によっては高校生ぐらいにできた子どもってことになるけど。その年齢なら、やることやれば子どもはできるだろう?」
「幸尚ってすごいこと言うな。雫石くんには世界的に有名な博士の父親がいるんだぞ」
「養子かもしれないじゃん」
ふたりのやり取りを聞いていためぐるは、ビクビクしていた。梅村が養子だと本気で思っているのかは知らないが、どちらにしてもそんなうわさを立てられでもしたら、伊央が傷ついてしまう。
「ちょっと梅村くん!」
「わかってるって。ここだけの話だろう。いくら俺でもこんな話を誰それかまわずしないって。なあ、聖吾?」
「言わないよ。さすがにこれは冗談でも口にしちゃいけない」
ふたりの言葉を聞いてひと安心する。
けれど、やはり気になる。実際、御影理事長に息子はいたのだろうか。てっきり、ひとり娘なのかと思っていた。
娘というのは如月学園長の妻で、華耶子の母親のことだ。表にはあまり出てこないが、学園の理事のひとりである。
そうだ、華耶子ならなにか知っているかもしれない。
「梅村くん、その画像、わたしのスマホに送ってもらえるかな」
「いいけど。雫石くんに見せるの?」
「わかんない。でも本人が見たいっていうなら……」
「驚くだろうな。俺だったら会いにいっちゃうと思う。けど、この人、死んじゃったんだよな……」
そういうことだ。もし実の父親なら、他界していることも知ることになる。これは慎重にならないといけない。
めぐるは受信した画像を確認する。
御影といわれる男性を見ていると、伊央に見えてくる。奥目がちな目の虹彩は色素が薄く、鼻筋はきれいに通っている。彼も中性的な顔立ちだ。
やがて、めぐるのなかに確信が芽生えた。間違いない。この人は伊央の実の父親だ。
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