楽園-ベッド・イン-

さとう涼

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楽園-ベッド・イン-(6)

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「葉月」

 まるで愛しい人に語りかけるよう。
 だけど悲しいかな、わたしたちはただ身体でつながっているだけ。そこに愛は存在しない。
 混沌こんとんとした意識のなかでも、そのことだけはしっかりと自覚していた。

「リク、もっと激しくして」

 やさしくしないで。そんな切なそうな目をしないで。わたしにはやさしくされる資格はないのだから。
 わたしはリクと離れるのが怖かった。一緒にいられる方法を考えていたら、これが最良の方法だと思ったの。
 最低なの。身体のつながりで引き留めてしまう自分が情けない。
 でもわかってほしい。中途半端な気持ちで抱かれているのではないことを。リクはただの気まぐれでも、わたしは決してそうじゃない。わたしなりに重い決意を持ってのことだから。

「葉月、やばい。すごく気持ちいい」
「わたしもだよ」

 奥に到達する瞬間、引き抜く瞬間、ひとつひとつを感じながら、熱い身体を抱きしめ合った。熱い空気に淫らさが混ざり、この世のものとは思えない空間はたとえるなら“楽園”。

「リク……」

 お願い、なにもかも忘れさせて。この瞬間だけでいい。
 わたしを救って──。



* * *



「ええっ!? そんなに!?」

 キングサイズのベッドのへッドボードに背を預け、冷たいシャンパンを喉に流し込んだ。すっきりしたついでに部屋の料金の話をしたら、とんでもない答えが返ってきて、持っていたグラスを落としそうになった。

 このホテルは日本でも有数の高級ホテル。さらにここは一〇〇平米以上の広さを持つ最高級のスイートルームなので、ある程度の覚悟はしていたけれど。それにしても想像の上をいく桁外れな金額だった。

「だから一泊じゃなくて、月単位で借りたんだって」
「わかってるよ。ひと月分だとしてもすごい金額だって」
「そうか? そんなもんだろう。取りあえず、向こう半年分で話をつけた」
「相場がどうのこうのじゃなくて……。毎月それだけの支払いができるなんて、どれだけ稼いでるの? ほんと信じられない。ていうかもったいない」
「別にいいだろう。仕事場としても使うんだから。それに掃除だってやってくれるし、セキュリティもセットだ。それらの人件費と設備を金で買ったと思えば、少しは納得できるだろう?」
「まったく、できない!」
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