楽園-ベッド・イン-

さとう涼

文字の大きさ
上 下
3 / 9

楽園-ベッド・イン-(3)

しおりを挟む
「『好きなように』ね。うれしいこと言ってくれるじゃん。なら、遠慮なく抱くよ」

 そう言うや否や、リクの猛攻撃がはじまった。
 脇腹から腰のラインの素肌を大きな手が移動していく。それからその手でわたしの脚を広げさせると、そこへ自分の身体を忍び込ませた。
 それがあまりにも早業で、びっくりして目を見開くと至近距離で目が合う。

「遠慮しないって言っただろう」

 リクのご満悦の顔が見えた。なんだかそれもちょっと悔しい。
 でもきっと、どう張り合おうとしたって敵うはずないんだ。抵抗したって無駄。それでもいいと思っているからこそ、わたしはこうして自慢にもならない裸体をさらしている。

「そんなの、最初から覚悟してるよ」

 わたしだってそれなりに経験はあるから、少しくらい乱暴でもたぶん平気だと思う。こんなのでよかったら、いくらでも利用してくださいという感じ。満足させられる身体とも思ってもいないけれど、一応女の機能は備わっているから。

「ほんと、おまえ、可愛いこと言うようになったな」
「そう?」
「そういう葉月もいいかも」
「ありがとう。今のわたしがあるのはリクのおかげだから。リクのためならなんでもするよ」

 恋とか愛とか、そんなものはわたしたちの間には残念ながら存在しない。だけど、ぜんぜん投げやりな気持ちなんかじゃない。
 不思議なわたしたちの関係は、今のところ、たとえようがない。それでもリクはわたしにとって大切な存在には間違いない。

「やっぱり、なかなかの余裕だな」

 だから違うのに。そう言おうとしたら、その口をキスでふさがれた。胸のふくらみに手を置かれ、たったそれだけで全身がゾクッと粟立ってしまう。

 強く揉まれると、いてもたってもいられなくなった。

「反応よすぎ」

 だって久しぶりなんだもん、と言ったらリクはなんて思うだろう。
 社会人一年目のときに相手に浮気されてフラれて以来、彼氏はずっといない。
 だけど最近になってようやく心がときめく人と出会うことができた。その人と新たな一歩を踏み出せると思ったのに、またもや残念な結果に。それが二ヵ月前のことだった。
 わたしがいまも二ヵ月前の失恋を引きずっていると知ったら、すぐに抱き起こして服を着せてくれるのだろうか。

「だって……リクって上手なんだもん」
「ほかの男と比べんな」
「比べてないよ。身体が勝手に反応しているだけでしょう」

 リクこそ、ほかの女の人と比べないでよね。いつぶりなの? なんて、あえて聞かないけれど。女はそういうのを気にするものなのだから。

 わたしはリクの女性遍歴をほんの少しだけ知っている。ううん、知っているというほど詳しくないのだけれど、それなりに経験があるというのはなんとなく感じていた。
 だけどここ何年かは女性の影を感じることはなかった。
 特定の相手がいるようなこともリクから聞いたことがないから、勝手にいないと思い込んでいたのだけれど……。
 本当のところはどうなのだろう。

 ん? でも恋人がいたらまずいか。

 けれど、そもそもリクはそういう性格ではないような気がする。浮気や二股をかけるような面倒なことはしない。ひとりの女性に満足できないのなら、最初から恋人を作らなさそう。
 つまりセックスする相手はいたとしても、本命の彼女はきっといないのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

禁断

wawabubu
恋愛
妹ののり子が悪いのだ。ああ、ぼくはなんてことを。

Honey Ginger

なかな悠桃
恋愛
斉藤花菜は平凡な営業事務。唯一の楽しみは乙ゲーアプリをすること。ある日、仕事を押し付けられ残業中ある行動を隣の席の後輩、上坂耀太に見られてしまい・・・・・・。 ※誤字・脱字など見つけ次第修正します。読み難い点などあると思いますが、ご了承ください。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

処理中です...