1 / 9
楽園-ベッド・イン-(1)
しおりを挟む
完成して間もない地上一五〇メートルの高級ホテル。部屋は最上階の三十七階にある。
窓辺に立って見下ろすと夜の絶景。無数の光の粒がどこまでも続いている。こんな贅沢な夜景を見るのは生まれて初めてだ。
ここはゴールドとブルーを基調としたスイートルーム。クリスタルガラスのシャンデリアはピカピカに磨かれており、アンティーク家具は重厚感がある。壁掛け時計ですら素人目にも歴史を感じるくらい本物の気品が漂っていた。
世界がまるで違う。うっとりと、もはやため息しか出ない。
この部屋に入った瞬間、抱かれてもいいと思った。
「葉月……」
ラグジュアリーの部屋に響くリクの声に振り返る。わたしの名前を呼ぶ唇は、そのままわたしの唇をふさいだ。それがリクとの初めてのキスだった。
舌が襲ってくる。口の中で暴れていた。器用に動きまわり、唇を合わせながら角度も変える。
信じられない。
ふたりの間での初めての記念すべきキスなのに、リクは容赦なかった。ぜんぜん、やさしくないのだ。
慣れていることは知っていたけれど、その経験値は予想以上。やっと解放されたときは口のまわりが唾液で濡れまくっていた。
「もう少し手加減して。食べられるかと思った」
「俺のキスに文句言う女、初めてなんだけど」
赤い舌がのぞく。唇をペロリと舐めて、リクは余裕の笑みを浮かべた。
キングサイズのベッドにゆっくりと押し倒され、ひんやりとしたシーツが火照ったわたしの身体の体温を少しだけ下げてくれた。
真っ白なシーツには皺ひとつ見あたらない。最高のベッドメイキングの技は十円玉をシーツの上に落とすと跳ねるらしいが、きっとそれは本当だ。
感心しながら手のひらでシーツの感触を確かめていると、ふいにその手を取られた。
「随分と余裕だな」
目の前のリクはわたしの両手首を掴んでシーツにはりつけると、わたしにまたがったまま見下ろしてきた。
それは甘い瞳──ではなく、強くて鋭い眼差し。激しい欲情をみなぎらせていた。
今までどこをどう踏み越えればいいのかを、キスをしながらお互いに探り合っていたけれど、先に覚悟を決めたのはリクのほうだった。
再び襲われた唇は、さっきよりも深く舌がねじ込まれ、息がままならない。怖いくらいの迫力にドクドクと胸が鳴って、わたしのなかのボルテージが勝手に上がっていくのがわかる。
止められない。リクに囚われたら、逃れられないと思った。
リクって、こんなに荒っぽいの?
たしかに抱かれてもいいと思ったけれど、その豹変ぶりは反則だ。
いつもクールでめったに笑わないリク。だけど限りなくやさしくて、いつでもわたしのことを心配してくれる。過保護過ぎるくらいに尽くしてくれて、だけど深くは詮索してこない。そんな、いまいち掴めなかったリクの正体は想像していたよりも男の人だった。
てっきり、涙が滲んでくるような、切なさを含ませた時間を送るのだと思っていた。そんななかで味わうセックスはいったいどんなものだろうと漠然と思っていたのに、そんなセンチメンタルに浸っている場合ではない。
でもちょっとわくわくもしている。
窓辺に立って見下ろすと夜の絶景。無数の光の粒がどこまでも続いている。こんな贅沢な夜景を見るのは生まれて初めてだ。
ここはゴールドとブルーを基調としたスイートルーム。クリスタルガラスのシャンデリアはピカピカに磨かれており、アンティーク家具は重厚感がある。壁掛け時計ですら素人目にも歴史を感じるくらい本物の気品が漂っていた。
世界がまるで違う。うっとりと、もはやため息しか出ない。
この部屋に入った瞬間、抱かれてもいいと思った。
「葉月……」
ラグジュアリーの部屋に響くリクの声に振り返る。わたしの名前を呼ぶ唇は、そのままわたしの唇をふさいだ。それがリクとの初めてのキスだった。
舌が襲ってくる。口の中で暴れていた。器用に動きまわり、唇を合わせながら角度も変える。
信じられない。
ふたりの間での初めての記念すべきキスなのに、リクは容赦なかった。ぜんぜん、やさしくないのだ。
慣れていることは知っていたけれど、その経験値は予想以上。やっと解放されたときは口のまわりが唾液で濡れまくっていた。
「もう少し手加減して。食べられるかと思った」
「俺のキスに文句言う女、初めてなんだけど」
赤い舌がのぞく。唇をペロリと舐めて、リクは余裕の笑みを浮かべた。
キングサイズのベッドにゆっくりと押し倒され、ひんやりとしたシーツが火照ったわたしの身体の体温を少しだけ下げてくれた。
真っ白なシーツには皺ひとつ見あたらない。最高のベッドメイキングの技は十円玉をシーツの上に落とすと跳ねるらしいが、きっとそれは本当だ。
感心しながら手のひらでシーツの感触を確かめていると、ふいにその手を取られた。
「随分と余裕だな」
目の前のリクはわたしの両手首を掴んでシーツにはりつけると、わたしにまたがったまま見下ろしてきた。
それは甘い瞳──ではなく、強くて鋭い眼差し。激しい欲情をみなぎらせていた。
今までどこをどう踏み越えればいいのかを、キスをしながらお互いに探り合っていたけれど、先に覚悟を決めたのはリクのほうだった。
再び襲われた唇は、さっきよりも深く舌がねじ込まれ、息がままならない。怖いくらいの迫力にドクドクと胸が鳴って、わたしのなかのボルテージが勝手に上がっていくのがわかる。
止められない。リクに囚われたら、逃れられないと思った。
リクって、こんなに荒っぽいの?
たしかに抱かれてもいいと思ったけれど、その豹変ぶりは反則だ。
いつもクールでめったに笑わないリク。だけど限りなくやさしくて、いつでもわたしのことを心配してくれる。過保護過ぎるくらいに尽くしてくれて、だけど深くは詮索してこない。そんな、いまいち掴めなかったリクの正体は想像していたよりも男の人だった。
てっきり、涙が滲んでくるような、切なさを含ませた時間を送るのだと思っていた。そんななかで味わうセックスはいったいどんなものだろうと漠然と思っていたのに、そんなセンチメンタルに浸っている場合ではない。
でもちょっとわくわくもしている。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
闇夜に帳
朝日眞貴
恋愛
今日初めて会う事になる。
待ち合わせ場所に急いでいる。そう、ゆきの調教を行う日なのだ、時間が限られている中での調教になるが、閑雲の気持ちで取り込む事にしよう。
今までのメール調教から出来そうな事は解っている。
いくつかの事をやってみようと思っている。
その為にも、早めに合流してプレイを開始しよう。
恥辱の蕾~年下彼氏と甘い夜~
ぴっぽ
恋愛
年下が好物な主人公の遥は、年下彼氏の良樹とお家デート中。年下だが筋肉質な体格の良樹に甘えたい欲望が遥にはあった。けれども、上目遣いでそんなオネダリされたら…
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
なし崩しの夜
春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。
さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。
彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。
信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。
つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。
両隣から喘ぎ声が聞こえてくるので僕らもヤろうということになった
ヘロディア
恋愛
妻と一緒に寝る主人公だったが、変な声を耳にして、目が覚めてしまう。
その声は、隣の家から薄い壁を伝って聞こえてくる喘ぎ声だった。
欲情が刺激された主人公は…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる