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ロベリアが咲き乱れるお茶会へ

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面白くなかったのだ。

確かに昔からエマ・ケリーは気に入らなかった。

初めて会った時も、既に今生からの復讐相手のように感じたのは、ウィロウの言う「クソババア」こと、ダンスの家庭教師のせいである。

だから初対面で喧嘩を売り、茶会に呼んで恥をかかせようともした。

〝この女がいる限り、私は安寧な道を歩めない〟

真っ向勝負をして分が悪い結果になったとしても、思いをぶつけたウィロウは、「その時は気持ちが晴れ晴れとしました」と、会ったばかりの頃にレイラへおどけて話した。

しかし彼女に言われた言葉は、


「みっともないことをするんじゃない! お前の今の顔を見てご覧。闇を抱えてやれとは言ったけれど、植え付けろだなんて言っていない!」


叱責だった。

狡い、と素直に口から溢れてしまう。
それをレイラが眉を下げた後に抱きしめた。


「違うわウィロウ……違うのよ。わざわざ幸福な、真っ当な道を歩む人間を堕とすことはいけないの。貴女は社交界の花、聖女なのよ……っ!」

「は?」


気持ちが混乱し、どん、と細い肩を押して叫ぶ。
酷く裏切られた気分だったからだ。


「だったら私の闇は!? 腐敗した掴めもしないほどにどろどろと自身を巣食いへばりつく、この汚物は誰が抱えてくれるというのですか!」


少しくらい良いじゃない。
幸せそうな女共の影をしてやるのだ。手に入れることも許されない、またつまらない男共を楽しませるのだから。
それなりに闇を滲ませて誘って何が悪い。

(アンタだって。そのドレスの下へ、ひた隠しにした痕の秘密を抱えている。どうせ嫁げないから社交界の花に持ち上げられただけじゃないの? だったなら、なりたくないわ。惨めな女の象徴じゃない!)

酸素を、綺麗な空気を取り込むようにして、深く呼吸を繰り返せば。


「私。貴女の闇はすべて私が抱えて持って行ってあげるわよ。当然でしょう?」

「レイラ、様……?」


仕方ない子、と困ったよう笑う。
ウィロウはすぐに「ごめんなさい」と抱きしめた。何故だかこうして捕まえて居なければ、消えてなくなりそうだと思ったからだ。


「ほら、とりあえずここにお座り。そして言ってご覧なさいな、全部。上手に吐き出せるまで、手を繋いでいてあげようね」

「……ん」


そんな彼女の優しさがあったから、エマ・ケリーとは一方的に憎む相手ではなくなったのだ。
今なお、犬猿の仲だと周知されてはいるが、良く言えばライバル、気軽に真実を言い合える仲。
また、彼女が居るから自身を腐らせずに高めることが出来るのだ、とまで考えられるようにまでなった。

まあ、「気に入らない」ことは事実ではあるがと思う。



それを何処の誰かも知らぬ女が、「エマ・ケリーとは傲慢で意地の悪い女」だと言うではないか。

(お前に何が分かると言うのよ。アレを悪く言えるのは、私だけで十分なのよ……)

しかし「思い出しても腹立たしいです!」と女は幼女のように頬を膨らませ、赤茶髪を弄りながら口を開いた。
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