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ロベリアが咲き乱れるお茶会へ

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「では、待たせたね。だいたいの流れは掴めただろう?」


赤の女王レイラが問えば、橙の代理である女たちは満面の笑みで頷き、「お任せを」などと呑気なことを宣った。

皆、何がお任せをなのだか。と青の令嬢が含ませた意図を全く汲んでいない様子に、カップの中で改めて鼻を鳴らす。


「それでは、私からはある伯爵家のご令嬢のお話を致しましょう!」


ロベリアの押し花が飾り鉢へと投げられた。


「実は私、幼少の頃より身体が病弱で。領地の屋敷から出たことが無かったのです……」

「お可哀想にね」


赤茶髪の女が切り出せば、寄り添うよう別の女が大袈裟に相槌を打つ。


「ですがこの通り、私の日々の行いが神に通じたのでしょう。病魔に打ち勝ち、遥々この憧れの王都へとやって参ることが叶いましたの」


ウィロウはピクリと眉を少し上げた。
周りも一瞬、動きが止まる。

(コイツ、レイラお姉様を差し置いて。何て切り出し方を……!)

燃え上がるように殺意が沸いた。
茶会のメンバーは何となく察していたことなので小さく咳払いをして、話題を変えろと促す。

通じたのかは定かではないが女は「それで」と続け、


王都こちらに来る前、念願でしたティーパーティーをすることにしたのです。しかし病弱だったために招待出来る友人が居らず……」


萎んだ声。妙に「可哀想な私」と言いたげに、顔を少しだけ背け、柔く握った拳を唇に当てる。視線だけは周りに向け……。

横から「それは、それは」と過保護な盛り上げ方をしたが、ウィロウは揶揄した。


「まあ、市井で流行中の、皆が憧れている物語のヒロインみたいな方ね貴女。きっとすぐにこちらでも友人が出来るわ」


これには他の令嬢たちも「紫様、貴女……!」と小さく吹き出すよう労いのアイコンタクトを送る。
何故なら〝平民の友人ならばすぐに出来るだろう〟と言うからだ。

しかし微妙にニュアンスを受け取ったのだろう。
「それは」と皮肉っぽく返された。
それを、しれっと「構いませんわ」と同じように、柔く握った拳を口元に当て、明るい声で仕草のみ真似た。

話しづらい、と感じただろうが感謝して欲しい。
くだらない前置きに場を高揚させてあげている、と強気な態度である。
これにはレイラも口元に笑みを浮かべていた。

気を取り直した女が、本題です、と言わんばかりに「まあ、そこで」と声を張り上げる。


「兄の学校での友人を呼んだのです。成績優秀で眉目秀麗な……とっても美丈夫な方ですの! しかし彼には婚約者が。皆様には注意を促すために知らせておきますが、何とも傲慢で意地の悪い方なのです……」


青の令嬢の言い方を真似て、名を出すらしい。
女は歪めた口元を上げてこう言った。


「エマ・ケリーという方ですわ」


これには、おどけて余裕を持っていたウィロウが、ゆっくりと顔を向けた。

(何を言っているの、お前……)
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