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ロベリアが咲き乱れるお茶会へ

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そんなことを感じているとレイラが徐に立ち上がるなり、豪華で繊細な陶器製の飾り鉢を手に、それをテーブル中央へと静かに置いた。


「では、ロベリアを咲かせましょう。しかし本日は特別なゲストがこちらに……」


右横に手を差すと、女たちは一層に気分が良さそうな表情で周りを見渡し、「公爵家として来たのよ」と言いたげに勝ち誇った。

しかしレイラは愉しそうな声で、


「だがここは特殊なルールが存在する。橙であるお前たちの番は……そうだな、紫の前にでも。よく見て覚えると良い。皆様もそれでよろしいでしょう?」


ウィロウはゾッとした。
急遽、乱暴に参加した彼女たちへ優しい声を出しながらも、使用人などに使う言葉遣いなのだから。

その反面で俯いてしまう。

(それでも最後に、貴女を引き摺り降ろすことを私に望むのね……)

橙以外の参加者は、合わせるよう頭を下げ声を揃えた。


「赤の女王の意のままに」


自身を優先にし優しくもてなされている、などと呑気なことでも考えているのだろう。


「よろしくお願い致しますわっ」


弾ませた声が頭に降り注がれた。
皆、内心で「馬鹿な女」とほくそ笑む。

爵位の上の者から右回りに話題を提供していくのだ。すなわちそれはどんどんと話題のレベルを上げていかなければならないということ。

ここはロベリアが咲き乱れる秘密の茶会、選ばれた者でしかこの飾り鉢を囲えない。つまらない種であれば話に花も咲かないし、すぐに断ち切られてしまう。
つまり顔も名も知らないふりのこの閉鎖的な密会で起こることもまた秘密なのである。


「では私から。まずは皆様、最近の貴族新聞をご覧になりまして? そこで独身貴族の殿方を特集していますでしょう。何でも節度を守るジェントルマンだとか。しかしそれは真っ赤な、いえ黄色の百合偽りをばら撒く、とでも言いましょうか」


黄色の席に座る令嬢が、招待状と共に添えられていたロベリアの押し花を鉢に投げ込んでそんなことを言う。

一番手だからか、周りは、ざわり。波が寄せたように騒がしくなった。


「まあ……あの大柄でハキハキとした気持ちの良い伯爵令息のことでしょう?」

「しかし以前の夜会では、社交的と言いますか……。積極的に会話に入っていた印象がありますわ」


それを聞いた黄の令嬢は真剣な口調で。


「何でも。一夜限りの関係、を求めているそうなのです。ダンスを踊った殿方の大半数が口を揃えておりました。何よりも私の友人が、酔ったその方に絡まれ言われたそうなのです……」

「気になるわ、早く教えて頂戴よ!」

「男を喜ばせることも出来ない何ともつまらなそうなダンスを踊りそうだ。などと、頭から爪先までを視線で往復されたと……」


これには皆、身震いしながら背筋を伸ばした。


「何て品のないっ」

「やはり貴族新聞の特集記事など忖度しかありませんわね!」


ウィロウも続いた。


「むしろ気をつけた方が良い殿方を手配りされているのではなくて?」


そんな言葉を聞けば、


「あはは、嫌ですわ。それならば分かりやすくて、貴族新聞も捨てたものではありませんわね!」


などと笑い声が重なる。
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