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ロベリアが咲き乱れるお茶会へ

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ここにいる女中たちの顔ぶれもウィロウが見た中では毎年同じ。
数ある領地の、特に遠方の屋敷に仕える使用人たちをこの日のために呼び寄せたのだ。
レイラいわく、「田舎の屋敷はその領地内の人間を雇用しているの。慈善事業てやつよ。それに他の貴族との交流がない方が、この時間は闇に溶け込むでしょ?」だと言う。
徹底された断絶振りだと思った。


「お久しぶりでございます、


サロンまで案内をするために待ち受けていた女中が言った。
紫というのはウィロウのここでの隠し名である。
ここでは招待状の封筒の色で呼び合うことが決められ、主催者のレイラの赤と参加者のウィロウの紫、他に四名の令嬢がいる。
色相から赤、橙、黄、緑、青、紫の順に席に着き、爵位の表れでもあった。
つまり伯爵位のウィロウは末席なのだ。

だが、この茶会は円卓。右から順に座ってしまえばレイラの左隣はウィロウになる。
何においても主催者の隣りということは必ず意味があるのだ。
それだけでもレイラが可愛がっていることが見て取れる。
ウィロウのための円卓だと言っても過言ではないことを自負していた。


「紫様のお着きです」


張り上げた声で知らせると、数秒待って扉が開かれ、同時にウィロウは丁寧なカテーシーを取った。


「ようこそ、ロベリアが咲き乱れるお茶会へ」


その声を合図に表を上げ席に着く。
レイラの表情はいまいち確認出来ない。
何故なら何枚も重ねたベールが覆い隠しているからだ。ワインレッドの落ち着いた色をさした口元だけが笑みを作っていた。
一応、穏やかに、また体調が良さそうにも見える。


「お招き頂き感謝申し上げます」

「よく来たわね」


広々とした室内には締め切った臙脂のカーテンと様々な絵画が金縁に収まり、壁に所狭しと並び息苦しい。ぽつんと中央には真っ白なクロスの円卓、その上には季節の花々が飾られ何とも華やかなはずだというのに。豪奢なシャンデリアの薄暗い明かりが降り注ぎ背徳感が増す。

既に派手な刺繍を施した布張りの椅子は埋まりつつある。
ただ、レイラの右隣に座るはずの橙の席だけが空いていた。

皆、まだ口を開かないが会釈だけは交わす。
しん、と静寂の中で眼球のみ動かし確認してみても変わらぬメンバーだった。
名も年も明かさないが、黄と緑は侯爵令嬢、青はウィロウと同じ伯爵令嬢である。

(さて、あの橙であるクソ女が来て始まるわね……)

そんなことを考えていれば、扉の向こうから「橙様のお着きです」と声がした。

扉が開き皆、驚愕するよう肩が上がる。
そこには二人の令嬢の内の一人が橙色の封筒を手に立っていたからだ。

(誰……もしかしてメンバーが変わったの?)
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