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性悪な聖女と社交界の花
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「社交界を把握しているの。足りない分は金銭でも積めばそんな情報、すぐにでも手に入るわ」
「何故……」
調べたのか。先程から何故とばかり言っている。
それくらいに彼女は謎が多い。
ただ一度、街で出会っただけの人間に何を求めると言うのだろう。
ウィロウは心底から気味が悪かったし落ち込んだ。
自分にはそこまでされる価値も、社交界の花になれるわけもないと思うから。
「その足、続けられれば。痕が残り肌は硬くなって浅黒くなる。その前に助けてあげても良いわよ?」
「…………」
「あれで一応侯爵家だから周りも口外出来ないのだろうね」
確かに。五等爵で男爵、子爵、伯爵、侯爵、その頂点に立つ公爵家ならば、すぐに解決出来ることだろう。
しかしウィロウも「これであの性悪ババアとお別れだわ! 何なら叩きのめして貰っても?」などと、そこまで単純なことを言えるような人間ではなかった。
「公爵家のご令嬢様が、伯爵家の私なんかに何をお求めなのでしょうか」
「言ったわ。次代の社交界の花になる気はないのか、と」
くどい、と言いたげな目を向けられても。
「それこそ……同じ伯爵家であれば、ケリー伯爵家の末妹であるエマ様の方が適任かと」
言いながら随分と皮肉な笑みを浮かべてしまった。
比較ばかりされてきた彼女の実力は本物だと思うが、いざ自分で口にすると何とも惨めに感じるからだ。
「ああ、あの子は駄目」
屈託のない笑い声と共にレイラが続けた。
「だって、幸せになる舞台しか用意されていない
とても可愛らしい子だもの。それに婚約者がいるものね」
世間知らずだと言い放った。
ウィロウは目を丸くして、だったら自分は不幸な舞台しかないのか、と内心で突っ込んだ。
そして社交界の花とは、そんな不幸な女の象徴なのだろうか……。
夜会では煌びやかで、周囲から羨望と憧憬の眼差しを向けられるそんな華やかな裏に、何があると言うのかを考えざるを得ないのだ。
「社交界の花は闇を抱える、と言ったわね。常に参加し続け盛り上げるための期待の中で、嫉妬も憎悪もすべて含まれる。そして敢えて婚期を遅らせなければならない……もしくは諦めなければならないかもね」
「何故……」
調べたのか。先程から何故とばかり言っている。
それくらいに彼女は謎が多い。
ただ一度、街で出会っただけの人間に何を求めると言うのだろう。
ウィロウは心底から気味が悪かったし落ち込んだ。
自分にはそこまでされる価値も、社交界の花になれるわけもないと思うから。
「その足、続けられれば。痕が残り肌は硬くなって浅黒くなる。その前に助けてあげても良いわよ?」
「…………」
「あれで一応侯爵家だから周りも口外出来ないのだろうね」
確かに。五等爵で男爵、子爵、伯爵、侯爵、その頂点に立つ公爵家ならば、すぐに解決出来ることだろう。
しかしウィロウも「これであの性悪ババアとお別れだわ! 何なら叩きのめして貰っても?」などと、そこまで単純なことを言えるような人間ではなかった。
「公爵家のご令嬢様が、伯爵家の私なんかに何をお求めなのでしょうか」
「言ったわ。次代の社交界の花になる気はないのか、と」
くどい、と言いたげな目を向けられても。
「それこそ……同じ伯爵家であれば、ケリー伯爵家の末妹であるエマ様の方が適任かと」
言いながら随分と皮肉な笑みを浮かべてしまった。
比較ばかりされてきた彼女の実力は本物だと思うが、いざ自分で口にすると何とも惨めに感じるからだ。
「ああ、あの子は駄目」
屈託のない笑い声と共にレイラが続けた。
「だって、幸せになる舞台しか用意されていない
とても可愛らしい子だもの。それに婚約者がいるものね」
世間知らずだと言い放った。
ウィロウは目を丸くして、だったら自分は不幸な舞台しかないのか、と内心で突っ込んだ。
そして社交界の花とは、そんな不幸な女の象徴なのだろうか……。
夜会では煌びやかで、周囲から羨望と憧憬の眼差しを向けられるそんな華やかな裏に、何があると言うのかを考えざるを得ないのだ。
「社交界の花は闇を抱える、と言ったわね。常に参加し続け盛り上げるための期待の中で、嫉妬も憎悪もすべて含まれる。そして敢えて婚期を遅らせなければならない……もしくは諦めなければならないかもね」
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